ITアーキテクトとITスペシャリストの違い【仕事内容・KPI・スキルなど】

ITエンジニアの方から、よく「ITアーキテクトとITスペシャリストどちらのキャリアを目指すべきか」というご質問をいただきます。

いずれもITプロジェクトを進める上で欠かせない存在ですが、それぞれのキャリアを目指す上で何をすればよいのか、どうキャリアを歩めばよいのか、悩んでいる方も多い印象です。

そこで今回は、ITアーキテクトやITスペシャリストの違いを、仕事内容、求められるスキルやマインド、キャリアパスの観点で説明します。

【目次】

  1. プロジェクトにおけるITアーキテクトとITスペシャリストの”役割・仕事内容・KPI”の違い
  2. ITアーキテクトとITスペシャリストの”求められる視点・マインド・スキル・経験・資格”の違い
  3. ITアーキテクトとITスペシャリストの”得られるスキルや経験、その後のキャリアパス”の違い
  4. ITアーキテクトとITスペシャリストの”年収の違い”

プロジェクトにおけるITアーキテクトとITスペシャリストの”役割・仕事内容・KPI”の違い

ITアーキテクトは作曲家、ITスペシャリストは演奏家

先日お会いしたSIerのマネージャー曰く、「ひとつのITプロジェクトをオーケストラに例えた場合、ITアーキテクトは作曲家であり、ITスペシャリストは演奏家である」とのことでした。

作曲家が全パートを通して作曲や編曲をするように、ITアーキテクトは、特定のコンポーネントだけではなくITシステム全体のアーキテクチャを描きます。
それに対しITスペシャリストはそれまで培ってきた技術をもって自身の得意とするパートを具体化します。(ちなみに指揮者はプロジェクト・マネージャーだそうです)。

しかし、ITシステムは自由な発想で創作するものではありませんし、システムのアーキテクチャにITスペシャリストの仕事内容がパート譜の様に細かく記されている訳でもありません。実際のところは、もう少し説明が必要でしょうか。

ITプロジェクトが生まれる背景には、まずビジネスニーズと予算があります。一般的な企業の場合、プロジェクトが始まる前からそれらを明確にして具体的に予算化する行為をしますが、そのためには、具体的なコストを算出できる程度のシステム設計や要員計画が必要です。
ITアーキテクトは、このような、プロジェクトが始まる前の段階のシステム設計を主に担います。

一方、ひとたびプロジェクトが始まると、各タスクを実行する要員が必要です。そこで登場するのがITスペシャリストです。
プロジェクト遂行で必要な各スキル領域のタスクを、それぞれの専門知識をもって実行するのがITスペシャリストの役割です。

多くのITプロジェクトはITスペシャリスト主導のもと要件定義から始め、次に設計フェーズに入りますが、ここで言う設計が必ずしも当初の設計通りにならないことが多々あります。
このような場合はITアーキテクトとITスペシャリストが協議の上、双方がすり合わせを行います。同時にそれがITアーキテクトからITスペシャリストへのバトンタッチとなります。

その後はプロジェクト・マネージャーの管理のもと、各ITスペシャリストが協力し合いプロジェクトを進めていきます。

KPI・評価の基準の違い

ITアーキテクトもITスペシャリストも同じITエンジニアですので、ITエンジニアとしてのコアスキルをどう発揮でき、それがどうビジネスの結果に紐付いたか、という点が重視されます。

ただし、ITアーキテクトはプロジェクトが始まった後というより始まる前に活躍の場が多いですが、「提案したシステムはどの程度の規模か」「それは契約に至ったのか」といったわかりやすい指標で評価されます。

一方、ITスペシャリストはプロジェクト内における活躍が重視されますが、成功裏に終わったか、自身のスキルがどう貢献したか、という若干不明瞭な部分を自分で明確にする努力が必要です。また、ITスペシャリストでも提案活動に参画するチャンスは多いため、積極的に参加しプロジェクト受注~成功にどの程度影響したかという点も、評価に繋がります。

ITアーキテクトとITスペシャリストの”求められる視点・マインド・スキル・経験・資格”の違い

ITアーキテクトには、クライアントの現行システムやビジネスニーズへの理解力、営業力も求められる

ITアーキテクトは、何よりもビジネスニーズや予算とシステム設計の間に整合性を保つことが重要なため、お客様の業界や現行システム両方に関する確かな知識が求められます。

さらに、ITアーキテクトが関わるのは上流工程までと言われがちですが、そのインプットで必要になるのは、下流工程で得られた知見やニーズです。そのため、ITアーキテクトを目指す場合は、まずはITスペシャリストとして幅広く経験を積むことが多いです。

お客様の業界知識については、普通にITエンジニアをしているだけでは得られないため、例えば関わったシステムがどうお客様の業務に利用されるのか、興味を持って都度確認するなど地道な活動の継続が必要です。

また、提案活動に関わることもあり、エンジニア職ではありますが、営業的なスキルも求められるケースがあります。

ITスペシャリストに必要なスキルは、特定領域だけでなく関連領域も含めたテクノロジーへの知見とスキル

ITスペシャリストは、まず特定の領域に対する専門性や高いテクニカルスキルが求められる一方で、未経験の領域にも積極的に取り組む姿勢が大切です。
実際のプロジェクトの現場では様々な事情で専門領域以外での発言や知見も求められることがしばしば発生します。IT技術は日々進歩していますので、狭く深くという意識よりも、専門領域に軸足は置きつつも、そこに関連する技術を学び続けることが大切なようです。

両者になるために必須の資格はなく、あくまでも対外的に実力を示すための道具

基本的にITアーキテクトになるために、あるいはITスペシャリストになるために、何らかの資格を取得する必要はないのが実情です。

勿論、クラウド領域に関連したAWSソリューションアーキテクトなど、自身がどの領域にスペシャリティを持っているかを対外に示すために資格取得は有効かもしれませんが、それよりも日頃それぞれのキャリアを意識してどう振る舞うかが大切なようです。
例えばITアーキテクトを目指すなら自身の担当外の領域にも積極的に目を向けて首を突っ込んでみる、ITスペシャリストを目指すなら求められているアウトプット以上に追求してみる、といった行動の積み重ねが実を結ぶことが多いでしょうか。

ITアーキテクトとITスペシャリストの”得られるスキルや経験、その後のキャリアパス”の違い

ITアーキテクトのキャリアパス:CTOやCIOなど上流からIT推進・IT企画に関わるポジションへ繋がりやすい

ITアーキテクトは自らの考えでシステム全体をデザインしていく仕事のため、お客様の業界知識や世の中の技術トレンドに関する知識を広く身につけることができます。

ITアーキテクトと言っても、特定のお客様を長く担当しお客様とともに長期計画を考えていくこともあれば、様々なお客様のIT環境を次々とデザインすることもあります。

前者の場合は、より深い業界知識に加えお客様とのリレーションを深めることができます。中にはその結果、ITアーキテクトから営業に転身する方もいらっしゃいます。

(例)外資系ベンダー  ITアーキテクト⇒外資系SaaS企業 プリセールス など

後者の場合は先端技術を取り入れながら革新的なシステムを提案することで、CTOやCIOなど社内外に対し技術的な方向性を示せる強い立場になる方もいらっしゃいます。

ただし、ITアーキテクト自身が直接システムを構築や運用することは稀なため、テクニカルスキルに関しては、ITスペシャリストのように日々の業務を通して習得するというより、自発的に学習してスキルを身に着け業務に活用する、というアプローチになりがちです。

また、ITアーキテクトからITスペシャリストへ転身する人は多くないですが、ITアーキテクトとして培ったクライアントとシステム間の調整力などは今後のITスペシャリストとしての振る舞いに必要なことですので、必ず重宝されます。特にお客様のビジネスに踏み込んで全体を見渡してきた経験はITスペシャリストのキャリアだけではなかなか得られないため、優位に立てるでしょう。

ただし、ITアーキテクトはその業務の性質上、日頃から少数精鋭で活動することが多いため、その感覚で引き続き仕事をしてしまう傾向があります。
特に大規模なプロジェクトでは多くの要員で細かく分業することが必須となるため、メンバーの一人として動いていることを強く意識することが求められます。

ITスペシャリストのキャリアパス:ITアーキテクト、事業会社テックリードなど技術力を起点にテクノロジーベースでのキャリアパスが広がる

ITスペシャリストのキャリアパスとしては、そのままスペシャリストとしての道を続ける方が多い印象です。その中でも、プロジェクトの現場においては、デザインと実情は必ずしも一致しないことが多く、試行錯誤しながら実現の道を探ることが多いですが、そういった経験を重ね続ける方が、社内でのタイトルも年収も上げていく印象です。

一方で、ITアーキテクトやプロジェクト・マネージャーなどの違うキャリアを歩む方もいらっしゃいます。

特に技術的なスキルが前提となるITアーキテクトへキャリアを歩むには、ITスペシャリストとしてのキャリアが必須と言っても過言ではありません。

ただし、注意点は、いずれは幅広い知識が必要なITアーキテクトを目指すにしても、広く浅くを目指さないことでしょうか。

ITアーキテクトに足を踏み入れた際に、何らかの土台が必要になるためです。中には、テックリードとして事業会社に入社されるケースもあります。その場合も、技術的に突出した部分があるかどうかは重要になります。

ITアーキテクトとITスペシャリストの”年収の違い”

SIerではITスペシャリストの次の職位としてITアーキテクトのポジションを設けているケースもあり、比較的ITアーキテクトの方が高収入ということが多いでしょうか。各企業によってポジションごとの年収は異なるため、詳しくはぜひお問い合わせください。

関連記事:

“ITアーキテクト”のキャリアパス【よくある転職理由~転職者の生の声~企業選びの注意点など】
https://www.axc.ne.jp/media/careertips/itarchitect_careerpass

ITアーキテクトの需要(ニーズ)と職位毎の仕事内容・求められるスキルについて
https://www.axc.ne.jp/media/careertips/itarchitect_demand

ITアーキテクトとプロジェクトマネージャーの違い【役割~スキル~仕事内容】
https://www.axc.ne.jp/media/careertips/itapmjob

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今回の記事では、ITアーキテクトとITスペシャリストの違いついてご紹介しました。

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