「新入社員の63%、海外勤務望まず」。日経新聞にこんな記事が出てから約10年が経ちました。
参考:新入社員の63%、海外勤務望まず 過去最多と民間調査|日本経済新聞
このアンケートから時間が経った2024年現在も、新入社員の海外志向は決して高まっておらず、海外志向の社員は約2割しかいないというデータも出ています。
参考:新入社員の約7割が、国内でグローバルな仕事を希望。海外志向は2割弱。グローバル興味なしは、13%に留まる|PR TIMES
海外勤務に不安はつきものですが、豊富なチャンスもあることを考えると、非常にもったいない状況かもしれません。今回は海外勤務経験が5年以上ある筆者の実体験も踏まえ、海外赴任の魅力やリアルな注意点を解説するので、ぜひ参考になさってください。
【目次】
海外で働く不安は絶えないもののチャンスは広がっている
冒頭の記事では、入社した新入社員にアンケートをした結果、海外で働きたいかという質問に対し、1番多かった回答は「海外で働きたいとは思わない」だったと解説されていました。
2番目に多かった回答は「国・地域によっては働きたい」で27.2%。「どんな国・地域でも働きたい」は9.1%という結果が出たようです。
ちなみに、海外勤務を望まない人の理由としては、「語学力に自信がない」が65.6%で最多。「生活面で不安」が46.9%、「仕事の能力に自信がない」が31.2%という結果に。
転職を希望している方に海外志向について伺うこともありますが、「海外勤務に興味はある」「いずれは海外で働きたい」という方が比較的多い印象がありましたので、日経新聞の記事は意外でした。
一方、企業側からはグローバル化もあり、将来的に海外駐在や、海外の企業に出向の可能性ありという話を聞くことが増えてきているので、海外で働くチャンスは広がってきていると思います。
やっぱり海外勤務は大変だった
私の海外勤務の期間は5年以上です。1社目の会社で1年間の海外駐在(アメリカ、カナダ)、2社目で4年ほどの海外勤務(カナダの現地企業での採用)を経験しました。
元々なんとなく海外で働いてみたいと思っていましたが、実際に海外で働いてみると、いろいろな面で思っていたことと違う! やっぱり海外は大変だな・・・と思うことが多々ありました。
業務的なことについては、当然人それぞれ。環境・仕事も違うのでなんとも言えませんが、業務で良いパフォーマンスを出すには生活面の充実も必要です。
あくまで私の経験にはなりますが、ある程度長い期間、海外で生活する中で感じたことなどお伝えできればと思います。
※場所はロサンゼルス、ニューヨーク、バンクーバーでの話になります。その他の地域、国によっては当然違いがあると思います。
まずは大変だったな、苦労したな、という部分。
やっぱり語学力
特に話す力、伝える力が必要です。当然、語学力については高いほうが有利。相手の言っていることはなんとなくわかるけれども、自分の言いたいこと、考えていることを伝えられないというのはストレスになります。
これは生活でも仕事でも同じ。話す機会が増えてくれば上達しますが、意識しないと時間がかかるものだと思います。
私はほぼ英語が話せない状態で海外に行きましたので話す方はかなり苦戦しました…。
現地で暮らしている日本人夫婦で、語学力を上げるために家の中でも英語でコミュニケーションをとっているという話を聞いたこともあります。
話す力が高いと仕事以外でも会話の幅が広がりますし、メリットは大きいです。完璧な英語ではなくても、明瞭で失礼のない表現を使えれば問題ありませんので、ぜひオンライン英会話や英作文トレーニングなどでアウトプットの機会を増やしてみてください。
住居の確保
駐在の場合は会社で用意してくれるケースもあると思いますが、まずは住むところを探さなくてはいけません。
私の場合、アメリカ(ロサンゼルス)とカナダ(バンクーバー)だったのですが、日本と大きく違うと思ったのは、日本でよく見かける賃貸の不動産屋的なものがない(少ない)です。
つまり自分で街中を見ながら“vacancy”という看板が出ているアパートを探し、部屋を見せてもらったり、賃料を確認したり・・・。それを繰り返し、気に入ったところと契約するという流れになります。
もちろん契約を断られる場合もあります(来たばかりで収入の証明ができなかったり、保証人がいないとダメだったりと・・・)。まずは住むところを確保しないと不便なので、事前に調べられることがあれば調査しておいた方がベターです。
家賃の相場や住むエリアの治安も重要ですね。ちなみに私がLAで住んでいた場所は比較的治安の良いと言われている場所でした。
しかしいつも利用していたガソリンスタンドで殺人事件が起こったり、日本食レストランに強盗が入ったこともありました。危険と隣り合わせという感覚は強かったです。
諸々の契約、解約
例えば携帯電話の契約や解約についてですが、契約より解約の方が面倒かもしれません。
会社によっては解約させてくれない、あるいは解約したつもりが解約できておらず、基本料がずっと引き落とされていたなどのトラブルも。
日本では契約を解約するという言葉を使うと思いますが、同じ感覚で“cancel a contract”を使うと、使っているプランの契約を解除すると捉えられる場合もあり、“cancel a line”と伝えないと解約されないという話も聞いたことがあります。
私が利用していた携帯会社の場合、解約は電話のみで受け付けるということもあり(私の場合、対面ではなく電話が一番苦手でした)不安なところもありましたが日本に帰国するときは無事解約できて安心しました・・・。
小切手(check/cheque)文化
日本ではモノを買うときや、支払いをするときはカードや現金で、というのが通常だと思いますが、小切手じゃないとダメという支払いのケースもあります(住んでいたアパートの家賃支払いがそうでした・・・)。
こちらも慣れてしまえばなんてことはないのですが、最初はちょっと戸惑いました。
まず現地の銀行で口座を開設することから始まりますが、こちらもどのような銀行があるかなどは調べておいた方が良いかもしれませんね。
海外の銀行でも日本人スタッフや日本語対応可という銀行、支店がある場合もありますので、口座の開設や手続き等でも何かと安心です。
日本語が通じないローカル銀行だと不安!という場合には日本語対応可能な銀行を選ぶというのもありだと思います。
海外勤務の不安をなくすために:海外で生活するなら知っておくべきこと5つ
海外勤務5年以上の私が、海外で生活する前に確実に知っておくべきと考える5つのポイントを解説します。
医療制度
バンクーバーにいるときに医療機関にお世話になりましたが、これも日本とかなり違いました。
良い面では保険に入っていれば受診料などは基本的に無料で、レントゲンを取ろうがCTを取ろうが病院で請求をされることはありません。
ただ、総合病院的なものや精密検査ができる機関が少なく、検査が実施されるまでに数週間~数ヶ月待たされる、というケースも普通にあるようです。
私の場合は頭のCTを取ったり、胃カメラを飲んだり・・・ということがありましたが、幸運にも即日もしくは翌日に対応してもらえました。
しかし、会社の同僚は飛蚊症の精密検査で数ヶ月待ちという状況。日本の医療制度が良いというわけではありませんが、国によって大きく差があると思いますので、何かあった時のためにもよく調べておきましょう。
日本食の入手
海外でも日本人が多く住んでいる場所には日系のスーパーがあり、日本で売っているものと同じ商品を手に入れることができます。
近年の日本食ブームで、日系以外のスーパーでも日本食が手に入ることもありますが、どこで手に入るかも知っておくと便利です。
なお日本の企業が現地向けに商品を出しているケースも多いですが、現地の方が好む味に変えていますので日本の同じ商品と味が違ったりします・・・。スーパーではありませんが吉野家の牛丼なども全然味が違いますよね。
交通ルール
海外旅行に行く方で、海外でもよく運転する方は慣れているかもしれませんが、交通ルールも日本と違う国は多いのではなないでしょうか。
そもそも海外で生活する中で運転が必要な場合には、その国の免許証をとらなくてはいけないというケースが多くあります。
国際免許証があればOKというケースもありますが、有効期限が1年という制約や旅行じゃない場合にはその国の免許証を取得しなくてはいけないなど、ルールが決まっていると思いますので、事前に確認しておいた方が良いと思います。
右ハンドル・左ハンドル、左車線・右車線が全く逆、というのも最初は苦労しましたが、曲がる場合には常に自分が中央線に寄る形で右折、左折をするということを意識し慣れました。
大きくルールが違うのは、赤信号でも右折可(もちろん安全が確認できれば)というところでしょうか。
ただ、これも全てが可ではなく、交差点によって“NO TURN ON RED”というサインがある場合は赤信号のときは右折してはだめなど、例外もあるので注意が必要です。
また、日本では踏切では一時停止をするというのがルールですが、こちらは停止せずにそのまま突っ切ります・・・。
これは最初は結構怖かったですね。駐車禁止のサインも注意が必要です。LAにいたときはアパートの駐車場がいっぱいで近くに路駐することもあったのですが、特定の曜日の朝だけ路駐禁止になったりします(道路の清掃が入るため)。
後々見てみるとちゃんとサインに書いてあったのですが、知らずに駐車し、罰金を払ったという苦い思い出もあります。
このように国によって交通ルールも異なりますので、日本と同じ感覚で運転しているとルール違反になったり、事故に繋がったりと危険なので、よく理解しておきましょう。
飲酒について
日本では外で歩きながらビールを・・・ということも当たり前のように見ますが、こちらも海外では気をつけなくてはいけません。
国や州によっては公共の場でお酒は飲んではいけないという法律がありますので、うっかり外でお酒を飲んで罰金・・・ということもありえます。
野外イベントでお酒を飲んでいた現地の若者が警察に捕まっているのも何回か見ました。
年金について
いずれ日本に帰ってくる予定という方の場合、年金の支払いはどうするか? ということも考える必要があります。
国外転出の場合は国民年金の加入義務はなくなりますが、その期間はブランクになりますので、将来的に受給される年金額は少なくなります。
ただし、国外転出期間は任意で加入することはできますので、年金支払い期間にブランクがないようにしたい方は任意加入しておくことも可能です。
また、その国と日本が年金協定を結んでいれば、日本の年金加入期間のみでは日本の被用者年金制度及び国民年金の年金給付の受給資格要件を満たさない場合でも、その国の年金制度の保険期間を算入することができるという制度があります。将来のことも考えより良い方法を選びましょう。
ざっと思いつくことを挙げてみましたが、いずれにしても旅行で海外に行くのと海外で生活することはだいぶ違いますし、長く住むことで良いところも悪いところも見えてきます。
海外で生活してみたけどギャップが大きすぎて耐えられなかった・・・、知らなくて損した! 日本に帰ってきて困った!ということがないように、出来る限り情報収集しておきましょう。
※私が働いたことのある地域を基にした話で、当時(2005年~2010年あたり)と状況と変わっていることもあると思いますので、あくまで参考までにご覧頂けると幸いです
関連記事:「海外駐在コンサルが「浦島太郎」になりがちな理由と、その対処法」
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