【目次】
資格取得はコンサルタント入社への近道になるのか?
コンサルティングファームを目指す方の中には、大学院、ビジネススクールに通い、MBA、中小企業診断士、公認会計士・USCPAなどのビジネス関連の資格取得をした上で、その機会を伺う方も一定数いらっします。
MBAでは経営・ファイナンスなど、それぞれの専門知識を身に付けることができますし、中小企業診断士も国内唯一の経営コンサルティング関連の資格という点では、戦略系、ビジネス・業務系のコンサルタント職の面接において、一定の説得力をもたらすことができます。
今回は、資格ごとにコンサルタントになるために/なってからも役立つのかをまとめました。
ビジネス・戦略系の資格(MBA、中小企業診断士、PMP)
■MBA
戦略系ファームだけでなく、外資系ファームの人事戦略など、論理的思考や経営視点を必要とするファーム・チームではMBAを歓迎要件として設定するケースがあります。また、海外MBAを取得する中で身についた英語力をアピールすることも可能です。
ただし、戦略コンサルでも導入といったプロセスの部分まで支援する時代であり、現場感に基づいた実行支援があらゆるコンサルに求められるようになっています。そういう観点から、あくまでもMBA取得者は歓迎資格であるものの、その資格だけで採用の判断に至るケースは稀です。
また、現場の解決を支援することでリアルなケーススタディをしているコンサルタントは、MBAを取得することで、普段身につかない経営者目線での考え方や、ヒト・モノ・カネに関する体系的な知識を身につけることができます。そのような観点では、将来的に事業会社の経営企画といったポジションを目指す方にもメリットの大きい資格だと言えます。
各ファームではMBAの取得支援制度を設けています。パートナーの推薦や、プレゼンといった選抜がありますが、2年間授業料だけでも1,000万円以上かかるMBAの資格を社費で取得できるチャンスですので、コンサルとしてのキャリアアップや、起業独立を目指す方にはおすすめいたします。
■中小企業診断士
中小企業診断士は、あくまで中小企業に対する経営コンサルティングの資格であるため、対象となるクライアントの多い中小ファームでは求めるケースがあるものの、特にBig4といった外資系ファームや戦略ファームでは歓迎要件としても入らないケースが多く、資格の説得力という意味ではギャップが生じます。大手クライアントをメインにしているファームでは、逆に面接等で指摘を受ける可能性があるので、しっかりと志望動機などでカバーする必要があります。
一方で、大手ファームのコンサルタント曰く「中小企業診断士で身につけた業界の細かい用語がクライアントの経営企画層と話す際に生きた」という声もあり、経営が用いる用語の理解という面では役に立つという声もあります。ただし、コンサルティングにおいて求められるのは現場感に基づいた生の知識や、ソリューション提案であることを抑えておくべきという意見もあります。
関連記事:中小企業に強いコンサルティングファームの「働きがい」と「大企業向けのコンサルとの違い」
■PMP-Project Management Professional
プロジェクトマネジメントに関する国際資格であるPMPに関してはあくまでも「体系的なPMの知識を知っている」という捉え方をされ、「「TOEIC」と「ビジネス英語力」の関係性と同じである」とファームの採用担当者は語っています。
マネジメントスキルを保証するための資格として使われるケースが多く、プロジェクトマネジメントのあるエンジニアや事業会社の方が、ファームへ転職する際の歓迎条件として設定されています。
例:外資系ファーム(公共):情報処理技術者、PMPなどの資格を有していると尚可
フリーコンサルになる際も、プロジェクトマネジメントスキルを保証するための資格として役立ちますので、独立のキャリアを考えている方にもおすすめです。PMP取得の支援制度を有するファームもあります。
会計・財務系の資格(公認会計士・USCPA、簿記)
■公認会計士・USCPA
公認会計士・USCPAなどの専門資格は、会計系コンサルタント職やM&Aアドバイザリー職などファイナンス領域のスペシャリストを目指すのに効果的です。
また、公認会計士の資格を保有している場合、自分たちの提案が会計基準に合致していることを保証するために、入社後いきなりクライアント先とのリレーションに加われるなど、保有していないコンサルタントとスタートの時点で差が付けられることもあるようです。
ただし、会計士としてのキャリアからコンサルティングへのキャリアを歩みたいと思う方の場合、若い頃に監査法人でのアドバイザリー経験など、コンサルティングに近い経験を積むことをおすすめします。優秀な会計士の方でもアドバイザリー経験がなく、年齢で見送られるケースがあります。
また、上記資格が無くとも、連結会計、J-SOXなど、会計領域のいずれかについて豊富な経験があれば面接まで進める可能性があります。
■簿記
IT系のコンサルティングファームの人事に「採用において重視する資格」をお聞きしたところ、「新卒入社社員に関しては全員に「簿記2級」を取得させていました」との回答をいただきました。※内定期間中に会社で研修をして、簿記2級が取れてから入社という形式。
また、中途入社の方は必須ではありませんが、プロパー全員が簿記2級を獲得していることもあり、同等の資格を取得しないとキャリアアップは望めないとのことです。
また、取得させる理由ですが、簿記2級から工業簿記が入り、会計系のクライアントを持つITコンサルに必須の「原価計算」が試験項目に入ってくるためとのことでした。
同じく外資系コンサルティングファームの会計チームに在籍していたコンサルタントにお聞きしたところ、このファンクションでキャリアを歩むために、簿記2級は必須とのことです。会計チームへの入社や、早いキャッチアップのためにも、事前に簿記2級以上の取得はメリットが大きいと言えそうです。
英語の資格(TOEIC、英検)
■TOEIC、英検など
また、採用そして入社後も効果的な資格として挙げられるのが、英語力になります。特に昨今のプロジェクトはグローバル化の傾向があり、英語力が堪能な人材は魅力的と評価されます。英語力を計る資格としては、TOEIC、TOEFL、英検などがあります。
TOEICの場合、英語を採用の基準に含むチームの場合、700点以上が第一条件となるケースが大半であり、その点数でスクリーニングされます。さらに、グローバル案件を手掛けるチームでは800点以上はどのチームにおいても求める基準でしょうか。そして、900点以上の場合は入社後も現地駐在などグローバルへのキャリアパスが開けてくるようです。ただし、TOEICはあくまでも英語の知識を問うものであり、実際TOEIC900点でも英会話ができない方は数多くいます。採用においてはビジネスでの英語使用経験と併せてアピールすることをおすすめします。
また、英検も英語のスキルを保証する資格として役立ちますが、懸念点としては英検の場合は受験している時期が学生時代など昔のことが多く、取得からの年数が長い場合は再度の受験をおすすめいたします。
関連記事:【実例で見る】「未経験からコンサル」への転職に必要な英語力やTOEICの点数は?
IT・セキュリティ系の資格(CIA・CISA、SAP、CISSP)
■CIA(公認内部監査人)・CISA(公認情報システム監査人)
内部監査の資格であるCIA(公認内部監査人)、CISA(公認情報システム監査人)。内部監査職やリスクアドバイザリー分野のキャリアを目指す会計士に推奨される資格ですが、コンサルティングファームにおいてもサイバーセキュリティやリスク関連のアドバイザリーを行うチームでは加点ポイントとして上記の資格を挙げています。
また、事業会社の内部監査部の採用要件では、歓迎資格として公認会計士と並んでCISAの資格を挙げるケースもあり、ポストコンサルでも採用に有利に働く資格と言えそうです。
さらに、公共系の案件ではシステム監査人の資格がアサイン条件となるケースもあります。
また、ファームによっては「CISAの場合は資格受験合格後に、過去2回分までの受験費用を支払う。また、以降の会員年会費や資格取得継続のためのCPE支援を行う」ケースもあります。将来的に事業会社の内部監査部やリスク部門を目指す方は、ファーム在籍時に上記の支援制度を活用することをおすすめします。
■SAP認定資格
日本で2,000社以上が導入しているSAP ERPの保守サポートが2025年で終了する「2025年問題」の影響もあり、各ファームはSAPに関するプロジェクトは受託できているものの、人数不足で十分にデリバリーできない状況が続いているとのこと。
それだけに、現状ではSAPの導入・開発に関わってきた人材はまさに「引く手あまた」の状態です。コンサルティングファームに限らず事業会社でSAPの導入プロジェクトに関わるなど、パッケージのセールスではなく導入経験もある方は、コンサルでもSAPの導入コンサルとしてのキャリアも築けます。
また、フリーランスでのSAP人材ニーズはコンサルよりも高く、年収もファーム時代の3倍以上というケースもあります。SAP認定資格の取得には百万以上の金額がかかりますが、「全然ペイできる」といった声もあります。
ただし、2025年以降は保守・点検の業務が増えることが予想されます。引き続き案件はあるとしても、その数が少なくなるので、SAPコンサルのキャリアを歩むには一度立ち止まって検討されることをおすすめします。
関連記事:【20代・30代・40代別】SAPコンサルは今、キャリアチェンジすべきか否か?
■CISSP®- Certified Information Systems Security Professional
国際的に認められた情報セキュリティ・プロフェッショナル認証資格になります。
官公庁系のセキュリティ案件ではRFPに「CISSP保持者:何人以上が在籍している会社」という様に、条件が出されるケースもある為、特にセキュリティやITソリューションを手掛けるチームの採用においてとても引き合いの強い資格になっています。
ただし、資格評価の分岐点は30歳まで。その後は実務経験が重視される
特に20代のポテンシャル採用の場合は、こうした専門知識を持ち合わせていることがプラスに作用しますが、30歳過ぎたころから、資格だけでは知識を有しているにすぎないと指摘を受ける可能性が高まり、より実務経験が問われるようになります。
この辺りはどの業界でも同じでしょうか。資格取得とバランスをとりつつできる限り親和性のある実践キャリアを積んでいたいところです。
また、キャリアアップが第一の目的であれば、資格を取得する前に、コンサルティングファーム内で”周りがあまり行っていない”自己研鑽を図り、キャリアに繋げるという手段もあります。ぜひ下記の記事もご参考ください。
参考:コンサルタントの自己研鑽。何かいい資格はないか?と考える前に取り組むべきこと
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今回の記事では、コンサルタントになるのに(なってからも)役立つ資格についてお伝えしました。
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