コンサルティングファームへの転職を希望している方から、
「シンクタンクへの転職にも関心があるのですが、案件はありますか?」
というご相談をいただくことがあります。
もちろん案件はあります。
しかし実は、
「シンクタンクが業界内でどのような立ち位置で、どのような業務をおこなっているのか」
を理解している方は少数です。
シンクタンクとコンサルティングファームを混同している方も一定数います。
両者の違いを理解できなければ、向き不向きを判断できず、転職後のミスマッチが起きる可能性があります。
そこで今回は、両者の違いを説明するため、シンクタンクに関心のある方は参考になさってください。
【目次】
- コンサルティングファームとシンクタンクの違い:コンサルは課題解決、シンクタンクは調査・研究が目的
- 日本国内の主なシンクタンク(民間系~政府系)
- シンクタンクで実現できるキャリアは「大きな社会問題の解決」
- シンクタンクとコンサルティングファームの年収差
- シンクタンクとコンサルティングファームの評価制度や採用の違い
- 「一つの専門分野に一生を捧げる人」はシンクタンクに向いている
- デリバリーに特化したいコンサルタントへのキャリアパスとしてのシンクタンク
コンサルティングファームとシンクタンクの違い:コンサルは課題解決、シンクタンクは調査・研究が目的
コンサルティングファームとシンクタンクの大きく異なる点は、組織としての目的です。
コンサルティングファームは「クライアントの課題を解決する」ことを目的としています。
一方シンクタンク(英語ではthink tank)は、専門家が構成する頭脳集団を意味し、「社会や経済、政治の調査・分析・研究をおこなう」ことが目的です。
コンサルティングファームは実行に伴うサポートまで行うのに対し、シンクタンクはあくまでリサーチをメインに戦略を提示するところまでが役割と言えます。
場合によってはシンクタンクも、解決策の提示などもおこないますが、機能としては研究機関と言い換えても間違いではありません。海外では19世紀後半から20世紀初頭に生まれました。
日本国内の主なシンクタンク(民間系~政府系)
日本国内の代表的なシンクタンクを紹介します。
いずれも株式会社野村総合研究所、株式会社三菱総合研究所、日本総合研究所株式会社など「総合研究所」と名付けられるケースが多いです。
また多くの場合、政府や金融機関、日本の大手企業など母体となっている組織が存在します。
その組織のための調査案件などを扱うケースが多いのもシンクタンクの特徴です。
【政府系シンクタンク】
政府系では官公庁により発足され、日本の経済や政策など、日本が抱える問題に対する調査・提言を行います。
【金融系】
- 日本経済研究所(日本政策投資銀行)
- 三菱UFJリサーチ&コンサルティング(三菱UFJフィナンシャル・グループ)
- 日本総合研究所(三井住友フィナンシャルグループ)
地方銀行にもシンクタンクを設けている会社が数多くあります。浜銀総合研究所(横浜銀行)など。
【証券会社系】
- 野村総合研究所(野村グループ)
- 大和総研(大和証券グループ)
【企業系】
- 三菱総合研究所(三菱グループ)
- NTTデータ経営研究所(NTTグループ)
日本初の民間シンクタンクと言われる株式会社野村総合研究所が設立されたのは1965年です。
今では大阪など東京以外でもサービスを広げております。
シンクタンクで実現できるキャリアは「大きな社会問題の解決」
シンクタンクの中では、主に2種類のキャリアが考えられます。
リサーチ・研究・市場の予測などをおこなう「研究員」と、解決策の提示をミッションとする「コンサルタント」です。
前者は言わずもがな、シンクタンクのメイン機能ですね。
後者はコンサルティングファームと同様のサービスと考えて問題ありません。
最近は各シンクタンクでコンサルティング部隊の強化が進んでいます。
対応できる案件規模に限界はあるものの、大手コンサルティングファームと遜色ないサービスを提供できるシンクタンクも出てきました。
異なるのは扱うテーマでしょうか。シンクタンクでは「大きな社会問題」を相手にしていることが多い点が大きな違いです。
具体的には、
・排出権取引の問題
・少子高齢化の問題
・地域医療の問題
など。
もちろん通常のコンサルティングファームと同様の案件も扱いますが、主流ではありません。
研究開発がメイン機能のため、ファームと比較して「長期的かつ社会的な視野に立ったコンサルティング」が強みでしょうか。
また直近では、ITやセキュリティの案件も増えています。
(案件例)
化粧品メーカーにおけるIoT技術を使ったプロジェクト。
利用者の肌の状態をリアルタイムで分析して最適な乳液を提供するソリューションの開発・導入など。
大手シンクタンクにはSIerの機能も持つケースが多いです。
中には社員のケイパビリティが「コンサルティング:ITソリューション=1:9」といったシンクタンクもあります。
したがって、SEなどエンジニアの人材も直近採用熱が高まっている状況です。
シンクタンクとコンサルティングファームの年収差
シンクタンクとコンサルティングファーム、それぞれの年収を比較してみます。
シンクタンクもコンサルティングファームと同様に、
・コンサルタント
・シニアコンサルタント
・マネージャー
などのタイトルがあります。
コンサルタントのタイトルまではコンサルティングファームと同じく、年収の上限が800万円前後のシンクタンクが多いとされています。
一方シニアコンサルタント以上のタイトルになると、同タイトルでもコンサルタントよりシンクタンクの方が年収で50万~100万ダウンするケースが多いです。
さらにタイトルが上がるごとに、年収差に開きが出る傾向があります。
プリンシパルクラスになると、コンサルタントよりシンクタンクの方は年収が500万~1,000万ほど低くなることもあります。年収がすべてではありませんが、収入面を重視する方は、コンサルタントよりシンクタンクのキャリアで不満を抱く可能性があるかもしれません。
シンクタンクとコンサルティングファームの評価制度や採用の違い
また、コンサルティングファームとシンクタンクの特徴として評価制度や社風の違いが挙げられます。
一概には言えませんが、シンクタンクでは中長期的なキャリアを築くことを前提としたキャリアパスを徹底している会社も多いです。
入社された方の感想では、年収の上がり方もいわゆる「年功序列」に近い制度だという声もあります。
この傾向は採用にも影響しており、シンクタンクでは一つの会社で長く働ける人材を求める傾向にあるのです。
一方でコンサルティングファームは、給料やタイトルは完全実力主義の会社が多いとされています。
研修制度やワークライフバランスなど、成長する環境づくりに配慮しつつ、何よりも早く結果を出すことを重視します。
一つの会社で着実にコンサルタントとして成長したい方はシンクタンク。
実力主義の中で自分の評価を試し、評価を上げてゆきたい方はコンサルティングファームに向いているのです。
「一つの専門分野に一生を捧げる人」はシンクタンクに向いている
もう一つシンクタンクに向いている人の特徴を挙げておきます。
それは「一つの専門分野に一生を捧げる覚悟がある人」です。
専門性が重視されるため、長期的な視点で社会を分析したい人や、自分の専門性を活かして仕事をしたい人が向いています。
書籍の執筆やレポートの公開などを積極的におこなえるところも利点ですね。
先述した通り、大きな社会問題に向き合うのも特徴であるため、社会貢献度の高い仕事を目指している人もシンクタンクでやりがいを感じられるはずです。
コンサルタントのようにクライアント企業の課題を解決するのでは物足りない場合、シンクタンクの方が親和性が高い可能性があります。
デリバリーに特化したいコンサルタントへのキャリアパスとしてのシンクタンク
適性があるというよりも、「デリバリーに特化したい」と考えるコンサルであれば、1つのキャリアパスとしてシンクタンクを検討しても良いかもしれません。
金融系シンクタンクの特徴は、親会社である金融機関の営業が案件を獲得し、シンクタンクへ紹介するパターンがあることです。
通常コンサルティングファームではMアップ以上のタイトルにセリングの責務が付いてきます。
一方シンクタンクの中には、同じタイトルでもセリングをあまり求められないケースも多いです。
セリングが苦手な方は、シンクタンクを視野に入れても良いですね。
以下の記事も参考に、キャリアプランを作ってみてください。
=================
>シンクタンクに関する記事
「給料が下がる以上にセリングが辛い」シニマネはどう生き残ればいいのか?
https://www.axc.ne.jp/column/media/careertips/smnotselling
シンクタンクの求人例・よくある転職理由・年収・選考内容まとめ【保存版】
https://www.axc.ne.jp/media/careertips/thinktank
=================
今回はシンクタンクとコンサルティングファームの違いについて、志向性や年収、働く環境などの面からお伝えしました。
キャリアでお悩みの方は、ぜひアクシスコンサルティングにご相談ください。
アクシスコンサルティングへの
新規会員登録(無料)
未経験からコンサル、ファーム to ファーム、事業会社まで。ご希望のキャリアパスに応じてご支援いたします。また、転職成功事例や、経営層への独自取材による企業動向等、ご要望に応じた情報をご提供いたします。
(転職相談は対面だけでなく、オンラインやお電話でも可能です)