【目次】
変わりゆく物流のカタチ
昨今、日々の買い物にネット販売を利用することが当たり前となってきたことで、日本の物流が大きく変わってきています。
経済産業省の調べによると、2016年のネット販売における取引額はBtoB市場で291兆円(前年比1.3%増)。BtoC市場では15.1兆円(前年比9.9%増)となっています。特にBtoC市場の成長率は著しく、市場規模はここ6年で2倍以上の成長を見せています。
更に、近年ではネットオークションやフリマアプリといったCtoC(個人間)取引が新たな市場として確立してきたことで、ネット販売市場の更なる成長は疑う余地がありません。(※2016年のネットオークションのCtoC市場:約3,500億円。 同フリマアプリ市場:約3,000億円)1)http://www.meti.go.jp/press/2017/04/20170424001/20170424001.html
ネット販売の拡大によって、我々消費者目線では便利な生活が手に入るようになりましたが、これら『モノの流れ』を支える物流企業各社では、『輸送量の増加』×『輸送頻度の増加』×『輸送エリアの拡大(海外含む)』により、人員不足や輸送・保管コスト増など、時代の変化への対応が急務となってきています。(運送料が値上げとなった会社もありますね)
今回は、この『モノの流れ』を支えるSCM(Supply Chain Management)にスポットを当て、トレンドや求められる人材像について考えていきたいと思います。
SCMとは? その中身とトレンドに迫る
SCM(Supply Chain Management)は、一般的に以下のように工程別で分けることができます。
■需給管理
製品の販売数である需要と生産数である供給を最適にコントロール(精緻な需要予測とこれに基づく販売計画立案など)
■調達管理
製品生産のための原材料の調達(適正な原材料数の管理・調達先の最適化によるコスト削減など)
■生産管理
生産計画の立案と生産工程の管理(生産効率化に伴う生産リードタイムの短縮、品質向上など)
■出荷管理
製品の顧客への配送(誤発送の防止、配送コストの削減など)
■在庫管理
各種原材料・半製品・製品の保管(保管コストの削減・適正在庫数の管理による資金繰り改善など)
■原価管理
製品原価の算定と管理(原価低減プランの立案など)
2)EYアドバイザリー社著 『サプライチェーンマネジメントの理論と実践 』
このように、一言にSCMといってもその範囲は広く、これら一つひとつの業務を“点”ではなく“線”としてつなぐことで初めて『あるべきモノの流れ(=SCM)』が実現します。
それでは、SCMにおける直近のトレンドとはどのようなものなのでしょうか?以下の3つの視点で見ていきましょう。
(1)企業への意識調査
外資コンサルティングファームであるデロイトトーマツコンサルティング合同会社による企業のCPO(最高調達責任者)への意識調査では、以下のようなデータが公開されています。
◆Newテクノロジー
全体の75%がNewテクノロジーの活用によって調達部門の役割が拡大すると回答。ITは今後も調達業務の変革の立役者になるという期待が高い。
◆人材
リーダーシップと並んで、昨今特に求められているのが、上記のNewテクノロジーを知り、経営に生かすことのできるスキル。これらテクノロジーの登場により、過去のスキルセットのままでは未来のニーズを実現することはできない。3)https://www2.deloitte.com/jp/ja/pages/operations/articles/scm/cpo-survey2017.html
(2)Newテクノロジーの活用事例
上記のNewテクノロジーによる革新は、SCM領域に限らず重要性が謳われていますね。SCMの分野では、IoTやAIといったキーワードは馴染みがあるかと思いますが、他にもFintechの仮想通貨の基礎技術として知られる「ブロックチェーン」技術も、実はSCM改革にも活用されています。
ヨーロッパ3大港のひとつであるアントワープでは、コンテナ輸送業界の業績悪化が常態化しており、コンテナ船の空きスペースをいかに共有し、コストカットを図るかが急務となっていました。ここにブロックチェーン(分散型台帳技術)を活用することで、各コンテナの積荷状況へのアクセス・確認が容易になり、コストカットに繋がる仕組み作りが進んでいます。4)http://www.coindesk.com/port-call-blockchains-impact-supply-chains-broader-seems/
(3)協業によるサービス拡大
また、物流企業にとって自社の持つ知識や経験・リソースだけで上記トレンドや今後のマーケット変化に対応することは難しいことから、経営改革の専門家であるコンサルティングファームへ依頼をするケースが増えています。これに伴い、コンサルティングファームでは多様化するクライアントニーズに対応すべく、システムベンダーなどと協業する事例が増えてきています。
外資コンサルティングファームのPwCコンサルティング合同会社では、株式会社フレクトとグローバルロジスティクス領域にて協業を開始しました。フレクト社が開発した車両管理アプリケーションを活用することで、車両の速度、走行距離、燃費といった車両情報と、GPSセンサーで取得する位置情報をリアルタイムに把握。蓄積された情報をもとに、配送ルートの最適化や到着時刻の予測、取引先への位置情報共有などを可能にしています。5)http://www.e-logit.com/loginews/2017:052209.php
マーケットリーダーの条件とは?
これまで見てきた通り、物流業界ではネット販売の拡大に伴う『輸送量の増加』×『輸送頻度の増加』×『輸送エリアの拡大(海外含む)』によりその在り方が大きく変わってきており、それはつまり、求められるスキル・人材が変わりゆくことを意味しています。
従来の「プロダクトアウト型の製造・物流モデル」ではなく、マーケットに立脚した新たなSCMモデルを構築する力を持つ人材となれれば、市場価値が高く評価されるはずです。
それでは、SCM領域の求人には具体的にどのようなものがあるのでしょうか?最新の求人動向を基に、特に採用熱の高い求人ニーズを以下にまとめてみます。
■大手情報機器メーカー/新規サービス企画責任者
IoTデバイスやプラットフォームビジネス等を組み合わせ、製造業の社会的課題解決に繋がる新規サービスを企画・開発する
■大手Webサービス企業/物流・在庫戦略担当
自社の運営するネット通販サイトにおける特定の商品カテゴリーの担当者として、販売データに基づく需給予測・納品リードタイムの短縮・在庫回転率の向上に取り組む。
■ロボットメーカー/グローバルSCMマネージャー(上場大手企業の次世代投資事業)
新規事業領域であるロボット事業のSCMビジネスプロセス全体の企画立案・構築・運用。
■機械製品メーカー/オペレーション改革・海外展開メンバー
日本で確立された物流オペレーションをアジア諸ヵ国へ展開・確立する。
■外資コンサルティングファーム/SCMコンサルタント
自社の持つグローバルネットワーク・最新のテクノロジーを駆使し、サプライチェーン全体に対する戦略立案~業務改革・IT導入までを一気通貫に支援。
■製造業向けコンサルティングファーム/経営コンサルタント
製造業に特化し、主に物流現場の業務改善に従事。
■事業再生ファーム/SCM・物流コンサルタント
事業再生の実行支援の一環として、クライアント企業の経営層に対し物流・SCM領域の実行計画策定、事業構築サポート等を実施。 …etc
上記の通り、現在のトレンドは『サービス企画・戦略立案』や『業務改革』など、いずれも『変革』を推し進めるポジションとなっています。ビジネスモデルの変革期である今こそ、未来のマーケットリーダーとしてのポジションを取りに行くチャンスではないでしょうか?
SCM領域に携わる方は、ご自身のキャリアビジョンを今一度見つめ直してみてください。このコラムが、そのきっかけとなれば幸いです。
引用
↑1 | http://www.meti.go.jp/press/2017/04/20170424001/20170424001.html |
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↑2 | EYアドバイザリー社著 『サプライチェーンマネジメントの理論と実践 』 |
↑3 | https://www2.deloitte.com/jp/ja/pages/operations/articles/scm/cpo-survey2017.html |
↑4 | http://www.coindesk.com/port-call-blockchains-impact-supply-chains-broader-seems/ |
↑5 | http://www.e-logit.com/loginews/2017:052209.php |
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