東京大学を卒業後、海外大学院に挑戦したY氏。帰国後、スタート地点に選んだのは経営戦略コンサルティングの世界だった。
その後、マネージャー昇進を前に、国際開発の世界へ転身。決断の裏には一体どのような考えがあったのか。当時の背景を伺った。
大手戦略コンサルファームからキャリアをスタート
ーYさんは東京大学をご卒業後、就職はされずに海外の大学院へ進学されました。当時の経緯からお伺いします。
物心付いた頃から、極度の貧困や戦争と言った日本社会の外に広がる地球規模の課題に興味があり、大学卒業後は海外の大学院にて国際関係学を修めました。ただ、希望していた国際開発分野での仕事に就くには実務経験が求められることもあり、卒業後は帰国し、まず民間企業に就職することにしました。
ーその後大手戦略コンサルファームへ就職されましたが、どのような考えで決断されたのでしょう。
まずは、不均衡であっても現在の世の中を形作っている大きな流れ・力学を学べる環境が良いと考えました。
業種としてはシンクタンク、経営コンサルティングファームなどを候補に挙げ、選考を進める中で一番自分と相性が良いと感じた大手コンサルファームの戦略グループに就職を決めました。
ー戦略コンサル時代はどのようなお仕事をされていたのでしょうか。
戦略策定から実行支援までを幅広く担当し、比較的クライアントに近い場所で仕事をさせていただきました。
最終的には8年間務めることになる経営コンサルティング業界ですが、最初は課題設定から自分で道筋をつけて解決へ持っていくという思考方法についていくのに必死でした。
ー入社初期からスキルを習得するまで、どのように印象が変化されましたか。
翻ってみると、コンサルとしてのスキルセット習得には4~5年を要したと思います。
初めは向いていないかもしれない、と思うことも多かったのですが、今こうして戦略コンサルタント時代を振り返ると、「回答のない課題に何かしら答えを導く」という姿勢と思考法が身に着き、仕事をする上で大きな資産を得られたと思います。またスキル以上に、優れた人の言葉(価値観や哲学)に触れることが人生を豊かにするために大事だと思うのですが、たくさんの言葉との出会いを与えてくれたのも前の職場でした。
ー印象に残っているプロジェクトはありますか。
ひとつ選ぶのは大変ですが、一番衝撃を受けたのは大手企業のグローバルロールアウトプロジェクトです。
活動は主に自国内で行ったのですが、チーム構成がまさに地球規模と言いますか、自分のボスはインド、ボスのボスはアメリカにいて、その他にも韓国、シンガポール、アメリカ、ヨーロッパなどから同じような担当が集まって組織されていました。仕事の仕方に対する要求や姿勢も異なり、「文化の違う者と一緒に仕事をする、グローバルで仕事をするとはこういうことか」という実感がありました。
マネージャーへ昇進したタイミングで「自分の目指すべきキャリアが今の延長線上にあるのか?」を自問
ーコンサルタントとして順調にキャリアを積まれていたYさんですが、転職はいつごろから考え始めたのでしょう。
順調であったかはさて置き(笑)、間違いなく前職では周りの人に恵まれていました。
私のキャリア形成に、私以上に熱く思って意見してくれる人がいるそんな環境で、今でもその社風はとても魅力的なものだと思います。
しかし、いざマネージャーへ昇進して徐々にコンサルティングの現場から離れていく、と言う図が見えてくる時期になると、「自分の目指すべきキャリアが今の延長線上にあるのか?」という疑問をいよいよ強く感じるようになってきました。
私の場合はそれが6~7年目あたりでした。
ー転職について具体的にどのように進めていったのでしょうか。
当時は、『長年身を置いたために、今の会社の環境に慣れてしまったのか』、それとも『戦略コンサルと言う職種自体に自分の思い描くキャリアパスがないのか』が明確ではありませんでした。
そこでひとまず外に目を向けてみようと思い、いくつかのコンサルティングファームを受けることから転職活動を始めることにしました。
その後、企業の方とお話しながら自問していく過程で、戦略コンサルタントとしてのキャリアパスにはっきりとしたビジョンを持てていないことに気がついたんです。
自分の原点に立ち返り、転職活動を開始
ー戦略コンサルから卒業することを決めた後、次の領域をどこにするかはどのように決めたのでしょうか。
経営コンサルを飛び出してどの分野にいくかと考えた時、すぐに「国際開発」のキーワードが頭に浮かびました。
冒頭でもお話しましたが、実は学生の頃から、一番興味があったのは発展途上国で活躍する仕事だったんです。
また、同時に自分のなかにある「天邪鬼的フロンティアスピリッツ」思考に気付いたのもこの時期でした。恵まれた環境にはあまり拘りがなく、皆から基本ダメだろうと思われている世界でこそ、一山当ててやりたいと思えるんです(笑)
戦略コンサルでのキャリアも一段落したこのタイミングで、自分の原点に立ち返り、自分が今以上に未来にバリューを感じる領域へ行こうと決断しました。
ー領域を決めてからは、どのように行動されましたか。
国際開発系コンサルに焦点を当て、最終的に5社程度に絞りました。
現場寄りの企業・シンクタンク寄りの企業と特徴が分かれる中で、国際開発の現場により広く携われる2社に段々と惹かれていき、最終的には現在所属する企業が自分の思考にフィットするなと感じました。
ー思考の相性以外に、入社の決め手はありましたか。
途上国の現場に近いところで、経済・社会構造の変革に携われる、という点ですね。
私の脳内イメージを言葉にすると、国際開発とは『冷たい部屋を暖める』と言いますか。
例えば「部屋を暖かくしよう」と思ったとき、上についたエアコンから出る熱風の温度をどんどん上げていっても、既に暖かい上層の空気は循環しながらさらに熱くなっていく一方、床に近い部分に滞留した冷たい空気はほとんどそのままですよね。
それは果たして部屋を暖めたことになっているのか、そんな矛盾が起きている時、もっと床の近くで、熱はそれほど発さなくても強力にかき混ぜる“扇風機”のような、途上国の空気を変える存在になりたいと思ったんです。
とにかく現場に立って物事を進める、ダイナミクスのある場所にいたいという想いが最終的には決め手になりましたね。
年収4割減での転職を決断。転職後は国際開発の世界で活躍
ー一方で、年収が下がるということに対してご自身はどう受け止めていらしたのでしょう。
そうですね。正直お話してしまうと、年収は半分とは言わないまでもいくらか下がり、やはり不安な気持ちもゼロではありませんでした。
ただ、もともとそういう発展途上の世界の仕事なのですから、広がる可能性の方を信じて「なんとかなるだろう」とポジティブにとらえ、そこまで気にしていなかったというのが正直なところです。
現職の方のお話などを伺いながらも、万が一の時にはコンサル給与以外の手段で稼げばいいと考えていました。
ーご家族の反応はいかがでしたか?
実は、転職に関してはほぼ私の一存で決断していました。
転職を決めた後に「こういう訳で決めたからついてきてくれ」という事後報告的な説明に同意を得ました。
その時は「きちんと自分の熱意を説明すれば、自分の価値観に共感してもらえるだろう」という思いでいました。
ー当時の大きな決断を振り返り、現在の心境はいかがですか?
はっきり心を決めていたのですが、実際には転職後じわじわと収入面での格差も実感しています。
家庭があるので子供の教育費用なども改めて計画しなければならず、年収が下がるとはこういうことかと考えさせられました。
ただ、もしあの時の自分に助言をするとすれば、「計画をしっかり立てたほうがいいのは確かだが、飛び出す勢いも同じく大切である」ということです。
もしあまりに細かく考え過ぎていたら、踏み切れなかった可能性はあります。
周囲の反応の中には驚きもありましたが、理解を示してくれた家族の暖かいサポートのおかげで現在は充実した仕事ができています。
家族と離れて中長期の海外出張がある場合などもちろん不安はありますし、加えて何故そんな恵まれた職場を捨ててまで、という反応もあるのも確かです。
しかし、国際開発事業にはそれ以上にチャンスや可能性があふれているという、転職しなければ知ることのできなかった事実を日々目の当たりにしています。
ー現職では具体的にどのような業務を担当されているのでしょうか。
現在の具体的な業務内容は、主にドナーとなる国際開発機関や現地政府の委託を受けて現地に行き、調査や技術協力に従事することが主な仕事です。
もともと、現場で物事を推進する「技術協力」に一番関心あったので、とてもやりがいを感じています。
その他に日本企業の海外事業展開のサポートも行っています。
どちらも実際に社会に変化をもたらしていく職務なので、入社を決意した時の「現場で物事を進めたい、ダイナミクスを感じたい」という願いは叶っていますね。
ー現在のお仕事に、戦略コンサルでのスキルが生かされた部分はありますか。
物事を体系的に考える力でしょうか。
何かを大局的に俯瞰して見極める視点は、常に役に立っています。
私自身、戦略コンサルファームを出る前は自分の能力にさほど自信があるわけではありませんでした。
優秀な人たちの中で、自分が特別光っているとは思わなかったんです。
ただ、一旦その世界を出てみてから、「戦略コンサルでの経験が身になっているな」と思う場面は多々あります。
ーYさんのように、転職で他業界を目指す方も多くいらっしゃると思います。同じような思いを抱えた方へメッセージをお願いします。
直前の答えとやや被るのですが、私の場合慣れた環境を出て初めて自分のスキルを客観的に評価できる機会に恵まれ、その結果自信が生まれました。
こういう経験から、今いる場所でトップではなくても、物おじせず一度枠から出てみたらいいのではないかと思います。
まず今のキャリアに疑問が生じたら、その違和感の原因が職場の環境や専門性なのか、それとも業界自体なのかというところに焦点を当ててみると良いと思います。
転職をするのにマネージャーになるまで待つ必要はありませんし、同じような悩みの方はある種の楽観性を持って挑戦し、不安材料には将来的な期限を決めておくというのも手かもしれませんね。
私の場合は「フロンティアを切り拓きたい」という想いが意思決定に深くかかわっていましたが、ぜひ無理のない程度に挑戦をしてご自身の軸となる思考を発見してみては、と思います。
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