金融の営業職からキャリアをスタートし、SE未経験ながらベンチャー企業で活躍。その後大手SIerを経て、NTTデータ経営研究所へマネージャー職として転職を成功されたケース。様々な現場を経験する中で独自に養った「調整力」を中心に、キャリアチャンジおよびキャリアアップの秘訣を伺いました。
コミュニケーションへの興味から「営業職」でキャリアをスタート
―大学卒業後、金融系営業職でキャリアをスタートされたとのことですが、どのような思いで1社目を選ばれたのですか。
学生時代に新聞奨学生として働いている内に、自然とコミュニケーションに対して興味を覚え、面白みを感じました。また、同時に自分なりの営業活動が直接契約につながる喜びを経験しました。
そこで、人と接することができ、且つせっかくやるのであれば難易度の高い職種ということで金融系の営業職を選びました。
金融業に関しては全くの未経験で、多忙なイメージもあったため当時は周りにも反対されましたが、「反対されるならやってやろう」という挑戦心もあり決断しました。
社員数名規模のベンチャー企業に未経験SEとして転職
―その後、社員数名規模のベンチャー企業に未経験SEとして転職されます。この時はキャリアについてどのように考えての転換だったのでしょうか。
金融業界独特の制約の厳しさもあり、何となく転職を考えはじめたところに、思いがけず何社かのお客様からSEへお誘いいただいたのがきっかけです。
営業職には変わらず魅力を感じていましたが、SEの「手に職をつける」という点に今までにない面白みを感じ、起業したばかりで社員数名というベンチャー企業に就職をしました。
また、当初は起業も視野に入れていたため、経営のノウハウも得ることができるのではという思いでした。
―入社されてから、どのようにSE職をキャッチアップされましたか。
まず、入社して1年半は下地作りとして上司からマンツーマンの指導を受けつつ、独学での知識習得に務めました。
しかし、いくらインプットの量が増えても、自分の考えを理解してもらうアウトプットの方がはるかに難しいものでした。質問事項をノートにまとめてから上司に確認するようにしていましたが、質問しては指摘されることの繰り返しでした。
―特に苦労されたことはありますか。
SE独特の抽象的な会話に苦労しました。
はじめは「概念的な話」を論理的な理解に落とし込むというのが特に難しかったですね。
最初は大変な事も多かったですが、ここで養った「論理的思考」のベースがその後に活きていると感じています。
―キャッチアップ後はどのようなキャリアステップを歩んだのでしょうか。
長らく上司の指導の下仕事をしていましたが、入社して2~3年目から責任者として開発を担当することになり、自分なりの改善策や自発的な意見を発信できるようになりました。
小規模ですがPMも担当するようになり、開発の「効率化」を考えて部下とのコミュニケーションを工夫したり、仕事内容をきちんと理解し、楽しめるようになってきたのもこの時期でした。
営業の経験を買われ、社内最年少の30歳で営業課長に抜擢
―SEを経て、2社目に転職し営業職に復帰されます。どのような経緯だったのでしょうか。
これまでの経験を活かし、プロジェクトの一員として案件を回す経験を積み重ねようという気持ちで、転職を決意しました。
転職先はもともと製造業の仕事がメインだったのですが元金融系の営業職でシステムの知識もあるという経歴に白羽の矢が立ち、2年目で営業部の管理職を任されることになりました。
―抜擢人事にプレッシャーや、営業職への復帰に違和感などはありませんでしたか。
管理職に抜擢されたプレッシャーはあまりなかったと思います。
営業利益が最下位の担当課を、社内で一、二番手の営業利益をあげられる課に成長させることができ、手応えを感じていました。
また、受託や提案などに幅広く携わり、オールラウンダーとして経営者の目線を追いながらタスクの幅や開拓先も自らの裁量で広げられる環境だったため、営業職への復帰も違和感はありませんでした。
思い通りに数字を作ることができ、職務のブラッシュアップも自由にできたためとてもやりがいがありました。
大規模開発の経験を求めて大手へ
―順調にステップを踏まれる中、次へのステップを意識されたきっかけはなんだったのでしょうか。
当時は10名規模のプロジェクトが主だったのですが、提案営業をしていく中で「大規模開発の経験が欲しい」という想いが芽生えたのが最初のきっかけでした。
部下からキャリアプランについての相談を受けた際、自分自身経験したことのないキャリアについて説明することもありジレンマを感じていたこともきっかけの一つでした。
さらに技術力を高め、大きなプロジェクトの開発管理に携わりたいという希望が大きくなったタイミングで再度転職を決意しました。
―転職先に大手SIerを選ばれます。入社して、転職当時の希望は叶えられましたか。
転職先は大規模な保険などのシステムを取り扱う会社だったため、金融時代の知識を活かし、営業支援システムや統合システム開発などに従事していました。
最初に担当したプロジェクトは1年で100人月規模程度でしたが、次のプロジェクトは半年で70人月、その後いきなり320人月と飛躍的に規模が膨らんでいきました。
最終的には入社から3年目で420人月の海外案件を担当することになり、意図していた進度とはやや異なりましたが、希望自体は達成できました。
そこではマルチベンダープロジェクトのPMOとしてクライアント、ベンダー、自社の架け橋として管理を行っており、自社のプロジェクトメンバーへの指示も含めて、プログラミング、システムテスト、クライアントとのコミュニケーションなど、今までの経験をフルに活かすことができました。
―PMOとしての順調なステップアップですが、この頃はご自身の強みについてどのようにお考えでしたか。
他ベンダーと相互協力体制を整えたりする中で、規模が変わっても通用する自分の強みは「調整力」であるという自覚はありました。
特に、ユーザーと開発の橋渡しができるという部分が強みになっていたと感じます。
もちろん全てをスムーズに成功させられる訳ではないし、社内の調整で板挟みになることもありましたが、自分の判断でどこまでやれるかを考え改善を重ねることで不思議といつも壁を突破できていました。
経営者を巻き込める上流に惹かれ、コンサルタントへの転職
―様々なご経験を経て、現職のコンサルタントへキャリアチェンジを決意された経緯について教えてください。
漠然と次のキャリアプランについて思案していた時、戦略コンサルタントやITコンサルタントとして活躍する知人の話を聞く機会を通して、コンサルタントという業種への興味が湧きました。
自分の領域を広げていけそうだという感覚と、「経営者も巻き込める、まだ経験したことのない面白み」に惹かれ転身を決意し、転職活動を開始しました。
―現職のNTTデータ経営研究所へ入社される決め手はなんだったのでしょうか。
まず、システム開発を軸に、グランドデザインやIT戦略の作成など、もっと上流に関わりたいという希望がありました。
NTTデータ経営研究所は他の大手外資総合コンサルなどに比べると小規模な会社ですが、その分固定の業界に特化することなく、自由に好きな分野に関われるという点が魅力の企業です。
また、シンクタンク機能もあり、かつ経営戦略からIT戦略まで関わり方も幅広く、自身の感覚にフィットしていると感じたのが後押しになりました。
―社内はどのような環境ですか。
社内の雰囲気は非常に穏やかです。コンサル独特の時間に追われるイメージと違い、ゆったりと構えている印象です。
教育を重視していることもあり、メンバーへのサポートが手厚く、誰もがフォローしてくれる環境なので安心感があります。
―現在の職務内容について教えてください。
現在は輸送業界のシステム統合・刷新プロジェクトのクライアント側の統括PMOの責任者としてアサインされております。
約2,200人月という大規模かつ、マルチベンダー、マルチテーマを扱っているプロジェクトとなりますので、クライアントの経営層を含め複数のステークホルダーと日々発生する課題や問題を解決に向け調整しながらプロジェクトを安定稼働させるために推進しています。
当初はすでに稼動している案件に責任者としてアサインされたため、クライアントとの信頼関係を築くところから始まりました。
問題や課題は山積みでしたが無事にクライアントとも信頼関係を構築することができ、順調なスタートを切っています。
―コンサルタントとしてスタートされる上で、今までとのギャップなどはありましたか。
「コンサルタントになった」ということについて特段の苦労は感じていませんが、周りのコンサルのアウトプットが早くかつ正確で、とても刺激になります。
仕事内容としては、クライアントにからのヒアリング、提案して実行するという点では今までの経験を活かし問題なく遂行できていると実感しています。
まだ入社して半年ですが、社内環境やバックアップ体制が非常に整っており、問題が発生した場合は上司がフォローしてくれるので非常に助かっています。
コンサルとしてやりたかったことが着実にできてきているという実感があるので、ゴールに向かってこのまま進んでいきたいですね。
―ご自身のキャリアの展望はいかがですか。
個人のキャリアの展望としては、今は一つのプロジェクトの責任者ですが、複数のプロジェクトを担当していきたいと考えています。現在のそのために、日々上司の指導を受けながら提案活動をしており、学ぶことも多く非常に充実しています。
プロジェクト管理という専門性を生かしつつ、今後は全体構想やIT戦略の策定などを実施して様々ことに対応することとでキャリアを形成していきたいですね。
―最後に、転職をお考えの方にメッセージをお願いします。
転職を考える時には「自分の軸は何なのか」を見極めることに加え、「転職先はその軸が活かせる会社なのかどうか」をじっくりと精査することが大切だと考えています。
私自身は学生時代の経験を発端に、営業で身に付けたコミュニケーション能力とSE時代に養った論理的思考力を組み合わせた『調整力』を軸として、そこにコンサルティングとIT分野の知識やスキルを足していくことで独自の武器にしてきました。
自分の軸が求められている場所なのかという意識を常にもち、希望の会社を見てみると良いと思います。
たとえ希望した企業に縁がなくても、次に活かして諦めずに進む、ということが転職活動では重要なのではないでしょうか。
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