先新のテクノロジーと世界各国で蓄積された知見を駆使し、クライアントを支援し続ける日本IBM。 今回はグローバル・ビジネス・サービス事業 戦略コンサルティング・サービス アソシエイトパートナー門脇 直樹様にアクシスコンサルティングの荒木田誠と洲脇豪人がインタビューしました。 文中の情報及びデータ等は2016年12月現在のものです。
工場の製造の現場から、
ものづくりの経営に携わるためにIBMへ。
荒木田
門脇様のご経歴を拝見すると京都大学卒業後、大手メーカーへ入社されていますね。大学での専攻についてお教えいただけますでしょうか?
門脇様
大学時代の専攻は物理や機械です。日本は製造業が強いので、私もものづくりで人を幸せにしたいという気持ちがありました。大学卒業後は現場を見たいと考え、工場で製造ラインに並び、油まみれになって製品を造っていました。
ものづくりの経営に携わりたいと思っていたのは、大学時代からものづくりの経営者と会わせていただいて、そちらに向かいたいという思いがありました。それで、まず、ものづくりの現場、そして経営コンサルタントという道を歩んでいます。
IBMに入社して、12年ほどになります。
荒木田
事業会社から未経験でコンサルタントとして入社されていますが、社内で評価された点はどこだとお考えでしょうか?
門脇様
人とは違う発想をするところでしょうか。コンサルタントの世界はやはり知識と知恵が重要で、私の場合知識は圧倒的に少なかったと思いますが、人と違うことをすることが好きだという特性がありました。
経営者には人とは違う意見を聞きたいと思っている方が多くいて、人とは違う発想で発言したことに興味を持ってもらえることがあります。
もちろんそれまでには100枚ぐらいの資料を出していて、その発想を生み出すまでには時間もかかっているのですが。
また、まず相手の懐に飛び込むことを心掛けています。私の好きな言葉に“感じる・考える・経験する”というものがあり、考える前にまず飛び込んでその世界を感じてみることが大切だと考えています。
洲脇
語学力はいつ身につけられましたか?
門脇様
IBMに入社してからと言ったほうがいいかもしれません。IBMの業績が良くない頃、日本の人材を海外に送り込み、成長した人材を日本に戻す構想がありました。私は29歳の時ニューヨークに半年間送り出されましたが、仕事が面白かったので半年間延長してもらい、1年間滞在していました。
当初は全く英語が分からず、家に帰ってよく泣いていました(笑)。しかしビジネス英語は決まったフレーズが多いので3ヵ月くらいで慣れましたが。
荒木田
ニューヨークではどのようなお仕事をされていたのですか?
門脇様
IBM本社の社内コンサルティングをおこなう面白いチームに配属されました。例えばM&Aのプロジェクトで買収すべき会社を提言し、その後、その提言に基づき実際に買収を実行したり、ブラジルでのIBMの戦略立案などがありました。その他にはシリコンバレーに3ヵ月行き、新規事業の立ち上げなども経験しました。
荒木田
貴重な経験ですね。コンサルティングのテーマはどのようなものが多かったですか?
門脇様
当時は景気が良かったので新規事業やマーケティングが多く、我々もチームとしてそこに特化していました。それからグローバルがテーマとして出てくるようになり、個人的にも興味があったので、担当することが多くなりました。
日本、アメリカ、台湾、韓国、中国から人を集めて混成チームを作り、中国のお客様のためにグローバル戦略を作る時には、日本の代表として参加させていただきました。
荒木田
中国もコンサルティングを使う文化になってきているのですね。
門脇様
中国企業もやはり日本企業やアメリカ企業から学ぼうという姿勢がありますが、最近は日本企業から学ぶことがなくなってきているほど進んでいる企業もある状況です。
研究所×コンサルティング×システム。この3つを掛け合わせているのはIBMしかない。
荒木田
アソシエイトパートナーとして、どのようなチームを率いていらっしゃいますか?
門脇様
少し複雑ですがチームが2つあり、ひとつは新規事業や、マーケティング戦略などの事業戦略立案の戦略コンサルティングなどをおこなう戦略コンサルティングのチームです。
もうひとつはResearch Instituteというチームで、ここでは、『C-Suite Study』という約5000名の経営層へのインタビュー結果の分析から得られた未来への洞察をレポートとして発表したり、IBMの情報収集機能で得られた知見を社内や社外のお客様に提供するサービスなどをおこなっています。
IBMには研究所とコンサルティングチームとシステム開発の3つの機能があるので、これらを掛け合わせてサービスを提供することができます。ワトソンの次の次に生まれる技術を使って、研究者と一緒にどんなビジネス・システムを作るのかを考えることができるのです。
具体例を挙げると、IBMのイスラエルの研究所でサーバーを作りテストする部隊で培った技術が、実は自動車の次世代の技術にも活かせることが分かりました。しかし、それをビジネスにつなげるのは研究者だけでは難しいことです。
研究者と一緒に、技術を検証/適応するところから、どのようなモデルでビジネスとして実現するかまで考えるのが、私たちコンサルタントの仕事となります。
ビジネスをどう作るのか、世の中でどのような機能が求められるのかを提議して提案する。弊社の強みのひとつはグローバルなネットワークで研究所があり、要素技術を開発して、戦略にとらわれずに世界中にある知見やノウハウを組み合わせて、いかにお客様に価値を提供できるかを考えられるところです。
先ほど例に挙げた3つの領域を掛け合わせることやグローバルで協業することは、当時の日本では案件としてあまり無かったので、無いなら自分で作ればいいと考え、人を集めてチームを形成してきました。
荒木田
マーケットメーカーというイメージも強いですが、社内にいて何か感じることはありますか?
門脇様
ニューヨークにいた時は環境の良さを特に強く感じていました。例えば“スマータープラネット”といったような構想を発想するような優秀な方がグローバルにいて、そういう飛び抜けて優秀な方たちと働くことができたことは本当に良い経験だったと思います。
その環境があるというのが会社にいる理由だと思いますね。12年間ずっと面白いので働いている感じがしていません。
活躍できるのは、
コンサルティング力とクリエイティビティを併せ持つ人。
荒木田
門脇様のようにIBMを楽しめるのはどういう人だと思われますか?
門脇様
コンサルティング会社と事業会社が一緒になったという経緯があるため、コンサルティングだけをしてきた方には、マイルド過ぎて面白くないと思われるかもしれません。
一方、事業会社のみを経験してきた人には、コンサルティングという部分が尖って見えてしまうかもしれないので、コンサルティングファームと事業会社の中間の文化にフィットする方がいいと思います。
自分で新たに事業を立ち上げることもできるので、コンサルティング+クリエイティビティの両方があるような方が成功するのではないでしょうか。
また、私は嫌いなものを作らないようにしています。お客様は女性の下着メーカーやアニメ、半導体関連など本当に多様です。それをしっかりと受け止めて、どういう世界か理解するには、嫌いではできませんので。
荒木田
門脇様はニューヨークでグローバルの体験をされましたが、日本にいながらもグローバルを体感するためにはどういう考え方やスキルが必要だと思いますか。
門脇様
アメリカ駐在時に、全世界の営業の給料に関する調査をした時、その対象にアメリカ、ヨーロッパ、その他重要地域を入れることになりましたが、日本は外すことになりました。そのように全世界を見て、日本はその一部であるという感覚を持つことは必要ですね。
また、IBMの場合、意欲があれば情報はいくらでも手に入ります。例えば日本の企業がグローバルでスマートシティを作るという話になった時も、ドバイにいる詳しそうな人に電話して「ドバイのスマートシティはどのように作っていますか?」と聞けば、教えてもらえるのです。
情報は社内にあるので、活かせるかどうかは、その人の気持ち次第だと思います。
荒木田
一般的に外資系の場合は、日本は支店なので海外には行けないというイメージがありますが、御社は違うようですね。
門脇様
日本IBMの自意識として“日本から”ということがあり、グローバルから期待されてきています。ニューヨークでも「日本ではどう?」と聞かれることが多くありました。中国でも同じように日本から貢献できるものを求められます。そこで何かを出せるかどうかだと思います。
求めるのは、世界一になれるものを持っている人。
洲脇
仕事が半分趣味とおっしゃっていましたが、勤務時間など働き方についてお教えいただけますか。
門脇様
メンバーの時は時間のコントロール効かない部分もありましたが、マネージャーになると人に任せることもできるようなりました。
例えばプロジェクトを8個くらいデリバリーして提案を40個くらいしているという状態なので、全てを一人ではできません。仕事を面白がってくれて、なお且つ優秀な人に任せるようにしています。
今進行中のプロジェクトもある方に依頼して、ドイツに新規事業をつくりに2ヵ月行ってもらいました。その後帰国して、世界のトレンドを把握するようなシステムを作る部隊に入ってもらっています。
そういう優秀な人たちに来ていただき楽しんでもらうことで、その方の新しいアイデアを入れて完成度を高めることができるのです。
洲脇
中途で入社されるのはどのようなバックグラウンドの方ですか?
門脇様
事業会社、コンサルタント、ベンチャー、研究者など様々で、前職は問いません。私自身も工場の製造の現場からこちらに転職しましたので。
荒木田
実際に一緒に働く人に求めるのはどのような能力ですか?
門脇様
人がやってない経験をしていたり、何でもいいので世界一になれるものを持っているような人に来てほしいです。例えば2000件のコインランドリーを一人で調べたとか、世界一妻が好きだとか、すごく特定の分野でいいので尖ったものを持っている人がいいですね。
コンサルティングは短期間で集中して結果を出さなければならないため、発想力や集中力が必要です。加えて誰もしたことがないチャレンジをするのはとても怖いことで、挑戦して怒られることもありますし、精神的に辛い時もありますので、知的体力、体の体力、精神的体力、この3つが必要です。
語学力に関しては、入ってからでいいと思います。例えば英語が得意な方でも、我々の場合インド英語が分からないとダメなので結構難しいです。
語学力よりも重要なのは何を知っていて何を語れるかです。本当にひとことでいいので人をハッとさせる発言をする能力があれば世界で通用しますし、海外に行く経験もできるので、自然と語学力も身についていくと思いますよ。