「新しい社会の姿を構想し、ともに「情報未来」を築く」 というミッションのもと、様々な分野のコンサルティングや調査研究をおこなっているNTTデータ経営研究所。 今回は、事業戦略コンサルティングユニット産業戦略グループ長 アソシエイトパートナー 三治 信一朗様に、アクシスコサルティングの山尾康久がインタビューしました。 文中の情報及びデータは2016年11月現在のものです。
ロボットや再生医療など最先端の産業を支援。
官民連携の橋渡しを担う。
山尾
まずは三治様のご経歴からお伺いします。
三治様
前職は日系シンクタンクにおりました。大学時代はロボットや画像処理などの研究に没頭していましたが、マクロ経済にも関心があり、コンサルタントとしては、証券会社などへ常駐でのコンサルティングもおこなっていました。多様な経験を積みながらコンサルタントとしてのノウハウを身に付け、今に至ります。
「技術をどのように社会に活かしていくか」ということに強い関心があるため、現在は技術を武器に新しい産業を起こしていくようなコンサルテーションをおこなうようになりました。
山尾
では、三治様が率いる産業戦略グループの概要をお伺いできますか?
三治様
主なクライアントは経済産業省、厚生労働省などの主要官庁、その外郭団体となるNEDOや産業技術総合研究所と、ロボットや再生医療など最先端の産業に関わる民間企業です。
大企業でも新規事業を起こしていく初期段階では、事業部としては小さい形態である場合が多く、未熟な部分があります。中小企業、ベンチャーについてはいうに及ばずです。こうした小さな事業体では、外部環境や大企業の内部事情で思うように進まない場合があります。
こうした面を支援していくためには、官公庁関係の政策が一貫していることが非常に重要で、中長期的な視点で支援をする必要があります。その意味で、政策の変更や方針転換などがある中で、業務を円滑に遂行していくことを実行面で支援することが私たちの官の領域での事業になります。
また、民間企業の事業コンサルタントも担っています。官民連携の橋渡し、潤滑油的な役割、あるいはリーダーシップを発揮して推進していくこともあり、お客様によって役割は様々です。
国の戦略立案のお手伝いや基礎検討を担いつつ、新しく産業としてスタートさせるための民間事業のコンサルテーションを、技術をキーにしながらおこなっていることが弊社の特徴です。
意外と大手製造業は自社の技術を正しく理解してないことがあります。そういった方々に知財の評価を適切におこなうことでアライアンスや事業立ち上げの提案などのコンサルテーションをおこなっていくことを得意としています。
山尾
サポートしている民間企業は製造業が中心でしょうか?
三治様
製造業も多いですし、ヘルスケアに新規参入してきたようなベンチャーもあります。業界の中でのリーダー的企業がクライアントの中心になります。これは、売上、シェアが高いという意味ではなく、ナンバーワンを目指す企業を支援することで、競争力がある企業の育成を支援したいと考えています。
山尾
官公庁と民間企業での売り上げの比率はどのくらいでしょうか?
三治様
半々を理想としていますが、やや官公庁からの方が多い状況です。弊社の旗印は官民連携ですので、そのバランスも大事だと考えています。
山尾
チームのメンバーはどのような方が多いのでしょうか?
三治様
コンサルタントが半分ぐらいでとあとは製造業や製薬・ヘルスケア業界にいた方、あるいは弁理士など、専門領域を切り開いてきた方が多くいます。また、製造業でも現場の方もいれば知財サイドの方もいます。
山尾
職種もバラエティ豊かですね。依頼の件数は増加傾向にあるのでしょうか?
三治様
昨年の4月の立ち上げ以来、幸いにも案件の規模・数ともに拡張軌道にのっており順調に推移しています。なお且つ、やはり官民の橋渡し機能のニーズが強いですね。
事業規模を拡大する、あるいは国としての競争力をどう担保していくのかという問題がより高まっていく中で、官民の意見交換の機会を増やすことがますます重要視されています。
一方であまりにもご要望が多く、私どもだけで対応し切れずにお断りせざるを得ないケースもあります。そのためチームの拡充が喫緊の課題です。
ロボット産業は中国が最大の市場に。
世界に発信できるロボット産業を創っていきたい。
山尾
具体的にはどういう事業・サービスがあるのでしょうか?
三治様
官公庁の事業の場合、リサーチ系が多くなりますが、一方で補助金の事務支援など専門性を生かした事業寄りの支援もさせていただいています。
例えば、『World Robot Summit』です。国の旗振りで名前が決まったところですが、事業推進の事務局機能を担っています。
こういった競技大会は次の技術を切り開く場になると考えています。官が開催するものとして有名なものに『DARPA Robotics Challenge』というものがありますが、こうした競技会を日本でも開催し、広く世界に訴求できるロボット産業を創っていきたいと考えています。
山尾
日本のロボット産業のグローバルでの立ち位置は実際のところどうなのでしょうか?
三治様
残念ながら存在感が薄らいでいます。以前は日本が世界一だという認識が国内外ともにありましたが、最大の市場は中国になり、研究の最先端はアメリカ、韓国、中国、タイなどが活況です。
産業用ロボットは、いまだ、世界一の座を守っています。しかし、現在は、最大の市場は中国であり、今後の競争優位のあり方は、十分に考えていく必要があります。
山尾
三治様から見て中国が伸びてきているという実感はありますか?
三治様
展示会や学会の活動を見てもアクティビティーが高いと感じています。また中国内だけでも多くの市場を抱えていますが、国から外に出て行く活動も活発になっていますね。
『メイド・イン・チャイナ2025』という構想をはじめ、進化、成長速度が圧倒的に速いことは脅威に感じるべきだと思います。
一方で、日本ではアカデミアの積極性がなくなってきていますので、アカデミア側の活動の啓発もしていく必要性も感じています。研究費を獲得することはもちろん、次の研究開発の方向性を見出していく必要もあると考えています。
執筆や情報発信の機会が多数。
産業全体を見る視点で仕事をする。
山尾
執筆活動や講演も積極的にされていらっしゃいますね。
三治様
講演や執筆活動はかなり多いです。新聞に週1回連載している他、その他の新聞への寄稿も多く、雑誌掲載もよくあります。地域での産業振興のため、各地から講演会に招かれることも多く、ひと月に2回以上は出ていますね。仕事以外のことが多いので大変ではありますが。
山尾
若手の方にもそういう仕事のチャンスはあるのでしょうか?
三治様
多数あります。原稿の共同執筆のほか、テーマ別の執筆依頼の機会が多くありますし、プロジェクトの中で外部の方に発信する機会も設けられているので、本番度胸がどんどんついていきます。ビジネスリテラシーも作られていく仕組みですね。
また、顔をつなぐという役回りをジュニア世代には期待しています。我々がいるからジュニアの世代も信頼されて、その業界の中での顔になってエコシステムの一員となり花開いていく、そのような育成方法を取りたいと考えています。
山尾
これから伸びていく領域では会社からの投資がないとチームとして形成しづらいのではないかと思いますが、その点はいかがでしょうか?
三治様
幸いなことに立ち上げ当初から引き合いをいただき、そのなかで人材の育成を図りながら、仕事も仕掛けていき、次の領域を取りに行っている状態です。そういう意味での好循環サイクルが生まれているのは私たちグループの強みだと認識しています。会社からも金銭的、人的側面での支援を多くいただいているとも感じています。新しいものを肝要する素地が当社にはあります。
私たちの仕事は一事業と言うより、産業全体を見る視点を持つ必要があります。日本の製造業をどうしていくのか、閉塞感がある事業環境をどう変えていくか、という感覚で仕事をしている方が多いですね。
山尾
今、どの業界でもグローバルがひとつの軸ですが、国内・グローバルの比率はどのくらいでしょうか?
三治様
半々ぐらいですね。国からの事業でも海外調査は必須要件になってきていますので、私自身も1、2ヵ月に1度は海外出張に行っています。海外では様々なトップレベルの方々との意見交換をさせていただいています。
山尾
コンサルタントクラスからもそのチャンスはあるのでしょうか?
三治様
もちろんです。入社1ヵ月後にタイで英語でプレゼンをしてもらったこともあります。指導はしますし、その方の実力にもよりますが、能力があれば海外にもどんどん行ってもらう姿勢です。
行き先としては中国、タイ、シンガポールをはじめ、アメリカやヨーロッパも頻繁にあります。行ったことのない国がなくなるくらい様々な国に行っていますので、全世界ですね。
最先端で活躍できる人を育て、輩出する。
エコシステムを創ることが使命。
山尾
今チームは何名ぐらいで構成されていますか?
三治様
2015年4月から、当社でのキャリアをスタートさせましたが、現在は、当初の10倍の陣容になっています。さらに、拡大途上です。
山尾
チームの雰囲気はいかがですか? また、三治様はどういうチームを作っていきたいとお考えでしょうか?
三治様
メンバーそれぞれに向かう先を思い描きながら、目標は明確で、産業のために走りながら考えるようなチームになっていると思います。
メンバーの多くが上昇志向を強く持って取り組んでいるため、仕事もやりすぎてしまう傾向があるかもしれません。
私はストッパー役だと思っているので、抑制することもしていますが、それでもさらに案件を取りに行ってしまったり。そういう意欲のあるメンバーが多いですね。
山尾
チームでの飲み会などもありますか?
三治様
4半期に1回以上はありますね。少し盛り上がりすぎる傾向がありますが、コミュニケーションの場でもあり、発散の場にもなっています。
年齢的にも30代が4名、シニアクラスを除くそれ以外のコンサルタントだと半分以上が20代ですので、若いチームだと思います。
また、女性比率が高く、半分くらいは女性です。次世代のリーダーを育てていくことが自分の使命だと思っていますが、女性の方が次の時代を作るという意欲が高いようにも感じています。
山尾
他社と比較した際の御社の魅力についてお聞かせください。
三治様
まず最大の魅力は、産業を立てていくというパッションを持ったメンバーが集まっている点です。ロボットやAIをはじめ、先端医療、再生医療、遺伝子治療、介護の分野でも、この産業を興して行くために必要なことは何かを本気で考えているメンバーがいます。
通常コンサルティング会社の場合、特にジュニアの世代では上から仕事を割り当てられることが多いですが、私たちはジュニア世代であってもチームとして仕事を組成していくところから入らせています。成長環境という意味では多くのことを学べるのではないでしょうか。もちろん、立ち位置として、シニアメンバーとの二人三脚にて学ばせています。
また各分野において業界のプレイヤーの一員となっているメンバーが育ってきていますので、業界の中でのエコシステムとして認知されつつあるということも有利な点だと考えています。
チームとしては立ち上がったばかりですが、メンバー育成には自信をもっています。コンサルタントとしてのみならず、証券アナリストやベンチャーキャピタリストになった人もいます。産業の視点で、どのようなバリューを発揮できるのかの気付きを得られるというのも、当グループの特徴です。
優れた人材輩出の場とするという認識のもと、コンサルタントとしての成長環境もありますし、気づきがあれば他分野に転じていくことも歓迎しています。結果として産業育成に貢献できるような人材を輩出していくことを目指しています。
山尾
最後に三治様のチームが求める人材についてお教えいただけますでしょうか?
三治様
語学力がある方は海外へ出て行くチャンスが多くありますが、マスト要件ではなく、「あったらいいな」という感覚です。コンサルタントの経験がなくても結構ですが、論理的思考力、文章を書く能力は必須条件ですね。
人材育成の場所になることも意識しており、一緒に働いていた人がヘルスケア業界、ドローン業界、ベンチャーキャピタリストなど様々な分野で活躍されています。
産業という大きな視点で見ると、最先端で活躍できる人材を育て、様々な業界に出て行ってもらうこと、そのようなエコシステムを創ることが私の使命であり、世の中のためになると考えています。
やはり、一事業として考えるのではなく、世界、国全体を見て、産業という視点で捉えられる方、先導者になりたいという情熱のある方に来ていただきたいです。