「お客様の現場に入り込み、人に働きかけることで、戦略の実行にコミットする」をポリシーに、お客様の戦略や仕組・制度の企画・設計の支援にとどまらず、現場に入り込み、現場を巻き込みながら、戦略の実行環境を整備するエル・ティー・エス。 今回は取締役副社長 COO 李成一様にアクシスコンサルティングの伊藤文隆と梅本昇平がインタビューしました。 文中の情報及びデータ等は2016年11月現在のものです。
ユーザー側に入り、
ベンダー選定やベンダーとのコミュニケーションを支援。
梅本
最初に御社の特長をお伺いいたします。
李様
弊社の事業の柱は、企業向けのコンサルティング事業と、IT業界・コンサルティング業界のプラットフォームとして2年前から立ち上げているアサインナビ事業です。
まず、アサインナビ事業ですが、 IT・コンサルティング企業、コンサルタント、エンジニアと、その力を必要とする企業が「つながる」ことができる、日本最大級のITビジネスコミュニティです。
今、業界では、ユーザー側・ベンダー側それぞれに問題があると感じています。 例えば、ユーザー側は、大手IT企業やコンサルティング企業をコントロールすることが難しいという課題があります。また、ベンダー側にもその取引階層構造の深さなどのため、プロジェクトマネジメントが難しかったり、利益率が低かったり、なかなか人材が育たないといった課題があります。
このような課題を解決するために、いいパートナー、いい製品とベンダーをフラットに結びつける場を作ることを目指し、アサインナビが生まれました。業界に属しているベンダー、プレーヤーの方々のマッチングを、アサインナビが実現します。
人を見つけるデリバリーの体制を構築する機能のほか、人材教育のサービスも提供しており、ユーザー側、ベンダー側、双方の役に立つ機能を提供しています。
一方、コンサルティング事業は、ユーザー側の課題を解決するために、業務改革、IT導入やプロジェクト実行の支援を、ユーザー側に入り、支援しているのが特長です。
伊藤
ユーザー側に入るということは、ベンダー選定やベンダーとのコミュニケーションの支援もされるのでしょうか?
李様
そのとおりです。典型的なIT導入のプロセスとして、構想策定や要求整理から運用まで、ユーザー側でおこなわなければいけないタスクは膨大です。これらのタスクをユーザー側に立って支援することが我々の領域になります。
伊藤
以前は、システムの定着化を全面に打ち出されていましたよね。
李様
システムの定着化は引き続き重視している領域です。おっしゃる通り、もともと弊社は、システム導入あるいは業務改革の現場への定着化を主なビジネスとしていました。
これらもユーザー側の支援ではありますが、様々なベンダーと一緒に仕事をしてきた中で、業務設計・要件定義の詰めが甘いケースでは、いくら定着化させようとしても上手くいかず、我々もお客様も苦労してきました。
プロジェクトの前段のフェーズからユーザー側のプロジェクト推進力を強くしなければ定着化ができないという認識を強く持ち、できるだけ上流の企画の段階から参加するようになり、ビジネス領域が広がっていきました。
伊藤
上流から支援しているプロジェクトは全体の何割くらいでしょうか。
李様
半分くらいです。領域としてはIT、業務、人材の3つがあり、なかでもITが6割を占めています。
CRM(顧客管理システム)関係のコールセンター業務改革や、BPO(ビジネスプロセスアウトソーシング)の事務センターの立ち上げなど、ITが関連していない領域も携わっていますし、また、最近はIoTやデータ分析といったデジタル化支援もおこなっています。
このようなITや業務改革のエンタープライズ向けの支援、アサインナビのインダストリーの支援、デジタル化支援という3つの軸で今後サービスを提供していこうと考えているところです。
伊藤
デジタル化支援は、具体的にどのようなことをされているのでしょうか。
李様
CRMの領域で、大手BPO会社と4、5年前から協業を始め、コールセンターのお客様の声の分析などを通してデータ分析の体制を整えてきました。通販や飲食業などのクライアント向けに、データ分析を通じてどのようなアクションをとれば営業やCRMアクションに結びつけていけるのかを分析、提案するようなプロジェクトや、製造業クライアント向けの不具合情報に関連したプロジェクトなど、データを切り口として幅広く企業の業務改革を支援しています。
また、Webマーケティングを提供している大手企業のWebプラットフォームシステムの構築からデジタルマーケティングの支援などもおこなっています。
IoTの分野では、製造業クライアントのIoTを用いた事業戦略の立案など、ユーザー側に立った事業推進を支援しています。
現場が変わることが業務改革につながっていく。
仕事のダイナミズムを実感。
梅本
御社を設立された経緯をお教えいただけますでしょうか。
李様
私は、もともと外資系コンサルティングファームの戦略グループに在籍していました。戦略グループ自体は、当時立ち上げて数年といった段階で、規模も小さく、とれる仕事は何でもやっていくというスタンスでした。戦略に限定せず、いろいろな仕事に携われたことは良かったと思っています。
サプライチェーンの戦略立案を担当していたときに「策定した戦略をパイロットとして実際にやってみるから、営業現場やロジスティクス現場に落とし込んできてよ」と言われたのです。
戦略を作ることはもちろんですが、現場に行ってコミュニケーションをとりながら落とし込むことの大変さを経験しました。
一方で、現場が変わっていくことが企業の業務改革に直結するという仕事のダイナミズムを実感でき、現場寄りの仕事に価値があると感じたのがエル・ティー・エス設立のきっかけにもなっています。
コンサルティングファーム退職後は、Eラーニング専業のベンチャー企業に転職しましたが、徐々にお客様がついてきていたところで会社の解散が決まりました。当時の仕事にやりがいを感じていましたし、社会的にも意義があると思っていたので、その時一緒に仕事をしていたメンバーとエル・ティー・エスを設立しました。エル・ティー・エスの社名はLearning Technology Solutionsの略で、Lは「Learning」からきています。
伊藤
それで「Learning」が入っているのですね。コンサルティングの上流から入ることによるメリットはどのような点でしょうか
李様
定着化に課題意識を持ったメンバーがおこなうため、現場への落とし込みを意識した上流の業務設計や企画構想ができます。
コンサルティングは、人がやるサービスなので、会社ごとの差別化はなかなか難しいのが実情です。しかし、我々の強みは現場、定着化というところ。実績やノウハウ、また社員個々人のスタンスという部分で、他社と差別化もできていると自負しています。
言葉が適切かどうか分かりませんが、「泥臭く」現場に落とし込む・落とし込むための業務設計をする、ここは他社と比べてクライアントに特に評価されているポイントです。
伊藤
現場を理解されているので最初のプランニングにズレがないのですね。
李様
最後にモノができたときに運用するのはお客様です。その大変さも間近で見ていますので、お客様に寄り添いながら難しさを具体的に説明できることも訴求ポイントになっているのではないでしょうか。
大手商社グループや中堅企業まで、最初の構想策定から運用に至るまでワンストップで支援するような事例はここ数年で着実に増えています。
スピードが求められる時代。
ユーザーの近くにいるからこそ、課題解決の支援ができる。
梅本
クライアントのニーズは数年前と変わっていますか?
李様
新しいテーマが増えていますし、従来からあるIT導入や業務改革も、難易度やスピード感が上がってきているように感じています。
また、以前より実効性が求められるようになってきています。計画作りだけではなく、現場に落とし込んでいくところまで外部のコンサルタントに求められるケースは確実に増えているのではないでしょうか。
我々はお客様がお困りのことを解決することに価値があると思っていますし、テーマを拾い上げていくなかで、新しいプロジェクトも出てきます。ユーザー側に入り、お客様の近くにいるからこそご支援の機会をいただけるのです。
伊藤
御社は、社内にリソースがない場合でも、アサインナビがあるのがいいですね。
李様
アメリカなどではもうすでに一般的ですが、フリーランスが仕事を遂行していくケースが日本でも増えていっています。アサインナビをプラットフォームとして使えることはおっしゃる通り強みとなっています。
伊藤
M&Aやデジタルの領域はできる人が少ないですよね。
李様
そうですね。アサインナビでは、そういった領域も含めて、必要に応じて必要なパートナーと出会える仕組みを築くことができていると思います。
梅本
御社の今後の方向性をお教えいただけますでしょうか。
李様
コンサルティング事業とアサインナビ事業(プラットフォーム事業)をそれぞれ今の方向性を保ちながら強化していきたいと思っています。コンサルティング事業については、従来からある業務改善やIT導入に対応できる人材に加え、今後はデジタルのニーズの高まりに合わせた体制構築や、案件が増えているグローバルに対応ができる人材も増やしていければと思っています。
梅本
グローバルではどのような案件がありますか?
李様
グローバルだから特別ということではなく、もともと国内でおこなっていた領域のサービスを海外で提供することが多いです。
最近ですと、ITの導入展開やCRMの領域、海外のコールセンターの業務設計支援などに携わっています。IoTの領域で実際に現場に入って事業推進を支援したり、海外の事業展開を支援したりなども増えています。国内で強みとしているものが海外でも通用するという手応えを感じているところです。
女性のコンサルタントが約4割。
オープンでフラットな働きやすい環境。
伊藤
御社で働くなかでのやりがいをお教えください。
李様
繰り返しとなりますが、業務的には、ユーザーサイドで現場を重視したコンサルティングワークができることです。私が前職で感じた仕事のダイナミズムのようなものを実感できるところが面白いと思います。会社のカルチャーも顧客志向ですし、お客様のために実効性のある取り組みを推進していきたいと思っている方にはやりがいがあると思います。
まだ小さな規模の会社なので、自分の意見を通しやすいですし、アサインナビのように新たな取り組みも会社を巻き込んで提案・実行することができるオープンでフラットな環境だと思います。
現場のコンサルタントの約4割は女性です。育休取得中の方や育休後に復帰されている方も多く、まだまだ改善する余地はありますが、女性も働きやすい環境が整っていると思います。出産育児をきっかけに女性のキャリアが途絶えるのは個人としても会社としても社会としてももったいないですからね。女性が働きやすいよりよい環境作りを目指していきたいと思っています。
仕事の内容としては、ビジネスアナリシスを全社の共通的なスキルとして位置づけています。先週ビジネスアナリスト(BA)の国際的な団体のIIBA(International Institute of Business Analysis)の年次総会がアメリカでありましたが、弊社のメンバーも毎年3、4人参加し、グローバルなBAの動向を把握しつつ研究に努めています。アメリカでは女性がBAとして活躍しているケースが多いようです。
有用なものであれば、様々な取り組みを進めていくことを会社として後押ししますし、研究のための海外出張など自発的にチャレンジしていく者への投資を惜しまない空気があることも弊社の特長ですね。
コンサルティング業は床屋と同じサービス業。
プロセス品質を大事にする方に来て欲しい。
梅本
李様のプライベートのお話もお伺いできますでしょうか。
李様
ゴルフが好きです。下手ですが。去年2人目の女の子が生まれまして、育児が大変でなかなか行けません。もちろん育児も趣味です(笑)。
弊社のメンバーも育児中の方が増えていますが、自分に子供が生まれて改めてその大変さを認識できました。そういった経験を、女性が働きやすい環境づくりや、育休からの受け入れ対応などにも役立てていきたいと思っています。
梅本
最後に候補者の方にメッセージをお願いします。
李様
弊社が特に大事にしている部分は、「お客様に寄り添う視線を保つこと」です。
お客様満足度につながる品質が、成果品質とプロセス品質に分けられるというサービスサイエンスという学問領域があります。「コンサル業はサービス業であり、ある種床屋のようなものでもある」というのは会社内でよく話しています。
お客様の課題をどのように聞き出し、コミュニケーションを上手くとってニーズをつかまえ、ソリューションをアウトプットにつなげられるか。成果の品質だけでなく、成果に至るまでのプロセスの品質が求められると常に話しています。
ベースとなる姿勢として、お客様との共感性を持つことができ、プロセス品質・顧客志向を大事にしている方にぜひ来て欲しいですね。