組織・人事、福利厚生、年金、資産運用分野におけるサービスを提供するグローバル・コンサルティング・ファーム、マーサージャパン。今回は、グローバルM&Aコンサルティング プリンシパル 島田圭子様にアクシスコンサルティングの山尾康久と稲橋広将がインタビューしました。 文中の情報及びデータ等は2016年2月現在のものです。
当時のメンバーは3名。M&A部門の立ち上げに参画
山尾 まずは、島田様のこれまでのご経歴をお聞かせください。
島田様
新卒で日系製造業の企業に入社し、人事部の人事企画を担当していました。その後、マーサーにアソシエイトとして入社し、タレントコンサルティングに3年超いました。
入社当時は同部門で、日本企業の人事制度改定のプロジェクトで一領域を担当したり、小規模プロジェクトをリードしたりしていました。
その後、日本企業の海外現法の人材マネジメント支援などを実際に現地に行っておこなうようになり、1年の半分はマレーシアやシンガポールなど、主にアジアに出張をしていました。日本から一人で出張し、現地のスタッフと協働してクライアントをご支援するモデルでした。
そして2002年にM&A部門の立ち上げに参画したのですが、当時メンバーは3名。ゼロからのスタートで面白いと同時に苦労も多かったと思います。
稲橋 事業会社の人事部から御社に移られて、ギャップを感じる部分はありましたか?
島田様 事業会社でもある程度の仕事を任されていたので、コンサルティング業務のなかで不安を感じることもそれほどなかったと思います。人事領域への土地勘があったので特に抵抗はありませんでした。
山尾 M&A部門立ち上げの仕事は非常に魅力的だと思いますが、いかがでしたか?
島田様 マーサー=組織人事コンサルティングのブランドしかないなかで、M&Aのブランドを作っていくのが大変でした。慶応ビジネススクールの高木先生とタイアップして、日本企業のM&Aのポストディールの課題は何か、といったリサーチをサーベイ形式で行い、フォローアップで数10社にインタビューして進めました。課題認識を深めていきつつマーサーのM&Aのブランドを高めていくことができたと思います。
稲橋 M&A部門が立ち上がる前からM&Aの案件はありましたか?
島田様 以前はデューデリジェンス(M&A前の調査)中心でした。ポスト(M&A後の経営統合、組織・人事統合)はタレントコンサルティングで一部担当していましたが、M&Aをプレからポストまで一貫して長く追いかける部門はありませんでした。
経営課題の解決が最優先。様々な専門家でチームを組む
山尾 では、御社とグローバルM&Aコンサルティングのご紹介をお願いします。
島田様
弊社は組織人事コンサルティングで例年トップの会社です。それはブランドとして、柱になる部分だと思っています。世界40ヵ国、180拠点で組織人事マネジメントに関してはフルラインのコンサルティングサービスを提供しています。
グローバルな展開もしつつ、日本でも35年以上の豊富な実績があります。お客様の規模感はティア1が主です。
グローバルM&Aコンサルティングは、保険、福利厚生、インフォメーションソリューションズ、年金など各領域をまたぐ形でM&Aの場面で動きます。プレ(M&Aの前段階)・ポスト(M&A後の統合)の両方のサービスを提供しています。
稲橋 M&Aのソリューションに関しては様々な専門家達を束ねながら進めていくという形になるのでしょうか?
島田様
はい。クロスボーダーM&Aの支援に関しては、各国のグローバルM&Aコンサルティング部門と合同でプロジェクトマネジメントをおこない、各専門家を束ねてサービスを提供していきます。
経営課題そのものを扱っているので、機密性の高い案件ほど、クライアント側はトップマネジメントになります。忙しい方が多いので、短期間でインパクトのあることを言わないといけません。そのため、戦略コンサル出身者、M&Aアドバイザリー支援経験者など様々なバックグラウンドの人間が集まっていますね。
山尾 M&Aの専門家というよりは、「経営課題を解決する」というスタンスが最優先でチームが組まれているのですね。
島田様 そうです。若い方でも、人事・英語の経験はもちろん見ますが、経営陣の方にインパクトを持って話ができるかということも重視しています。一番よく見ているのはそこですね。
日本企業の成長モデルの全フェーズを支援するのがマーサーの強み
山尾 日系企業のグローバル化が加速する中で、役割の変化は感じていますか?
島田様
M&A支援の観点で言うと、立ち上げから数年間は国内再編・ファンドの投資案件が多かったように思います。2004年くらいから日系企業の海外企業買収、海外進出のための戦略的な買収が増えてきました。
そのころからクロスボーダーM&A(国際間のM&A取引)支援の比重が高まってきます。日本企業のグローバル化はますます加速しており、日本企業の海外企業投資は2015年実績で件数・買収金額共に過去最高となり、買収金額は11兆円を突破し、年間で過去最高だった2006年(8兆6089億円)を上回りました 。
これと同時に、国内の事業売却を含めた再編も加速しています。マーサーでは、国内の経営統合、カーブアウト、海外進出、海外のガバナンス強化、国内の再編・再構築、国内・海外の機能最適化支援という日本企業の成長モデルの全てのフェーズを支援できるというのがファーム全体としての強みであり、我々の使命、世の中のニーズだと考えています。
組織・人事面で難しい案件が得意
稲橋 M&A支援で一番困難なテーマはどのようなものでしょうか?
島田様
難しいテーマというと、やはりトップマネジメントのコントロールですね。海外企業買収後に、現行の経営陣をそのままリテインしてマネジメントを任せたものの、意思決定プロセスや結果の可視化ができていないため、業績が悪くなっても理由が分からない、というケースがあります。
こういった事態に陥らないために、クロージング前に意思決定プロセスを可視化し、親会社の重要事項の意思決定への関与やモニタリングの仕組みを明確にしたり、親会社がリテインした経営陣の任免、評価、報酬決定の権限を実質的に持ち経営陣をコントロールできるようにする必要があります。
また、さらなる成長に向けた経営チームの移行に向けて幹部候補のアセスメントやサクセッションの設計支援もご依頼いただきます。
もうひとつ難しいのが統合です。例えば買った企業と既にある現地法人等の拠点を統合していく、という作業です。複数買って、そろそろ地域統合していきましょう、というフェーズでは人の転籍や、組織統合による重複ポジションへの対応、既存の人事制度の統合というプロセスが発生します。これは痛みを伴いますし、経営・従業員・組合等多くのステークホルダーに納得してもらわないといけないので難しいところですね。
稲橋 プロジェクトは長期になることが多いのでしょうか?
島田様
最終的には1年を超えることもあります。例えば、多国籍展開をしている企業の事業買収において、各国間の法制や労働慣行の違いを踏まえて従業員転籍や保険・福利厚生・人事機能等の切り離しや新設、組織・人事制度の統合を段階的におこなうケースでは、時間がかかることもあります。
他社と差別化をすると、難しい案件が得意ということですね。それが弊社の強みでもあり、働くうえでのやりがいにもなってくると思います。組織人事の難しい問題を解いてみたい、という方にとっては格好の舞台となるのではないでしょうか?
ディールが発生すると、24時間以内にグローバルでチームを組成
稲橋 グローバルM&Aチームが求める人材と、チームの雰囲気を教えてください。
島田様
チームの雰囲気は、クライアント・インタレスト・ファースト(顧客第一主義)。ディール(投資案件)が発生したらすぐ動く、という機動性を持っている人間が多いです。
これは、グローバルでも共通のプロトコルとなっています。ディールが発生すると、24時間以内にグローバルでチームが組成できる体制になっているので、そういった意味でもプロ集団です。
議論することもありますが、内向きのコンフリクトはありませんね。「企業の社運がかかっていることも多いグローバル化を支援したい」という想いは皆が共有できている環境です。
あと、分からなければまず訊く、という文化が浸透しています。自分で調べるよりも、効率もいいと思うので。聞きやすい・情報共有しやすい雰囲気作りを意識しています。クライアントにいかにアウトプットをしていくか、という面で考えると、お互いのノウハウを教えあうというのが最適です。非常にフランクな雰囲気ではないでしょうか。
制度面ではグローバルのネットワークを生かしたトレーニングがあります。ウェブ上、対面の両方があり、海外から日本に講師が来て研修をおこなうこともあります。
若いうちから大型の案件を担当。自分の仕事が新聞に載る
稲橋 御社で働くメリット・やりがいは、どこにあるとお考えですか?
島田様 M&A・組織人事をおこなううえで良い舞台がある点が挙げられます。M&A専門チームは歴史があり、知見・ノウハウが蓄積されています。このような、あらゆる課題に対応できる専門部隊が各国にあるため、グローバルでクライアントにベストソリューションを提供できる体制が整っています。 もうひとつ、データがある、という面も大きな強みだと思います。報酬データや職務評価のツール、駐在員派遣時の生活費指数といった、グローバル化を考える上でなくてはならないデータを持っています。そういう意味で質の高いサービスを提供しやすいと考えています。
山尾 とりわけ若手の方にとっては、大型のM&Aの支援等はやりがいに直結するのではないでしょうか?
島田様 自分の仕事が新聞に載った時には、大きなやりがいを感じますよね。若手のうちから大型の案件に、入り口からポストディール(M&A後の統合)まで携わることができるので、成長も非常に早いように思います。
山尾 ナンバーワンの環境でナンバーワンの仕事を追求していくプロ集団。そこで鍛えられれば、どこでも通用する、ということですね。話は変わりますが、島田様のプライベートについてもお聞かせください。
島田様 昔はフラメンコギターをやっていました。スペインによく旅行に行っていたので、そこから興味を持ち、社会人になってから始めました。
山尾 ワークライフバランスは、どのような形で取っていらっしゃいますか?
島田様 海外のクライアントやコンサルタントとの電話会議等夜間や早朝の対応もありますが、基本は日中に相当集中して仕事をするようにしています。 成果を出していれば、また、適切な環境であればどこで仕事をしてもいい、というのが基本的な考え方です。プライベートが充実していたほうが、仕事にもプラスの影響があると思います。
山尾 最後に読者の方へのメッセージをお願いします。
島田様 M&A・組織人事を目指す方には非常に良い環境を提供できると思います。ご依頼も増えてきているので、より大きな仕事を増強したチームで対応していければと思っています。大きな案件に対峙するなかで成長していきたいと思っている方はぜひご応募ください。