組織・人事、福利厚生、年金、資産運用分野におけるサービスを提供するグローバル・コンサルティング・ファーム、マーサージャパン。今回は、組織・人事変革コンサルティング部門プリンシパル中村健一郎様にアクシスコンサルティングの山尾康久と稲橋広将がインタビューしました。
文中の情報及びデータ等は2016年2月現在のものです。
組織・人事に関心を持ったのは高校生の頃
山尾
まずは中村様のご経歴からお伺いします。中村様はこれまでに何社かご経験をされていると伺いましたが。
中村様
マーサーで3社目です。一橋大学の経済学部を卒業後、新卒で入社したのがNTTデータでした。
高校生のときにアルビン・トフラーの『第三の波』を読み、“情報化社会が世の中を変えていく”という筆者の見解にとても感銘を受けました。特に、企業組織に与える影響への洞察が一番印象に残り、そこから組織・人事の領域に興味を持つようになりました。
なぜ変わるのか?といえば、それは情報化社会の到来とそれを支えるITの力であるということで、ITに関して一番規模が大きいNTTデータに入社しました。
NTTデータでの最初の配属は、金融システム事業本部のANSERという部門でした。同社は社会インフラをつくる会社であり、日本の金融機関におけるサービス拡張の核となっていたシステムを扱う同部門に配属されたことは喜ばしいことでした。
ただ、私の興味は、情報化社会が企業組織に与える影響にありましたから、入社3年目のとき、様々な会社の状況を見たいという思いに駆られ、産業システム事業本部に移れないかとお願いしたのですが、「うちの中核は金融・公共だから、今のキャリアが長期的には一番良い」と言われ、転職を決意しました。
NTTデータでは生粋のシステムエンジニアとして鍛え上げられました。その中で、スクラッチからシステムを構築することに関しての考え方や一定のスキルは身につけさせていただきました。
そこからいきなりマーサー等の組織・人事に関するマネジメントコンサルティング会社に転職することはハードルが高いと感じていました。そこで、システムエンジニアのスキルを活かして、企業のマネジメントに関わる仕事というテーマを設定して新しい職場を探しました。
転職活動しているなかで、当時のアンダーセンコンサルティング(現アクセンチュア)とデロイトトーマツコンサルティング(現アビームコンサルティング)からオファーを頂きました。
オファーの内容としては、アンダーセンコンサルティングの方が希望に近かったのですが、面接のときに敷居の高さを感じてしまい、結果的には日本企業的な雰囲気を持つ後者を選択しました。ここは、
文化的に肌が合いそうだと感じたため選びました。
同社に入社させていただき、アサインを待っている際「人事の領域に興味がある」という話をしていたところ、SAPの人事モジュールを活用したシェアードサービスセンター(人事や経理、総務等の間接業務を1ヵ所に集約し、コストの低減を図る経営手法)の構築という大きなプロジェクトに入ることができました。
その中で、人事の業務フローについて一通りの再設計に携わり、人事の基本的な業務に肌で触れることができました。そこで「
人事領域で経験を積んだことで自信がつき、マーサー等の組織・人事コンサルティングでもやっていけるのではないか」と考えるようになり、エージェントの方に相談して複数社を受け、マーサーに転職をしたのが2001年の5月でした。それから現在まで15年在籍しています。
組織・人事に関わる幅広いソリューションの提供
稲橋
組織・人事への道を能動的に切り開いてこられたのですね。では、中村様が現在在籍されている組織・人事変革コンサルティング部門のご紹介をお願いします。
中村様
マーサーの組織・人事変革コンサルティング部門は、人・組織に関わるお客様の経営に直結する課題を解決するコンサルティングサービスをおこなっています。
人・組織に関わる領域では、組織づくりから、役員報酬及び従業員向けの人事制度という人材管理の仕組みづくり、タレントマネジメントに至る幅広いソリューションを提供しています。現在では、そこからさらに人事のオペレーション部分、システムの部分にもサービス領域を拡大しようとしています。
山尾
顧客からのニーズも出てきているというわけですね。
中村様
今まではお客様自身で実現したいことを考え、システム系の会社に依頼することが多かったわけですが、「できあがったものの結局運用が回らない」という話をよく聞きます。
現在は、システムのパッケージ化が更に進歩していますので、今後は、その仕組みを活かして自社のどんなエッセンスを入れ、どう運用するのかという、我々が得意としている領域に主な課題が移ってきていると思っています。
また、マーサーのインフォメーション・ソリューションズ部門では、非常に大きな組織・人事に関するデータソリューションを提供しています。マーサーの人事領域に関するデータ、情報は全世界を押さえており、業界トップの情報量を誇っています。そうしたマーサー独自の基盤も合わせて、お客様に価値として提供できることも大きな強みです。
グローバルな体制とスムーズな連携
山尾
グローバルな連携の場面で、例えば日本のお客様がアメリカに進出するというケースでは、日本と現地のどちらが舵を取っていくのでしょうか?
中村様
お客様のビジネスモデルとビジネスプランから、一番いいフォーメーションは何かをまず考えます。日本の本社が主導することが望ましい場合は日本がリード役になります。海外との連携が望ましい場合は、海外と連携したソリューションを展開していきます。マーサーのグローバルな体制は充実しており、お客様にとって最適な進め方に合わせて、マーサー側のチームをスムーズに整えられることもマーサーの強みです。
経営視点からの課題の読み解きと最適なソリューションの提供力、グローバルなネットワーク、インフォメーション・ソリューションズという業界トップのグローバルな情報サービス。その3つが相まって、我々のマーケットの中におけるポジショニングが確立されていると思います。
稲橋
最近多い案件やトピックスはありますか?
中村様
マーサーにご相談頂く内容として特徴的なものは大きく2つあります。ひとつがグローバル化対応、もうひとつは自分たちでは解けない難しい問題の解決です。後者では、色々試してみたけれども、「これは自力では解けない問題だ」と気付いたときにマーサーに相談がきます。
マーサーは、組織・人事の領域で最も価値の高いソリューションを提供できる会社です。当初は他の会社でもできるのではないかと他の会社に依頼をされた場合でも、本当に難しい問題を抱えているお客様はマーサーに戻ってきてくださるということもよく起こります。
そういう意味では、マーサーが扱う案件に楽なものは少ないです。常にチャレンジングなテーマが課せられています。しかし、それがやりがいにもつながっています。
最大のコンペティターはお客様。常にお客様の一歩先へ
山尾
ここ5年くらい特にグローバルな案件が増えていますが、そのなかで大きく変化した部分はありますか?
中村様
私が入社した2001年から2006年までは、いわゆる成果主義人事ブームでした。そのブームが去ったあと、2007~2008年からは、これから本格的にグローバル化に向かう、というお客様が増えてきました。しかし、2007年から5・6年経った後には、お客様自身のグローバル化に対応する経験値がだいぶ積まれています。
人事のグローバル化が進んだお客様に対し、グローバル化のテーマでコンサルティングをするとなると質を一段上げていなければ価値を感じていただけません。
数年前だと通用していたようなディスカッションペーパーが今では古い話になってしまい、その先に悩みがあるということになります。そういう意味では、特に組織・人事というテーマを扱うコンサルティング会社にとっては、最大のコンペティターがお客様自身であると感じています。
常にお客様の一歩前にいかなければなりません。マーサーがこの業界でトップのクオリティを発揮する会社であり続けるためには、それが宿命づけられています。
山尾
お客様のマーサーに対する質感を上回るためには、自分たちの質の向上や力のブラッシュアップが一番の肝となるということですね。
中村様
はい。我々が提案している内容で、お客様ご自身が「これなら自分達でもできる」と言われて落とすことがあります。
我々に求められている一番重要な能力は、学習能力です。それはグローバルでも全員理解していて、お互いに情報交換をし高め合っています。
クライアントに価値を提供できる人が一番偉い
稲橋
では、御社の求める人材像、スキル、人間性と、チームの雰囲気をお聞かせください。
中村様
マーサーには様々な重視すべき価値観があり、「MERCER PRIIDE」という形でまとめられています。Passion(情熱)、Respect for diversity(多様性の尊重)、Integrity(高潔さ)、Innovation(革新)、Dedication(献身)、Empowerment(エンパワーメント)の6つです。
このバリューを体現している人がグローバルに揃っていて、プロフェッショナルとして絶対に守らなければならない高潔さを持っている人たちの集まりであるところがマーサーのいいところです。一緒に働いていて気持ちの良い人が多いということは、長年働いていて感じます。
山尾
上下関係もなさそうですね。
中村様
組織ですから完全にないとは言えません。公式な権限は、組織をマネジメントしていくためには必要ですから。ただ、コンサルティングの現場では、お客様の課題に対してコンサルタントは平等であるというのが原則です。
クライアントに価値を提供できる人が一番偉いということが原則ですから、私も常に研鑽が求められています。油断していると、直ぐに価値がなくなってしまいます。プロフェッショナルとしての高潔さを持ち、クライアントに価値を提供することに強い想いがある方に来ていただきたいです。
山尾
御社で働くことのメリットややりがい、他の総合系と比較して違うところがあれば教えてください。
中村様
様々な会社がこの分野のサービスを提供していますが、マーサーはこの分野を中心に据えている会社です。組織・人事がもたらす実行力の強化こそが改革の要諦だと感じている人、組織・人事という領域での問題解決を突き詰めたい人にとっては一番いい会社だと思います。
組織・人事の領域に取り組む中では、人の本質は何なのか、国・地域の特性の違いはどこにあるのか、という問題にも直面します。幅広く、自分なりに勉強し続けなくてはなりません。勉強することが尽きないので、学ぶことが好きな方には面白い仕事だと思います。
求められるものは洞察の深さ。自分がどういう人間かが問われる仕事
山尾
プライベートな話もお伺いしたいのですが。趣味はございますか?
中村様
私の趣味は将棋です。10年前に子供が生まれ、インハウス的な趣味を探して始めました。初めて道場に行ってからは負けず嫌いが高じて止まらなくなりました。
将棋を始めてから、お客様の意図を汲んで自分がどういう言葉を選ぶべきかと自然に考えられるようになり、結果的に仕事に活かせたように思います。少なくとも、当時の私のスキルアップにはつながりましたね。
あとは、歴史や自然科学に関する本や情報を読むことです。仕事に役に立てるためという部分も大きいですが、どちらかと言うと純粋に趣味として楽しんでいます。
今、私はプリンシパルとして仕事をしていますが、立場上お客様の中でもエグゼクティブの方達と相対することが多くなります。
そういった場面でお客様から求められるのは、お客様自身がぼんやりと課題と感じていることに形を与え、ポイントを突く洞察の深さです。そこでは、短い時間で価値を出す真剣勝負が求められます。
そうなると、常に自分自身を高める必要があると感じます。当然、自分自身と向き合うことが必要になります。私の場合、仕事に直接関わらない領域で教養を深めることができ、更に自分が楽しんで取り組めることとして行き着いたのが物理や数学、歴史の世界でした。こういった趣味は仕事にいい形でフィードバックすることができていると感じています。
稲橋
最後に読者の方へのメッセージをお願いします。
中村様
世の中にある資本は「ヒト・モノ・カネ」ですが、天然資源がない今の日本では“ヒト”はとても重要です。江戸時代から第二次世界大戦の前までは、日本は貴金属や石炭等の資源が比較的豊富に産出されていた国でした。しかし、今や、日本にあるのはヒトの力です。そのヒトの力を最大限に引き出すことは、非常に意義あることだと思っています。
組織・人事の分野こそが価値があると思っており、学ぶのが好きな方には、ぜひご応募いただきたいです。