コンサルティングサービスを提供する国内最大規模のコンサルティングファーム、PwCコンサルティング合同会社。
今回はManagement Consultingのファイナンスチーム マネージャー 市川貴亮様にアクシスコンサルティングの山尾康久と坂本健太がインタビューしました。
文中の情報及びデータ等は2016年3月現在のものです。
コンサルタントの方と接して、
“専門性=資格”という考え方が変わった
山尾
まずは、市川様のこれまでのご経歴からお伺いします。
市川様
大学卒業後、大手都市銀行に入行しました。就職活動中は、将来的に何がやりたいか見えないところがあり、銀行なら様々な業種を見られて、多様な仕事に携われると聞いたのが銀行を選んだ理由です。
銀行には2年9ヶ月在籍し、最初はローテーションで支店配属となり、ロビーに立ってクレジットカードや預金サービスを来店されたお客様に販売する仕事をしていました。
2年目になったときに法人営業部配属になり、企業の与信管理や中小企業に対して貸し出しをする部署で、支店の周辺の企業に飛び込み営業をするようになります。
その後、もう少し規模の大きな法人営業部に異動になり、初めて自分の担当として20社程度を持ち、会社に対して預金の貸し出しや金融サービスのセールスをおこないました。
銀行は入社後何年かは新人ローテーションで異動しますが、その後はキャリアが固定され、先が見えてしまいます。2年9ヶ月経ったところで、銀行とは異なる領域で、自分の専門性を築きたいと考えるようになりました。
若かったので短絡的に”専門性=資格”と考え、公認会計士の勉強をすることに。しかし、会計士の資格を取った後に何をするかは決まっていません。
転職会社に登録し、大手金融業で自己資金を使って企業を買収する部門から内定をもらいました。銀行では8時出社22時帰宅というルーティンを繰り返していましたが、その会社の話を聞いてみると、働き方次第で時間も自由になる社風ということで、仕事の内容も面白そうだったので転職しました。
その会社には、外資系戦略コンサルティング会社出身の方、大手監査法人出身の会計士の方など様々な方がいて、そういった方々と仕事をするうちに、”専門性=資格”という考え方が変わり始めます。
資格を持っているから強いのではなく、課題があったときに、会社に対し自分の知識を使い実務への落とし込みを見据えた提案ができる。こういった点に専門性があると思い直し、コンサルティングに興味を持ち始めました。
2社目の会社に在籍しているときから資格の勉強をしていたのですが、ちょうどリーマンショックのときに自己資金を使っての投資ができなくなり、会社を辞めて2年間勉強し、公認会計士の資格を取得しました。
坂本
2社目の会社には何年在籍されていたのですか?
市川様
3年です。資格取得後は、会計税務のコンサルティングに興味があり、M&Aの経験があったので、コンサルティング&M&Aという軸で就職を考えていました。そのときPwCが会計士の採用をしていたので応募をして、入社したのは2011年2月です。
入社当初は、持株会社化など組織再編(PMI)の仕事が主でしたが、徐々に管理会計や業績管理の仕事が増えてきているという状況です。
ルールがないことが苦労した点であり、
大きなやりがいを感じられる部分
山尾
事業会社からコンサルティングファームに入社して感じた一番のギャップは何でしょうか?
市川様
銀行は何をやるにもルールがあり、そのルールに従って仕事をする必要があります。
コンサルティングはルールがありません。クライアント先では、課題をどう解決するか、どのように整理するか、ルールがないなか、自分で考えて道筋を立てて進めていく、というのが事業会社と大きく違います。それが、私がコンサルティングファームに入社して苦労した点です。
一方で、銀行は社会人としてのマナーなどに厳しいので、社会人の基礎的な行動パターンをつくるという意味では役に立っていると思います。また、事業会社もそうですが、銀行はストレス耐性がつきます。コンサルタントになっても、そこで身につけた粘り強さが役に立っていると感じています。
山尾
事業会社と比較して、コンサルタントならではの面白いところや刺激的だと思うところはありますか?
市川様
課題は各社各様で、どう進めるのかは状況に応じて変わってきますが、それに加えてルールがないので、進め方が正しいか、対応策が適切かがわからないところがあります。
そのような中でいかに考えて周りの方を説得しながら進めて行くか。例えば役員クラスの方と合意ができた、というように、最終的に成果として現れたときの達成感が大きく、やりがいのひとつだと思います。
グローバルとの連携を強化。海外への出向にも力を入れている
坂本
入社してから市川様が所属されているチームのご紹介をお願いします。
市川様
入社当時はF&A(ファイナンス&アカウンティング)で、今はManagement Consulting ファイナンス(以下、MCファイナンス)というチームにいます。
経営企画部や経理部・財務部の方をカウンターパートにして、経理関係の業務や業績評価、管理会計等のソリューションを提供するチームです。
元々F&Aだった部署が、今年度からManagement Consultingと、Technology Consulting(以下TC)というシステム系のチームの2つに分かれました。私の在籍しているMCファイナンスは業務系の仕事をするチームです。
システムを担当したい方はTCチームに入るといいと思います。当然我々のチームは、経営管理方針策定などの上流工程から入っていきますが、最終的にシステムに落としていくので、結果的にシステム案件も担当することはあります。
しかし、基本的にはチームを分けているので、業務をやりたい人はMCファイナンス、システムをやりたい人はTCというように自分の希望に合ったチームを選んでいます。
山尾
市川様のチームにおける、市場環境への関わり方の変化や動き、トレンドを教えていただけますか?
市川様
海外案件は増加しています。クライアント側がグローバル化を進めていて、我々がどれだけ対応できるかという段階になっているのではないでしょうか。
PwCの場合、グローバルネットワークを持っているので、グローバルとどれだけ連携を強めていくかが重要です。
PwCは海外への出向に力を入れていて、人数も増えています。実際に海外のソリューションを取り入れて提案していく、という案件が最近多いと思います。
山尾
グローバルからの情報は、直接、あるいは何かデータベースがあってその事例を吸収されているのでしょうか。
市川様
海外の事例を検索できるサイトはありますが、それだけでは必ずしも十分な情報は出てこないので、実際にソリューションを得る目的で海外に行っている方にコミュニケーションをとって教えてもらう。また、知見を持っている方をプロジェクトに招いてチーム内でナレッジをシェアした上でクライアントに提案する、ということもあります。
人が財産。人を大事にしようと教育に力を入れている
坂本
御社やチームの雰囲気を教えてください。
市川様
MCファイナンスチームは上長とのコミュニケーションも取りやすいです。コンサルティングは、人が財産です。一人ひとりのパフォーマンスを最大化することで、最終的にチームとしてのパフォーマンスを最大化できます。
そういう点で、MCファイナンスチームはコミュニケーションが取りやすく、人を大事にし、教育に力を入れています。それが我々のチームの特色です。
坂本
PwC全体の研修プログラムがあると思いますが、チームでおこなっている特別な教育はありますか?
市川様
我々のチームが担当するのは企業経営に関する話が多いので、業績評価や内部統制などをテーマにピックアップして月に2回、1回2時間の勉強会を実施しています。
対象は新卒や中途の若手コンサルタントです。マネージャー手前のSA(シニアアソシエイト)を講師に、マネージャーをチューターとしてつけて、プロジェクトアサインの事前準備として経理財務を中心とした企業経営の知識を学ぶことが目的です。
山尾
マネージャーの立場になって、心がけていることはありますか?
市川様
スタッフのときは、自分のパフォーマンスをどう最大化するかを考えれば良かったですが、マネージャーになってからは、チームとしてどうパフォーマンスを最大化するのかを意識しなければなりません。
コミュニケーション面では、ちゃんと話を聞いてできるだけ部下が意見を言いやすい環境をつくろうと思っています。特に中途で入ってくる方は、できることとできないことがはっきりしていて、知識はあるけどコンサルティングスキルが追いついていないということもあります。
得意不得意を見極めて得意なところを伸ばして苦手なところはサポートして、という形で運営していきたいと思います。チームとしてのパフォーマンスの最大化がマネージャーとして求められていると感じています。
坂本
オリジナルの指導法はありますか?
市川様
私は「会話する」ですね。さも自分がやるような感じで話しかけて、意見を言ってもらい何回もコミュニケーションを取ります。お互い納得した段階で「お願い」と言ってPowerPointに落としてもらいます。
そして自分なりに作ってもらって直す、というのを繰り返すと、部下もコツに気づいてくれて、楽しそうに仕事してくれます。私も上司から同じように教えられました。
PwCは新卒の方も含めて優秀な方が多いですが、バックグラウンドも違えば得意分野も違います。相手のいいところと自分のいいところを組み合わせて、一個人として尊重しながら一緒に仕事をしていくことを心がけています。
山尾
御社で働くメリットや、やりがいを教えていただけますか?
市川様
優秀な方が多いので、そういう方と知識のみでなく、メンタル面でも切磋琢磨しながらやっていけるところがひとつのメリットだと思っています。仕事によっては落ち込むこともありますが、前向きな方と会うと自分も鼓舞されて頑張ろうと思うようになります。
PwCは、監査のみでなく、税務やディールズなどグループ内に様々なサービスを提供していて、自分が希望すれば会社を超えてやりたいところに異動できます。ワンストップでサービス提供ができているため、内部異動がしやすいのもいいところだと思います。
また、事業会社と比較して自由に働けています。自分の頭で考えて自分のやりたいようにできますし、働き方もパフォーマンスさえあげていれば、夜でも朝でも縛られずに自分のペースで仕事ができます。
環境が違う事業会社からくると、自由な環境でパフォーマンスを上げるという部分で、最初は頑張らないといけませんが、そこを乗り越えられれば、自分のやりたいようにやりたいことができる環境があります。
「いい経験ができる」と楽しめる方は向いている
坂本
馴染まない方とはどういう方でしょうか?
市川様
環境変化に対応できない人です。ジョブ毎にやり方が変化するので、柔軟に対応しつつ自分のやり方を確立できないと難しいと思います。マインド面で、変化できる方がいいですね。
また、課題を与えられたときに「いい経験ができる」と楽しめる方でないと難しいです。手を挙げれば仕事ができる環境なのです。逆に自分で声をあげられない方にはチャンスがないので苦しくなると思います。
山尾
プライベートについて伺いたいのですが、お休みの日は何をされていますか?
市川様
子供が小さいので、週末は子供と遊んでいます。うちの子は21時前後に寝るのですが、できれば平日も、会いたいじゃないですか(笑)。できるだけ昼間に集中して仕事を片付けて、できるだけ夜は帰ります。
どうしても終わらないときは早めに切り上げて家に帰って寝て、朝早く起きて仕事します。子供との時間をできるだけ持ちたいので、メリハリをつけていますね。
スキルは後で身につく。大切なのはコンサルティングマインド
坂本
最後に、読者へメッセージをお願いします。
市川様
「スキルは後で身につく」ですね。
バックグラウンドがあったとしても、入る部署によって求められる知識は違いますし、その都度キャッチアップが必要なので、入ってくるときはコンサルマインド、例えばリーダーシップがとれる、コミュニケーション能力が高いといったベースとなるスキルがあれば知識面は気にしなくていいのです。
スタッフレベルでも手を挙げればチャレンジできる環境なので、本人のやる気次第でいくらでも成長できます。
事業会社では役員クラスと若い方がお話しする機会があまりないと思いますが、コンサルティングファームは結構あります。
私も入社当初から役員の方の集まるミーティングに出て議事録を作っていました。
マネージャーに上がる前でも自分でまとめた経営管理方針や原価管理方針を、本部長や取締役、執行役員クラスの集まる会議のなかでプレゼンして、方針合意をしたりしていました。若いうちから経営層と話す機会があるのもひとつの特色ですね。
山尾
コンサルティングファームでは、手を挙げて提案してもらうことを上の方も待っている感じがしますね。
市川様
お客様も提案を待たれています。言ったことをまとめてほしいというお客様もいますが、「自分たちでは決められないのでどんどん提案してくれ」といって、提案した内容がその会社の経営管理の方針になることもよくあります。
もちろん20代後半や30代でも経営企画にいれば会社の方針に関わることもあるかもしれませんが、会社の方針を決めるところで自分の意見が通ることがあるというのがコンサルタントの醍醐味ではないでしょうか?
事前準備は相当大変ですが、やり遂げた後の喜びや達成感、開放感は癖になります。そういう環境で刺激を受けたいと思う方には、弊社はおすすめです。ぜひチャレンジしてみてください。