「究極なる価値と喜びを創造する」。お客様・ビジネスパートナーとコラボレーションで、新しい価値創出に取り組み続けるシグマクシス。
ヒューリスティックグループのマネージングディレクター柴沼俊一様に、アクシスコンサルティングの山尾康久と三石真司がインタビューしました。
文中の情報及びデータ等は2015年11月現在のものです。
コンサルティングの常識を変えていく
三石
はじめに柴沼様のこれまでのご経歴についてお聞かせいただけますか?
柴沼様
新卒で日本銀行に入社してエコノミストをしていました。その途中でアメリカの大学院に進みましたが、そこでアンパイアからプレーヤーの立場に変わりたいと考え、日本銀行に9年在籍した後に戦略コンサルティングファームのマッキンゼー・アンド・カンパニーに転職しました。
3年ほど経験を積んだところで、若気の至りですが、もう自分にも経営ができると思ってしまい、経営をやらせてほしいと様々な会社の門を叩きました。が、そのような話を受け入れてくれるところがあるはずもありません。(笑)
そのとき、ライブドアの役員だった私の友人から、金融部門を切り離すことになったので一緒にやらないか、と声がかかり、執行役員という立場で再生を手がけました。
一通りやりきったと感じたところでシグマクシスに加わりましたが、普通のコンサルティングファームだったら入社しなかったと思います。金融もやった。コンサルタントもやった。再生にも携わった。あとやっていないことは、ベンチャーだろう、と。「従来のコンサルティングの常識を変える」という、シグマクシスの持つベンチャースピリットに惹かれたことが大きかったように思います。
三石
創業メンバーということになりますが、参画までにはどのような経緯があったのでしょうか?
柴沼様
前職での再生が一段落ついた後、マッキンゼー時代に同じ部屋で働いていた同僚と偶然再会したことがきっかけでした。
彼はリップルウッド側でシグマクシスの設立に関わっていたのですが(シグマクシスは三菱商事とリップルウッドの共同出資により設立)、その時におもしろそうな会社が二つあると提案されました。
ひとつがシグマクシス。もうひとつはホワイトシップで、私のチームに「Vision Forest」というプログラムがありますが、これを一緒に開発した会社です。
投資銀行業務をしようと考えた
三石
シグマクシスではどのような立場からスタートしたのですか?
柴沼様
ストラテジーチームのアソシエイトパートナーいうポジションで入り、1年後にパートナーになりました。
はじめはオーソドックスな戦略立案がミッションでしたが、私は自分にミッションを勝手に課してしまうタイプで、誰にもやれとは言われていないのに、M&A、投資銀行業務をやろうと決め、銀行で投資業務をやっていたバンカーに加わってもらい、チームを組みました。
チームといってもバーチャルな組織としての活動です。やる意味があるのかと言われ続けていたのですが、昨年この領域が子会社として独立するまでになりました(M&Aアドバイザリー事業を手がける株式会社SXA)。
山尾
しっかり形にするところまで持っていったのですね。
柴沼様
元々、売上に連動する成功報酬モデルをつくりたいと考えていました。ただ、契約期間は長いところだと3年なので、その間の売上が上がらず、採算が取れません。やはり株式をもらわないと難しい。それでM&Aということです。
山尾
ご経歴やこれまでのお話を伺っても、失敗とは無縁という印象ですが。
柴沼様
いえいえ、紆余曲折ばかりですよ。しかし、私はあまり失敗を気にしません。万が一クビになっても今後の人生に活かしていけばいい、とある意味楽観的に考えて、やりたいことをやらせてもらっています。(笑)
イノベーションを生み出すことにフォーカス
山尾
柴沼様のチーム、ヒューリスティックグループについてお聞かせください。
柴沼様
イノベーションを生み出すことにフォーカスしているチームです。これまで日本はオペレーショナルエクセレンスを目指してきた企業が多かったのですが、今はイノベーションが必要な時代です。そのサポートをしています。
アプローチ方法のひとつが、ビジネス・プロトタイピング。一般的な事業開発は時間をかけて戦略を練り、サービス化してローンチするという流れですが、そのサイクルをプロトタイピングとして素早く回してしまいます。
良い例えになるかどうかわかりませんが、モバイルアプリ開発の現場を想像していただけるとイメージしやすいかもしれません。モバイルアプリ開発は従来のアプリ開発とは違って、2、3日でプロトタイプを用意し、1週間単位でピボットしていきます。
このような考え方はモバイルアプリ開発に限らず重要です。イノベーションを起こすために、ビジネス・プロトタイピングという概念を使って、クライアントの行動様式と価値観を変えていくわけです。
山尾
戦略と検証を同時に進めてしまうようなスピード感ですね。
柴沼様
もう一方の視点で、組織・人材を育成する「EGAKU」プロジェクトがあります。先ほどお話した「Vision Forest」の中にある、人の心を開くプログラムです。
外科的な発想がビジネス・プロトタイピング。内科的な発想がEGAKU。クライアントを支援するために二方向のアプローチがあるわけです。
そしてクライアントに深く入り込んでいくと、今度は一緒に事業開発をやろうという話を頂けるようになります。
コンサルティングで止まらずに、リアルな事業を創っていくところまでを一気通貫に進めていくことができる。これが他社には無い、我々の強みです。
山尾
非常にユニークなアプローチですね。競合ファームとのコンペになることもあるのでしょうか?
柴沼様
コンペになることはほぼありません。信頼関係で受注することが多いですね。シグマクシスなら事業開発まで一緒にできるだろうと期待されているのです。
違う言い方をすれば、その手前の戦略立案やBPRのところでクライアントから信頼を得ているからこそだと思います。
また最近はVision Forestから入るケースもあります。自組織にイノベーション人材を増やしたいと考えているクライアントに対して、Vision Forestを実行すると、彼らからこんなことがやりたいという声が自然に上がり、「それでは一緒にやりましょうか」という流れになっていますね。
クライアントの心に火をつけて一緒に飛び込む
三石
柴沼様のユニットはどのような構成になっているのでしょうか?
柴沼様
3つのチームに分かれています。「Vision Forest」、「Innovative Organization」、「Business Innovation」。
「Vision Forest」と「Innovative Organization」が人と組織を変革するチーム。「Business Innovation」が事業開発と投資を担当します。
各チーム10数名、全体で40名ほどのユニットです。バックグラウンドは本当に様々ですね。私のように戦略ファームやベンチャー経営出身の人間もいれば、IT経験者やプロセスコンサルタントもいます。
三石
人と組織というテーマと聞き、人事コンサルタント経験者が多いのかと想像していましたが、お話を聞くと、求めるスキルセットが違いそうですね?
柴沼様
人事の評価制度をつくるわけでなく、クライアントの心に火をつけて一緒に飛び込んでいくという仕事なので、人事コンサルタントとはスキルセットが異なります。イノベーションを創り上げていくチームですから事業開発の経験者が多いですね。
三石
なるほど。良くわかりました。プロジェクト期間はどのようなケースが多いのでしょうか?
柴沼様
Vision Forestはワンデーワークショップもありますし、3ヶ月単位のものもあります。
また年間を通して実施する、価値創造人材プロジェクトというものもあります。こちらを3年ぐらい続けているお客様もいますが、比較的多いのは3ヶ月単位でしょうか。
ビジネス・プロトタイピングも3ヶ月でおこなうことが多いですが、事業投資をしているところとは年単位ですね。
アグリゲーター人材を輩出していきたい
山尾
柴沼様のチームのカラー、雰囲気を教えて頂けますでしょうか?
柴沼様
思考は速く、すぐ行動する。トライ&エラーを体で動かせるメンバーが多いです。ある意味ストリート・スマートな人間。頭が抜群によくても動けないと駄目ですね。
コンサルティング手法を使った問題解決スキルを持ちつつ、仮説を立てたらすぐ動く。お客様、現場に近い人に話を聞いて、モノを作る必要があればすぐ作る。
お客様の中だけで解決できないような内容なら、誰と組めばいいか自分で考え、どんどん進める。そのようなメンバーです。
あとはベースの部分として、他者に対する献身の心をとても大切にしています。他の人が強い想いを持っているなら、自分のやりたいことは少し脇に置いてでもサポートしてあげる。
私のチームは、コラボレーションやアグリゲーションという領域を手がけています。ただ相手は初めから我々とコラボレーションしたいと思っているとは限りません。
ちょっと一緒にやってやろうか、と思ってもらえることがとても大事です。ヒエラルキーではなく、フラットな関係を築ける人でないと務まらない。
三石
そうすると、クライアントと一緒に立ち上げた事業への「出向」、という形が社員の新たなキャリアパスとして生まれそうですね?
柴沼様
その通りです。チームメンバーには、アグリゲーターと呼ばれる人材になってほしいと考えています。そのためには従来のコンサルティング能力に加えて、ビジネスプロデュース力とマネジメント力が必要です。
ここで言うビジネスプロデュース力は、商品開発ができるというレベルに留まらず、会社に対して投資をする目線を持つこと。
マネジメント力は、ラインのオペレーションマネジメントはもちろんのこと、会社全体のガバナンスまでを見ることです。
コンサルタントがこれらをすべて身につけようとすると、普通は転職を繰り返していく必要があり、転職の度にキャリアも分断してしまうため、少なくとも10数年はかかるでしょう。
シグマクシスではその全ての経験を転職せずに積むチャンスがあります。私はヒューリスティックグループをアグリゲーターの輩出機関として社会の中に位置付けていきたいのです。
生活感のある人を求む
山尾
最後に柴沼様のプライベートについてお聞かせください。どのような趣味をお持ちですか?
柴沼様
シグマクシスにいる人間は聞き飽きている話ですが、私は「ママ」なんです。(笑)共働きですが、妻は私をさらに上回るタフな環境にいます。そのような事情もあって、10年くらい前から子どもの朝晩の世話は私が担当しています。
山尾
子育てが趣味ということですか?
柴沼様
趣味であり大事な仕事です。そして子育てをしているうちに、料理も大好きになりました。昨日はビーフシチュー。一昨日は焼き魚。家事を自分の趣味にしています。
他にはトレイルランも好きです。子どもも巻き込んで、週末一緒に練習しているのですが、走っていると近所の小学生が「俺も走る!」と加わってきて。今は7、8名で走っています。知らない子も混じっているのですけど(笑)。
山尾
土日はしっかり休みをとっているのですね。
柴沼様
午前は子どもの面倒を見ながら仕事をしていることが多いかもしれません。午後は完全にオフにしています。
三石
ライフワークバランス座談会のインタビュー記事を拝見しましたが、柴沼様は、平日も上手にバランスをとっていらっしゃるようですね。
柴沼様
平日は基本的に朝6時スタートで、夕方6時には終了しています。もちろんお客様と会う日もありますが、そこまで遅くはなることはほとんどありません。
三石
コンサルタントの仕事を長く続ける為にバランスを保つことは非常に重要かと思いますが、柴沼様のライフワークバランスを保つ為の秘訣はどこにあるのでしょうか?
柴沼様
私の場合はやはり子どもです。子どもとの時間を確実に取る。一旦そう決めると、あとは引き算で仕事をする時間が決まってしまいます。その中でなんとかするしかないと考えることでバランスが取れています。
私のチームは子育て中のママを大歓迎しています。近々入ってもらう予定の方も、週3、4日しか働けません。しかも9時-16時勤務で、かつ途中で出たり入ったりしていいですか?と聞かれました。
まったく問題ありません。その代わりアウトプットを出してくださいと。アウトプットを出してくれれば、どこで仕事をしていてもかまわないとお伝えしています。
そのように制限を外すことで、とてもパワフルな人が見つけられます。朝から晩までオフィスにべったりしている人より遥かにハイパフォーマーだったりもします。
山尾
なるほど。時間の制約がある分、生産性に対する意識が高いのでしょうね。
柴沼様
生活感があるということがとても大事です。プロフェッショナルと呼ばれる人たちは生活感のない方が多いのですが、はっきり言うと、それでは商売になりません。生活感を持ってビジネスを進める人間の方がお客様も安心します。
先ほどお話しましたが、今後の日本社会においてアグリゲーター人材がとても大事になります。一個人としても幸せになれると考えています。
アグリゲーター人材になるのは茨の道かもしれませんが、シグマクシスではその環境を用意しています。我々と同じ志向の方はぜひ一緒にやりましょう。志ある方とお会いできることを楽しみにしております。