今回は、大手外資ファームから2020年に富士通グループより設立されたRidgelinez株式会社に転職した事例をご紹介します。
Ridgelinez株式会社 田中 浩基様は、新卒で大手の外資ファームに入社し、デジタルに強みを持った人事コンサルタントとしてキャリアを歩み始めます。入社から10年弱でシニアマネージャーに昇進。その後も順調にキャリアを歩む中、設立から間もないRidgelinezにディレクターとして転職されました。
今回は、「人」を起点とした企業変革を加速すべく、全社人事戦略策定・DX人材戦略策定など、戦略立案フェーズから支援を行うPeople & Organization Transformation(以降POT)Practice* でご活躍中の田中様に、チャレンジングな環境に身を投じた背景や、転職して得られたスキル、マインドセットなどについて、転職をサポートしたアクシスコンサルティングの稲橋が伺いました。
※2024年12月時点の内容です
*Practice:専門領域(業界・ビジネステーマ・技術)ごとに組成されるプロフェッショナルコミュニティ。Ridgelinezでは社員がPracticeを選択し参加する。
30代前半でシニアマネージャーに昇進、「スコープを広げる」取り組みで評価を高める
稲橋
あらためて、前職でのキャリアについて教えていただけますか。
田中様
私は新卒で外資系のファームにコンサルタント職として入社し、SCM領域でのSAPコンサルタントとしてキャリアをスタートさせました。
入社後約2年間、SCM領域でのSAP導入等に開発・PMOメンバーとして携わりました。3年目に差し掛かる時、人事領域でのAI活用プロジェクトのメンバー募集が社内であり、ちょうどアサイン間のタイミングであったため応募したところ、メンバーとして加入できました。
当時はAI黎明(れいめい)期で、知見がある人は社内にも多くありませんでしたが、自身やチームで試行錯誤しながら取り組み、AIを含むデジタルの知見を得られたことで、AIやデータサイエンスを活用した人事業務の高度化を自らの得意領域とすることができました。
AI活用を得意とする人事領域のコンサルタントは社内にはほとんどおらず、キャリアの早い段階から、プロジェクトマネジメントや提案活動等、多くのストレッチの機会をいただき、がむしゃらに取り組んできました。
入社後7年目でマネージャーになったころからは、デジタルの領域にかかわらず、社員のリスキリングやエンゲージメント向上など、人事領域の案件を幅広く担当するようになりました。
稲橋
マネージャーに昇格された時、キャリアの展望はいかがでしたか。
田中様
正直、当時は明確な展望を持てていませんでした。マネージャーとして顧客に継続的に価値提供するとともに、配下のメンバーの育成や稼働のための案件獲得等、自分のチームに課せられたミッション・KPIを達成することに集中していました。
稲橋
その後、2年半ほどでシニアマネージャーに昇格されましたが、マネージャーやシニアマネージャーになるために心がけていたことや、評価されるために取り組んできたことがあれば教えてください。
田中様
私は元々人事領域でのデジタル活用を強みとしてきましたが、上流の構想策定や業務設計の提案やデリバリーをリードしたり、人事以外の案件にも取り組んだりと、意識的に自分の幅を広げるよう取り組みました。
稲橋
戦略も、その先のDXも、人事も強い、というキャリアを作ろうと心がけてきたのですね。
田中様
そうですね。コンサルタントとしての自分の専門性はもちろんあるべきだと思いますが、人事やAI以外にも「幅を広げる」ことで、顧客に対し、より「面」で支援できる存在になりたいと感じていました。
例えば、前職での関西のクライアントには、「AIを梃子に専門性やエンゲージメントをどう向上させるか」「構築したシステムやアセットを新規事業としてどう外部に拡販するか」といった人事領域に限らない案件も多く提案・デリバリーしました。
そのクライアントでは、年間6~7件のプロジェクトが進行していたため、案件間の関係性を考えたり、6~7個のチームをうまくマネジメントしたりと、難しいこともありましたが、自身の幅を広げる意味でも非常に貴重な機会だったと思います。
いちコンサルタントとしての経験の蓄積・成長を求め転職を決意
稲橋
転職するかどうか迷っている状態から、実際に転職しようと決めるまでには、どんな心境の変化がありましたか。
田中様
前職はクライアントにもメンバーにも恵まれた環境でした。一方、ある時から環境に甘えている自分を感じていました。恵まれた環境に甘えることなく活動し、いちコンサルタントとしてより成長したいとの思いが日々強くなり、転職をしようと決めました。
稲橋
転職を考え始めてから、どのくらいの企業と面談されましたか。
田中様
私は2023年の10月に転職しましたが、その前に10社ほどとカジュアル面談をし、応募まで進んだのは3~4社でした。
稲橋
面接で必ず聞いて確かめていたことはありますか。また、転職先を決めるにあたって企業選びの軸はありましたか。
田中様
面接ではKPIのことはよく聞いていました。自分が会社の期待に応えることができるところに行きたいと思っていたので、評価指標等は前職との比較もしながら確かめていました。
また、企業選びの観点では、組織の規模やソリューション、働き方等、前職とは違う環境を経験したい、という思いが一番強かったです。その観点でRidgelinezはまだ今年で設立5年目ですし、チームやソリューション等を新たに作る経験を通じて自身の幅を広げるという観点でフィットしたかなと感じています。
「自分で動かないと進まない」。組織紹介やオファリング資料等、積極的なアウトプットを心がける
稲橋
Ridgelinezは当時立ち上げから4年目でしたが、若いファームに飛び込んでご苦労はありましたか。
田中様
当時、POT Practiceのメンバーは数人程度で、社内でもチームの存在感が薄い状態でした。そのような状況で、まず何をすれば良いかと考え、組織紹介資料やオファリング構築を通じ、富士通も含めた社内外に組織の情報やケイパビリティを発信できるよう取り組みました。苦労もありましたが、新しいものを創り上げていく新鮮な経験でした。
前職ではチームが大きかったこともあり、自分でアウトプットするよりも、他の方のアウトプットの品質管理や、クライアントへのプレゼンテーション・折衝の役割を担うことが多かったです。Ridgelinezでは、自分のケイパビリティや専門性をまず社内の皆さんに理解してもらうためにも、意識的にアウトプットしていました。
稲橋
今はやりたいことができているという感覚ですか。また、前職で得られなかった経験やスキルで、身についたものはありますか。
田中様
そうですね、前職と違う経験や新たにビジネスを作る経験を積みたかったので、希望通りに働けていると思います。前職のソリューションは良くも悪くもシステムが中心でしたが、Ridgelinezでは人的資本経営を大きなテーマにした上流からの支援に力を入れています。そのような案件のソリューショニングやデリバリーを通じ、人的資本経営における各社の課題感や、変革のためのアプローチ等への理解や知見がより蓄えられていると感じています。またそれらを顧客の責任者に自ら説明する機会が多くあることも貴重だと感じています。
周囲とのコミュニケーションを継続し関係を構築
稲橋
現職にはディレクターとして入社されていますが、経営層により近い立場であることで苦労されたことはありませんでしたか。
田中様
社内の関係性が全くない中で、いわば組織の代表者の1人として活動を進めていくのは大変でした。当時はチームの存在感は薄かったですし、私自身も認知されていない中で、組織のオファリングや提案、デリバリーをリードするのは苦労しました。
そのため、まずは自分のことを理解していただくためのコミュニケーションを、チーム内外で愚直に続けました。そうしているうちに社内でのコミュニケーションの輪が広がって、仕事がしやすくなりました。
稲橋
振り返って、転職のタイミングはいかがでしたか。
田中様
私としては新たな経験をしたいと強く思っていたので良いタイミングだったと思っています。確かにディレクターでの転職はチャレンジングでしたが、今後も精進して役割を果たしたいと思います。
稲橋
もし、今から10年後に田中さんが前職からRidgelinezに移ったと想像すると、いかがでしょうか。
田中様
想像が難しいですが、私は前職1社しか経験していないので、仕事の仕方や思考が固まり、なじむのは大変だったかもしれませんね。もちろん経験豊富な状態でジョインすれば、より力になれる側面もあるでしょうし、良し悪しあると思います。
稲橋
田中様は現在ディレクターとしてどのようなミッションを遂行されているのでしょうか。
田中様
私には大きく2つの役割があります。まず人事組織変革のクライアント事例を多く作るということです。
そのために、案件を獲得し、良好な関係でデリバリーして成果を出すことで、まずはクライアントやマーケットでのビジビリティを高めたいと思っています。
もう1つのミッションは、対外的なThought Leadership活動を通じた会社・チームの認知度向上です。そのため、イベントの企画や登壇、記事の執筆、本企画のようなインタビューの企画・対応も行います。
稲橋
社内の評価はどのように実施されるのでしょうか。売上が中心なのでしょうか。
田中様
コンピテンシー評価が中心ですが、ディレクターの評価には受注に対する活動の過程や実績も勘案されています。
稲橋
前職では売上が中心の評価システムでしたが、会社から任されるミッションの違いで戸惑うことはありませんか。
田中様
確かにミッションは異なりますが、自分のすべきことは理解・納得して行動しているので戸惑うことはあまりないですね。評価もコンピテンシー評価ということで慣れない部分もありますが、丁寧なフィードバック含めた評価プロセスが良く練られているので早く馴染むことができました。
システムではなく「課題解決」を望むクライアントに対し、Ridgelinezのプレゼンスが高まっている
稲橋
先ほど、富士通との関係性についても触れていただきました。Ridgelinezと富士通との関係性について気になっている方も多いのですが、田中様から見てどのような存在なのでしょうか。
田中様
私は非常に良い関係性だと思っています。富士通の全社DXプロジェクト「フジトラ」にクライアントは高い興味を示しています。POT Practiceが作っているオファリングでも、フジトラのアプローチを取り入れてクイックスタートするということをうたっています。
富士通と一緒に案件に取り組んだり、一緒にビジネスを作ったりということも積極的に行っています。クライアントは、システムはもとより課題解決を望んでいますから、富士通の方と組んで相互に補完しながら推進することで高い価値提供が可能になると思います。
稲橋
お互いに補完できる関係性なのですね。
田中様
私はそう思っています。富士通のシステムやフジトラの知見、システムインテグレーション能力と、Ridgelinezのコンサルティングアプローチを組み合わせることで、クライアントへの提供価値が高まると実感しています。そのような取り組みを地道に継続することで、最近では我々のケイパビリティを認識した富士通の方からビジネスのお話をいただく機会も増えてきたと感じます。
※参考:富士通自身を変革する全社DXプロジェクト「フジトラ」が本格始動
https://pr.fujitsu.com/jp/news/2020/10/5.html
「短い期間でもチャレンジングな環境に身を置くと、思考と行動の幅が広がる」
稲橋
今後のキャリア像があれば、教えていただけますか。
田中様
多様な経験を通じてCHROや人事部長のパートナーの役割をよりしっかり担うことのできる存在になりたいです。そのためにRidgelinezとしての独自の知見やモデル、ソリューションを蓄えることに力を注ぎたいと思います。
また、人事領域ができるというだけではなく、自分の軸足は置きつつも、経営やIT等、いちコンサルタントとしてできることの幅をさらに広げ、クライアントに「面」で対応できるような、より深い知見を養いたいと思います。
稲橋
最後に、キャリアのヒントになるようなメッセージを伺えますか。
田中様
私がRidgelinezにジョインして良かったと思うのが、安全地帯から飛び出して「自分で行動しないといけない」とか「新しく創り上げないといけない」という環境でチャレンジできたことでした。短い期間でもチャレンジングな環境に身を置くと、思考も行動も変わり、幅が広がります。そういう意味で、環境を変えてみるのも良いと思います。
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