主な6つの【DX成功事例集】~定義からノウハウまでを解説~

近年VR(仮想現実)、AR(拡張現実)、Iot(Internet of things)やAI(Artificial Inteligence;人工知能)など新しいデジタル技術が急速に発展しています。企業にとっては、生産性・売上を拡大し、存続していくためにも、新しいテクノロジーを活用して企業を変革するDX(デジタルトランスフォーメーション)が急務の課題となっています。しかし、DX(デジタルトランスフォーメーション)という言葉がバスワード化しており、具体的に何を指しているのかわからない方もいるのではと思います。

今回はDX(デジタルトランスフォーメーション)の定義から事例の紹介、さらに成功の秘訣について解説させていただきます。

【目次】

  1. DX(デジタルトランスフォーメーション)とは:新しいテクノロジーを活用したサービス・顧客体験の創出と企業変革を行うこと
  2. 主なDX(デジタルトランスフォーメーション)成功事例集
  3. DX成功をもたらす3つのノウハウ

DX(デジタルトランスフォーメーション)とは:新しいテクノロジーを活用したサービス・顧客体験の創出と企業変革を行うこと

加速度的に発展・進化していくテクノロジーへの「期待」と、変革なければ存続できないという「危機感」から注目をあつめバズワード化しているDX(デジタルトランスフォーメーション)。
ITツールの導入なら全てDX(デジタルトランスフォーメーション)と呼ばれがちですが、DX(デジタルトランスフォーメーション)とは、

・VR(仮想現実)
・AR(拡張現実)
・IOT(Internet of things)
・AI(Artificial Inteligence;人工知能)

など新しいテクノロジーを活用し、革新的なビジネスモデルや新しいサービス・顧客体験を創出することとともに、下支えとなる業務プロセスや業務システム、組織構造、企業文化を変革することを意味します。

つまり、DXとは既存企業がITを活用し、新規事業・ビジネスモデルを生み出し変革することであるといえます。

例えばタクシー配車アプリのUberなどがDXの事例として紹介されることがありますが、Uberの事業は最初からデジタルサービスであり、「既存企業の変革」とは言い難いためDXの定義からは外れます。

(参考)デジタルトランスフォーメーションを推進するためのガイドライン 経済産業省(2018)
https://www.meti.go.jp/press/2018/12/20181212004/20181212004-1.pdf

主なDX(デジタルトランスフォーメーション)成功事例集

DX(デジタルトランスフォーメーション)とは何か?をさらに深く理解するためにも、様々な事例を紹介致します。

(1)BMW:AR(拡張現実)を活用し、自動車の購入体験を刷新

自動車の購入を検討するは実際に目で見て試乗するというのが一般的ですが、BMW社は、BMW i Visualiserというアプリを開発することで購入体験に新しい可能性を見出しました。

BMW i Visualiser とはBMW社の自動車販売を促進するためのアプリケーションで、アプリの中で実物大の車を様々な角度から眺めたりカスタマイズすることができます。さらにライトやラジオをつけることもでき、リアリティーのある顧客体験をAR(拡張現実)で提供しています。

これにより顧客は、実物を見る前に高い精度でカスタマイズ含めた検討をすることができるため、実店舗における購入までの時間短縮などの効果を得ることができます。

BMWにとっては、新たな販売チャネルが増えたことで、これまでアプローチできなかった顧客層にも自社製品を知ってもらう機会ができ、売り上げ拡大の可能性を秘めています。

顧客とデジタルで繋がりを持つことで新たな販売機会を得ることができたDX(デジタルトランスフォーメーション)の成功事例であるといえます。

(参考)スワイプしてAR体験 自動車業界におけるイノベーション
https://www.accenture.com/jp-ja/success-bmw-digital-transformation-augmented-reality

(2)ブラザー工業:データドリブン型エンジニアリングプロセスで生産性向上

ブラザー工業は「プリンターIoTプロジェクト」を立ち上げ、出荷前のプリンターのデータを分析することで、紙詰まりや印字不良の可能性を事前に発見することに成功しました。試作品段階で事前に検知した不具合を解消することで、後続の設計プロセスでの手戻りの削減と製品化後の不具合発生の可能性を未然に防止することができました。

このプロジェクトがさらに進めば、顧客は、高品質のプリンターを安価で購入することができるようになり、ブラザー工業は開発コストを削減し利益率を高めることが可能になります。

データドリブン型エンジニアリングプロセスの礎となったため、DX(デジタルトランスフォーメーション)の成功事例であるといえます。

(参考)データを活用した研究・設計開発でプリンターの不具合発生の可能性を未然防止
https://www.abeam.com/jp/ja/case_study/CS117

(3)小松製作所:Iotで建設機械に革命

小松製作所はコムトラックスという建設機械の情報を集約し遠隔から確認・操作することができるシステムを開発しました。小松製作所の建設機械には、通信システムやGPSが搭載されており、コムトラックスから機械の位置情報や稼働状況、故障情報、燃料の残量などを確認することができます。また、遠隔でエンジンを止めるといった制御も可能になっています。

これにより、顧客は次のような付加価値を得ました。

1,盗難防止
建設機械は高価なため、盗難などの被害にあうことがあります。しかしコムトラックスから建設機械の現在位置を確認できますし、遠隔からエンジンを止めて使用できなくすることもできるため、顧客は安心して小松製作所のトラックを使用することができます。

2,稼働率UP&保守費用削減
建設機械は部品の取り替えなどの定期メンテナンスをしていれば、故障で完全停止する期間はなくなるため稼働率が上がります。また、故障時の修理費用はかからずメンテナンス費用だけでいいためトータルの保守費用が下がります。コムトラックスは前回のメンテナンスのタイミングや稼働状況をモニタリングしているため、適切なメンテナンスの時期を割り出すことができます。顧客は稼働率を下げないまま、トータルの費用も削減することが可能になります。

3,適正価格で売却可能
中古市場では、買い手と売り手に情報の非対称性があるため適正価格で買い取ってもらうのが難しい特徴があります。しかし、コムテックスから、稼働状況などその建設機械に対する正しい情報が確保できるため、買い手と売り手の情報の非対称性が解消され、適正な価格で売却することができます。

また、コムテックスにより小松製作所は次のような効果を得ました。

1,需要予測によるサプライチェーン最適化
コムテックスでは、全世界の建機の稼働状況を把握できるため、いつどれくらいの台数の建機メンテナンスが発生するかなど予測することが可能です。これにより、見込み生産で建機や部品の開発を進めることができるため欠品のリスクは減少し、過剰在庫を抱えることもなくなりました。

2,債権回収の確実性
建機は高価なため、ローンなどで購入されることが多く、支払が滞ったりするリスクがありました。しかし、コムテックスは遠隔操作でエンジンを止めたりすることができるため、支払が滞ることがなくなり、債権回収の確実性が高まりました。

コムテックスでは建設機械にコンピューターを搭載することで、Iotの力で顧客体験を高め、ビジネスモデルにも変革をもたらしたDX(デジタルトランスフォーメーション)の例だといえます。

(参考)建設機械に革命をもたらした「KOMTRAX(コムトラックス)」誕生の足跡 コマツ(株式会社小松製作所)
https://ix-careercompass.jp/article/28/

(4) JapanTaxi(日本交通):日本のタクシー業界をITの力で効率化

日本交通の情報部門から、スピンオフしたITベンチャーであるJapanTaxiでは、配車アプリのJapanTaxiを提供しています。日本交通以外のタクシー会社もネットワークに加盟することでJapanTaxiの仕組みを使用することができます。

JapanTaxiは日本版のUberといえ、アプリを立ち上げて、乗車場所を選択し、「今すぐ呼ぶ」ボタンを押すだけで、周辺のタクシーを呼ぶことができるサービスです。迎えにかかるまでの時間を確認できたり、乗車前に料金相場を確認することができます。

また、JapanTaxiにはJapanTaxi Wallet機能があり、タクシーの後部座席にあるタブレットのQRコードをアプリで読み取ると、目的地に到着する前に支払いを完了することができます。

顧客にとっては、急いでいる場合もスムーズに支払いを済ますことができるためストレスフリーな体験を提供しているといえます。

また日本交通や加盟店にとっては、運転手の現金管理の作業負担削減したり、事務所で釣銭を確保するなどロスの削減に繋がっています。また、現金が盗まれるといった犯罪の危険性も抑制できています。

さらにJapanTaxiは、後部座席のJapanTaxiタブレットを活用し、新たな収益源として広告事業を始めています。電車やバスでは一般的であった車載広告をタクシーの後部座席にも持ち込み、ビジネスマン向けの広告媒体として売り上げを伸ばしています。また各車両から膨大な移動データを取得できるため、今後様々なビジネスを展開するための土壌も育っています。

規制産業と呼ばれるタクシー業界で、新たな顧客体験、ビジネスモデルを生み出しているためDX(デジタルトランスフォーメーション)の成功事例だと言えます。

(参考)タクシー会社のITベンチャー「JapanTaxi」は、どんなスマート社会を目指すのか?
https://internet.watch.impress.co.jp/docs/interview/1209606.html

(5)トライアル:スマートショッピングカート、AIカメラで非計画購買を拡大

創業時ソフトウェアの開発会社であったトライアルはデータを活用した小売業を展開している企業です。トライアルの店舗にはスマートショッピングカートと呼ばれる、セルフレジ機能付きのカートが存在します。

買い物客は、入店時に専用のプリペイトカードをタブレットにかざします。その後購入したい商品を手に取り、その商品のバーコードを、カートに付いているバーコードリーダーにかざしてから、カゴに入れることで、商品一覧と現在価格をタブレットから確認することができます。これにより買い忘れや買い過ぎの防止となっています。またスマートカー専用のレジも設けられているため、クイックに支払いを完了させることもできます。実際にスマートショッピングカートによって利用者の来店頻度が10%以上アップしているようです。

トライアルにとっては、スマートショッピングカートがあることで、商品のバーコードを、いつ、どんな順番で、スキャナーにかざしたのかというデータが取れます。これにより、買い物客が店舗の中でどのような動線で動いているのかデータを取得できるようになっています。このデータを活かして陳列や店のレイアウトを最適化し、顧客の購買行動の80%を占めるとされる非計画購買の拡大を進めています。

また、棚の商品や人の流れを読み取るAIカメラも店に設置されています。このカメラでは買い物客と陳列棚を撮影しています。

陳列棚を映すカメラでは、棚の状況をサーバーに送り、商品の在庫状況をデータで把握するのに使用しています。これにより、欠品による販売ロスを防ぐことができるようになっています。

買い物客を撮影するカメラでは、個人を特定し、その人の購買履歴や年齢等からレコメンドをタブレットやディスプレイに投影できるような仕組みを構築しているようです。小売業としては先進的な店舗データの活用と顧客体験の創出を手がけるDX(デジタルトランスフォーメーション)の成功事例であるといえます。

(参考)レジはショッピングカート。トライアルが関東初「リテールAIストア」
https://www.watch.impress.co.jp/docs/news/1263347.html

(参考)【ルポ】異色の3番手。九州発の小売テック企業「トライアル」
https://newspicks.com/news/3900743?ref=search&ref_q=%E3%83%88%E3%83%A9%E3%82%A4%E3%82%A2%E3%83%AB&ref_t=top

(参考)九州発のスーパー・トライアルが「小売業のAI化」を実現できた理由
https://diamond.jp/articles/-/246833

(6)みずほ銀行:AI技術を活用した来店・決算書不要の融資サービス

これまでの中小企業の融資の場合は、経営者が窓口に赴き、たくさんの書類を提出して、審査される流れであったためかなりの時間がかかっていました。この課題を解決するため、みずほ銀行はAIを活用したスマートビジネスローンという新たなサービスを開始しました。スマートビジネスローンは決算書と来店が不要で、オンラインで10分程度銃砲登録を行うだけで審査までの手続きが完了でき、最短2営業日で融資実行が可能なサービスとなっています。

みずほが審査時間の短縮に利用したのがAI技術で、決算書以外で顧客企業の信用力を審査する仕組みを構築しました。ECの情報、クラウド会計情報、評価サイト情報などの各種データを自動で収集し、信用力を判定する仕組みとなっています。

顧客である中小企業の経営者にとっては、資料作成や準備の負担が大幅に削減され、ネットがあればいつどこからでも融資を申し込める画期的なサービスとなっています。

みずほ銀行にとってはこれまで決算書がないため、融資に踏み切れなかったスタートアップ企業などとの取引拡大の可能性を秘めています。

AI技術を活用し顧客の課題を解決しつつ、自社の取引拡大にも寄与しているDX(デジタルトランスフォーメーション)の例であるといえます。

(参考)みずほ銀行、決算書不要なオンライン融資サービス「みずほスマートビジネスローン」開発の裏側
https://dcross.impress.co.jp/docs/usecase/001051.html

(参考)みずほ銀行は来店不要、決算書不要の中小企業向けの「みずほスマートビジネスローン」を、AI技術を使いいかにして実現したのか
https://enterprisezine.jp/article/detail/12238

DX成功をもたらす3つのノウハウ

DX(デジタルトランスフォーメーション)の事例を紹介してきましたが、最後に経産省発行のDX(デジタルトランスフォーメーション)を推進するためのガイドラインや各種事例を参考に成功へのノウハウを紹介します。

(1)戦略とビジョン

DX(デジタルトランスフォーメーション)でまず重要なことが、目指すべき方向性と実現に向けた戦略を明確にしておくことです。なぜDX(デジタルトランスフォーメーション)に取り組むのか「誰にどんな価値を提供したいのか」を明確にし、そのためにどのようなビジネスモデルを構築していく必要があるかを戦略に落とし込んでいきます。
ビジョンと戦略なきDX(デジタルトランスフォーメーション)では、ゴールが見えず、本来は手段であるはずのテクノロジーに振り回され消耗してしまいます。

(2)組織風土と組織(プロジェクト)体制

DX(デジタルトランスフォーメーション)は顧客を第一に考え、これまで存在しなかったようなサービスを生み出すチャレンジングな営みです。そのためある程度失敗を許容するような組織風土を醸成しておく必要があります。降格やクビを恐れて、中途半端なサービスが生まれても顧客に選んでもらえないか、選ばれてもすぐに他のサービスに代替されてしまいます。
また、ビジネスモデル変革に伴い各部署や関係者から反発を受ける可能性も高いため、プロジェクト推進体制に各部署のキーマンや、経営トップを絡めるような設計にしておくことも重要です。

(3)顧客体験の差別化とデータ活用

DX(デジタルトランスフォーメーション)では顧客体験の差別化とデータ活用が重要です。顧客体験の差別化とは、顧客が選んでくれるサービスを作ることと言えます。
また、その後のデータの活用では、「だれが何をいつどこでどうやって購入したか」といったデータを蓄積し、サービス改善に役立てていく必要があります。顧客から選ばれた分だけデータが貯えられ、データをもとにサービスが改善され、さらなる顧客体験の差別化につながっていく。このサイクルを回し続けることがサービスリリース後の最重要課題であるといえます。

<DX(デジタルトランスフォーメーション)のキャリアに関するコラム>

「Big4」各ファーム独自の「DX推進ポジション」特徴・転職年収事例・キャリアパスまとめ

「DX推進」フェーズ毎に求められる人材・役割(スキル・経験)とは?

デジタル専門の経営人材「CDO(Chief Digital/Data Officer)」の設置背景・役割(CIO/CTOとの違い)・年収・キャリアパスについて

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今回の記事では、主なDX(デジタルトランスフォーメーション)成功事例集、DX(デジタルトランスフォーメーション)の定義から成功に導くノウハウまでご紹介しました。

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