M&Aアドバイザリーとは?仕事内容・年収・スキルまで解説【保存版】

近年急速に競争環境が激変する中でM&Aが非常に重要な戦略になっており、年々M&Aの件数は増加傾向です。そのM&Aにおいて重要な役割を果たすのがM&Aアドバイザリーです。

M&Aアドバイザリーは売却もしくは買収を希望するクライアントからの依頼を受け、様々な専門性やノウハウが求められるM&Aの複雑なプロセスにおいて、企業の経営陣に対してアドバイスを行い利益の最大化を図る存在です。高度な職能が必要なため、採用時に求めれる経験・スキルのハードルは高く、年収は日本トップクラスの水準だといえます。

今回は、M&Aアドバイザリーの仕事内容・必要なスキル・年収までまとめてお伝えします。

【目次】

  1. M&Aアドバイザリーとは「契約を結んだ買手、もしくは売手の利益を最大化することを目的」としたM&Aの専門家
  2. M&Aアドバイザリーの仕事内容は”M&A戦略立案”から”PMI”まで主に5つに分類できる
  3. M&Aアドバイザリーを手掛ける主な会社(金融機関からBig4系アドバイザリー、仲介業者まで)
  4. M&Aアドバイザリーの採用において求められる経験・スキル・資格・英語力
  5. M&Aアドバイザリーの年収、外資系投資銀行は年収5,000万以上、コンサルティングファームでもパートナーに昇格後は数千万~億単位

M&Aアドバイザリーとは「契約を結んだ買手、もしくは売手の利益を最大化することを目的」としたM&Aの専門家

人口減少や高齢化による日本市場の縮小、中小企業の後継者不足、グローバル化やGAFAといった巨大プラットフォーマーの出現など、急速に競争環境が激変する中でM&Aは企業規模問わず重要な戦略となっています。しかし、M&Aは法務や財務などの専門的なスキル・知見が必要なため、自社だけで完結させることは非常に困難です。そんなM&Aにおいて重要な役割を果たす存在が「M&Aアドバイザリー」です。
M&Aアドバイザリーとは、売却もしくは買収を希望するクライアントからの依頼を受け、様々な専門性やノウハウが求められるM&Aの複雑なプロセスにおいて、企業の経営陣に対してアドバイスをする存在です。

M&Aアドバイザリーは、買手と売手の中立的な立場でM&A取引を進め、双方の利益の最大化を図るM&A仲介業とは異なり、契約を結んだ買手、もしくは売手の利益を最大化することを目的とします。M&Aアドバイザリーはファイナンシャルアドバイザー(FA)と同義で使用することも多いため覚えておきましょう。

M&Aアドバイザリーの仕事内容は”M&A戦略立案”から”PMI”まで主に5つに分類できる

M&Aアドバイザリーの仕事内容は非常に多岐に渡り、専門的なスキルが求められます。まず、M&Aのプロセスは大きく次の5つに分けることができます。

(1) M&A戦略の立案
(2) デューデリジェンス(DD)
(3) 取引条件交渉
(4) 取引執行
(5) ポストマージャーインテグレーション(PMI)

それぞれのプロセスにおいて、M&Aアドバイザリーの仕事内容を説明致します。

(1) M&A戦略の立案

M&A戦略立案の段階にてM&Aアドバイザリーは経営陣と同じ全社的な視点に基づき、M&Aが有効な戦略かどうかまず評価し、M&A戦略を立案します。その後、M&Aを進める全体スケジュールの作成や、買収先・被買収先企業の選定、M&A後の財務インパクトのシュミレーション、シナジー効果の予測、入札戦略の立案、候補先への打診、候補先との秘密保持契約の調整などを行います。

(2) デューデリジェンス(DD)

デューデリジェンスとは対象企業が買収に適しているかをビジネス面、財務・税務面・法務面の観点から総合的に分析することをいいます。

デューデリジェンスの段階でM&Aアドバイザリーは、弁護士など各種専門家の斡旋や、対象企業の財務や税務の評価やビジネスモデル・IT資産の分析などを行い、対象企業の精査を行います。デューデリジェンスで得た分析結果に基づき、相手企業との交渉ポイントの整理や、相手企業との会議調整なども担います。

(3) 取引条件交渉

取引条件の交渉の段階でM&Aアドバイザリーは、クライアントの利益を最大化するために、相手企業との交渉戦術の立案や、交渉サポート、交渉の代理、買収・被買収価格へのアドバイスなどを行います。また、弁護士など各種専門家と連携し、基本合意書や最終契約書の草案を作成します。

(4) 取引執行

取引執行の段階でM&Aアドバイザリーは、買収資金調達へのアドバイスなどを行います。また、上場企業の場合は対外公表として株主総会、IR対応のサポートなど含む、契約締結(クロージング)までの一連の業務をサポートします。

(5) ポストマージャーインテグレーション(PMI)

ポストマージャーインテグレーションとは、組織統合のことを指します。M&Aが成功だと言えるか否かはポストマージャーインテグレーションをいかにスムーズかつ効果的に実施できるかにかかっているといっても過言ではないほど重要な段階です。

ポストマージャーインレグレーションの段階でM&Aアドバイザリーは、統合プランの策定から、PMOとしての進捗管理、新組織体制定着への各種マニュアル整備や、M&A後の会計・税務上の実務処理に関するアドバイス、IT全体構想策定や中長期的なシナジー効果創出計画の立案・支援などを行います。IT資産に関してはシステムの専門家を斡旋したり、自社のITコンサルティング部隊へ繋げることになります。

このように、M&AにおけるM&Aアドバイザリーの役割、業務内容は非常に多岐に渡り、高い専門性が求められます。

M&Aアドバイザリーを手掛ける主な会社(金融機関からBig4系アドバイザリー、仲介業者まで)

高度な専門性とスキル、ノウハウが求められるのがM&Aアドバイザリーですが、実際どのような企業がM&Aアドバイザリーを手がけているか紹介します。まずM&Aアドバイザリー、M&A仲介業を手がける会社は次の5つのジャンルに分けることが可能です。

(1) 日系金融機関
(2) 外資金融機関
(3) Big4会計事務所
(4) 独立系アドバイザリー
(5) M&A仲介業者

それぞれどのような企業があり、何を行なっているのか解説します。

(1) 日系金融機関

日系の金融機関でM&Aアドバイザリーを手がける企業には三菱UFJフィナンシャルグループ、三井住友フィナンシャルグループ、みずほフィナンシャルグループの投資銀行部門、野村証券や大和証券が挙げられます。これらは、M&Aアドバイザリー業務だけではなく、ファイナンス機能を有しており、債権や株式の引受といった証券業務や、M&A資金の融資といった銀行業務をグループで連動して提供します。ただし、ITや組織再編のノウハウや知見が必要になるため、M&A後のポストマージャーインテグレーション(PMI)には関与することはありません。

(2) 外資系金融機関

外資系の金融機関でM&Aアドバイザリーを手がける企業にはゴールドマンサックスやJPモルガン、モルガン・スタンレーやメルリルリンチ、シティーバンクが挙げられます。これらは、M&Aアドバイザリー業務だけではなく、ファイナンス機能を有しており、債権や株式の引受といった証券業務も提供します。世界中でM&Aの実績があるため、クロスボーダー案件や超大型M&Aを担当することが多いです。ただし、日系金融機関と同じくITや組織再編のノウハウや知見が必要になるため、M&A後のポストマージャーインテグレーション(PMI)には関与することはありません。

(3) Big4会計事務所

デロイトトーマツ、プライスウォーターハウスクーパース、KPMG、EYアドバイザリーのM&Aコンサルティング部門もM&Aアドバイザリーを行います。

これらは、金融機関のようなファイナンス機能は有していませんが、M&A戦略の立案といった上流の業務からM&A下流のポストマージャーインテグレーション(PMI)にまで全フェーズにおいて財務・税務の面から幅広く関与します。M&A後のシステムや組織再編にもITコンサルティング部門などと連動しながら関与しているのが特徴です。

(4) 独立系アドバイザリー

金融機関や会計事務所機能を持たず、M&Aアドバイザリーを行うと企業には、GCAやフロンティア・マネジメントが挙げられます。これらは、金融機関のようなファイナンス機能は有していませんが、M&A戦略の立案といった上流の業務からM&A下流のポストマージャーインテグレーション(PMI)にまで全フェーズにおいて幅広く関与します。

(5) M&A仲介業者

M&Aアドバイザリーではなく、M&A仲介業を行う企業には、M&A総合研究所・日本M&Aセンター・ M&Aキャピタルパートナーズなどが挙げられます。これらの仲介業社は、買手と売手のマッチングを行い、M&Aの初期フェーズから契約締結まで、中立的な立場から双方の利益を最大化するように、取引の取りまとめを担当します。

M&Aアドバイザリーの採用において求められる経験・スキル・資格・英語力

M&Aアドバイザリーに求められる経験・スキル・資格・英語力についてご紹介致します。経験に関しては所属業界・職種によって異なるため、(a)コンサルティングファーム出身者向け(b)事業会社出身者向けに分けて解説致します。

(1) 経験

(a) コンサルティングファーム出身者向け

まず経験として重要なのが「M&A業務に実際に携わったかどうか」です。Big4やM&Aブティックファームの採用要項を確認すると、経営コンサルティングファームや、M&Aブティック、PEファンド等で、M&Aに関係した営業活動、プロジェクト管理、中期計画策定、海外進出支援、ビジネス、人事などのデューデリジェンスを行なっていると優遇されることが記載されています。

M&A以外にも戦略・組織領域における最上流の構想策定プロジェクト経験や、財務分析、オペレーション改革、PMO、CXOレイヤーに対するコンサルティング経験が求められるようです。

上記のような経験が積めるコンサルティングファームのM&A部隊や戦略コンサルティングファーム、監査法人出身の人材が求められているといえます。

(b) 事業会社出身者向け

コンサルティングファーム出身者同様にまず経験として重要なのが「M&A業務に実際に携わったかどうか」です。Big4やM&Aブティックファームの採用要項を確認すると、証券会社での投資銀行業務や金融機関の財務部門、事業会社の経営企画部門、総合商社におけるM&Aもしくはポストマージャーインテグレーション(PMI)の経験、海外の買収先企業への駐在・協業経験経営コンサルティングファームとの協業経験が優遇されると記載されています。

M&A業務以外では中長期計画策定などの経営企画業務や経営・事業・営業・商品などの上流に位置する企画フェーズのプロジェクト参画経験が求められます。

経験という面では、コンサルティング出身者と事業会社出身者問わず求められるのが、M&A業務経験があるか、もしくは戦略や企画立案といった上流フェーズのプロジェクト経験があるかでどうかであるといえます。

(2) スキル

M&Aアドバイザリー業務では様々なステークホルダーとの調整や交渉が必要なため、対人スキルとしてクライアントリレーション能力、コミュニケーション能力が求められます。

また、M&Aという複雑なプロセスを遅延なく円滑に進めていくため、マネジメント能力としての進捗管理や課題管理、リスク管理といったPMOスキル全般が求められます。

財務系スキルとしては、財務モデリングやデューデリジェンスといった高度でかつ専門的なスキルが求められます。ハード系スキルではOffice(Word、Excel、PowerPoint)が使用できることが挙げられます。

(3) 資格

M&Aアドバイザリーは資格が必要な職種ではありませんが、経営や財務への知識、マネジメントスキルの証明として中小企業診断士、MBA、公認会計士(日本・米国)、税理士が優遇されます。

(4) 英語力

クロスボーダー案件を扱っているファームは特に英語力が必要とされます。明示的にスコアを示しているM&AアドバイザリーではTOEIC730点は必須とされています。英語力に関して優遇される条件としては海外駐在経験、海外留学経験、TOEIC900点以上が挙げられます。

M&Aアドバイザリーの年収、外資系投資銀行は年収5,000万以上、コンサルティングファームでもパートナーに昇格後は数千万~億単位

クライアント企業の規模、M&Aアドバイザリー業務にて担当する領域と単価の関係上、M&Aアドバイザリーの年収は業界・各企業によって異なります

企業の規模に関しては、中小企業よりも大企業をクライアントとするM&Aアドバイザリーの方が、案件の規模が大きいため、取引金額が高く、結果として高いフィーを請求することができ年収も高くなる傾向があります。

担当する領域と単価に関しては、一般的に上流ほど人月単価は高くなります。そのため、M&A戦略の立案機能を持っているM&Aアドバイザリーの年収は相対的に高くなる傾向があります。

こちらはコンサルティング業界と同じく、戦略ファームが総合ファームより高い年収となる理屈と同じです。実例としてM&AアドバイザリーやM&A仲介業を行なっている企業の年収について弊社の求人や、有価証券等を参考に整理したものをご紹介いたします。

(参考コラム)実際、外資と国内、戦略と総合コンサルファームで年収はどれくらい違うのか?

(1) 日系証券会社の投資銀行部門

日系証券会社の投資銀行部門の年収を役職ごとに調査しました。

日系証券会社の投資銀行部門はアナリストで700万円~950万円、で900万円~1,600万円、バイスプレジデント1,400万円~2,000万円、エグゼクティブディレクター2,000万円~2,800万円、マネジングディレクター2,500万円以上の年収でした。投資銀行部門にも複数の職種がありますが、M&Aアドバイザリーも投資銀行部門の職種の1つのためほぼ同水準といえるでしょう。

(2) 外資系投資銀行

外資系投資銀行の場合はアナリストで700万円~900万円、アソシエイトで1,200万円~1,800万円、バイスプレジデント2,700万円、ディレクター3,600万円、マネジングディレクター4,800万円以上です。投資銀行部門にも複数の職種がありますが、M&Aアドバイザリーも投資銀行部門の職種の1つのためほぼ同水準といえるでしょう。やはり外資系の投資銀行の年収は圧倒的高水準であるといえます。

(3) Big4会計事務所のM&Aアドバイザリー

Big4のM&Aアドバイザリー職では、アソシエイトで500万~800万、シニアアソシエイト700万円~1,100万円、マネージャー1,000万円~1,500万円、シニアマネージャー1,300万円~2,000万円、パートナー2,000万円以上、エクイティパートナー(出資パートナー)ともなると億単位での年収となります。ただし、M&Aアドバイザリーだから年収が高いという訳ではなく、外資系総合系コンサルティングファームの同タイトルと同じ水準であるといえます。

(4) 独立系M&Aアドバイザリー 

独立系M&Aアドバイザリーの例では、有価証券にて年収が公開されているGCAを紹介します。GCAの有価証券によると、平均年収は2,063万円でした。こちらは日本の上場企業の中で3位の平均年収となっております。

(5) M&A仲介業者

M&A仲介会社の場合は、有価証券にて年収が公開されている2社を紹介します。1社目がM&Aキャピタルパートナーズで平均年収は2,478万円です。2社目は日本M&Aセンターで平均年収は1413万円です。M&Aキャピタルパートナーズは日本の上場企業の中で堂々の平均年収1位となっており、日本M&Aセンターもテレビ局や総合商社と同水準で11位となっています。日本の平均年収が約450万円程度であることを考えると、M&Aアドバイザリーだけでなく、仲介業含めM&Aに関する職種はきわめて高報酬であるといえます。

M&Aアドバイザリーの年収については、間違いなく日本トップクラスだと言えます。ただし、逆にいうとそれだけ高い専門性やノウハウが求められていることの裏返しだと言えます。

これからM&Aアドバイザリーへの転職を検討される方は、M&Aに関する業務に携われるようなポジションへの異動や、財務・税務の知識をつけるためCPA(日本・米国)の取得などを目指してみるのも1つの手だといえます。

※コンフィデンシャルでの募集が多く、詳しくは非公開のケースも多いため、ぜひお問い合わせください。

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今回の記事では、M&Aアドバイザリーの仕事内容・必要なスキル・年収までご紹介しました。

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