現在広告代理店で働いていて、コンサルタントの業務・キャリアに興味を持っているものの、広告代理店からコンサルティングファームへの転職が可能なのか、不安を感じる人も多くいるかと思います。
また広告代理店のコンサルティングファームとの業務提携や、大手コンサルティングファームの広告代理店の買収や機能の取り込みなどのニュースを目にしたり、両者の境目がなくなってきていると聞いたりすることも増え、両者の事業内容の違いを疑問に思う方もいるでしょう。
そこで今回は、
「コンサルティングファームと広告代理店の違いとは何か?」
「事業会社からコンサルティングファームへの転職は可能?転職成功のために何をすべきか」
「コンサルティングファームへの転職後に活かせるスキルは?」
といった疑問にお答えしていきます。
自らも未経験から大手総合コンサルティングファームへ転職し、その後コンサルティングファームへの転職とポストコンサルの転職を支援するエージェントで勤務した経験を持つ筆者が、広告代理店からコンサルティングファームへの転職について解説します。
【目次】
広告代理店とコンサルティングファームの事業内容の違い
広告代理店は、販売促進・集客をゴールに広告運用を行う
コンサルティングファームとの事業内容の違いを理解するため、まず広告代理店の事業内容を見ていきましょう。
広告代理店は、クライアント企業のマーケティング活動を代理に行う企業です。
クライアント企業の商品やサービスの収益改善につなげるため、クライアント企業のマーケティングにおける課題を特定し、最適な各メディア(マスメディア・インターネット・屋外広告など)でもプロモーションを提案することで、集客や販売促進を支援しています。
その中での業務内容・働き方は、例えばマーケティング支援の場合、営業担当がクライアント企業との窓口となり、案件の予算・スケジュール・進捗管理を行い、他部門のマーケティングプランナーやアートディレクターとの調整も行います。
広告運用に限らず幅広い戦略策定・課題解決を行うコンサルティングファーム
広告運用を通したマーケティング支援を行う広告代理店と比較すると、コンサルティングファームは広告運用に限らない幅広い課題解決や、戦略策定を行っています。
具体的には、クライアント企業のゴールや課題をヒアリングし、マーケティングにおける課題の分析、どのようなマーケティング戦略を取るべきかの戦略の策定、ゴールを達成するための適切なプランニング・企画の選定などを行います。
事業やマーケティングの戦略の策定からサポートが必要なクライアントに対して、価値を発揮することが可能です。
ただし、両者がお互いの事業領域に進出しており、境目がなくなってきている企業もある
冒頭で述べた通り、広告代理店とコンサルティングファームが互いの事業領域にバリューチェーンを拡大しているため、企業によっては違いがなくなってきているとも言えます。
具体的には、広告代理店大手の株式会社電通グループが戦略コンサルティングファームである株式会社ドリームインキュベータと資本業務提携契約をしたり、DX・事業創出支援を行うコンサルティングファームのイグニション・ポイント株式会社を買収したりするなど、コンサルティング機能を強化しています。
またアクセンチュア株式会社・デロイト トーマツ コンサルティング合同会社・PwCコンサルティング合同会社といった大手外資コンサルティングファームも、広告代理店の買収マーケティング支援に踏み込んだサービス展開・部門の立上げを行っています。
特にアクセンチュア株式会社は、アクセンチュア ソングという組織において、成長戦略・マーケティング戦略はもちろん、テクノロジーを駆使した顧客体験プラットフォーム、クリエイティブ・メディア戦略、キャンペーンやコンテンツ編成まで一気通貫で実行しています。
コンサルティングファームへの転職を目指す場合、どのファームがどのような機能を持っているかを確認してみましょう。
広告代理店からコンサルに転職する場合に活かせるスキルとキャッチアップが必要なスキル
広告代理店からコンサルティングファームへの転職は可能
広告代理店に勤務されて、未経験からコンサルファームへの転職を目指す方は多く、実際にコンサルファームで活躍される広告代理店出身者も多くいます。
広告代理店において必要なクライアントとの折衝は、コンサルティングファームで必要とされる折衝と親和性が高いため、そのポテンシャルを評価される可能性が大いにあります。
加えて、プロジェクトマネジメント、ブランディングやマーケティング、デジタルやCRM、業界に関する知見があると、更に評価されるでしょう。
以下から、具体的に活かせるスキルを見ていきます。
転職後に活かせるスキル
クライアントとのコミュニケーション能力
前述の通り、広告代理店におけるクライアントとの折衝・コミュニケーションの経験は、コンサルティングファームにおいても活かせます。
広告代理店では、クライアントの現状を分析し、何を求めているかを聞き出すため、丁寧にクライアントにヒアリングをします。
分析や提案のベースとなるクライアントのヒアリングができるコミュニケーション能力は、コンサルティングファームでも必要とされる能力です。
コンサルティングファームにおいても、課題の特定や対応するソリューションを検討する際に、クライアントへのヒアリングを行います。
またクライアント側の担当者と密な連携を取り、プロジェクトによっては常駐をすることもあるため、信頼関係を構築できるコミュニケーション能力は極めて重要なスキルです。
プロジェクトマネジメントスキル
広告代理店にて行うプロジェクトマネジメントスキルは、コンサルティングファームにおいても役立ちます。
例えば、決裁権を持つ、もしくは意思決定を行う方と定期的に話す場を持ち、都度その意思決定のために必要な分析・資料作成を行うといったクライアントの調整業務や、制作物のディレクション・キャンペーンの進行スケジュールなどが該当します。
コンサルティングファームでは、プロジェクトマネジメントが業務の多くを占め、また更に幅広いテーマやフェーズのプロジェクトに関わることにはなりますが、プロジェクトマネジメントのスキル自体は汎用的なものと言えます。
テーマや規模によって仕事内容や動き方は変わりますが、ここではコンサルティングファームにおける基本のプロジェクトマネジメントのフローを紹介します。
ソリューション提案のためのヒアリングをクライアントに対して行い、提案して、受注した場合はプロジェクトチームの立上げ・キックオフを行います。
プロジェクト開始後は、クライアントに詳細ヒアリング・情報収集を行い、ソリューションの詳細設計と提案を行い、ソリューションの実行・適宜報告を行い、レビューを行うと言った流れです。
広告代理店で行うプロジェクトマネジメントと似ている点は多々あるでしょう。
ブランディング・マーケティング・デジタルやCRMなどの業務経験
ブランディング・マーケティングといった、コンサルティングファームにおけるクライアントワークと近しい動き方をする業務の経験や、デジタル・CRM(顧客関係管理、Customer Relationship Managementの略)などコンサルティングファームにおいて携わる可能性の高いソリューションテーマに関する知見があると、コンサルティングファームへの転職後に即戦力になれる可能性が高くなります。
例えば広告代理店におけるブランディングの業務は、広告キャンペーンの企画・実行のため、現状の分析・競合優位性の明確化・方針やコンセプトの策定・ターゲットの決定・媒体と発信方法の決定・実施というプロセスが一般的です。
コンサルティングファームにおいてブランディングは、ブランド戦略の立案・ブランドのポジショニングの決定といった上流の戦略策定に関わることが中心で、広告代理店のように広告制作自体に従事することは多くありませんが、業務理解という点では評価される経験となります。
広告代理店からコンサルに転職する場合にキャッチアップが必要なスキル
クリティカルシンキング能力
コンサルタントの定義を一言で言うと、考えることの職人、つまり問題解決のスペシャリストです。
特に戦略に関するコンサルティングを行う場合、「10年後、事業を取り巻く環境はどのようになっており、そこでどのような戦略を立て、何を社会への提供価値とするか」など、答えのない課題について、クライアントと対話をしながら仮説を持ち、結論を導くことが必要になります。
クリティカルシンキングは、その過程すべてで必要となる必須スキルと言えます。
解決したい課題がある場合に、何について考えるべきかという論点を構造的に整理したり、その課題について仮説を考えたり、解決のために必要な要素・プロセスを考えることが求められます。
広告代理店よりも、より上流で抽象度が高く、幅広い課題についての課題解決が求められるため、コンサルティングファームへの転職を目指す場合や、入社した後に能力向上を目指す場合は、クリティカルシンキング能力の強化が重要です。
幅広いソリューションの引き出し
前述の通り、コンサルティングファームは広告運用に限らない幅広い課題解決や、戦略策定を行っています。
クライアントの課題をヒアリングで引き出す際にも、課題を分析・整理する際にも、課題に対応するソリューションを提案する際にも、幅広い知識・ソリューションの引き出しを持っていることが求められます。
特にヒアリングを行っている際、クライアントの担当者とカジュアルな打ち合わせを行っている中で、唐突にアドバイスを求められることがしばしばあるため、プロジェクトチームに頼ることなく、自分自身で業界・テーマ・ソリューションについて知識を身に着けていると、クライアントの信頼を得ることにもつながります。
広告代理店からコンサル転職を成功させるためにできること
コンサルタントに求められる能力を証明するために現職で課題解決を行う
前述の通り、最もコンサルタントに求められる能力はクリティカルシンキング能力です。
「今までの経験の中でクリティカルシンキング能力の証明につながる経験が少ない」「自信を持って話せない」と感じる場合は、今からでも取り組んでみるといいでしょう。
クリティカルシンキング能力を証明できる課題解決を、実際に業務で行うことをおすすめします。
元々の業務で課題解決をアサインされていなかったとしても、現在の業務の中で感じている課題を言語化し、課題を分析してその要因・背景を特定し、対応策として個人・チームで何ができるか・解決によってどのようなことが期待できるかを提案することができるはずです。
提案内容を実施し、何かしらの成果を上げることができれば、主体性もクリティカルシンキング能力も証明できる経験になり、職務経歴書・面接でハイライトできます。
求められている能力・スキルに沿って経験の棚卸しを行い、対策につなげる
ご自身の経験を全て一から棚卸しすると時間がかかるため、コンサルタントになるにあたり求められる能力・スキルに沿って経験の棚卸しを行い、対策することをおすすめします。
転職活動においては、ご自身が自分の強みだと思っていることよりも、志望先が求めている能力・経験を前面に押し出す方が成功確率は上がります。
例えば、コンサルティングファームにおいて評価されるクリティカルシンキング能力、クライアントとのコミュニケーションや信頼関係構築に関する能力、困難がある中でやり切る力、特定の業界における深い知見、プロジェクトマネジメントスキル、グローバルな環境での業務遂行能力といったキーワードで、ご自身の経験を整理するといいでしょう。
前述の通り、クリティカルシンキング能力は最も求められる基本スキルで、その次に必要となる能力はクライアントとのコミュニケーション能力と、やり切る力です。
法人相手に信頼関係を構築した経験があれば最適ですが、例えばコーポレートで社内向けの業務を行っていた場合でも、利害が対立する難しい関係の部門・相手と協力体制を築いた経験や、苦労しながら役職者の対応を行った経験などが代わりになります。
やり切る力は、意外かもしれませんが、実はどこのコンサルティングファームにおいても評価されるマインドセットです。
多くのコンサルティングファームは、実行支援まで踏み込んでクライアントへの価値・成果を提供しており、その過程で様々なレイヤーのクライアントや社内関連部署を巻き込んで施策を推進します。
その施策推進において、ゴールから逆算して細かいタスクとスケジュールを設定し、なんとかして期限内に成果物を納品する必要があるため、このような「なんとかする力」が実はとても評価されます。
志望するコンサルティングファームの選考プロセスを調べ、必要があればケース面接の対策を行う
志望するコンサルティングファームを特定し、それぞれの選考プロセスを調べ、必要な対策を行うことも重要です。
上記の通り、コンサルティングファームにおいて求められる能力を軸に、経験の棚卸しを行うことで、職務経歴書と面接の対策ができます。加えて多くのコンサルティングファームは未経験者に対し、Webテストなどの適性試験とケース面接を行うため、入念な対策が必要です。
適性試験は、具体的にはSPI・GAB・TG-WEB・GMAT・判断推理などの独自テスト・性格検査が該当し、論理的思考や特性が評価されます。
特にSPIなどの能力検査は、かなり多くの方が通過できずに不採用になっているため、事前に勉強して対策を行いましょう。
ケース面接は、面接官から提示されるテーマに対し、考えるプロセス・解決策を提案する試験で、企業によっては複数回実施することもあります。
対策としては、フェルミ推定などを参考書で勉強し、コンサルティングファーム別の過去問題や想定問答集で演習も行い、落ち着いて本番を迎えるといいでしょう。
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>コンサルタントへのキャリアに関する記事
MECEを具体例で学ぶ!コンサルでの仕事に欠かせないMECEとは?
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コンサルタントへ転職するための「志望動機書」の作り方【未経験~ファームtoファームまで】
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今回の記事では、広告代理店からコンサルティングファームへの転職を成功させるポイントについてお伝えしました。
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