コンサルプロジェクトにおいて頻繁に取り扱われる分野の1つがマーケティング。戦略系、総合系、IT系とコンサルの分野に限らず、マーケティングの知見を必要とするプロジェクトは多数存在します。
クライアントの先にいる顧客に効率よく・最大限商品を販売する方法を考えるのがマーケティングのゴールですが、このゴールを達成するためには、そもそも顧客がどのように行動して商品・サービスの購入に至るのかを知ることが重要です。
特に顧客が一般消費者のケースにおいて消費者の購買行動をモデル化したものが、今回紹介するAIDMAモデル、もしくはAIDMAの法則です。100年ほど前から存在する古いフレームワークですが、マーケティングにおける基本知識のため、しっかりと押さえておきましょう。
【目次】
AIDMAの法則とは?
AIDMAの法則は消費者が商品を認知して、購買に至るまでのプロセスをモデル化したもので「A」「I」「D」「M」「A」は各プロセスの頭文字です。
- Attention 認知
- Interest 関心
- Desire 欲求
- Memory 記憶
- Action 購買行動
順序にも意味があり、オーソドックスな消費者向けのビジネスにおいては、消費者は上記の順に商品を知り、「欲しい」と感じたうえで最終的に購買に至ります。
ここからは各プロセスについてもう少し詳しく紹介します。消費者の行動と、それぞれのプロセスにおける一般的なマーケティング活動を見ていきましょう。
Attention(認知)
認知は、まだ消費者が商品を知らなかった状態から、何らかの形で存在を知る段階を意味します。
一般的な消費財の場合は、新商品が出たときに、まずはテレビCMや、チラシなどの広告を通じて、消費者に商品の存在を積極的にアピールします。消費者が商品の存在を知らなければ、購入に至ることはほとんど期待できないためです。
Interest(関心)
商品を認知したからといって、それが消費者にとって興味のないもの、魅力のないものだった場合は購買に進むことはありません。そのため、2つ目のフェーズとして「関心」を抱いてもらう必要があります。
ターゲットとする消費者に関心を持ってもらうべく、商品が最大限魅力的に映るように広告活動を実施。試供品の配布や記事広告による宣伝など、より商品の魅力が伝わるマーケティング手法を絡めて、関心を持つ消費者の拡大を目指す場合もあります。
Desire(欲求)
関心を持った消費者が商品に対して魅力を感じてくれれば「商品が欲しい」という欲求を持ち始めます。単なる関心にとどめず、商品の魅力を引き出し、的確に伝えるマーケティングが重要となります。
Memory(記憶)
AIDMAはEコマース(電子商取引)が発達する前に成立したモデルであるため、欲求を持ってもすぐに消費者は購買行動に移ることができないという前提に立っています。
現代でも店舗で購入する商品や、高価で資金準備などが必要になる商品では、欲求を持ったからといってすぐに購買できるとは限りません。
この場合は、消費者が抱いた欲求を忘れてしまわない工夫が何よりも重要です。例えば自動車など「一点モノ」の商品の場合、定期的に営業マンが接触して商品のことを忘れさせないようにします。
また、記憶はどうしても徐々に薄れていくため、記憶が鮮明な段階で購買行動に移しやすくする工夫も大切。「商品の取り扱い店舗を増やす」「期間限定のキャンペーンを行って早期購入を促す」など「記憶」フェーズにとどまる期間を短くするのも重要なマーケティング手法です。
Action(購買行動)
消費者が購入意欲をとどめたまま店舗に行き、実際に商品を購入したところでAIDMAのプロセスはゴールを迎えます。最後の最後に顧客が脱落しないようにさまざまな工夫を凝らします。
単純な例は価格設定。求めやすい価格や安く見せる工夫などはシンプルながら大切です。また商品を見つけやすく、レジで購入しやすい店舗のディスプレイや配置などにも手を抜いてはいけません。アパレルでは、店員が声をかけて積極的に購買行動を完結させる工夫をしているケースも多くあります。
AIDMAの法則は古い?
顧客の購買行動モデルの基本であるAIDMAの法則ですが、「今では古くて応用できない」と考えている人も一定数います。現代ではAISASなど他にもいろいろな行動モデルがあるため「成立して100年近くが経過したAIDMAは役に立たない」と思われがちなのです。
しかし実際には今でもAIDMAが成立するビジネスモデルは存在します。
現代ではビジネスモデルによってはMemoryのプロセスがほとんど存在しない
現在の商習慣をAIDMAに当てはめたときに、特に「Memory」のプロセスがほとんど存在しないケースが少なくありません。顕著なのはECサービスで、ネット上では、消費者が商品を認知し、興味を抱けばそのまま購入・決済まで進められる構造になっていることが多く、Memoryを経ることなくすぐに購入に至ります。
また実店舗でも、例えば商品に溢れた大型店やショッピングモールで、目的の商品がないまま訪れた消費者が、多数の商品から興味のあるものを見つけて購入に至るケースもあるでしょう。
このように、AIDMAが「古い」と言われる背景にはMemoryが現在の商習慣の感覚に合わないという事情があるのです。
購買後の消費者行動にクローズアップする必要性
もう1つ、AIDMAが古いと言われる理由は、現代のマーケティングにおいては消費者が購買した後の行動に対するケアが重要であると言われるためです。現代では多くの消費者が、商品やサービスについて口コミ・レビューを書いたり、SNSなどで簡単に自身の感想を発信したりします。
そのため、消費者による利用した後の情報発信にまで気を配ることが、マーケティングの世界でも重視されているのです。
まだAIDMAが成立するビジネスも少なくない
AIDMAは古びた手法のように思われているものの、今でもAIDMAの法則が成り立つビジネスも多数存在します。
まず実店舗にて販売を行う商品については、一定数の消費者に対してはAIDMAを参考にマーケティングを実施します。多くの消費者は広告を認知して興味を持ち、一定期間後に店舗に訪れて商品を購入するためです。オーソドックスな広告発信からスムーズに商品販売までつなげるためには、AIDMAに基づいた購買行動の理解が欠かせません。
また先ほど例に出した自動車や貴金属、住宅など高価な商品は、担当の営業マンがつくなどして、認知から長い期間をかけて購入に至るケースが多いでしょう。こうしたビジネスについては、とりわけ消費者はAIDMAの流れに沿って購買までのプロセスを進みます。
AIDMAの法則を理解するメリット
コンサルタントがAIDMAの法則を理解するメリットは大きく分けて2つあります。
カスタマージャーニーを理解する
AIDMAのプロセスは、顧客の購買行動の一連の流れを意味する「カスタマージャーニー」をモデル化したものです。カスタマージャーニー全体で顧客体験を改善させることが、現代のマーケティングに取り組むコンサルタントには求められます。
改善には、まず顧客の購買行動プロセスを理解する必要があります。プロセスの理解なしに、カスタマージャーニーを通じた顧客の満足度向上を進めることが困難であるためです。
このときAIDMAに当てはめて顧客の行動を整理すれば、最も基本的なカスタマージャーニーをつかめます。
顧客に対する適切なアプローチ手法を整理できる
顧客のカスタマージャーニーを理解したら、コンサルタントは顧客に対する適切なアプローチ手法を整理できるようになっていくはずです。顧客の認知数と実際に購買に至った数、脱落した段階を分析すれば、結果を参考に、どの段階の顧客アプローチを改善すべきかが見えてくるのです。
そもそも商品を知る人が少ないのであれば、認知度自体を高める必要があります。知っている人が多いにもかかわらず、購入検討に移る人がいないのであれば、関心や欲求の醸成に工夫を凝らすべきです。マーケティングコンテンツの評価が高いのに商品販売が進まない場合は、実は販売チャネルに問題があるのかもしれません。
このようにしてAIDMAに照らし合わせることで、自社のマーケティングの課題を整理し、必要な対策を講じていくのです。
AIDMAの法則のケーススタディ
最後に、実際の商品販売を例に、AIDMAの法則を応用して分析しましょう。
酒類の販売促進活動の中でも成功例の1つと言われるコカコーラの「檸檬堂」の取り組みを題材とします。檸檬堂は度数や風味が異なる複数のレモンサワーを販売。味のよさや、それぞれの好みに応じてアルコール度数を選べる点などが評価され、ヒット商品となりました。
以下は、檸檬堂について、AIDMAの各フェーズに対応するマーケティングポイントを整理したものです。
- Attention(注意):酒屋の暖簾を使ってパッケージングに対する注目度を高めました。レモンサワーではレモンのフレッシュさを全面に出すパッケージが多い中で差別化に成功。また全国販売後は、阿部寛さんを居酒屋の店主役として起用したCMも認知度の向上に貢献しました。
- Interest(関心):レモンだけで数種類のアルコール飲料を当初より展開。お酒に強い人も弱い人も、多くの人にとってちょうどよい度数の商品があることに関心を持ってもらうことに成功しました。
- Desire(欲求):当初はあえて九州限定で販売。九州域外の消費者の購入意欲を掻き立てました。
- Memory(記憶):全国販売後は、先に紹介したテレビCMを積極的に展開。消費者が興味を失わない、忘れないよう積極的な広告展開が進められました。
- Action(行動):檸檬堂とおつまみを無料提供するお店を恵比寿に期間限定で出店。また、一部の飲食店での先行提供なども行いました。全国展開が本格化したのちはスーパー、酒屋、コンビニなど多くの店舗で販売し、欲しいときにすぐ購入できる状態を作り出して、AIDMAの流れに沿って購入までたどり着く消費者を増やしています。
以上、AIDMAの各プロセスを意識したマーケティング展開により、檸檬堂は順調にファンを増やし、販売本数を積み上げることに成功したのです。
AIDMAで消費者の購買行動の基本を押さえよう
AIDMAは古くから存在するフレームワークではありますが、現代でも応用が可能な消費者の購買行動モデルです。マーケティング分野で的確な解決策を提示するためには、購買行動プロセスの把握が欠かせません。
AIDMAをしっかりと理解し、マーケティングプロジェクトにて、消費者の顧客体験を高めるソリューションを提示できるようにしておきましょう。
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>マーケティングに関する記事
マーケティング戦略の立て方(プロセス)とは【有効な戦略を立てるための4つのステップと具体的な手法】
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「PEST分析」のフレームワークと具体例<企業や市場を取り巻くマクロ環境を整理>
https://www.axc.ne.jp/media/careertips/pest_analysis
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