【AISASのフレームワークと具体例】インターネットが普及した現代の消費者の購買行動モデル

マーケティングのプロジェクトで活躍するうえでは、消費者の行動をよく理解することが重要。消費者の購買までのプロセスを理解すれば、各段階において適切な対策が取れるためです。

消費者の購買行動モデルの元祖といえば、1920年代には成立していたAIDMAですが、ECやWebが発達した現代では、AIDMAは古いという意見も散見されます。

代わりに近年着目されているのが、2005年に成立した新たな概念「AISASの法則」。特にWebを活用した購買行動の基本的なモデルとして、現代における消費者の購買行動の把握に役立っています。

今回の記事では、AISASモデルについて基本やメリット、ケーススタディなどをご紹介します。

【目次】

  1. AISASモデルとは?
  2. AISASとAIDMAの比較
  3. AISASの法則を理解するメリット
  4. AISASのケーススタディ
  5. AISASへの理解は、Webマーケティングプロジェクトに貢献するための第一歩

AISASモデルとは?

AISASは、すでに提唱されて100年近くが経過したAIDMAの法則を土台に、電通がECやWebの発達を踏まえてアレンジしたものです。AIDMAと同様に、「A」「I」「S」「A」「S」は消費者の購買行動のプロセスとなっており、この順序で消費者は商品を見つけ、購入していくと考えられています。

  • Attention 認知
  • Interest 関心
  • Search 検索
  • Action 購買行動
  • Share 共有

ちなみに元となったAIDMAの要素は次のとおりです。

  • Attention 認知
  • Interest 関心
  • Desire 欲求
  • Memory 記憶
  • Action 購買行動

ここからは各プロセスについて紹介します。消費者の行動を、それぞれのプロセスにおける一般的なマーケティング活動と併せて見ていきましょう。

Attention(認知)

認知とは、まだ消費者が商品を知らなかった状態から、何らかの形で存在を知る段階を意味します。

この段階はAIDMAと同じですが、AISASはインターネットの発達を前提としたフレームワークのため、CMやチラシなど従来型の広告だけでなく、Webにおけるリスティング広告やSNSによる情報発信なども含まれます。

また、すでに商品やサービスを利用した消費者のSNSやレビューなどによる情報発信が新たな Attention(もしくは次のInterest)の喚起につながることも忘れてはいけません。

Interest(関心)

消費者は関連情報を踏まえて商品に興味を持ち始めれば、購入の検討を始めます。

流れは従来のAIDMAと一緒である一方で、他の利用者の口コミや評価、情報発信などがInterestの度合いに大きな影響を与えることを加味している点は、現代のインターネットが介在する商習慣を想定したAISASの特徴でもあります。

Search(検索)

現代の消費者は関心を持った商品・サービスについて、能動的に情報収集を始めます。インターネットに接続すればいつでも情報を集められる時代になったことで、興味のある商品の検討材料を探すようになったのです。

そのため、Searchしてきた消費者に訴求するための情報を、Web上で簡単に見つけられるようにするためのSEO対策やSNSとの連携、Webサイトの動線の工夫などが、マーケティング上とても重要な時代になっています。

Action(購買行動)

消費者が商品の情報に納得すれば、Search後はすぐに購買に移るのも現代の特徴。また、Webマーケティングの観点からは、Searchしたのち、ストレスを感じることなく購入手続きを進められるよう、動線を工夫することが重要です。

Share(共有)

一般消費者が簡単に情報を拡散できる現代社会の特徴を踏まえて、購買後の行動をもとらえているのがAISASのポイントです。消費者は購入した商品やサービスに関する感想をSNSや口コミ・レビューなどを通じて拡散します。

この段階の消費者行動のケアをしっかりとおこなうことで、Shareされた情報が他の消費者の目に触れ、あらたなAttentionを生み出します。このように消費者の拡散に着目することで、消費者の購買行動の循環性をうまくマーケティングに活用できるようになるのです。

AISASとAIDMAの比較

AISASはしばしば、AIDMAをECサービスの発達などを踏まえてカスタマイズしたものとしてとらえられます。

ここでは両者の共通点と違いを簡単にまとめました。

Attention(認知)/Interest(関心)は共通

消費者が商品を認知して、それに興味を抱くというプロセスはどちらも変わりません。今も昔も、まずは消費者に商品の存在を知ってもらい、商品の詳細を知りたいと思ってもらうことが大切なのです。

ただし、商品を認知させるための広告手法については日夜進化しています。大昔は看板やチラシだけだったものに、近代に入ってテレビ・ラジオが順に加わり、現代ではインターネットを介したWeb広告が重要な役割を果たしています。

Desire(欲求)とSearch(検索)

その後のプロセスはAISASとAIDMAで異なります。従来型のAIDMAでは商品を「欲しい」と思う欲求を高めるプロセスがありましたが、AISASはすぐに「検索」に進みます。インターネットが普及したことで、消費者が能動的に情報収集をおこなえるようになったため「欲求」を高めるプロセスが重視されなくなったのです。

このことは、消費者が購買までに至るリードタイムが短くなったことを意味しています。ECサービスの普及によって、従来よりも手軽に商品購入の手続きを完了させられるようになったのです。

Memory(記憶)の有無

AIDMAでは、従来型の商習慣を念頭に置き、消費者が購入に至るまで商品を記憶にとどめておく工夫が必要でした。しかしAISASが想定する現代社会では、消費者は検索による情報収集で商品を気に入ればすぐに購入に進むのが一般的です。

今でも印象に残るマーケティング上の工夫は必要ですが、加えて、認知から購買までスムーズに消費者を誘導する動線の構築も重要になってきています。

Share(拡散)の追加

拡散が追加されたことには2つの重要な意味があります。

まず、消費者が能動的に情報を発信しやすくなったこと。従来の商習慣では、口コミはあくまで周囲の人との会話で広まるものだったため、その拡散力は限定的でした。今ではWebを通じて簡単に情報を拡散させられるため、消費者は自分から情報を発信するようになりました。

2つ目は、消費者の行動モデルに循環性が生まれたこと。従来の消費者の購買モデルは、購入をゴールとして一方向に流れるものでしたが、現代では、消費者からまた別の消費者に伝播する循環性を意識したマーケティングが重視されます。

AISASの法則を理解するメリット

AISASをコンサルタントが理解するメリットは次の3つです。

Webマーケティングを想定した顧客の行動を理解できる

AISASはWeb上での消費者の購買行動をモデル化したものであるため、Webマーケティングの成功に重要な「顧客の行動」を理解するのに適しています。現代ではほとんどの企業においてWebマーケティングを積極的に取り入れているため、当然コンサルタントにもWebを活用したマーケティング戦略に関するプロジェクトが多数寄せられます。

Webを活用して効率的に集客や商品販売、認知度の向上などをおこなううえでは、消費者の購買行動を理解することが何よりも重要です。従来型のAIDMAとの違いも踏まえたうえで、現代の顧客のカスタマージャーニーを理解すれば、成果を出すことにつながるでしょう。

Webマーケティングにおける課題を明確にできる

AISASをフレームワークとして、クライアントのマーケティング手法を整理すれば、どこにWebマーケティング上の課題があるのか明確になります。

たとえば、認知度が低ければAttentionを集めるための広告発信が機能していないのかもしれません。Searchが盛んにおこなわれるのに購買までなかなか進まない場合は、購入ページの商品案内に問題があるか、あるいは購入のための入力フォームが不便というケースも考えられます。

このようにAISASを基準に消費者の行動を分析することで、自社のWebマーケティング課題を明確にし、課題解決に向けて前進できるのです。

Webマーケティング特有の「拡散」を有効活用できる

AISASはWebマーケティングの効果を高める「拡散」を有効活用できます。Webマーケティングは、SNSやレビュー、口コミなどを活用して集客効果を高め、商品販売をスピーディに拡大させられる点が特徴です。

AISASを通じてShareから他の消費者のAttentionにつながる余地があることを理解すれば、SNSや口コミ対策、積極的な情報拡散を促すマーケティングなど、循環性を加速させる方策を検討しやすくなります。

AISASのケーススタディ

最後に、実際の商品販売の事例について、AISASの法則を応用して分析してみましょう。今回の題材は日本でもすっかり定着したスターバックスです。

Attention(認知)

スターバックスは広告費をあまりかけていないことで有名です。その分、SNSを有効活用してAttentionを高めています。

スターバックスのTwitterは600万人以上のフォロワーを獲得しています。彼らに向けて新作商品の情報をツイートするだけで、低予算で商品へのAttentionを促すことが可能です。投稿が拡散されれば、さらに多くの人に商品情報が届きます。

Interest(興味)

スターバックスはSNSによるマーケティングに独自の強みを持っており、新商品についてSNSやWeb上で大々的に告知し、多くの人の興味をひきつけます。

商品が美味しそうであることはもちろん、SNSでの拡散効果も意識した特徴的なデザイン、新商品の興味を高める豆知識の提供など、まさにAISASに基づく顧客の行動を意識したマーケティングが展開されています。

Search(検索)

スターバックスはTwitterやInstagramでの情報拡散がマーケティングの軸にあるため、情報を探す人も「#(ハッシュタグ)」などを使い、SNS上で情報を調べる人が多いです。

Action(購買行動)

SNSやWebを通じて十分に情報が広まったら、一定数の人は店舗に足を運んで実際に購入に至ります。都市部などでは、新作の販売直後は大混雑となることも珍しくありません。

Share(共有)

消費者は、商品の感想とその画像をSNSで共有します。スターバックスの商品はSNS映えしやすいデザインを徹底しているため、特に盛んに拡散されます。そしてもともと膨大なフォロワーを抱えているため、さらに多くの別の人のAttentionを喚起することになります。

スターバックスのマーケティングは、AISASにおける消費者の購買行動の循環性をうまくとらえたマーケティング手法なのです。

AISASへの理解は、Webマーケティングプロジェクトに貢献するための第一歩

もともとマーケティングはコンサルタントにとって触れる機会の多いテーマです。近年では、多くの企業がWebマーケティングを取り入れているため、コンサルタントもWebマーケティングへの理解が欠かせない時代となりました。

マーケティングにおいては、顧客の購買行動を理解することが重要。Webマーケティングにおける消費者の行動プロセスは、この記事で紹介したAISASにまとめられています。

まずはAISASをしっかりと押さえたうえで、クライアントのWebマーケティング課題に対して有効なソリューションを提供できる人材になりましょう。

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マーケティング戦略の立て方(プロセス)とは【有効な戦略を立てるための4つのステップと具体的な手法】
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今回の記事では、AISASモデルについて基本やメリット、ケーススタディなどをご紹介しました。
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