アジア圏における投資銀行の特徴や採用・年収、カルチャーとは?

日本にいると、投資銀行といえば日系・外資系に目が行きがちでしょうか。しかし、近年は中国やインドなどアジア圏の経済発展が著しく、中国・シンガポール、東南アジアといったアジア圏の投資銀行ビジネスも急速に発展しています。
今回の記事では、注目を集める日本を除く「アジア圏投資銀行」の特徴・カルチャーなどをご紹介します。

【目次】

  1. リーグテーブルは概ね欧米系+中国系で構成
  2. 注目されるプロダクトの違い:規制の違いなどからファイナンスディールが発展途上の国も
  3. 中国の投資銀行カルチャー
  4. シンガポールの投資銀行カルチャー

リーグテーブルは概ね欧米系+中国系で構成

まずは、投資銀行ビジネスにおけるビジネスシェアの指標として用いられるリーグテーブルから紹介していきましょう。

日本の場合、リーグテーブルは株式ファイナンス(ECM、IPO)、債券ファイナンス(DCM)、M&Aのいずれをとっても日本の5大証券会社の投資銀行部門や一部中堅・ブティック系の投資銀行並び、一部代表的なグローバル投資銀行が中位〜下位に並ぶことが多いです。

年によってM&Aなどでは外資系が上位に食い込むことがありますが、市場構造として定着しているとまでは言えず、就活生・転職者の目が外資系に向きがちであるのに反して、国内系の投資銀行がリーグテーブルにおいては強い市場となっています。

しかし、アジアで見ると、リーグテーブルの様相は大きく変化します。日本以外のアジア・太平洋圏では、ECM、DCM、M&Aいずれも上位にはモルガン・スタンレー、シティ、HSBC、クレディ・スイスなど欧米系の投資銀行が目立ちます。

中位になると中国系の中信証券(CITIC)、チャイナセキュリティーズなどがランクインする場合もあります。日本を除くアジアを全体で見ると、欧米系の投資銀行の勢力がまだ強いのが特徴です。

一方、金融市場が発達している中国・シンガポール国内のリーグテーブルはまた様相が変化します。中国国内の投資銀行案件のリーグテーブルでは、先に挙げたCITIC、チャイナセキュリティーズや中国国際金融(CICC)など中国系の投資銀行が上位に多く並びます。

また、シンガポールについてはオーバーシー・チャイニーズ銀行(OCBC)やDBSなどシンガポール系の金融機関が並ぶ一方で、中国の投資銀行の顔ぶれも目立つ状況です。

以上のようにアジア全般としては欧米系の投資銀行が高い地位を占める一方で、金融市場が発達している中国・シンガポールについては自国の投資銀行が強いというのが、現在のアジアにおける投資銀行の市場環境となっています。

注目されるプロダクトの違い:規制の違いなどからファイナンスディールが発展途上の国も

日本では投資銀行ビジネスの花形はM&Aというイメージに反して、投資銀行の収益源はディール数の多い社債調達となっているハウスが多いです。

また、欧米の投資銀行についても、M&Aアドバイザリーよりもファイナンスディールや機関投資家向けの市場取引が収益源になっているハウスは少なくありません。

さて日本を除くアジアではどうかというと、実は、アジアの中でも地域によって大きく異なります。資本市場自体が発展途上である東南アジアでは、外資系のアドバイザリーによるM&Aは比較的活発におこなわれています。
債券・株式をはじめとした金融商品によるファイナンスは、東南アジアの個別国の規制の違いなども背景に、発展途上であるというのが実情です。

マレーシアなどでは特殊性の高いイスラーム金融の知見が必要など、他の地域とは異なる金融文化がある国も含まれていることなどが、ファイナンスディールの活性化を妨げている部分もあります。

逆に、M&A案件が少ないのがシンガポール。シンガポールはその国土の狭さなども背景に、他国と比較して巨大企業が少なく、中小企業と国営企業が中心の市場となっています。そのため、投資銀行がターゲットとするような大型M&Aのディールが起こりにくい状況です。

一方、シンガポールは世界で見ても金融取引拠点の一つとみなされているように、有価証券による取引は活発におこわれている地域。そのため、投資銀行のディールにおいてもECMやDCM、もしくは市場取引関連のビジネスが活発におこなわれています。

また、これら以外の軸として私募エクイティ/デットのファイナンスが活発である点もシンガポールの特徴。転換社債やメザニンファイナンスなど、株式と債券の間の資本性を持つ金融商品が活発に供給されています。

ただし、ファイナンス案件が2016年時点で日本を除くアジアのディールの80%超を占めていたのに対して、M&Aについては、50%強に留まっています。(いずれも手数料収益ベース)このことから、シンガポールほど極端ではないにせよ、ややファイナンス案件の収益力の方が高いといえます。

ここからはアジアの中でも自国の投資銀行が発達している中国・シンガポールの投資銀行カルチャーについてクローズアップしていきます。

中国の投資銀行カルチャー

まずは、中国の投資銀行のカルチャーについて3つの切り口で紹介していきます。

入社には学歴+インターン+面接力が必要

まずは入社試験から。中国の投資銀行に入るためには、学歴+インターン+面接でのコミュニケーション能力が必要になります。こう書くと日本の投資銀行にも似た部分はありますが、より学歴についてはシビアです。

いうまでもなく中国は人口が日本より圧倒的に多く、人口比で見れば投資銀行は狭き門。そのため学歴での実質的な足切りは日本より厳しいのです。

国内であれば北京大学など最難関クラスの大学を出ていることが「最低」条件になりますし、学歴で就活を有利に進めるためには、グローバルに見てTOP20くらいに入るような世界的な一流大学を出ている必要があります。

また、インターンの重要性も日本以上に高い傾向にあります。日本でもインターンから実質的な内定に進む例は少なからずありますが、中国では学生時代からインターンで働いていることが採用の必須要件となる場合も珍しくありません。

その点、面接については日本と比較すると重要度が低いように見えます。面接回数も2回程度で済む場合が多いのです。ただし、さまざまな質問に対して柔軟に答えるコミュニケーション能力の高さを見られている点は、日本の投資銀行の採用にも共通する特徴です。

報酬は外資系>国内系

投資銀行の報酬は全般として中国国内で見て高いことは確かですが、日本と同様に主要外資系投資銀行の方が高い状況です。

2016年ごろの大まかな相場感にはなりますが、国内系の証券会社で、初任給〜アナリストの給与が米ドル換算で$40,000〜$60,000、外資系ではUBS、JPモルガンなど中国における有名投資銀行では$80,000〜$100,000。この後紹介しますが、労働環境は日本にも似て激務な部分もあるため、優秀な学生は外資系の投資銀行を目指すケースが多いようです。

その他

ここまで紹介した以外の特徴をいくつか紹介しておきます。まず、労働時間が長い点は日本や欧米の投資銀行に共通する特徴です。残業時間が月100時間以上に及ぶことも珍しくありません。報酬水準と激務を天秤にかけて、それでも前者に魅力を感じた者が投資銀行にチャレンジします。

また、学歴が重視される一方で、入社後に重宝されるスキルは他国とはやや異なります。中国でもファイナンスのモデルを構築する、高速で大量の資料を作成するといったような投資銀行特有のスキルは必要ではあるものの、優先度は諸外国の投資銀行より低いといえます。

それよりも重視されるのは「リレーションの構築力」。中国の地元企業や国営企業といかにパイプを持つか、という点が非常に重視されるのです。

最後に、これは日本と比較してですが、M&Aの案件に対する人気は社員や投資銀行志望者の間でも高くないようです。投資銀行の中でもとりわけ労働時間が長くなるM&Aよりも、市場も拡大しており、魅力的な収益を計上できるファイナンス関連の案件に魅力を感じる方が多い傾向にあります。

シンガポールの投資銀行カルチャー

続いて中国・日本にも比肩するほどの金融センターとなっているシンガポールの投資銀行カルチャーについて紹介します。

就活の第一歩は投資銀行ハウスへの直接連絡

シンガポールにおいては学歴は「ネームバリュー」としては必ずしも重要視されません。ただし、投資銀行でのビジネスに足る知見の深さは見られるため、必然的にある程度質の高い高等教育機関で商・経済もしくは法律などの分野で強みを持っておくことが望ましいといえるでしょう。

しかし、「〇〇大学だからそれだけで有利に働く」というようなことはあまりありません。シンガポールは他の地域より小さいオフィス・企業が多いため、日本の新卒採用でイメージするような大々的なものはおこなわれず、いくら良い大学に行っていても自分から動かなければチャンスを掴むのは困難です。

そのためシンガポールで投資銀行に入ろうとする者は、基本的に各ハウスの人事部などへ直接連絡を取り、リレーション構築を進めます。うまくいけばインターンのオファーが来るので、これにチャレンジします。一回のインターンで簡単に本採用が決まることは稀で、複数社・複数回のインターンに参画するのが通例です。

本採用に向けては面接も実施されますが、上記のインターンを経て実施されるのが通例です。面接自体は2〜3回程度と、やはり日本と比較するとやや少ない傾向にあります。また、言語については英語はほぼ必須。中国語が話せればさらに有利です。

給与面では特に恵まれているとの見方が多い

シンガポールの場合はそもそも(シンガポールから見た)外資系のプレーヤーが多く、欧米系・中国系・日系(特に野村)と先にあげたOCBCなどの国内系が有力ハウスとしてみなされています。国内の求人自体が少ないため、外資vs国内という比較があまりありません。そして総じて投資銀行の待遇は「非常に良い」と見られています。

アナリストの平均的な水準としては、S$118千程度という調査があります。足元の為替水準でベイドルに換算すると$88,000となります。為替の影響もありますが、足元の日本円にすると1,000万円に迫る水準。これは日本の外資系トップティアクラスの水準になるので、確かに高待遇であるといえます。

その他

シンガポールにおいても長時間労働は投資銀行の大きな特徴となっています。100時間以上の残業を強いられることは特に珍しくありません。巨大な案件で膨大な資料を作るケースはあまり多くない一方で、組織が小さいため、一人当たりの仕事の守備範囲が広いことが、長時間労働の背景になっているように見えます。

二つ目の特徴として組織が非常にフラットな傾向があります。マネジメントクラスと新人アナリストがディスカッションしたり、談笑していることも全く珍しくありません。また、激務でもおおらかなカルチャーである場合が多く、メンバー間でミスを責め合うような組織は稀です。

最後にプロダクトに対する志向性ですが、M&Aの人気が低く、ファイナンス系、特に私募ファイナンスのビジネスでのキャリアアップを希望する社員・投資銀行志望者が多い傾向にあります。

シンガポールでは投資銀行→投資ファンドというキャリアチェンジが好まれるため、将来ファンドに転職した際にバリューを発揮できるよう、私募ファイナンス領域での知見を深めていきたいと考えるエリートが多いのです。

=================

>投資銀行へのキャリアに関する記事

投資銀行を目指すコンサルタントからよくある質問と回答例【年収面から採用まで】
https://www.axc.ne.jp/media/careertips/toinvestmentbank_qa

実際に投資銀行で求められる「英語力」と「日系・外資系での違い」
https://www.axc.ne.jp/media/careertips/investmentbankenglish

=================

すでに資本市場が成熟しつつある日本と異なり、中国・シンガポール、ついで東南アジアなどの地域は、今まさに投資銀行ビジネスの発達が進んでいます。

投資銀行で働くとなると、アジアのビジネス開拓に携わる場合も考えられます。もしかしたら将来、アジア系投資銀行への転職がキャリアの選択肢の一つになるかもしれません。

投資銀行へのキャリアをお考えの方は、ぜひアクシスコンサルティングにご相談ください。


アクシスの求人のうち、
約77%は非公開。
平均サポート期間は3年です。

各ファームのパートナー、事業会社のCxOに定期的にご来社いただき、新組織立ち上げ等の情報交換を行なっています。中長期でのキャリアを含め、ぜひご相談ください。

新規会員登録はこちら(無料)

カテゴリー、タグで似た記事を探す

こちらの記事も合わせてご覧下さい

アクシスコンサルティングは、
プライバシーマーク使用許諾事業者として認定されています。


SSL/TLSとは?

※非公開求人は約77%。求人のご紹介、キャリアのご相談、
企業の独自情報等をご希望の方はぜひご登録ください。

新規会員登録(無料)

※フリーランスのコンサルタント向けキャリア支援・
案件紹介サービス

フリーコンサルの方/目指す方。
×