大手監査法人の「監査業務」「非監査業務」の違い【業務内容・立ち位置】

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監査法人はその名のとおり監査を行う法人です。監査業務を組織的に行うために、公認会計士法に基づき公認会計士が共同して監査法人を設立。多くの公認会計士が日々業務に励んでいます。
監査法人の主要な業務は、公認会計士の独占業務である「監査業務」です。公認会計士試験に合格して監査法人に入ると、まずほとんどの人たちは監査業務に従事します。

しかし、監査法人の業務は監査だけではありません。コンサルティング業務など様々な「非監査業務」が存在しています。業務内容が多様化している現在では、非監査業務の割合が大きくなっています。

今回の記事では、大手監査法人における「監査業務」と「非監査業務」の違いについて解説します。

大手監査法人の1つでマネージャーとしてご活躍され、その後事業会社に転職された公認会計士の方に、大手監査法人における業務内容や監査業務とそれ以外の業務について聞いたお話を参考とします。

【目次】

  1. 大手監査法人における監査業務
  2. 大手監査法人における非監査業務
  3. (参考)公認会計士の3つの業務

大手監査法人における監査業務

日本には大小様々な監査法人があり、個人で監査業務を行う公認会計士もいます。監査業務を行う主体としては組織や個人など多種多様ですが、ここでは大手監査法人における監査業務について説明します。

大手監査法人には毎年数百人規模で新人が入社します。大学生から公認会計士試験の勉強を始めて試験合格後は監査法人に入るというケースが大半で、多くの人々にとって監査法人は社会人デビューの場となります。そのため業務を1つひとつ身につけながら、社会人としてのマナーや作法も覚えていきます。
監査業務はクライアントから報酬を得て、対価としてサービスを提供するものであり、クライアントとの適切なやりとりができないと、業務をスムーズに進められません。
公認会計士試験の科目には監査論があり、受験生は監査の初歩的な内容について勉強しますが、実務は教科書どおりにはいかないものです。基礎的な知識を土台に、実際の現場で業務経験を重ねていきます。

大手監査法人における監査の業務内容

監査業務は監査計画の策定に始まり、監査業務の実施、監査結果の報告へと進んでいきますが、適宜監査計画を見直して、最終的には監査意見の表明により一連の監査業務が終了します。終了した監査業務を振り返って、改善すべき事項などを整理し、次期の監査計画を策定するという流れが繰り返されていきます。業務全体としてはPDCAサイクルを回しながら、各担当者レベルでは監査範囲となる勘定科目の計上金額が適正であるか否かを深掘りして詳細に確認します。

大手監査法人における公認会計士の法人内での立ち位置

監査業務は公認会計士の独占業務で、まさに本業です。監査法人に入ったらまず監査業務に従事して、徐々に仕事を覚えてスキルアップしていき、監査法人内の職位もそれに応じて上がっていきます。スタッフから始まって最終的にはパートナーとなります。大手監査法人における職位の一例は以下のとおりです。

●大手監査法人の職位
スタッフ
→ シニアスタッフ
→ マネージャー
→ シニアマネージャー
→ ディレクター
→ パートナー

公認会計士試験の合格直後から監査業務に従事し、長い監査業務の経験がある人は監査法人において存在感があるといえます。
公認会計士が監査法人で働き続けるならば、監査業務の経験を積んでいることはいわば当たり前で、当然に身につけておく必須のスキルです。監査は監査法人内の共通理解となっています。監査法人のたたき上げで監査業務の経験を積み、監査報告書に署名を行うパートナーともなると、監査法人内での発言力や地位は高いものとなります。
一方、公認会計士ではなく、監査法人で監査業務に関与していない人はパートナーになることができないという制限もあり、肩身が狭いと感じることがあるかもしれません。

大手監査法人における非監査業務

前述のとおり、監査法人では監査以外の業務も幅広く行われています。監査業務とは違い、公認会計士の独占業務ではなく、公認会計士としての知識や経験を活かして、クライアントの課題解決を支援するあらゆる業務が対象となります。次に、大手監査法人における非監査業務について解説します。

大手監査法人における非監査の業務内容

非監査業務といってもその内容は多種多様です。会社が困っていて改善したいと考えている課題の解決をサポートするようなコンサルティング業務だけではなく、会社の業務そのものを代行することもあります。
さらに非監査業務といっても、公認会計士として監査業務で培った知識や経験が土台となります。非監査業務の一例として株式公開支援があります。株式の上場を目指して、会社の内部統制を整備するとともに、上場に必要な開示書類を作成します。ここで活きるのが、公認会計士の知識や経験です。
監査業務では、既に上場している会社の適切に整備された内部統制を詳細に精査してその適正性を確認することから、適切な内部統制を整備するためのノウハウが蓄積されています。また、Ⅰの部などの上場申請書類の確認は、有価証券報告書をはじめとする開示資料をチェックする監査業務での経験が活かせます。

非監査業務を行う人材の法人内の立ち位置

監査法人に入りたての新人がすぐにコンサルティング業務などの非監査業務に取り組むことはできません。それは、非監査業務を行うためには相応の専門的知識、スキル、業務経験が欠かせないからです。非監査業務は法律で強制されているものではなく、会社が任意で監査法人と契約して業務が提供されるものです。そのため「会社としてメリットを享受できる」と判断されないと、そもそも監査法人に対して業務の依頼はありません。業務の提供を開始した後も「バリューがない」と判断されてしまったら契約が途中で終了となることも十分あり得ます。

したがって、監査法人の中ではある程度の期間にわたり監査業務の経験を積んでから、晴れて非監査業務に取り組めるようになるため、マネージャーなど一定以上の業務経験や知識がある人が非監査業務に従事しているケースが多いです。
例えば株式公開支援やIFRS導入支援など監査法人における非監査業務は、基本的に公認会計士が監査業務の知識・経験を活かして提供するものです。一方で、財務デューデリジェンスや株式価値算定などのいわゆるFAS業務は、大手監査法人自体ではなく、同じネットワーク内の別会社で提供されることが一般的です。

なお監査法人には、独立性を担保するため、法人の業務における非監査業務において、利益相反や独立性の懸念への対応策を明らかにすることが義務付けられています

参考:金融庁|監査法人の組織的な運営に関する原則≪監査法人のガバナンス・コード≫ 

(参考)公認会計士の3つの業務

そもそも公認会計士はどのような業務を行っているのでしょうか。まず公認会計士が行う業務としては、主に(1)監査業務、(2)コンサルティング業務、(3)税務業務の3つがあります。それぞれについて解説します。

(1) 監査業務

公認会計士は監査業務を行う専門家です。公認会計士法で「公認会計士は、他人の求めに応じ報酬を得て、財務書類の監査又は証明をすることを業とする。」と、初めに業務として規定されているとおり(公認会計士第2条第1項)、最も主要な業務が監査業務です。
引用:昭和二十三年法律第百三号 公認会計士法

監査対象

一口に監査業務といっても種類は様々で、あらゆる組織体が監査の対象となります。株式会社だけではなく、合同会社、合資会社、合名会社、保険相互会社などの他の会社や学校法人、労働組合、公益法人、財団法人などのあらゆる法人が監査の対象となります。
そういった様々な法人などの組織に関して独立した立場から監査を実施し、監査意見を表明することにより、その組織の財務諸表などの信頼性を担保します。

法定監査

法律により必ず実施しなければならない「法定監査」があります。そのうち代表的な2つは、①会社法に基づく「会社法監査」と、➁金融商品取引法に基づく「金融商品取引法監査」です。

①会社法監査

会社法監査は、会社法の規定に基づき作成される「計算書類」の適法性について意見表明を行う監査のことをいいます。資本金が5億円以上または負債金額が200億円以上の会社は会社法上の大会社として、公認会計士の監査を受けることが義務づけられています。

➁金融商品取引法監査

金融商品取引法監査は、金融商品取引法に基づく監査であり、財務諸表の適正性について公認会計士が意見表明を行う「財務諸表監査」と、内部統制報告書の適正性について公認会計士が意見表明を行う「内部統制監査」の2種類があります。株式を証券取引所に上場している株式会社は、公認会計士による金融商品取引法監査が義務づけられています。

(2) コンサルティング業務

公認会計士としての専門的な知識や経験を活かして、会社の経営や財務会計などのあらゆる領域で課題解決を支援するのがコンサルティング業務です。コンサルティング業務は監査と異なり独占業務ではありませんが、会計や税務の専門的な知識や経験がある公認会計士が提供する業務の中でも、クライアントから強く求められます。アドバイザリー業務と呼ばれることもある、ニーズの高い業務です。

会社が課題を解決したいと考える領域は広くコンサルティングの業務範囲に含まれます。例えば、株式公開支援、IFRS導入支援、連結財務諸表作成支援、経理業務の代行、決算業務の早期化、経営戦略策定支援、財務デューデリジェンス、企業価値評価などが挙げられます。

 (3) 税務業務

公認会計士の資格を保有していると税理士登録をすることができます。税理士登録後、晴れて税理士として税務業務を行うことができます。申告書などの税務書類の作成、連結納税制度や企業結合に伴う税務スキーム策定支援といった各種税務処理の助言などがあります。

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>監査法人に関する記事

「経理職から監査法人(公認会計士)へ転職して驚いたこと」とその違い【実話】
https://www.axc.ne.jp/media/careertips/accountingcomparison

コンサルファームから監査法人アドバイザリーへの転職時によくある質問と回答例
https://www.axc.ne.jp/media/change-jobs-knowhow/firmtoadvisoryqa

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大手監査法人には監査業務と非監査業務があり、いずれも所属する公認会計士により業務提供が行われます。それぞれ従事している公認会計士の属性はその業務内容に応じて異なりますが、あくまで監査業務がベースであり、そこから派生して非監査業務の範囲が拡大しています。両者は密接に関連し合っており、いずれも監査法人においては重要で両輪として欠かすことのできない業務です。

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