今回はブティック系投資銀行におけるキャリアや内容について解説していきます。ゴールドマンサックスやモルガンスタンレーといったバルジ・ブラケットと異なり、ブティック系投資銀行については少し分かりにくいかもしれませんが、アメリカではブランド力のあるファームも多いのが特徴です。
【目次】
- ブティック系投資銀行とは特定のセクターに特化した専業の投資銀行で日本ではまだ比較的浸透していない
- 日本でも得られるブティック系投資銀行の魅力。またデメリットとキャリアの特徴
- 日本でのブティック系投資銀行の存在感
- ブティック系投資銀行へのキャリアを目指す上での注意点
- ブティック系投資銀行への転職は比較的容易だが逆は簡単ではない。大手金融等を挟むのがカギ
ブティック系投資銀行とは特定のセクターに特化した専業の投資銀行で日本ではまだ比較的浸透していない
ブティック系投資銀行とは、バルジ・ブラケットのような大規模でフルラインのサービスを有する投資銀行ではなく、特定のセクター、プロダクト、地域に特化したある種の専業の投資銀行を指します。株式調査部を置いていないファームもあるのも特徴になるでしょう。(ファームによっては株式調査部もあり、リサーチレポートを出しています)
日本ではそこまで存在感が無いですが、米国ではバルジ・ブラケットのOBなどが立ち上げたブティック系投資銀行が多くあり、バルジ・ブラケットの同レベルのクオリティやグローバルカバレッジでその勢いは増しています。
これらのファームはバルジ・ブラケットと一緒に共同アドバイザリーを行うことも多く、大型案件や有名案件でもその名が見えます。
しかしながら大規模案件だけではなく、ブティックファームは、より小規模なサービスも提供します。例えば、M&Aやリストラクチャリング、レバレッジド・バイアウトなど、投資銀行業務の中でもニッチな分野に特化している場合があります。バルジ・ブラケットバンクが通常$500million以上の案件を扱うのに対し、ブティックファームは$50millionから$500million程度の案件を扱います。ただ、最近ではミドルマーケットと言われるこのようなレンジのディールを扱うブティック系投資銀行でも案件サイズは大きくなってきています。
バルジ・ブラケットとの違いは、やはりサービスラインの広さでしょう。またあくまでアドバイザリー業務に専念するため、利益相反といった問題がないというメリットがあります。
顧客としてもM&Aという特定のプロダクトの専門性を持った人材が多いため安心して頼めますし、機動的かつ少人数のチームなのが魅力です。
一方で、IPOやエクイティやデットの調達といったサービスラインは備えていないため、ファイナンスに関する経験は積めないというデメリットがあります。公開市場での取引やパブリック案件は中々リソース的にも難しいため、その点は頭に入れておきましょう。
またビジネスの収益的にもM&Aアドバイザリーなどのようなボラティリティの有る収益構成であり、年によっては全く案件が無い、ある年はかなり収益が良いという事が頻繁にあります。そのため、数年投資銀行に在籍してプライベートエクイティや、その他のキャリアを狙う人には「案件数的に足りない」というリスクもあります。
一方で、業務はそこまで細分化されていないため、若手でもエグゼキューションやピッチに深く関与でき、経験値を上げられる点はメリットです。
案件に関しても、オフィスにいるシニアバンカーのリレーションや得意なセクターによって経験できる幅が異なるため、どのような案件が多いか、かならず事前にチェックしておきましょう。
ブティック系投資銀行では、ディール全体を一人でこなす機会が非常に多くあります。ブティック系投資銀行では、バンカーが案件の獲得、見込み客の説得、案件の構成、クロージングまで、より独自に活動することを期待し、許可する場合があります。バルジ・ブラケットバンクでは、特に新入社員レベルでは、バンカーは限られた役割にとどまり、プロセス、ルール、承認、リソースの活用に依存していることに気づくかもしれません。
例えば、バンカーは案件の機会を探す代わりに、既に確立されたカバレッジチームからセールスのリードやピッチを受け、定義された仕事を言われた通りに正確にこなすことが求められる可能性もあります。
日本でも得られるブティック系投資銀行の魅力。またデメリットとキャリアの特徴
日本ではまだキャリアとして念頭に入れる人が少ない印象のあるブティック系投資銀行ですが、バルジ・ブラケットと比較した場合、多くの人が以下のような利点があると主張しています。
ブティック系投資銀行のメリット
良い/より興味深いディール経験を積むことができる
ディールチームの規模が小さいため、より多くの責任を負うことができ、退屈な事務作業ではなく、思考を必要とする技術的な仕事をこなすことができます。労働時間やワークライフバランスに不満を抱く可能性はあるものの、機械の歯車としてではなく、人間として扱われるようになります。
エグジットの機会、転職のチャンスも多い
プライベートエクイティやヘッジファンドへの転職はもちろん、金融専業会社の他の職種にも負けない競争力を持つことができます。
バルジ・ブラケットより高い現金報酬
多くのブティックは、若手バンカーに高いボーナスを支給し、シニアバンカーには100%の現金報酬を提供します。
ブティック系投資銀行のデメリット
ブティック系投資銀行のメリットを述べてきましたが、明らかなデメリットもあります。ブティックは金融業界以外ではあまり知られていないため、一般企業、スタートアップ、政府系機関などへの出口の機会が少なくなります。そのため、ある程度の知名度を重視することが大切です。
また、バルジ・ブラケットのような深さや幅のある「同窓会ネットワーク:アラムナイ」を得ることはできません。
さらに、人々が見落としがちな、あまり目立たないデメリットもあります。
1つは、平均的なディールがバルジ・ブラケットの平均的なディールより小さいことです。
ブティックはメガディールのアドバイザーを務めることもありますが、小規模で重要性の低いディールも数多く手がけています。これらの銀行の「最近の取引」のページを見ていただければ、お分かりいただけるでしょう。
もう一つの問題は、ブティックとそれ以外のブティック系投資銀行との差異です。たとえばニューヨークの大手ブティックでM&AやRestructuringを担当するのであれば、おそらく素晴らしい経験を積むことができ、確実なエグジットチャンスを得られるでしょう。しかし、ミドルマーケットのブティック系投資銀行で、より小さな業界グループ・チームに所属するのであれば、キャリア上何が起こるかわかりません。
つまり、シニアバンカーのキーパーソンに依存しているところもあり、そのような人が退職すると、ディールフローが悪くなる傾向があります。
また、採用人数の問題も無視できません。ブティックは毎年それほど多くの人を採用するわけではなく、フロントオフィスのエントリーレベルの採用は全世界で数百人程度ですが、バルジ・ブラケットは数千人単位で採用しています。ですから、たとえ最終的な目標がブティックへの入社であったとしても、ブティックだけに集中するのは得策ではありません。バルジ・ブラケットや日系投資銀行も受けましょう。
ブティック系投資銀行でのキャリア
ブティック系投資銀行でのキャリアは、基本的にバルジ・ブラケットのM&Aアドバイザリーチームや日系大手証券のM&Aアドバイザリーチームと大きく変わりません。ブティック系投資銀行でもアメリカには多くの会社があり、M&Aアドバイザリー以外のサービスラインもそろえているような会社もありますが、基本的には東京ではM&Aアドバイザリーのみです。
ブティック系投資銀行に行った人は、その後は同業他社でさらに給与水準の高いところに移るか、バルジ・ブラケットのM&Aアドバイザリーチームへ移るか、外資系ないし日系のプライベートエクイティに転職する人がほとんどです。
日本でのブティック系投資銀行の存在感
日本にオフィスを構えているブティック系投資銀行はほとんどありませんが、欧州系のラザードやエバコアといったエリート・ブティック(EB)と言われるファームであれば、大きな案件に携わることが可能です。
バルジが狙うような大型案件を高いフィーで請け負い、収益性を維持できれば、給与水準や求められる能力も非常に高くなります。
一方で小規模から中規模案件にフォーカスしてアドバイザリー業務を提供するようなブティック系投資銀行もあります。このようなファームは競合が日系の証券や同業の外資系ブティック投資銀行、会計系のファームになります。給与水準もバルジ程まではいかない会社もあるでしょう。
ただ、ワークライフバランスは多少は取れていると感じるかもしれません。
ブティック系投資銀行へのキャリアを目指す上での注意点
ブティック系投資銀行に行く際に気を付けたい点は、先ずは得られる経験の幅です。東京にオフィスを構えるブティック系投資銀行があるとしても、M&Aアドバイザリーに経験が絞られてしまう点に注意しましょう。IPOやファイナンス案件等はないため、将来的にCFO等を目指す方はM&Aの経験をたくさん積むのも良いのですが、資本市場の経験を得ることはかなり難しいと思います。
ただし、日本でもTOBやIPOに強いブティック系のハウスもありますので、自分の嗜好に合わせて選ぶのが良いと思います。
とはいえ、ブティック系投資銀行は既にバルジ・ブラケット等の大手投資銀行や他の外資ブティック投資銀行で経験を積んだ人が自分で立ち上げて、自分のペースで客をとって案件を行うという人が多いため、ジュニアよりもシニアバンカーの方がキャリア的にはフィットします。その点も理解しながら選考に臨むと良いでしょう。
さらに、資本市場案件は行わずM&Aアドバイザリーやリストラクチャリングに重点を置き、バルジ・ブラケットやミドルマーケットIBDよりも著しく小規模(50百万ドルから100百万ドル以下)の案件について助言するブティック投資銀行は規模が小さく、エリートブティックのように大きな案件を担当することはないという点も理解した方が良いでしょう。
複数の内定をもらって迷ったときは、規模が重要であることを思い出してください。扱っている案件が100百万ドル(100億円程度)以下かどうかといった、数値面が大きな基準になり得ます。
ブティック系投資銀行への転職は比較的容易だが逆は簡単ではない。大手金融等を挟むのがカギ
このように、同じ外資系投資銀行でもブティック系なのかバルジ・ブラケットなのかで得られる経験や人脈は少し変わってきます。
どちらに行くかはあなたの経験次第ではありますが、1つ注意が必要なのは、バルジ・ブラケットからブティック系投資銀行への転職は比較的容易ですが、その逆はそこまで簡単ではないことです。
M&Aなどのプロダクトに深い知見があればまた別ですが、基本的にはキャリアのどこかで会計系のファームではなく大手金融機関や証券会社を挟んでおくほうがいいと思います。
とはいえ、良いファームには良いディールが集まるため、複数内定を目指して自分のやりたいことを追求できるファームが理想的でしょう。
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>投資銀行へのキャリアに関する記事
ブティック型(独立系)投資銀行とは?その特徴と転職後”できること・できないこと”
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今回の記事では、日本におけるブティック系投資銀行でのキャリアについてお伝えしました。
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