こんにちは。アクシスコンサルティングの高橋です。
各ファームでDX・デジタル関連のコンサルティングのニーズが高まっており、デジタルを活用した業務改善や新規事業の立ち上げが盛んに行われています。
(参考)「Big4」各ファーム独自の「DX推進ポジション」特徴・転職年収事例・キャリアパスまとめ
同時に事業会社でも、DX推進部門に加え、トップ人材である役職CDO(Chief Digital Officer/Chief Data Officer)を設置し、自前でもデジタルを活用してビジネスを加速させようとする動きが見られます。
そこで今回は、よく質問いただく「CIO/CTOとの違い」や、直近でニーズが高まっているCDOの設置背景~役割~キャリアパスについてまとめました。
【目次】
CDOの求人内容と年収レンジ
実際のCDO求人としては、いきなりCDOをCDO”候補”を募集するケースが大半です。
職務内容としては、チームとして、以下のスキルが求められます。
【CDO候補の求人における業務例】
- IoT、ビッグデータ、AI/アナリティクスなどの先進のテクノロジーを活用したビジネス企画
- デジタル戦略立案・実行
- デジタル化を推進するための社内におけるデジタルナレッジの継続的な共有
- CDOに準ずるデータ組織における責任者の経験
結果的に、
- 社内におけるデジタル人材の育成/組織化
といった、まさに責任者らしい業務も求められるケースが増えています。
さらに企業によってはCIOやCMOの役割が分岐してCDOが生まれたパターンも多いため、実態としては、バックオフィスの働き方や社内で使用されるツールをデジタル化するなどのCIO的な役割をCDOが担うケースもあるようです。
また年収については、CDO室の場合、メンバークラスで大手事業会社でも500万~、マネージャークラスで800万~1,000万というケースが多いでしょうか。IT系ベンチャーにおけるCDO候補の求人では、750万~1,500万というケースがあったと耳にしたこともあります。
一方で、CDOともなると大手メーカーでは3,000~5,000万円といったケースもあります。この辺りはデジタルが利益にどの程度ヒットするかに寄るでしょうか。まだまだ企業ごとに異なるケースが多いようです。
CDOとCIO/CTOとの役割の違い
CDO Club Japanによると、CDOの役割は「AI、ロボティックス、IoT、デジタルマーケティング、ドローン、ビッグデータ等を有用に活用し、日々変化し続けるテクノロジーと消費者の行動に迅速に対応し、 幅広いデジタル戦略を統括、組織を横断して改革を推進する統括責任者の総称」とされています。
CIOとCDOの役割の違いは、こちらも区別が曖昧になりつつありますが、
- CDO:デジタルを活用したサービスの創造(攻めのIT)
- CIO:デジタルを利用した自社の業務プロセス改善(守りのIT)
という分け方がシンプルで分かりやすいでしょうか。
具体的に例を挙げるとすると、GEにおいては、CDO「ソフトウェアビジネスの創出」、CIO「全社の生産性向上」という役割分担のようです。
参考:
https://lt-s.jp/lts-column/2017-7-26
CIOは「自社のビジネスプロセスの理解」や「デジタルを利用した業務改革スキル」が求められる一方で、CDOは「SNS等の顧客とのタッチポイントを中心としたマーケティングスキル」や「データアナリティクス」、「デジタルを利用した事業開発力」が求められる傾向にあります。
また、CDOはCMOとも求められるケイパビリティや経験が似ているケースもあり、実際に社内でデジタル活用のニーズが生まれたために、CMOからCDOと役割を変えるケースや、転職してCMOからCDOになる方もいらっしゃいます。
例:小売業のCMO(ECサイトやSNSなどを用いたマーケティング戦略の策定・推進)→メーカーのCDO(データ分析や、デジタルマーケティング視点でのサービス・商品開発)
さらに、同じくテクノロジーを扱うCTO(最高技術責任者)との違いに関しては、CDOが「デジタルやデータ活用によるサービスの創造」を担う、いわばビジネスサイドなのに対し、CTOは名前の通り「製品開発における技術面の責任(開発の方針決めやエンジニアの採用・育成など)」を担うエンジニアサイド、という住み分けが一般的のようです。
参考
“CIO(最高情報責任者)”の役割・導入企業・CTO/CISO/CDO、CIO候補/コーポレートIT部門/情シスとの違い・実際のキャリアパスについて
CDOを設置するよくある背景
テクノロジーを土台にしたベンチャーのみならず、大手企業でも、デジタルを活用してビジネスを加速させようとする動きが強まっています。
今や、デジタルは手段ではなく、ビジネスの主戦場となりつつあります。
CDOは日本では比較的新しい役職のため、企業によってその設置背景は様々ですが、大きく分けると
- ①デジタルを用いて業務を効率化する(DX/CIO路線)
- ②デジタルマーケティングを確立する(CMO路線)
- ③デジタルを活用して新しい収益の基盤を生み出す(新規事業路線)
などが主な目的のようです。
明確な区分けは難しく、複数の目的が混在しているケースも多いでしょうか。
従来のようにデジタルをツールとして活用するに留まらず、デジタルを活用して新しい収益の基盤を生み出したい、というニーズが徐々に高くなってきています。
例えば、2019年5月には、ゴディバもCDOをグループ内で初めて設置しています。「データを活用したCRM(顧客関係管理)、EC、ブランドコミュニケーションといったマーケティング業務はもちろん、IT部門もCDO傘下となる」とのことで、上記でいう②CMO拡張路線の意図が強いでしょうか。
時代の流れを考慮すると、分かりやすいデータにとどまらず、活用方法が定まっていない最新のプラットフォームを活用していくため、高度なデータ活用を推進しつつ、そのデータを活用した新規事業の提案を求められるケースも想定できるでしょう。
CDOになるまで/なってからのキャリアパス
実際に日本企業においてCDOを担当されている方の具体的な経歴を見てみましょう。
A氏:外資系高級商材メーカーにてCRM、ビジネスインテリジェンスシステムの企画・推進
→同業界にて、マーケティングやデジタルサービスのマネージャーとして市場調査からサービス向上のためのデジタルプロジェクト推進
→大手メーカーのCDOに就任
B氏:大手通信会社にてワイヤレスビジネスを推進
→外資系広告会社で広告領域の戦略プランニングを経験
→大手メーカーにてマーケティング、ブランディング、顧客・ユーザーのマネジメント経験
→大手SNS運営企業において日本事業責任者としてビジネスモデル構築や、ブランド構築などに関わる
→大手メーカーのCDOに就任
また、コンサルを経験してCDOに就任された方のキャリアパスとしては、このような例が挙げられます。
C氏:大手商社にて、社内ウェブベンチャーを設立
→エグジット
→戦略系コンサルティングファームに入社、経営戦略の策定や実行経験を積む
→クライアント先に移籍して子会社の事業責任者としてターンアラウンドに成功
→外資系の小売業に転職し、経営企画として全社に渡るデジタルマーケティング戦略・施策の立案/実行を担い、店舗改革や商品企画において数年に渡り高い実績を残す
→数年後にCDOに内部昇格
D氏:大学卒業後に大手外資系ファームにITコンサルタントとして入社、メーカーの全社IT基盤刷新プロジェクトやEC事業会社のグローバルプラットフォーム整備に関わり、マネージャーとして事業会社のプロジェクトオーナーや現場担当者にデジタルツールの導入におけるアドバイスやサポートを行った経験が評価される
→IoTを用いたオープンプラットフォーム企業の立ち上げと共にCDOに就任。
などの例があります。
このように、それぞれ企業によって重きは異なりますが、CDOでは新規ビジネス開発×マーケティング×業務改善のケイパビリティが求められます。
そのため、「ウェブやテクノロジー領域のサービス企画・導入」や「デジタルマーケティング」といったコアスキルを積みつつ、コンサルや事業会社の経営企画などで「中期経営計画の策定・推進」「経営者へのデジタル面でのアドバイス」といった全社的な視点でのビジネス経験を得るのが「コンサルからCDO」のパスとなるでしょうか。
また、CDO後のキャリアパスとしては、まだあまり事例は少ないですが、違う業界で同じくCDOとして活躍される方や、そのまま経営軸を強めてCOO/副社長やCEO/社長に昇格するというパスがあるようです。
E氏:25年以上にわたりアジア太平洋地域・アメリカ・⽇本において、世界規模の企業の日本法人でEコマース、CRM、DX事業等に従事
→大手飲料メーカーの日本法人CDOに就任しDX戦略を統括
→アメリカの多国籍製造会社の⽇本法⼈にて代表取締役社⻑に就任
F氏:産業機器製造会社にて航空機の設計に従事
→ドイツの製造会社の日本法人にて社長兼米本社副社長および専務執行役員に就任
→日本の大手総合電機メーカーにてCDOとしてDX推進を担う
→同社の代表執行役社長CEOに就任
G氏:大手広告代理店にてデジタル代表取締役CEO
→広告代理店業務の統括を担う純粋持株会社の執行役員グループCDO
→同グループの総合広告代理店にて取締役社長補佐・デジタルビジネス統括を担当
→同社代表取締役社長・執行役員社長補佐グループCDOに就任
→代表取締役社長グループCEOに就任
H氏:大手電気通信事業会社に新卒入社
→外資系広告代理店・外資系化粧品/栄養補助食品会社にて、ブランドの戦略構築や新商品開発等に携わる
→世界的なSNSのブランド ビジネス ディベロプメント・クライアントパートナーや日本事業責任者を担う
→大手化粧品会社にてCDOに就任し、DX化の旗振り役を担う
→芸能・エンターテインメント企業にて執行役員兼CDOに就任
I氏:大手食品会社にてグローバル事業に携わる
→2019年より同社の代表取締役副社長兼CDOとして、全社のDX化を推進。「Japan CDO of The Year 2020」に選出
→2022年に同社の特別顧問に就任
J氏:米IT企業の日本法人に入社。プリンストン大学コンピューター・サイエンス学科にてPh.D.取得
→同社の東京基礎研究所所長や執行役員を経験
→大手総合商社にてビジネスサービス部門顧問に就任
→大手ケミカルグループにて執行役員CDOに就任
→同社フェロー、顧問を経て、東京⼯業⼤学環境・社会理⼯学院にて特任教授に就任
こちらはまた事例が増えてきた際にとりまとめてお伝えできればと思います。
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今回の記事では、デジタル専門の経営人材「CDO(Chief Digital/Data Officer)」の設置背景・役割(CIO/CTOとの違い)・年収・キャリアパスについてご紹介しました。
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各ファームのパートナー、事業会社のCxOに定期的にご来社いただき、新組織立ち上げ等の情報交換を行なっています。中長期でのキャリアを含め、ぜひご相談ください。