“CFO(最高財務責任者)”の役割・CEO/COO/CAOや経理・財務部長との違い・求められるスキル・キャリアパスについて

CFO(Chief Financial Officer/最高財務責任者)は、企業の資金調達や運用を担う財務のプロフェッショナルです。

単に財務面だけを事務的に担当するのではなく、CEOの右腕として事業戦略や財務戦略の立案と実行を担う役割もあり、ベンチャーであれば組織開発を含め幅広い業務を担うケースもあるでしょう。

経理や財務以外のあらゆる部門を見渡す必要が生じることも考えられ、欧米の企業ではCEOに次ぐナンバー2として位置づけられることが多い重要なポジションであり、日本でも昨今設置する企業が増加している状況です。

今回は、よくご質問いただくCFOと「CEO/COO/CAOや経理・財務部長との違い」とともに、直近でニーズが高まっているCFOの設置背景~役割~キャリアパスについてご説明いたします。

【目次】

  1. CFOの設置が増加している理由はIPOの準備といった財務面からの事業推進を担える人材の不足
  2. CFOの求人内容や求められるスキル
  3. CFOとCEO/COO/CAO、経理・財務部長との違い
  4. CFOになるまで/なってからのキャリアパス

CHROの設置の増加理由と導入企業。人材を重視した経営の活性化が背景

上場を目指すベンチャーが増えていく中で、CEOだけでは多くの業務を担いきれず、補佐役としてCFOの設置を検討する企業が多い印象です。

資金調達をはじめIPOの準備を進めるにあたって、調達した資金をどう使うかが課題となり得ます。
また2~3年後の事業拡大を見据え、より深い財務の専門性を持つ人材に、経営に参画してもらう必要が出てきたという企業もあります。

目まぐるしく変化する社会情勢やAIの台頭など、先行きの不透明な時代において、将来を見据えた戦略を練る企業が増えるのに比例し、CFOの力を必要とする企業が必然的に増えているのではないでしょうか。

実際にCFOを設置している企業としては、三菱商事 / レゾナック・ホールディングス(旧昭和電工) / 日本航空(JAL) / 三井住友フィナンシャルグループ / NTTドコモなど多数の大手企業が挙げられます。

元々、レゾナック・ホールディングスの財務組織は、決まったことを経営陣が実行する「後方支援組織」でした。5~10年後を見据えた戦略を、財務部門が主導して考えるべく、組織の作り替えを決意。後方支援に注力するのではなく、戦略アクションの意思決定自体まで先導できるCFO組織を作り上げることに成功しました。

参考:敏腕CFOが語る要諦と悩み 「支援組織」から脱却 攻めの戦略を担う|日経ビジネス

また中堅企業うるるは、経理部長の退職を機に、CFOの業務負荷軽減のため、CFOを2人体制にしています。まず財務経理部長候補として入社したご人材に、現場スタッフとともに学び、経理・財務・経営企画を管理するスキルを習得した上で部長職に就任していただきました。このご人材は、ボトムアップの予算作成を、トップダウンに変えるといった組織変革にも貢献した結果、共同CFOに就任することになりました。

参考:2人CFO体制のうるる ニチガスは外部招請で時価総額6倍に|日経ビジネス

CFOの求人内容や求められるスキル

CFOに求められるスキルは、経理や財務に関する知識・経営者の視点・資金調達から実行まで担う力だけではありません。これらはあくまで基本的なものであり、実際にIPOアドバイザリー経験やVC・PEファンドでの上場準備サポート・M&Aの経験まであると、より有利でしょうか。

コンサルタントから一気にCFO候補を目指すのはハードルが高いケースが想定できるため、事業会社の経営企画室などで資金調達に関わるスキル・経験を身に付けておくのも手かもしれません。

実際の求人についても、 IPO/M&Aの実務経験や事業会社での経営企画・戦略実務の経験が求められるケースが見受けられます。コンサルタントから一気にCFOを目指すのであれば、戦略コンサルティングファームでの経験があると有利かもしれません。

まれにですが、ベンチャーの若手採用では、ポテンシャルを重視するケースもあります。CFO経験者やIPO責任者を対象とせず、監査法人や投資銀行の職歴や、経理担当の経歴があれば、人間性と素直さを重視して採用するというものです。CFOの求人では、人柄を重視したポテンシャル採用は多くはありませんが、企業理念を社外に伝えて資金調達をスムーズに行うといった局面があることを考えると、愛される人柄と高いコミュニケーション力がなければ務まりません。財務や経理のすばらしい知識や能力があっても、人柄やコミュニケーションに難がある場合、CFOとしては力を発揮できないことは、常に意識しておきたい点です。

CFOの方の声をうかがうと、財務・経理で力を発揮しただけではCFOになるのは難しいという意見も見受けられます。かつては経理経験や監査法人での勤務の経験があればCFOとして重宝されていたものの、近年は財務に詳しいだけでなく、経営者としての目線も重要視されていると言います。2024年現在、難しい企業経営を担える人材が不足している中で、経営者目線を持ち、社内外の経営者とも対等に渡り合える人材として、CFOが求められていることがうかがえるでしょう。

あるベンチャーでは、事業とマーケットの連動を求め、BizDev経験者やCOOも兼任できる人材を歓迎要件とし、会計士資格もマストではなく、経理財務一筋に勤めてきた人は採用対象とならないと言っていました。経理・財務の知識と経験だけを強みと認識するのは危険であり、経営者として会社のかじ取りを担えるだけのスキルこそ、最優先で身に付けるべきでしょうか。

CFOとCEO/COO/CAO、経理・財務部長との違い

CFOの周辺ポジションであるCEO/COO/CAO、経理・財務部長との違いについて、まずはCEOから解説します。

CEO(Chief Executive Officer/最高経営責任者)は、企業経営の全体を統括するトップマネジメント人材であり、長期的な経営戦略を策定して、各事業・部門をまとめ上げます。戦略実行での最終決定権を持つ点で、企業のナンバー1に位置するポジションです。一方CFOは財務の戦略策定~実行において、CEOをサポートするのが特徴です。CEOと連携し、その最終決定に必要となる経営面の情報提供や助言によって、補佐役としての役割を果たします。CEOが戦略を決定するための支援を行う、企業経営に不可欠な存在と言えるでしょう。

次にCOO(Chief Operating Officer/最高執行責任者)は、CEOが練った全体戦略を、戦術に落とし込んで、実行するためのオペレーションを担う存在です。CEOの方針に従って実行を担う役割であり、最終決定権はないことが多いでしょうか。財務戦略の管理を担うCFOとは根本的に役割が異なります。
COOが財務面の戦略実行まで担えない場合、CFOがそれを担うケースが想定できるでしょう。また財務だけでなく幅広い戦略を実行するスキルがあるCFOであれば、COO的な役割まで求められるケースがあるようです。

CAO(Chief Administrative Officer/最高総務責任者)は、総務部門をはじめとする管理部門の責任者を担います。会社ごとに定義が異なりますが、基本的には総務を担いつつ、人事や法務、経理・財務までカバーするケースも想定できます。

経理・財務を担える点でCFOとの違いが分かりにくいかもしれませんが、CFOはあくまで資金調達や資金繰り、調達資金の管理を担う責任者です。一方CAOは、経理・財務に限らず、総務・人事・法務などといった管理部門全般を束ねるトップ人材と言えます。

ポジションとしてはどちらも並列と認識されており、CFOが資金調達以外の面まで管理できない場合、CAOが管理部門をまとめ、CFOが資金面の管理に専念できるような仕組みを整える企業もあるでしょう。

ベンチャーのように規模が大きくなく、資金調達が最優先事項の企業であれば、COOやCAOよりも、CFOの設置を優先することが考えられます。先述した通り、IPO準備のためのCFO設置が急務となっている企業が増えていることから、現状はCEOと連携することで、COOやCAOの役割までを担えるCFO人材を求めるケースが増えていると言えそうです。

最後に、CFOと経理・財務部長の役割にも触れておきます。

文字通り「経理・財務部長」という1つの役割があることも考えられますが、基本的には経理部長と財務部長の2つを指します。経理部長は会計処理・売上管理を担う経理の責任者、財務部長は資金調達や運用を担う財務責任者です。経営層であるCFOのように、経理・財務面から企業価値を最大化して経営戦略まで担うわけではありません。

経理・財務部長は、上長であるCFOやCEOに対して、月次・年次の決算状況を報告するといった業務を担当します。特に財務部長は、資金借り入れを実行する際の交渉や定期報告が義務付けられるため、CFOの戦略を実行する上で大きな役割を果たします。ただし、経理・財務ともに意思決定は担わず、あくまでもCFOに従って進捗管理や報告を担う意味では「守り」の側面が多いのが現状でしょう。

対して、CFOは「攻めと守りの両面」を担うのが特徴です。決算締めのサポートや、経理・財務部長を兼務する場合は「守り」を担いますが、経営者として他のCxOと全社戦略を考え、資金調達ではデットかエクイティか選択するなど、経営のかじ取りという「攻め」も担うことが重要です。

企業経営に不可欠な役割を幅広く担う力があり、責任者としても機能するのがCFOの大きな特徴です。上場に向けた活動の推進役を求める多くの企業が、採用活動に力を入れているのも当然と言えるかもしれません。

CFOになるまで/なってからのキャリアパス

実際に、日本企業でCFOとして活躍されている方の具体的な経歴と、その後のキャリアパスをご紹介します。

A氏:

大学卒業後、外資系証券株式会社、外資系コンサルティングファームに、合わせて10年以上勤務
→デジタルマーケティングツールの開発を担うソフトウエア企業の取締役CFOに就任
→財務から経営戦略まで幅広い業務に取り組み、マザーズ上場に貢献

コンサルティングファームのマネジャーとして、数多くのプロジェクトで運営責任を担った方です。証券会社でファイナンス、コンサル時代に経営を学んだ結果、CFOに必要なスキルが身に付いたと言います。ベンチャーではそれらに加えて、主体性と自身で思考する力が求められると語っている他、士業の知識もあると企業に安心感をもたらせるそうです。自身もスキルアップを続け、これまでの経験ではカバーできない、事業の成長に伴う組織構築に関する知識を身に付けるべく勉強に取り組んでいます。分からない点は周囲に聞くなど、謙虚に学ぶ姿勢も、トップ人材にとって重要であることがうかがえます。

B氏:

大学在学中に公認会計士2次試験に合格
→大学卒業後、 大手総合電機メーカーに入社し、連結決算や管理会計の業務に従事
→採用・販促などを担う大手企業に入社し、事業戦略の策定や新商品の開発に従事
→ハンズオン型コンサルティング会社に入社し、常駐支援型コンサルティングで起業支援に従事
→コンテンツマーケティング会社の取締役CFO兼CSOに就任し、事業拡大をリード
→ソフトウエア企業の取締役COOに就任

事業会社での経験が豊富で、経理・財務の高いスキルを習得した上で、コンサルティング会社に移られた方です。事業理解が深く、事業会社のCFOに就任後も、現実的な予算策定を行い、予算の精度を高めることに貢献されました。仮に理想に走りやすいCEOやCOOがいても、この方のようにCFOとして常に現実的な数値を見極め、実行可能な予算を策定する冷静さがあれば、高い評価を得られるでしょう。

C氏:

外資系コンサルティングファームに入社。その後、別の外資系コンサルティングファームの日本法人に入社
→美容系総合ポータルサイトを運営する企業に創業時から参画し、取締役兼CFOに就任
→海外を含む全事業の事業責任者となり、複数の子会社で代表取締役を兼任
→VC事業の会社を設立し、取締役代表パートナーに就任。
※海外にてMBA修了済み

外資系コンサルティングファームでの経験、MBA修了者としての知識があり、多くの海外子会社を取り仕切っている人材です。海外の金融専門誌でCFOとして受賞経験があるなど、優れた手腕が高く評価されています。

D氏:

大学商学部で学び、卒業後は日系コンサルティングファームに入社。経営コンサルタントとなり、多様なプロジェクト経験を積む
→大学時代の友人が設立した企業に入社し、事業計画作成や資金調達を担当して、同社の取締役CFOに就任
→ベンチャーの事業拡大支援を担う企業を設立し、代表取締役に就任
→大手グループの持ち株会社でも取締役CFOに就任。

ポストコンサルで事業会社に転職後、資金調達といった財務面の役割を担った方です。入社直後にCFOとなり、手腕を発揮し続けています。自身も企業を設立し、代表取締役として未上場のベンチャー企業に向けた支援や投資を行っています。大学の商学部で学んだという経歴からは、金融に対する感度を高く持ち、早くから手腕を発揮する上で、知識も大きな武器となり得ることがうかがえるでしょう。

E氏:

海外大学・国内大学院修了後、外資系コンサルティングファームに入社し、大手クライアントを担当。経営課題の解決に尽力
→インターネット関連や証券などの事業を担う企業に入社し、営業・事業戦略に携わり、M&AやPMIの推進も経験
→人材紹介プラットフォームの運営会社に入社し、取締役CSO/CFOに就任

コンサルタントの立場から、組織経営の課題解決プロジェクトに携わり、事業会社でM&AやPMIの実務を積むなど、CFOにふさわしいキャリアを歩んでこられた方です。現在勤めるプラットフォームの運営会社では、経営企画や広報からはじまり、コーポレート担当、人事の担当責任者などを経験し、新規事業やM&Aにも携わった末にCSO/CFOとなりました。ハングリー精神というよりも、シームレスに新しい環境へと入っていく柔軟性があったため、異なる職種にも大胆に挑戦し、CFOとしての力量を身に付けるに至ったと言えるかもしれません。

以上のように、各企業によってCFOへのキャリアパスは異なりますが、共通して主に下記のスキル・経験を積んだ方が就任されるケースが多い印象です。

・経営課題の解決やM&Aの実務経験がある
・あくまでもCEOの補佐役に徹することで現実的な予算策定ができる
・公認会計士やMBAの資格を保有しているなど会計に関する知識が豊富、もしくは学ぶ意欲が高い
※現場経験があることは前提

コンサルティングファーム出身者の場合は、主に会計や管理、組織経営の解決プロジェクトを担ってきた方が、CFO候補の対象となりやすいです。また多くは、コンサルタントとして事業を支援するうちに「実際に事業やサービスを作ってみたい」と考えるなどの理由で、事業会社に転職されます。そこで管理部門に該当する経験を積み、会計や法務を熟知していくという流れが一般的です。

コンサルタントとしての課題解決力・論理的思考力・提案力とともに、事業会社で培った会計に関する知識やM&Aのスキル、チームマネジメント能力が、大いに役立つでしょう。

ただし、専門知識やファイナンスの知見は、公認会計士経験者やFAS・投資銀行経験者に比べると劣るのが現実のため、事業会社のみならずFASや投資銀行に転職するのも有効でしょうか。

また、ベンチャーであれば、20~30代でのポテンシャル採用の可能性もゼロではありませんので、CFOは若手が挑戦できるポジションと言えます。ただし知識・経験のみならず、自身で手を動かせるタフなプレイングマネジャーとしての精神力や、未上場企業を上場させるために粘り強く戦略策定から実行までをし続けるだけの強靱(きょうじん)な意志も重要でしょう。

大手事業会社の場合は「CFO経験者」が優遇される可能性があるため、まずはベンチャーでCFOを経験し、その後に大手事業会社のCFOに転身するパスも有効かもしれません。

最後に、CFO後のパスとしては、他社の取締役COOとして活躍される方や、自ら起業した会社の取締役代表パートナーになられる方もいらっしゃいます。他にも同業他社/異業種でCFOとして活躍される方や、COO/副社長やCEO/社長に昇格するというパスが考えられるでしょう。

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CFOへのキャリアに関する記事

CFOとしてベンチャーに「採用」されるためのステップ・方法
https://www.axc.ne.jp/media/careertips/cfoventure_recruit

ベンチャー・中小企業のCFO就任後、長く活躍するために求められるスキル・経験
https://www.axc.ne.jp/media/careertips/venture_cfo_skill

「上場を控えた」ベンチャーCFOの役割と今入社するメリット
https://www.axc.ne.jp/media/careertips/cfo_venture

 

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今回の記事では、CEOの財務面の補佐役である「CFO(Chief Financial Officer)」の設置背景・求められるスキル・役割(CEO/COO/CAO、経理・財務部長との違い)・キャリアパスについてご紹介しました。

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