ベンチャーにおいてCFOが事業部門よりも影響力を得るために必要なこと

ベンチャー企業において、管理部門やCFOからの依頼に、事業部門が従ってくれないパターンは多いかもしれません。

CFOや管理部門の影響力が低いことが原因として挙げられますが、全社に対して影響力を高めていくためにはどのような方策が効果的なのでしょうか。

【目次】

  1. CFOや管理部門と事業部門との立場に差が出る理由
  2. 管理部門が全社に対する影響力を高めていくために取るべき方策とは
  3. 管理部門の位置づけを再定義する

CFOや管理部門と事業部門との立場に差が出る理由

多くのベンチャー企業の悩みとしてあるのが、CFOや管理部門がお願いしていることを、事業部門が中々実施してくれないという点です。

さらに上場準備に入っているベンチャー企業は、社内フローの整備が必要不可欠ですが、進まない例も散見されるようです。

では、CFOや管理部門と事業部門との立場に差が出るおもな理由には何があるのでしょうか。

本来やるべきことの重要性や目的が浸透していない

CFOや管理部門から事業部門に依頼される内容に対して、会社における重要度や何のためにやるのかが認識されていないことが考えられます。

事業部門は売上や利益を上げることに一番に目が行きがちであり、これは成長を重視したいベンチャー企業にとって重要であることは間違いないでしょう。

一方で、売上や利益を上げるために直接は大きく関係しないものの、会社としてやらなければならないフローの整備やそれに伴う事務などについて、浸透されていないことが考えられます。

売上・利益の獲得という攻めの側面と、CFOや管理部門から依頼することが多い守りの側面は「どちらも必要なことである」と伝えていかなければなりません。

管理部門からの依頼が場当たり的である

CFOや管理部門が事業部門に対して依頼する場合において、急なお願いであったり、唐突な依頼であったりといったことはないでしょうか。

管理部門は、やらなければならないことや、実施してほしいことを事業部門に依頼することになります。

「新規取引先依頼書をすぐに出してください」「稟議書は事前にお願いします」「請求書は月初2営業日目までに必ずお願いします」などは、良く聞くフレーズです。

これらの例において、依頼の趣旨や事業部門の状況を考えずに、一方的に依頼するとどうなるかを考えると分かりやすいでしょう。

依頼が増えると、事業部門側からすると「また管理部門から何かがふって来た」という印象を持たれがちになり、煩わしく対応も後回しになりがちです。

さらに事業部門からは、CFOや管理部門が警戒されてしまうこととなります。

結果的に事業部門から管理部門への信頼感が薄れてしまい、管理部門の影響力が低下することが考えられます。

管理部門が事業部門の御用聞きになっている

CFOや管理部門が事業部門のいわば御用聞き的な位置づけになっていないでしょうか。

本来事業部門が行うべき見積書や請求書の作成、さらには受注管理などを管理部門が請け負っている場合ですが、この形態になると、影響力を発揮しようにも難しい状態になっていきます。

各部門の役割を明確にすることで、それぞれの持ち場が曖昧にならないよう線引きすることが大切ではないでしょうか。

事業部門の書類作成に対する、管理部門のチェック機能も働きにくくなります。

そのため、仮に管理部門が事業部門の業務を引き受けるとしても、「事業部門のフローが整備されるまでの間」「新たな担当者が入社するまでの間」など、期限を設けて実施することが望まれます。

コストセンターとしてのイメージが強い

事業部門からの認識として、管理部門は売上や利益を生まないコストセンターとしてのイメージがある点は大きいでしょう。

特に、営業が強い会社では社内の位置づけとして営業部門や事業部門が花形であり、コストセンターである管理部門は花形部門をサポートする位置づけとなります。

そのような主従関係が成立してしまっている場合、管理部門が改めて影響力を発揮することは難しくなります。

後述する、管理部門の位置づけを再定義するような対応が必要でしょう。

管理部門が全社に対する影響力を高めていくために取るべき方策とは

管理部門が事業部門だけではなく、全社に対する影響力を高めていくためにはどのような方法を取っていけばいいのでしょうか。

とりわけ、上場準備に入っている企業においては、内部管理体制を強化する観点でCFOや管理部門の影響力が強くなっていくことが不可欠です。

経営方針や経営ビジョンの十分な理解

CFOはもとより、管理部門のメンバーは経営方針や経営ビジョンに共感し、理解して業務を進めていく必要があります。

また自らが行う業務が、経営方針や経営ビジョンに合っているかどうか判断しながら進めていくことが大切です。

仮に事業部門に業務をお願いすることになっても、経営方針を背景としている場合はそうでない場合に比べて説得力が増すこととなります。

事業面での貢献

管理部門においても事業面での貢献があります。

一例を挙げるなら、資金調達においては大きな貢献ができます。調達目標と調達実績が明確になることから、CFOや管理部門の成果が定量化される数少ない例かもしれません。

CFO・管理部門が中心となって行う資金調達は、事業部門が新たな投資を行う原資を獲得できます。

別の切り口では、管理部門が主体となって行うコスト削減も事業部門への効果が大きいでしょう。

管理部門のコスト削減活動の結果、いくら削減されたのかが明確になれば、事業部門への説得力も高まります。

事業部門がハンドリングできない全社に関する管理費や共通費は、事業別収益管理を行う際には、事業部門に配賦されることが一般的です。

そのため、配賦予定であった予算管理費に対して、実績が大きく減少した場合、管理部門の貢献となるでしょう。

業務フローやマニュアルの整備と遵守

特に上場準備を行っているベンチャーにおいては、業務フローや業務マニュアルの整備が非常に重要です。

稟議や経費申請のための仕組みを導入し、全社のメンバーに遵守してもらう必要があります。

稟議は事後では許されない、また経費は月ずれを起こさないように提出してもらうなど、決まったことを徹底して実施するマニュアルも必要になってくるでしょう。

実施するにあたって、会社の方針や対応することの重要性、さらに実施することによる効果も合わせて伝えていく必要があります。

上場準備を検討していないベンチャー企業であっても、長い目で見た場合の業務効率化や内部管理体制強化に寄与するため、CFOや管理部門が主体となって整備していくことが求められます。

リーダーシップの発揮

CFOや管理部門は、「やらされ仕事」をこなすのではなく、全社でやるべきことを浸透させていく、リーダーシップを発揮していくことが求められます。

逆にリーダーシップが発揮できれば、事業部門に対して影響力が及ばないという懸念は無くなります。

「経営方針やビジョンの共感」「事業面での貢献」「フローやマニュアルの整備と遵守」などを通じて、率先して業務を遂行していく姿勢が伝われば、リーダーシップは自然とついてくるでしょう。

管理部門の位置づけを再定義する

CFOがもし「当社の管理部門は中々全社への影響力が発揮できていない」と感じた時、ほかの経営陣とも議論しながら、管理部門の位置づけを再定義して、全社員に知ってもらうことも必要です。

具体的にどのような対策が効果的なのか、確認していきます。

管理部門のビジョンや目標を明らかにすること

全社から見て、管理部門が何をやる組織で、どこに向かっているのか明確にしておくことが重要です。

管理部門として、将来何を成し遂げていきたいのかという部門ビジョンに加えて、今期に達成すべき目標やスローガンなどを掲げ、全社に周知して取り組みを明らかにすることも大切です。

またベンチャー企業の活性化事例として、管理部門として当期に成し遂げるビジョンや目標をポスターにして、社員の目につくところに掲示することもあります。

ややアナログ的なやり方ですが、社員が繰り返し確認することで「管理部門が何かチャレンジしようとしている」「管理部門が変わってきたな」と感じてもらうための一つの方法として考えられます。

経営と直結している組織であること

管理部門が経営と直結している組織であることも、重要なことの一つです。

全社会議の進行や、CEOが発表する資料作成などは、管理部門や経営企画部門が主体的にサポートすることが多いでしょう。

経営方針を一番理解した上で、ずれが無いように動いていくのは当然のこととして、管理部門が主体的に方針を全社に伝えていくことも重要です。

CFOをはじめ、管理部門が経営の一端を担っている組織という見え方が浸透すると、自然と影響力を発揮できる組織となり、管理部門が実施すべきことが末端にまで伝わりやすくなるでしょう。

経営管理と事業戦略は両輪であること

CFOは、事業部門のメンバーから「管理部門」や「財務部門」の担当役員としての印象が強いと考えられています。

さらに経営管理を行う管理部門のメンバーは、事業部門のメンバーから「会社の管理を仕事とする人」という印象を抱かれるのが一般的でしょう。

対して事業部門のメンバーは、管理部門から「現場の人」として語られることもあります。

このように、ベンチャー企業でも組織が大きくなればなるほど、互いを他人視するセクショナリズムが自然と発生してくることとなります。

業務上、お互いの持つイメージをすぐに変えるのは難しいかもしれませんが、企業成長のためには、事業部門と管理部門は足を引っ張り合うのではなく、協力・連携していかなければなりません。

とりわけ、CFOはセクショナリズム解消の観点から、率先して動いていく必要があります。

お互いの業務や役割を尊重することにより、仕事の理解も深まってくることとなります。

結果的にお互いの影響力を上手く発揮しながら、組織が活性化していくことが期待できるでしょう。

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>CFOのキャリアに関する記事

ベンチャー・中小企業のCFO就任後、長く活躍するために求められるスキル・経験
https://www.axc.ne.jp/media/careertips/venture_cfo_skill

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CFOや管理部門が影響力を発揮していくためには、「管理部門が何か変わったな」と思われるような取り組みが必要になります。

事業部門に対して、一方的に権力で影響力を発揮するのではなく、明確な役割を持ちながら業務を行うことを通じて、管理部門を位置づけていくことが重要です。

さらに、尊重し合いながら業務を進めていくことで、お互いの影響力を上手く発揮していくことが大切でしょう。

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