「攻めのCFO」「守りのCFO」の違いは?企業フェーズ毎に求められるのはどちら?

CFO(最高財務責任者)にはタイプにより攻めが得意な方と、守りが得意な方がいらっしゃいます。

スタートアップ・ベンチャー企業でCFOを務めるにあたっては、それぞれの局面において双方を発揮する必要も出てくるでしょう。

例えば、攻めが得意なCFOが入社直後にいきなり守りを要請されることもあります。

これまでは攻めが中心で、経験値が少ないにもかかわらず守りで乗り切らなければならないのです。

このような出来事はスタートアップ・ベンチャーでは日常茶飯事であり、とっさに頭を切り替える習慣を身に付けることが必要となってきます。

今回は、攻めと守りが必要な場面を含めて、それぞれの違いや必要性、求められる役割について解説します。

【目次】

  1. 「攻めのCFO」「守りのCFO」それぞれの役割
  2. 攻めか守りか、企業フェーズにおいてCFOに求められる役割

「攻めのCFO」「守りのCFO」それぞれの役割

そもそもCFOの役割を攻めと守りに区分するならば、どのような違いが生じるのでしょうか。

攻めと守りのどちらかに分けることが難しい役割もありますが、業務の視点から見ていきましょう。

「攻め」と「守り」とは

まず、攻めと守りの意味合いについてです。

感覚的には、前向きにどんどん進めていく必要があることが「攻め」、一方で周りを固めていかなければならない局面が「守り」ということになるでしょう。

CFOが管轄する管理部門や財務経理部門は、バックオフィスと言われるように、営業やマーケティングという顧客と接して売上を獲得する部門ではなく、売上計上や契約締結など後方支援を行う部門として位置づけられます。

したがって、守りの側面が多いようにも見えますが、攻めの側面もあるのです。

例えば、営業やマーケティングが受注獲得に向けて攻めに向かうため、プロモーション展開や、人材獲得のための採用に動かなければならないとします。

そのような場合において、プロモーション費用を捻出したり、採用活動の窓口として書類選考を担当したりすることは、管理部門の協力が必須であるため、彼らと伴走しながら支援していくことになります。

そのため時と場合により、攻めと守りの両面の役割を果たさなければならないのです。

「攻めのCFO」の役割

文字通り、会社のためにCFO自身が前に前に進んでいく役割を果たしていきます。前述したプロモーション費用に対する投資は、攻めの役割でしょう。

積極果敢に受注を取りに行くセールス部門に対して、CFOは軍資金を準備し、セールスが攻められる環境を構築するのです。

もう少し上流に遡ると、投資するための資金を集めて来なければなりません。

将来の来るべきベンチャー界隈の冬の到来に備えて、守りの資金を集めることもあるでしょう。

しかしながら、セールスがプロモーションを実施するために必要な資金調達をするという目的になると、明らかに攻めの資金と考えることができます。

さらに、CFOがVCやCVCと接点を持つ場合に、自社事業と、VCの出資先やCVCが持つ事業との提携を模索する場合も考えられます。

この場合において、自社事業サイドのフロントにまずはCFOが立ち、その後事業連携の深掘りが必要となった時に事業責任者に橋渡しをすることになるでしょう。

このように、新たに提携先と事業を検討していく際、CFOも攻めの姿勢や事業を作っていくセンスが必要となる場合があるのです。

「守りのCFO」の役割

CFOが管轄するバックオフィスは、とかく守りには強い傾向があります。

経理や財務のベースとなる仕事は、決算を的確なタイミングにミスなく締めることや、キャッシュフローを精緻に見積もることで、バーンレートを把握したりランウェイを見積もったりする責任があるためです。

上場準備に入る会社においては、監査対応や予実管理の精緻化、内部統制の精査など、守りと言えるような業務のオンパレードになります。

経理や財務、さらに労務経験が比較的長い人材は、保守的な仕事のやり方が染みついている方が多く、会計原則やコンプライアンス、規程や規則などのルールに則って業務を推進することでしょう。

したがって、体制がしっかりできているベンチャー企業では、CFOは守りに強い人材として自然と守りの役割を果たすことになります。

仮に攻め寄りの経験が多いCFOでも、バランスが取れたバックオフィス体制が構築できるでしょう。

攻めか守りか、企業フェーズにおいてCFOに求められる役割

攻めや守りがそれぞれ企業のどのフェーズにおいて重要になってくるのでしょうか。

CFOは攻め・守りどちらのタイプであっても、必ずその逆をやらなければならないタイミングがあります。

得意な部分はより強化し、不得意な部分は他のメンバーに協力してもらうことで進めなければならないでしょう。

ベンチャーの成長ステージにおける最重要課題と合わせて求められる役割を、上場前後についても確認していきます。

攻めのシード・アーリー期

シード・アーリー期においては、CFOの役割は攻め:守り=10:0か9:1程度の比率になることが想定されます。

また、CFOが着任することがない場合もあり、例えばCEOがCEO兼COO兼CFOとして動いていくことも多いでしょう。

そのような場合も含めたCFOの役割として考えてみます。

このタイミングは、事業をなんとか軌道に乗せることが最大の経営課題であるため、CFOの役割も攻めになってくるでしょう。

最低限のコンプライアンスは遵守する必要がありますが、守りについて考えているタイミングではないとも言えます。

事業を延ばすための資金の調達や、販路開拓、開発の強化、さらには提携先の模索をCEOとともに実践していかなければなりません。

CEOとCFO、またはCEO兼CFOの全員が攻めることとなるため、誰かがチェック役を果たす必要があります。

それは既に出資をしているVCであったりCVCであったり、税理士をはじめとした外部のパートナー会社が対応することになるでしょう。

攻めに対して守りがゼロになることは企業として避けなければならないため、外部の知見を活用して乗り切ることになります。

攻めと守りのミドル期

この時期においては、攻めと守りの両面が必要で、攻め:守り=5:5程度になるのではと考えられます。

ある程度事業も軌道に乗ってきて、さらなる成長に向けて、組織を作っていくことにも注力していく時期でもあるでしょう。

このタイミングにおいては、CFOは攻めと守りのバランスを重視して役割を果たしていく必要があります。

先ほども出てきましたが、例えば、次の成長に向けてプロモーション用の投資をするために、さらなる資金調達が必要な場合を想定してみます。

まずは「攻めのCFO」となり、プロモーション強化のための資金調達としてシリーズAやBを行い、目標調達額に向けて走っていく必要があります。

投資先候補であるVCやCVCに対して、時にはCEOの代わりとなってピッチを行う場面も出てくるでしょう。

晴れてリード投資家が決まり、資金調達額も決定した段階で、今度は「守りのCFO」としての役割も果たさなければなりません。

VCやCVCとの契約の締結段階では、当社に対する出資の条件をクリアしていかなければならず、場合によってはVCに有利な条件を突きつけられることとなります。

顧問弁護士とも相談して、当社が不利にならないよう、最善の注意を払いながら着金を急ぐべく契約締結に向かっていきます。

着金した後には、プロモーション強化のための投資ができる段階となるでしょう。

その場合においても、セールス部門が要求する投資額をそのまま投資していいものか、一歩引いた視点で確認をしていかなければなりません。

具体的には、プロモーションへの投資額に対して、セールスのためのリード獲得が何件ぐらい可能なのか、また成約率や売上の見込額はいくらかなどをチェックする必要があるのです。

すなわち、セールス部門に対しては費用を供給するものの、ROIが想定していたものと比べて適切なものとなっているか精査が必要ということになります。

IPO準備で守り強化のレイター期

レイター期にIPOを目指す場合においては、CFOの役割として攻め:守り=2:8か1:9と守りの側面が多くを占めることとなるでしょう。

攻めのCFOの役割としては、上場前最終の資金調達を行う可能性が考えられます。

資金調達に加え、掲げた予算達成に向けて売上高を伸ばしていくことにおいては、営業に協力する意味でも、CFOは攻めの姿勢でなければなりません。

しかしながら、IPO準備という重要な業務はほとんど守りの姿勢と言っていいでしょう。

労務管理や契約書管理、稟議フローの構築、決算対応や監査法人対応、さらに主幹事証券と証券取引所審査に至る一連のIPO準備の流れにおいて、CFOは守りの役割を発揮せざるを得ません。

マネジメントを中心とした全社組織体制の強化や機関設計、コーポレートガバナンスの強化のための各種施策など、必ずしも管理部門だけではなく、全社でも守りを強化しなければならないフェーズであるともいえます。

事あるごとにCFOは全社に対して、ルールの遵守や徹底を呼びかけていくことになります。

稟議も事後であってはならないですし、取引先が反社会的勢力でないかのチェックを徹底して行っているかなど、細かな呼びかけも、管理部門のメンバーと協力しながら実施していかなければなりません。

M&A狙いで攻め強化のレイター期

エグジットをIPOではなく、M&Aを志向する場合においては、買収側に対するコンプライアンスやデューデリジェンス対応を考えれば、攻め:守り=8:2か7:3と攻めが重視されることとなります。

買収する側の企業としては、該当企業に対してデューデリジェンスを行う際に、社内体制が適切なものであるか、また不正や不備を行っていない企業であるかなど、チェックを入れることでしょう。

一方、買収される側としてはこれまでのステークホルダーのために企業価値を上げる必要があることから、売上、利益の向上を全社ではかっていくことも考えなければなりません。

その場合においては、どのように利益を獲得できるかはCFOの視点でも考えなければならず、攻めのCFOの役割が発揮されるでしょう。

改めて攻守バランスの取れた上場後フェーズ

このタイミングにおいては、CFOの企業に対する役割によって変わってきますが、攻め:守り=5:5か4:6と、攻守バランスの取れた役割が必要であると考えられます。

IPO達成後においては、コンプライアンスやガバナンス、決算対応など、上場企業としてあるべき姿を維持していくことが優先されます。

一方で、今度は事業提携やM&Aを仕掛ける側に回ったり、資金調達を積極的に行ったりすることで、上場後の事業成長を担っていくのもCFOの重要な役割でしょう。

CFOとしてキャリアアップしたい方は、ぜひ以下の記事も参考にしていただければ幸いです。

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>CFOへのキャリアに関する記事

ベンチャーCFOの「よくある悩み」と「解決策」
https://www.axc.ne.jp/media/careertips/cfo_venture_troubles

CFOと経理・財務部長の違い<ステップアップするために必要なこと>
https://www.axc.ne.jp/media/careertips/cfo_-financialdirector_stepup

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CFOが「攻め」か「守り」かは、経験や強みから形成されたタイプにより異なります。ただベンチャーのフェーズによって、いずれも発揮していかなければならないスキルです。

どちらも持っていて、臨機応変に対応できるCFOが望ましいですが、そのような完璧なバランスを兼ね備えた超人的CFOもなかなか珍しいでしょう。

したがって、管轄する管理部門のメンバーと協力して、攻めと守りの両面をカバーできるCFOが求められます。

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