“CHRO(最高人事責任者)”の役割・導入企業・人事部長やHRBPとの違い・実際のキャリアパスについて

昨今、企業の価値が「人材」という「資本」によって左右されると考える、「人的資本経営」の概念が広まっています。

参考:人的資本経営 ~人材の価値を最大限に引き出す~|経済産業省

その状況下、人材のプロフェッショナルである最高人事責任者・CHRO(Chief Human Resources Officer)が、スタートアップのような成長企業をはじめ、多くの企業で設置されつつあります。

この記事では、CHRO(最高人事責任者)の役割や実際の導入企業、人事部長やHRBPとの違い、実際のキャリアパスについて紹介します。

※掲載されている内容は2024年7月24日時点での調査結果です。

【目次】

  1. CHROの設置の増加理由と導入企業。人材を重視した経営の活性化が背景
  2. CHROの求人内容や求められるスキル
  3. CHRO/CHOと人事部長とHRBPとの違い
  4. CHROになるまで/なってからのキャリアパス

CHROの設置の増加理由と導入企業。人材を重視した経営の活性化が背景

ご存じの通り、「人的資本経営」の考え方が広まる中、自社の経営理念を実現させる上で、ふさわしい人材の獲得が、多くの企業で重視され始めています。自社の未来は、良い人材を獲得することにかかっていると考える企業が増えていると言えるでしょう。企業の将来を担うのにふさわしい実力を持つ人材として、CHROが求められていることが、設置数が増えている背景です。

単にオペレーション的に人事・採用活動に携わることが、CHROの役割ではありません。「企業の成長に直結する人材」を獲得・育成するという重要な経営課題を解決する上で、高い手腕を発揮するプロフェッショナルであり、特にベンチャーやスタートアップの成長の加速に大きく貢献し得る点が、設置するメリットと言えます。

CHROの導入企業としては例えば、Chatwork株式会社、株式会社クラウドワークス、株式会社サイバーエージェント、東京海上日動火災保険株式会社、日清食品ホールディングス株式会社などが挙げられます。

サイバーエージェントは以前まで、経営側のリクエストを実現するための戦略を策定していましたが、経営に先回りして課題解決を目指すため、CHROを設置しました。CHROに該当する常務執行役員CHOの曽山哲人氏は、人材のマンネリ化を防ぐため、プロジェクトを渡すことで決断経験を重ねてもらうといった、裁量権を渡された人材が才能を開花させられる職場を目指して尽力されています。

参考:株式会社サイバーエージェント/曽山哲人氏 – 才能は、発掘するのではなく開花させる。才能開花の方程式をつくりたい。|Widge Media

人材の成長は企業成長に不可欠な要素であり、CHROが経営課題として人事関連業務を担う役割であることがうかがえる事例でしょう。

また東京海上日動火災保険では「人的資本経営」を意識し、人材にかかる費用を「人件費」ではなく、「将来への投資」と捉えて、ジェンダーギャップの解消といった、社員が力を発揮しやすい環境の整備に取り組んでいます。専務執行役員 グループ人事総括 CHROの北澤健一氏は、「ヒト」への先行投資を重視し、「年次」の概念をなくして若い人材も積極的に登用しながら、あらゆる世代の人材が活躍できる環境を整備されています。

参考:
ジェンダーギャップの解消|東京海上日動
Human Capital Report 2023|東京海上ホールディングス
東京海上HD北澤CHRO「会社と従業員の目線、合わせるために対話する」|日経ビジネス

このようにCHROを設置する企業が増えている一方で、導入完了している企業は全体の30%のみです。そもそも人事担当の役員がいない企業も20%存在します。(2023年時点での調査結果です)

参考:人的資本経営に向けて -CHROサーベイ2023調査結果より-|JACFO

実際に取り組みを行う実務者の不足や、組織体制の未整備などが課題としてあげられ、人事のリーダーを含め、人事を担う人員の補給・育成が求められる状況も無視できないでしょう。このような背景から、マネジメント経験が豊富で、人事という観点からの組織経営が可能な人材であれば、CHRO候補として有力視される可能性があります。

CHROの求人内容や求められるスキル

実際のCHRO求人としては、将来的にCHROへのアサインを前提として、まずは人事企画やHRBP(HRビジネスパートナー)などの経験を積むケースがあります。該当の経験を前職で積んでおくことを求められる可能性もあるでしょう。

職務内容としては、以下のように人事評価や報酬制度などといった社内制度を立案し、実行・運用するまでを担うことが多いです。

・社内制度の企画立案と実施
・制度の社員への浸透
・社員のタレントマネジメントの戦略立案~実行

また立案した制度や事業計画を軸に、採用プロセスに携わることも想定されます。

・採用計画の立案~実行
・採用KPIの設置
・ブランディング・広報・PRの戦略立案~実行
・上記採用プロセス全体の改善案の策定と実行

重視されるのは、実際に管理職として人材を取りまとめた経験があり、マネジメントの立案と実行までを担えることでしょう。
経営者目線を持ちながら、中長期的に人材を育成し、適正に評価するスキルが求められます。

ベンチャー企業であれば、50~100名の評価・報酬制度の設計を経験していると評価されやすいでしょう。メガベンチャーになると、さらに大規模な採用活動を担うことになり、新卒採用で500~600名、中途採用だけでも200名の人材のキャリアに関わる可能性もあります。

規模感は大きいものの、求められるスピード感はベンチャー並みです。経営層からメンバーまでを相手に、すばやく的確にやり取りできるスキルが必要でしょう。

CHRO/CHOと人事部長とHRBPとの違い

CHROは時にCHOとも表記されます。CHROの正式名称が「Chief Human Resource Officer」なのに対し、CHOは「Chief Human Officer」が正式名称です。いずれも「最高人事責任者」と訳され、ほぼ同じ意味合いで使われます。

中には「人事部長」のような人事担当役員の名称をCHRO/CHOに変更し、同じ意味合いで使う企業もありますが、こちらは厳密には職務内容が異なります。

CHROは組織全体の経営戦略を立案・実行する中で、人と組織の関わり方について考える経営層です。一方、人事部長は、人事担当役員の最高位に該当します。CHROを含む経営層が立案した戦略を土台にして、経営層と社員をつなぎ、採用活動をはじめ人事に関する戦略を実践していくのが主な役割です。

またCHROとよく混同されやすいのが、HRBP(人事ビジネスパートナー)です。給与計算といったオペレーション的業務だけでなく、経営層の補佐役として、問題解決を担います。人事戦略を立案する点は共通していますが、CHROが経営層であるのに対し、HRBPは人事の専門家である点に違いがあります。HRBPは、経営層であるCHROと人事部の橋渡しを担当し、人事のプロという立場から問題解決に取り組むのが特徴です。従来の人事担当の業務範囲であるオペレーションという枠組みを超え、全社の課題解決に向けた人材パフォーマンスの向上を目指していきます。

CHRO/CHO(最高人事責任者)…経営層に該当し、組織全体の経営戦略としての人事戦略を立案・実行する役割を担う。

人事部長…人事担当役員の最高位として、経営層と社員をつなぎ、経営層が考えた戦略を分析・実行・改善していく役割を担う。

HRBP(人事ビジネスパートナー)…人事担当の立場として経営層のパートナーとなり、オペレーション業務に加え、起業課題の解決を担当する。

あるインターネット事業会社の常務執行役員CHOの方は、CHROと人事部長を「厳密に区分けしようとしていない」と語っており、実態としては同じ役割を担うケースも考えられます。ただ本来の定義は異なるため、厳密に区別する会社も存在する可能性があることを意識しておくといいかもしれません。

CHROになるまで/なってからのキャリアパス

実際に、日本企業でCHROとして活躍されている方の具体的な経歴と、その後のキャリアパスをご紹介します。

A氏:

大学卒業後、大手自動車メーカーに入社
→マーケティングを担当後、国内大学院でMBA取得、大手外資系コンサルティングファームに入社
→ベンチャー企業における経営支援を複数社経験後、飲食店舗の開発・運営会社に転職し、グループ全体の人事戦略をリード
→同グループの執行役員CHRO兼経営戦略本部長を経て、ビジネスツール開発会社の上級執行役員CHROに就任。

この方は、経営や人事に関する業務に、第三者ではなく当事者として関わるため、コンサルを辞めて事業会社に転職されました。執行役員CHROと経営戦略本部長を兼任しながら、収益のV字回復を成功させます。人材の定着にも力を入れ、評価制度を整備するなどの工夫で離職率の減少に貢献。成功の理由としては、全体の状況を良くすることを意識されていたことが挙げられます。人材の働きがいを重視することで、会社を成長させようと、ビジネスツール会社でもCHROとして貢献し続けている方です。

B氏:

大学卒業後、大手情報サービス企業に入社
→システムコンサルタントとして勤務した後、社内ベンチャーチームに参画
→社での経験を活かして組織開発コンサルティングファームを共同創業
→ベンチャー企業向けに組織開発・人事コンサルティングを提供する企業を創業
→システム開発会社にCHROとして参画し、戦略人事に携わる。

会社の「一部の人」としか関わることができないコンサルタントの立場ではなく、1人ひとりとの信頼関係を築く人事担当に憧れを抱いていた方です。実際に事業会社のCHROとなってからは、1on1の実施や、企業向けのコーチングの提供などに尽力されています。コンサルタントから立場が変わった結果、経営層や現場の目線で人事課題をリアルに見つめることができるようになり、より人の役に立てている手ごたえを感じられているとのことです。

C氏:

大学を卒業後、総合商社に入社
→外資系コンサルティングファームを経て、衣料品企業の運営会社の人事部長に就任
→人事制度の企画、経営人材の育成などをリードした後、ITベンチャー企業の人事責任者に就任
→経営コンサルティング会社にCHROとして参画。

人事部長という重責を担い、経営の経験を積む中で、より高い次元での実力試しを望んでいたところ、経営コンサルティング会社からオファーを受けました。自分の責任と権限を発揮するためにオファーを受けて、CHROに就任。人材がプロフェッショナルとしての力を発揮できる環境を整えつつ、「働き方改革」にも意識を向けて尽力されています。

D氏:

大学を卒業後、外資系コンサルティングファームに入社
→業務改善やIT導入支援などのコンサルティング業務に携わり、同ファームを親組織とするwebサイト構築会社に転職し、人事を担当
→採用育成に加えてチームマネジメントを経験後、映像企画会社のグループにてグループ人事を担当
→保険会社の人事総務部長や、人事機関紙の編集長などを担当後、HR Tech企業の執行役員CHROに就任

外資系コンサルティングファームに在籍中から人事領域に興味を持ち、未経験から事業会社の人事の世界に飛び込まれた方です。そこからは長きにわたり人事に携わり、企業グループ全体の採用・育成における効率化も経験されています。人事部長の経験も豊富で、幅広い人事業務やマネジメントに携わり、CHROに就任後も人事の仕事のアップデートを目指して邁進されています。

E氏:

大学卒業後、官公庁を経て、奨学生として海外大学に留学しMBAを取得
→シンクタンク系コンサルティングファームに入社し、組織再編や人材開発系のコンサルティングを担当
→製薬会社の人事部担当部長や食品会社のグローバル人事部長となり、グローバル人事制度を展開
→上場企業の製薬会社の取締役に就任し、その後同社のCHROに就任
→保険会社や不動産会社の社外取締役を経て、一般社団法人の顧問に就任

将来を見据えた戦略的な人事を展開し、次世代を担う多様な人材の育成を推進されてきました。年間に数百人規模の採用を担った経験もあります。グローバル市場において日本法人の地位が下がる様子を目の当たりにしたことを機に、グローバル競争における改革のスピードの改善など、問題意識を持ちながら尽力されています。

F氏:

大学卒業後、総合商社に入社
→MBA留学、ファッション・ブランド企業のマーケティング担当を経て、外資系コンサルティングファームに入社
→外資系人材紹介会社を経て、製薬会社の人事・HRBP・人事オペレーショングループ部長を担当
→人材系企業に参画し、人事企画本部長に就任後、同社のCHROに就任。

ファッション・ブランドの社内コンサルタントとして活躍されていたものの、コンサル出身の同僚とのスキルの差を痛感し、コンサル転職。コンサルタントを経験する中で「人や組織」への強い関わりを求めるようになり、スタートアップ人事として邁進し続けてきた方です。

G氏:

大学卒業後、メーカーに入社
→同社で国内外の人事を5年ほど経験し、外資系コンサルティングファームで戦略コンサルを経験
→開発会社の人事のマネージャーとして転職
→人材系企業で事業責任者を経験後、プラットフォーム開発会社にCHROとして参画。

人事担当として数百人を解雇した経験から、漫然と働くのではなく、自身のキャリアも見つめ直すようになりました。また事業創出の経験がなければ、人事としても頭打ちが来ることに気づき、事業責任者を経験。フリーの人事コンサルタント・HRビジネスパートナー・企業人事・人事マネージャーなどの経験も一通り積んだ後、レベルアップを重ねた末にCHROとして活動されています。

以上の例があります。

CHROの方々の経歴から、一般的には大学卒業後にコンサルティングファームや事業会社を経験後、人事領域に携わり、CHROに就任するケースが多いことがうかがえます。第一線で活躍される方に共通しているのは、「人と組織に直接携わりたい」という強い熱意があることです。

中には成り行きで人事を担当することになった方もいらっしゃると思いますが、CHROにのぼり詰める方は、目標に向けて泥臭く事業を推進した経験を積み、人事の観点から企業全体の最適化を図るために尽力されている傾向があります。

またMBAを取得された方も多く、中にはスクールの学びで「人の成長や人を支える文化の形成」のためには、責任者・リーダーの人柄が重要だと気づかれた方もいらっしゃいます。社員の成長を担うだけでなく、自身も成長することが、企業の成長に直結していると考え、常時スキルアップへの意欲を持ち続けることも大切と言えます。

MBAを必ずしも取得していなくても、コンサルタントとして経営層やメンバー層と密なコミュニケーションを取り、マネジメントに携わった経験があれば、若手でもCHROに直結するキャリアを歩むことは可能でしょう。

最後に、トップ人材であるCHRO後のパスは、事例は少ないものの、社長やCEOへの昇格、社外取締役や顧問、同業他社/異業種のCHROなどが考えられるでしょうか。中には輝かしいキャリアで培ったスキルを活かして、独自に団体を主宰し、組織開発に携わられている方もいらっしゃいます。

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マネージャー以上のコンサルのキャリアに関する記事
“CSO(最高戦略責任者)”の役割・CEO/COO/CFOとの違い・年収・キャリアパスについて
https://www.axc.ne.jp/media/careertips/CSO

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今回の記事では、経営層であると同時に人事の最高責任者である「CHRO(Chief Human Resources Officer)」の設置背景・求められるスキル・役割(人事部長とHRBPとの違い)・キャリアパスについてご紹介しました。

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