“CIO(最高情報責任者)”の役割・導入企業・CTO/CISO/CDO、CIO候補/コーポレートIT部門/情シスとの違い・実際のキャリアパスについて

CIO(Chief Information Officer/最高情報責任者)は、企業や組織における情報戦略を担うトップ人材を指します。情報システム部門を担当する役員であるCIOは、直近でニーズが増えつつあるようです。

参考:(2)CIO・CDO等の設置による組織改革の進展状況|総務省

今回は、CIOの役割や設置の増加理由、実際の導入企業、CTO/CISO/CDO、CIO候補/コーポレートIT部門/情シスとの違い、実際のキャリアパスについて紹介します。

【目次】

  1. CIOの設置の増加理由と導入企業・採用背景
  2. CIOの求人内容や求められるスキル
  3. CIOとCTO/CISO/CDO、CIO候補/コーポレートIT部門/情シスとの違い
  4. CIOになるまで/なってからのキャリアパス

CIOの設置の増加理由と導入企業・採用背景

新型コロナウイルスの流行後、テレワークを推進する企業が増加した結果、CIOのニーズは増している印象があります。テレワーク環境の整備・ツール不足・セキュリティ不安などの理由で、テレワークの導入に踏み切れない企業も少なくありません。そのような状況下で、テレワーク導入をリードし、必要な環境を構築できる人材として、CIOの力を必要とする企業が増えているという事情があります。テレワークに必要なオンラインツールの導入経験が、採用において必須というケースは想定しておいた方がいいでしょう。

実際の設置企業としては、スポーツウエアメーカー・アシックスの他、大阪府(スマートシティ戦略部)・JTB・野村ホールディングス・日立製作所のような大手企業が導入しています。加えて、freee株式会社のように、ベンチャーでも導入が増えているところです。

総務省の調査によると、CIOを設置もしくは検討している国内企業は、そうではない企業よりも、ICTの導入率や、ICTを活用した雇用・労働力向上のための取り組みを実施する率が高いという結果が出ました。デジタル化が加速する現代において、CIOの設置は企業の労働力を安定させ、利益を上げることに直結すると言っても過言ではないでしょう。

参考:
アシックス、29年ぶり「副社長」復活 本社機能を強化で・24年1月から
(2)CIO・CDO等の設置による組織改革の進展状況|総務省
日本IBM出身CIO 「突破力」で活躍

CIOの求人内容や求められるスキル

一般的にCIOに求められるスキルや経験として挙げられるのは、以下のようなものです。

・IT資産の管理能力
・IT事業における投資予算の管理能力
・ソフトウエアをはじめとするIT関連の知識
・内部統制といった高いセキュリティ技術が必要な業務経験
・コミュニケーション能力や経営能力など最高責任者に必要なスキル

参考記事:30代後半 SIer PMからCTO、CIO、CDOへのキャリアパス【必要なスキル~年収~転職事例まで】

上記は基本的な知識・スキルですが、最後の「経営能力」は、実際の求人を見てみると、ITの知識以上に重視されていることがうかがえます。

たとえばある上場企業グループでは、CIO候補の採用において、KPIを設定できる上で、それを基にした組織のパフォーマンスを管理する能力を求めています。ITにおける中期戦略の管理、タレントマネジメントなども必須の業務であり、単にIT分野の知識・経験があるだけでなく、それを応用した経営者としての目線・スキルが求められるということです。

別のメーカーでは、IT部門の統括・プロジェクトマネジメントができる人材が、ITエンジニアの中にいないため、採用活動を始めました。全社のDX推進や新規事業の開発を担えるITリーダーを採用した上で、経営的視点のあるCIOとなることを期待しています。また海外子会社の管理機能を高めるために、プロジェクト推進を担うことも求められるということなので、企業によっては英語力が必須というケースもあるでしょう。

ベンチャー企業の求人では、ITシステムアーキテクチャを実際にデザインした経験に加え、技術問題をリーダーとして解決するスキル、セキュリティ・リスクマネジメントや予算管理の経験が求められています。加えて、専門知識だけでなく、文章・会話におけるコミュニケーション能力の高さといったソフトスキルが重視されているようです。100台規模のPCを管理したり、企業のIT関連事業・DX化を支えるツールを導入・運用したりして、成果を挙げた経験もあれば、歓迎されるでしょう。

また上場後のある企業では、事業規模の拡大と、それに伴う顧客数の増加に対応するため、クオリティーとセキュリティを担保する必要が生じました。社内の情報システム関連業務を担いつつ、品質や安全性を下げないための業務を担う部門の責任者が必要になったという募集理由です。個人情報を厳格に管理しながら行うタレントマネジメント事業は難易度が高いだけでなく、バックオフィスからやりがいのあるSaaSのプロダクト戦略を担うポジションです。大規模な上場企業において、情報システム担当にあたる部署の部長職もしくは室長に相当する経験を積んだことは必須となっています。その上で、業界経験はもちろん、セキュリティ関連資格や、経営陣と建設的に話を進められる能力を持つ人材であることが必要です。

その他、ITポリシーの策定スキル・経営管理の知識全般・企業の情報化戦略の立案~導入~運用の実績・IPOでの内部統制の制度設計~構築~運用経験・iPaaSを活用した業務改善・効率化の経験などが求められるケースが想定できます。

総じて、セキュリティに対する高い意識と知識が求められるため、個人情報保護士のような資格があると有利かもしれません。常に、IT関連の知見だけを頼りにするのではなく、経営者としての目線を意識することが、CxOを目指す上では忘れてはならない点と言えます。

CIOとCTO/CISO/CDO、CIO候補/コーポレートIT部門/情シスとの違い

CTO(Chief Technology Officer/最高技術責任者)は、業務に必要な技術を選定するための経営戦略や、技術チームの組織・リードといった、技術面から経営を担う責任者です。採用背景として、新しいビジネスの創造を目指し、AIエンジニアといったIT人材の採用活動をしているものの、プロジェクトに対する人材が不足している状況があります。デジタル化や事業拡大を目指す企業では、優秀な技術者集団を統括できる人材を求めていることが考えられるのではないでしょうか。

開発現場で実際にマネジメントを行った経験の他、最新の技術やその動向を熟知しており、社内に共有したり、教育を行ったりするスキルが求められます。技術者としてのプライドを持つエンジニアたちに認められるだけの高い技術力と統率力は不可欠でしょう。

CTOは会社の顔としての役割も担うことが想定でき、社外CTOとしての招聘(しょうへい)も予想されます。広い人脈とカリスマ性、コミュニケーション能力があると、非常に有利なポジションと言えます。一方CIOは、企業のDX推進に貢献するとともに、セキュリティを担保することで経営を支える役職です。CTOが、技術者であると同時に広報という花形的ポジションも担いやすいのと異なり、CIOはバックオフィスとしての縁の下の力持ち的な役割を果たします。

また、CIOよりもCTOは、実際にコーディングを行うといった、手を動かす機会が多い可能性が高い傾向があるようです。求人を確認すると、必須スキルとして技術責任を持つ役員経験のみならず、最新技術のキャッチアップと、指示だけではなく自ら⼿を動かす意欲を求める企業も、実際に存在します。その意味で、マネジメントにとどまらず、現場での開発も担いたいエンジニア気質の人材は、CTOポジションが向いていると言えるでしょう。

CISO(Chief Information Security Officer/最高情報セキュリティ責任者)は、企業のデータを保護する目的で、サイバー防御の改善を担う責任者です。基本的に大規模なセキュリティチームを率いる人材のため、一般的には大企業に在籍するケースが多いでしょうか。中小企業やベンチャー・スタートアップの場合、必要に応じて非常勤や暫定的なCISO(バーチャルCISO)を活用するケースが考えられるようです。

CISOはサイバーセキュリティを担うチームのリーダーとして、セキュリティが健全に機能しているか常時監視しながら、データの保護に向けた改善案や戦略を策定して指示します。サイバーインシデントが発生した際には、損失を最小限にするための対応を求められる可能性もあり、冷静な判断力とリーダーシップが求められる役職です。

CISOが情報セキュリティにおける最高責任者であるのに対し、CIOは情報セキュリティを含むシステム全般を担う責任者のため、ツール導入といったより幅広い業務を担い、管理します。サイバー攻撃への対応が急務の企業では、CIOに加えて、CISOも設置するケースが想定できるでしょう。

※参考:CISOとは一体何?CIOとの違いや具体的な仕事内容、選出のポイントなどを解説(NECフィールディング)

実際に同じベンチャー企業の求人において、両者の設置背景は明確に異なっています。

CIOに求められる役割……全社組織を最新テクノロジーで支え、バックオフィス業務の効率化を実現する

CISOに求められる役割……従業員とプロダクトの両方をセキュリティの観点から保護し、ユーザーデータを守る

一言でまとめるなら、CIOが業務効率化といった観点から生産性を向上させるのに対し、CISOはセキュリティを管理して損失を防ぐための対応を担う存在と言えます。インフラ設計を監督するCIOと、セキュリティインフラを統合するCISOが連携することで、企業利益に貢献することが一般的でしょう。デジタル化を進める必要に迫られながらも、セキュリティ不安を抱える企業にとって、CIOとCISOとして機能する人材はいずれも不可欠と言っていいかもしれません。

※参考:CISO(最高情報セキュリティ責任者)とは?役割とCIOとの違い

CDO(Chief Digital Officer/最高デジタル責任者)に求められる役割はDX推進であり、DX推進を一部として幅広い業務を担うCIOとは役割が異なります。CDOであれば、主に実際のDX推進経験を積んでいれば採用のチャンスはあると考えられ、加えてマーケティング・営業まで担えると評価されるかもしれません。SIerとして技術を磨いた後、コンサル転職によってマーケティングや営業のスキルを鍛えながら、DX関連事業を豊富に経験しておくと有効でしょうか。積極的にDXを推進していこうという気概のある企業や、デジタルツールの導入の準備が整った企業で求められるケースが想定できるでしょう。

CIO候補とCIOの違いは、文字通りですが、前者は実際にCIOに就任する前の段階でCIOの補佐を担う点にあります。いきなりCIOを目指す場合、コンサルマネジャー以上の経験者のような高いスキルが求められますが、CIO候補であればコンサルのみの経験でも可とされるケースもあります。国際的な事業を推進する企業が多いため、英語力があればさらに武器となるでしょう。40~50代を受け入れる企業もあることから、年齢層が比較的高めなのも特徴と言えます。

CIO候補は、CIOの業務負担軽減や、現在のCIOの退任を考慮して、その業務を補佐できる人材の育成を目指す企業で設置されることが想定できるでしょう。もちろん単にCIOを補佐するだけでなく、IT戦略とガバナンスを統一したり、ゆくゆくはシステム全般の管理を担ったりと、求められる内容はハイレベルです。CIOになる前提で高いスキルと意識を持っておくことが大切でしょう。

またCIO候補の場合、ERP導入による業務効率化への貢献実績があると有利でしょうか。中には、ERPの導入を担うPMとして入社後、CIO候補になっていく流れを想定している企業もあります。情報システム全体を最適化する方針の策定に加え、勉強会やセミナーでの発表、採用活動といった業務を担いながら、経営戦略に基づいたIT戦略を立案していく重要な役割です。このようなケースでは、将来的にCIOという重要な役割を担う人材ではあるものの、採用時にPMとしてのERP導入経験と英語力さえあれば、チャンスはゼロではないでしょう。

コーポレートIT部門は、コーポレート(企業)のIT化に向けた事業全般を担う責任者です。ITを管轄するCIOとは異なり、経営を担う役員ではありません。コーポレートIT部門は経営というよりは、組織パフォーマンスの最大化に貢献するために、企業全体の発展の実現に向けたIT戦略を立案・実行します。コーポレートITに関する知識や経験だけでなく、IT企画やプロジェクトマネジメントの経験を積み、事業に必要な施策の本質を見極めるスキルが求められるでしょう。コンサルティングファームでの勤務経験も歓迎される他、エンジニアとしてITインフラの知識・プログラミングによる開発経験・セキュリティ監査の経験などがあれば武器にすることが可能です。採用背景としては、規模拡大を事業成長へとつなげ、数千名規模の起業を適切に機能させるため、組織パフォーマンスを最大化するIT人材を求めているという事情が考えられます。そのための戦略やマネジメントに強いという意味では、CIO経験がある人材も活躍が期待されるでしょう。

最後に情報システム部門(以下 情シス)とCIOとの違いにも触れておきます。情シスの役割は、社内の情報システムの企画や開発、運用・保守を担う部門です。業務範囲は企業によって異なりますが、社内システムの開発や管理、ヘルプデスクなどが代表的な業務です。

CIOは情シスを含むIT部門全体を統括する責任者のため、情シスはプレーヤー要素が多いのに対し、CIOは監督要素が多いと考えておくといいでしょう。実際に情シスの求人を見ると、社内における情報システム環境の構築と整備を業務とし、業務アプリの要件定義から設計・開発管理、保守までが主な役割であることがうかがえます。

他にも、企業のIT環境を維持し、向上まで実現させるため、セキュリティ環境の整備や、クライアントのプロジェクトでもIT環境の支援を行うこともあります。CIOと異なり、実行を担う人材としての要素が強い分、求められるのは業務アプリの設計・開発・テスト経験や、情報システムの企画・要件定義といった上流の経験であるケースが多いです。ITツールの導入を検討する企業が増えている現在において、開発の上流を担う人材は不可欠なため、IT企業に限らず多くの採用活動で、手を動かせることも引き続き重要視されるでしょう。

CIOになるまで/なってからのキャリアパス

実際に、日本企業でCIOとして活躍されている方の具体的な経歴と、その後のキャリアパスをご紹介します。

A氏:

海外大学を卒業し、MBA取得後、現地のコンサルティングファームに入社
→帰国後、DXソリューションを担う企業に入社し、10年以上勤務後、同社の執行役員に就任
→ソフトウエア企業に入社し、同社の常務執行役員に就任。大手企業向けのソフトウエア企業の海外拠点で代表取締役社長に就任
→スポーツ用品のメーカーに入社し、執行役員デジタル統括部長として勤務。同社の常務執行役員 CDO・CIOに就任
→同社の社長COOに就任し、DX推進に貢献している。

コンサルタントを経て、日系企業での経験を積んだのち、CDOやCIOに就任され、常に第一線で自社のデジタル戦略をリードしていらっしゃる方です。ユーザーの行動に基づいて商品・サービスを提供するシステムを構築、デジタルインフラの整備やデータ分析による情報蓄積にも貢献し、プロダクトのみならずサービス面の強化に尽力されています。

B氏:

IT系企業に入社後、事業推進部の部長職を経て、同社の執行役員に就任
→同社の常務執行役員に就任。その後、都道府県が設置する戦略部においてCIOに抜てきされて就任。

IT業界で戦略を担ってきたご人材で、民間企業から公募で都道府県に転じ、CIOとしてまちづくりに携わるようになりました。感染症の感染者との接触可能性を追跡するシステムを提供するなど、コロナ時代に求められる仕組みの整備に尽力されています。

C氏:

大学卒業後、IT系企業に入社し、業務自動化やPMの育成に従事。
→旅行会社の常務執行役員兼CIO・CISOに就任し、全社におけるDX戦略の推進を担う

CISOと兼任する形でCIOに就任し、DX推進を担われている方です。複数のチームが存在する中、チェンジマネジメントの意識を強化することで、組織全体に変革の意識を行きわたらせながら事業を推進されています。生成AIの活用に向け、ノウハウの共有を加速させるなど、精力的に活動されている方です。

D氏:

大学卒業後、IT系企業に入社し、システム開発に従事。
→外資系大手コンサルティングファームに入社し、IT組織改革やIT戦略策定~システム化構想策定に従事。大規模システムの導入実績も含め、さまざまなプロジェクトの支援を経験。
→海外を含むプロジェクトの顧客支援に従事したのち、コンサルティングパートナーと兼務する形でCIOに就任。

エンジニアとして経験を積んだのち、問題解決業務に惹かれてコンサルティング業界に転身された方です。中期経営計画の立案やM&Aのデューデリジェンスなどの多様なプロジェクトを経験後、ビジネスマネジメントに従事。CIOに就任後は、IT部門の変革を目指して、RPAの導入や、業務負荷を減らした分の新たな価値創出に向け、努力を重ねていらっしゃいます。

以上のような例があります。

一般的には、IT系企業でエンジニアとしての知識・経験・スキルを身に付けたのち、マネジメント能力も備えることで、CIOとして求められるという流れが多いでしょう。

コンサル経験者の方の場合、より幅広い業務を通じて、問題解決を担いたいと、IT企業からファームに転身されるケースがあります。単に勉強熱心なだけではなく、メンバーをまとめ上げるスキルを常に磨かれて、経営者目線と現場目線の両方から統括していく力に長(た)けた方が多い印象です。

ITツールを活用した業務効率化という手段にとらわれすぎず、その先の新たな価値創出という目的を達成するために、試行錯誤する粘り強さも重要でしょう。

最後に、トップ人材であるCIO後のパスは、事例は少ないものの、社長やCEOへの昇格、社外取締役や顧問、同業他社/異業種のCIOなどが考えられるでしょうか。社長/COOに就任される方もいらっしゃることから、デジタル化する世界で手腕を発揮する人材は、経営において非常に重要視されている状況がうかがえるでしょう。

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マネジャー以上のコンサルのキャリアに関する記事

“CHRO(最高人事責任者)”の役割・導入企業・人事部長やHRBPとの違い・実際のキャリアパスについて

“CSO(最高戦略責任者)”の役割・CEO/COO/CFOとの違い・年収・キャリアパスについて

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今回の記事では、情報部門の最高責任者である「CIO(Chief Information Officer/最高情報責任者)」の設置背景・求められるスキル・役割(CTO/CISO/CDO、CIO候補/コーポレートIT部門/情シスとの違い)・キャリアパスについてご紹介しました。

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