コンサルティングファームで勤務経験のある方が、その後、他の業界で活躍している話を聞くことが多くあります。
現在コンサルタントをされている方は、コンサル経験を活かしつつ、次のキャリアステップとしてどのような選択肢を取ることができるか、気になる方がいるかと思います。
また現在コンサルタントを目指している方で、コンサルティングファームに転職したその先のステップとして、どのような業界・業務で活躍することができるのか、知っておきたい方もいるのではないでしょうか。
この記事では、
「そろそろ現在働いているコンサルティングファームから転職したいが、コンサル出身者が転職しやすい業界・職種は何か?」
「どのようなコンサルスキルが他の業務に活かせるのか?」
といった疑問にお答えします。
自身も未経験から大手総合コンサルティングファームに転職し、その後コンサルティングファームへの転職・ポストコンサルの転職を支援するエージェントで勤務した経験を持つ筆者が、コンサル出身者が転職しやすい業界や、転職後活用できるスキルや活躍できる方の特徴を解説します。
また未経験からコンサルタントを目指している方にも、コンサルに転職しやすい方の特徴・スキルを紹介します。
【目次】
- ポストコンサルという考え方とコンサル種類別の代表的キャリアパス
- コンサル出身者が転職しやすい業界と職種
- 他業界に活かせるコンサルスキル
- 【未経験からコンサルタントを目指す方へ】コンサルに転職しやすい方の特徴・スキル
ポストコンサルという考え方とコンサル種類別の代表的キャリアパス
コンサルティングファーム出身者=「ポストコンサル」
コンサルティングファーム出身者は「ポストコンサル」と呼ばれます。
正確には、コンサルティングファーム・シンクタンクなどにおいて、コンサルティング業務に従事した経験を持つ元コンサルタントのことです。
過去ポストコンサルに対する日本国内の企業からニーズはそこまで高くなく、外資系企業でしか活躍できないイメージがありましたが、現在ではコンサル経験者の起業やスタートアップを含む事業会社における登用・抜擢などで、ポストコンサルのポテンシャルや活躍が広く認知されるようになりました。
コンサル出身者への期待から、各業界で重宝されるようになり、事業会社に経営層として、あるいは若手であっても管理職など重要なポジションへ採用されることが増えており、コンサル経験後のキャリアパスの選択肢は広がりをみせています。
ただ、ポストコンサルの採用に慣れていない、あるいは能力を発揮できる役割をどのように与えるべきか分からない事業会社が多く存在するのも事実です。
そのため、事業会社(特に日系)に転職を検討している場合は、その企業の状況や業務内容・描けるキャリアパスなどについて解像度高く理解し、ご自身にフィットする企業かどうかを冷静に判断することが、ポストコンサル転職の成功の鍵です。
コンサルティングの種類別、代表的なキャリアパス
一般的なポストコンサルについて解説しましたが、コンサルティングファームには複数の種類があり、それぞれで得られるスキル・専門性は異なるため、どの種類のコンサルティングファーム・プロジェクトに従事していたかで、次の転職先として考えられる選択肢も変わってきます。
その種類を大きく分けると、マッキンゼー・アンド・カンパニーやボストン コンサルティング グループ(BCG)などの戦略系コンサルティングファーム、アクセンチュアといったBIG4やアビームコンサルティングなどの総合系ファーム、野村総合研究所などのシンクタンク、組織人事・IT・財務アドバイザー・ヘルスケアといった特化系コンサルティングファームがあります。
総合系コンサルティングファームは、担当する業界や提供サービスごとに部門が分かれており、基本的には所属している部門のサービスの専門性を伸ばしていくため、どのような部門で働くかによって、得られるスキル・専門性は異なります。
所属したコンサルティングファーム・部門別の代表的なキャリアパスを説明します。
戦略系コンサルティングファーム
戦略系コンサルティングファームを経験した方は、あらゆる業界のCEOや役員といった経営陣を相手に、全社の経営戦略や事業開発戦略、M&A戦略、組織変革などのトップテーマのプロジェクトに従事します。
そのため経営企画や事業責任者などの経営幹部のキャリアパスを取る方が多くいます。
具体化すると、あらゆる業界・業態の事業会社における経営企画・事業開発やM&A・マーケティング・経営幹部候補の特命プロジェクトなどが有力な選択肢です。
他の業界では、英語力などが必要にはなりますが、投資銀行・PEファンド・ベンチャーキャピタルへの転身も非常に人気が高く、また他の種類のコンサルティングファームに移られる方も多くいます。
戦略系コンサルティングファーム出身者は、専門性に囚われることなく、幅広い業界においてポテンシャルを期待され、あらゆる選択肢を取ることができます。
総合系・シンクタンク・特化系コンサルティングファーム
前述のとおり、総合系コンサルティングファームやシンクタンク、特化系コンサルティングファームの中で専門領域・特定サービスを経験した方も、その専門性を活かして幅広い業界に転職することが可能です。
ニーズのある事例を挙げると、ITコンサルタントであれば、事業会社の中でのIT戦略やIT企画運営部門、ITサービスを運営する事業会社など。
組織人事コンサルタントは事業会社での人事・組織開発・人材育成部門や組織人事系サービスを運営する事業会社など。
財務アドバイザリー系コンサルタントは事業会社における経営企画・M&A・事業開発などです。
特に財務アドバイザリー系コンサルタントについては、PEファンドで働くためのキャリアステップとして、目指す方も増えています。
それぞれの場所で、その組織や事業の戦略を描く役割を持つ管理職や幹部候補として迎え入れられることが多くあり、その後はCXO(CDO・CIO・CHRO・CFOなど)を視野に入れる方が多いと思います。
コンサル出身者が転職しやすい業界と職種
前述のとおり、ポストコンサルが取れるキャリアパスの選択肢は幅広いため、やりがいや影響力が大きい業務に携わることが可能です。具体的な選択肢を詳しく見ていきましょう。
大手事業会社
外資系企業
外資系企業は、海外に本社のある企業の日本支社のことを指します。
給与水準が高い企業が多く、コンサルティングファームからの転職であっても給与を落とさず転職できる可能性が高いことが魅力です。
経営層にポストコンサルの方が複数いる企業が増えており、またコンサルティングファームにプロジェクト発注した経験がある方も多くいるため、ポストコンサルの活用に理解があります。
そのため、転職後カルチャーや意思疎通の面でギャップが少なく、スムーズに業務をキャッチアップできる可能性があります。
一方で、あくまでも日本支社におけるキャリアパスになるため、日本で意思決定できることが少ない場合や、昇進・昇格の観点で制約される場合があることが懸念点です。
また特にポジションが高いほど海外本社とのコミュニケーションが増え、海外の経営層から評価をされることが多くなるため、それらに対応できる高度な英語力が必要になります。
具体的な企業としては、GAFAM(Google・Amazonなど)に代表されるIT関連企業や、P&Gやユニリーバなどのメーカー、スターバックスコーヒージャパンや日本マクドナルドなどの飲食チェーン、ファイザーやモデルナなどの製薬企業が挙げられます。
大手日系企業
国内大手であり、海外展開も行っている法人の中で、積極的にポストコンサルを採用する日本企業が増えてきています。
その背景には、ビジネス環境の変化と、その変化への対応や成長の必要性があります。
具体的には、日本市場や既存事業での成長が見込めず、海外事業・新規事業を検討している企業において、戦略の立案・企画・実行に至るまで、ポストコンサルを採用し、即戦力として従事してほしいというニーズがあるのです。
また競争力強化や業務効率化のために、他企業の買収や、基盤となるIT・人事領域での変革が必要となり、その変革の担い手として、ポストコンサルを採用する場合も多く見られます。
そのため、新規事業開発・海外事業展開・DX戦略策定やITプロジェクト推進・組織人事変革といったプロジェクトを推進した経験のあるポストコンサルは、多くの企業から注目されます。
投資銀行
投資銀行は、文字通り金融機関であり、政府・ビジネスオーナーや大企業などの超富裕層をクライアントに持ち、財務・M&Aのアドバイザリーや、株式や社債の売買仲介業務などを行います。
投資銀行でのコンサルタントはクライアントに対して事業戦略の策定支援・資金調達・M&Aについてのサポートを行うことが多く、プロジェクトベースでクライアントに伴走支援する傾向があるため、コンサルティングファームにおける業務スタイルと類似性があります。
その魅力は何といっても報酬の高さであり、コンサルティングファーム以上の報酬がもらえる場合もあります。
一般的に、アナリストと言われる若手社員であっても、年収1,500~3,000万円程度を得ることが可能です。
加えてM&A業務を中心として経験を積めることも、人気の理由です。
だだ、企業数・採用数が少なく、すぐに採用がクローズしてしまうことが多いため、投資銀行への転職を希望する場合は、エージェントなども活用した情報収集が有効です。
代表的な投資銀行としては、ゴールドマン・サックス証券、三菱UFJモルガン・スタンレー証券、JPモルガン、M&Aブティックとしてはラザード フレール、グリーンヒル・ジャパンなどが挙げられます。
投資ファンド(PE・ベンチャーキャピタル)
投資ファンドは、投資家から預かった運用のための資金を投資し、投資利益を発生させ、投資家に還元することが役割です。
その中でポストコンサルとして人気が高いのが、プライベートエクイティファンド(PE)と、ベンチャーキャピタル(VC)です。同じ投資ファンドではありますが、対象となる投資先企業の成長ステージや、それらに対する投資戦略が異なるため、転職にあたり求められる経験は異なります。
ともに投資先の企業と経営への深いコミットメントが可能で、企業によって前後するものの高い給与水準が見込めることから、ポストコンサルに非常に人気のある転職先と言えます。
PEファンド
PEファンドは、成長期を超えて安定期以降の段階にある企業に対し、成長支援や再生のために投資をします。
そのため、M&A業務で投資前に重要になるファイナンシャルモデリングのスキル・経験を持つ方、戦略系コンサルティングファームにおいて投資後のバリューアップに類似性がある業務に従事した経験を持つ方が歓迎されます。
代表的なPEファンドとしては、外資だとカーライル、ベインキャピタル、ペルミラ、日系ではユニゾン・キャピタル、アドバンテッジパートナーズなどが挙げられます。
ベンチャーキャピタル
ベンチャーキャピタルは、成長性があると推測される未上場ベンチャー企業に対し投資を行い、企業の上場や他の企業への売却を通してリターンを得ます。
金銭的な投資だけでなく、経営支援を通じて投資先企業の成長を後押しすることが重要な役割です。
そのため、成長性が高いと思われる企業を見極める力と、起業家とのネットワークを構築できるコミュニケーションスキルが求められます。
またTech領域や新規性の高いビジネスへの理解、戦略系コンサルティングファームでの企業の業績・価値向上に関する経験が歓迎されます。
代表的なベンチャーキャピタルとしては、金融機関系でJAFCO、大和企業投資、独立系でグロービス・キャピタル・パートナーズ、グローバル・ブレイン、事業会社系でソフトバンク、楽天などが挙げられます。
ベンチャー企業
ポストコンサルに対し熱い視線を向けている業界の1つはベンチャー企業でしょう。
昨今成長が著しいIT企業やヘルスケア企業だけでなく、様々な社会のニーズ・課題に対応するベンチャー企業において、事業拡大・業務や組織の変革を目指すときに、即戦力としてコンサルティングファーム経験者を必要とするケースが多くみられます。
ベンチャー企業転職は、まだ社会にない技術やサービスを提供していくというやりがいや、取り組みが会社の成長に直結するという手触り感といった業務内容の魅力があります。
また最近ではIPOにおけるストックオプションや、若手であっても経営層のポジションで迎え入れられることが可能な場合が増えてきています。
他コンサルティングファーム
他のコンサルティングファームに移ることも、ポストコンサルにとっては主流の多様なキャリアパスです。
専門性を高めるために特化型のコンサルティングファームに行くケース、専門性や担当テーマを変えるために他社に行くケース、営業の観点で受注力の高い他社に行くケース、より高いポジション・収入を求めて他社に行くケース(ヘッドハントの場合も多数)、よりワークライフバランスの良い他社に行くケースが挙げられます。
他業界に活かせるコンサルスキル
ポストコンサルに期待が寄せられる理由、また他業種であっても即戦力として活躍できる秘訣は「ポータブルスキル」の強さにあります。
ポータブルスキルとは、働く業界や業務内容が変わっても、汎用的に活かせる能力のことで、文字通り持ち運びできるスキルと言えます。
代表的なポストコンサルのポータブルスキルは下記です。
課題解決力
コンサル経験者が期待されるスキルの代表格は、汎用的な問題解決能力です。
クライアントの経営課題の解決に従事した引き出しを活用し、転職先では自分事として課題解決を実行してくれることを期待されます。
やり切る力
最近のコンサルタントは、戦略の絵を描くだけではなく、実行支援までコミットして成果を出すことを期待されます。
そのため、クライアントの経営層から現場までのあらゆる関係者や、場合によってはクライアント以外のステークホルダーも巻き込み、課題解決にこぎつけるというスタイルをコンサルタントは若いうちから経験しています。
また、クライアントへの成果物・タスクには期限があり、難易度の高いものであっても、何とか期限内に成果物を形にするという姿勢・やり切る力は、なかなか事業会社で身につけることは難しいと言えます。
プロジェクトマネジメント
プロジェクトに従事する中で、成果物からタスクを分解し、きっちりと計画・スケジュールに落とし込んで進捗を取り、進捗に遅れがある場合はクライアントを含めてサポートするといったプロジェクトマネジメント力が自然と身につきます。
ポジションが上がるほどマネジメントする範囲が広がり、非常に汎用性の高い能力があることになります。
【未経験からコンサルタントを目指す方へ】コンサルに転職しやすい方の特徴・スキル
これからコンサルタントへの転職を目指す方に向けて、コンサル転職に向いている方の特徴を補足します。
素直に学ぶことができる
コンサルティングファームに転職=ゼロからの学びなおしが必要と言っていいほど、コンサルタントになると、考え方・クライアントとの向き合い方・アウトプットの作成方法などを新卒1年目の社員のように学ぶことになります。
この際、過去の経験や考え方に固執したり、見栄を張って分からないことを質問できなかったりすると、その成長スピードが遅くなり、「コンサルに向いていない人だ」と判断されかねません。
一人前のコンサルタントになるために、謙虚な姿勢で素直に学びを吸収できる能力が、コンサル転職成功の土台になります。
コミュニケーションが得意
コンサルタントになると、クライアントとの対話やプロジェクトメンバーとの議論をする時間が多くなります。
また課題の把握のため、現場の社員にインタビューなどを行う場面も多くあります。
その際に、クライアントの立場・心境を含めて理解した上で本質的な課題を抽出できるかが、その後の課題の整理・提案する打ち手の質に大きく影響します。
またプロジェクトによってはクライアント先に常駐するため、クライアントとの良好な信頼関係を作れることが重要な能力になります。
論理的思考ができる
コンサルタントが直面する経営課題は、名だたる企業の経営層が、自社で解決しようとしてもできなかったことがテーマとなります。
そのため、その課題の整理・解決策の提示・状況や進捗の共有すべての場面において、クライアントが納得できるものであることが求められます。
つまり、筋が通っていて論理的に正しく、かつ心情面でも受け入れられるものでなければなりません。
論理的思考はその土台となる重要なスキルであり、資料作成の場面だけでなく、クライアントの質問の意図を正しく理解したり、分かりやすく説明をしたりする場面でも必要となります。
コンサルタントに求められる能力は多く、決してやさしい仕事ではありませんが、その分コンサル経験者のキャリアパスは非常にバリエーションに富んだ魅力的なものと言えます。
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