「コンサルティングファームへの就職を目指そうと思っている」もしくは「就職予定」の場合は、完全実力主義・成果主義と言われるコンサルティングファームの人事評価・査定方法について、不安に感じたり、イメージがわかなかったりする方も多いと思います。
プロジェクトワークという働き方の中で、何を基準に評価・査定されるのでしょうか。
またどのような評価・査定のプロセスを辿るのか、事業会社の評価・査定とはどのように異なるのか。人事評価・査定の詳細を解説します。
【目次】
コンサルティングファームでの評価・査定の対象は?
プロジェクトでのパフォーマンス
コンサルティングファームにおける業務はほとんどがプロジェクトワークです。クライアントの経営課題に対する解決策を提案し、受注後はプロジェクトが発足して、その解決策の設計・実施のためにメンバーがアサインされます。
プロジェクトにアサインされると、リサーチ・資料作成・関係者へのインタビュー・クライアントや社内とのミーティングとファシリテーション・クライアント対応やコミュニケーション・プロジェクトの進捗確認やサポート・定期的な進捗や成果の報告・メンバーの育成など、さまざまな業務に携わります。
その中で、クライアントにとって価値提供ができているか・示唆に富んだ提案を資料も活用しながらできているか評価されます。
その際の評価基準については、後述の評価・査定基準にて解説します。
プロジェクト外での企業への貢献
役職が上がるほど、プロジェクト以外での役割・成果を見られるようになります。
例えば、新規案件の獲得・所属する組織での採用活動(面接官など)やメンバー育成・オファリングと呼ばれるクライアントに提供するサービスの開発・レポートの作成や広報業務などがあります。
企業により、プロジェクト外で期待される役職ごとの役割は異なります。
コンサルタントの評価・査定基準は?
基本的な評価基準
コンサルタントとしての基本的な能力(コンピテンシー)がどの程度発揮されているか、定期的に評価されます。
企業によって評価基準の表現やレベル感は異なるものの、本質的には共通している項目も多くあります。
共通した項目を一般化した形で紹介すると、プロジェクトマネジメントスキル・社内外でのコミュニケーションスキル・思考力(クリティカルシンキング)・成長するための姿勢などです。
これらの項目に対し、レベルの目安が設定されていて、ご自身がどのレベルにあるかを評価・査定される場合が多いです。
またメンバークラスの能力を定量的に表す数値として、評価・査定の際には必ず稼働率を考慮に入れます。
稼働率とは、就業時間の内で「クライアントに請求するプロジェクトに入っていた時間の割合」です。
稼働率が低い状態が続くと「スキルが低くてプロジェクトにアサインできないのでは」「クライアントとのコミュニケーションがうまく取れないのでは」という印象・評価につながりやすくなります。
役職別の評価
◇メンバークラス(アナリスト~コンサルタント)
マネージャーなどの上位役職者の指示のもと、クライアントに提案する資料の作成や必要なリサーチ、クライアントとの簡単なコミュニケーションなどを行うのがメンバークラスの役割です。
安定して基本的な業務ができるようになると、責任のある業務を少しずつ担当できるようになります。
具体的にはクライアントとのミーティングをファシリテートしたり、提案資料を作成したり、アナリストなどの下位役職者のマネジメントをすることが求められてきます。
特に営業資料の作成や提案時のプレゼンテーション、プロジェクトをリードする能力が上がると、マネージャーへのプロモーションが見えてきます。
◇マネージャークラス(マネージャー~シニアマネージャー)
マネージャーになると、プロジェクト外での活動も評価の対象になり、多くの場合、マネージャーから営業面での成果が期待されます。
営業面の成果を具体的に説明すると、パートナーが獲得した新規の依頼に対し、提案資料を作成して解決策のプレゼンテーションを行い、受注することや、従事しているプロジェクトの継続(追加受注)の提案を行い、受注することが挙げられます。
これらの営業活動をリードすることが求められ、営業活動を行う割合はポジションが上がるほど多くなります。
こういった営業活動以外にも、従事しているプロジェクトの採算性を確保することも求められます。
またコンサルファームによっては、シニアマネージャー以上から営業成果が求められる場合もあります。
プロジェクトにおいて顧客への価値提供がきちんとでき、評価されることで継続案件の受注につながるため、クライアントからの評価はとても重要です。
◇パートナー
パートナーとは一般企業における役員にあたるポジションであり、多くの場合は共同経営者にあたります。そのため経営への参加が求められるのはもちろん、経営の責任を取る役割があります。
そのため、クライアントへの営業活動を通じた新規の依頼の受注獲得や、追加契約の獲得といった成果が強く求められ、評価・査定の中心は営業活動ということになります。
新規の依頼・プロジェクトを獲得する過程で、クライアントの経営陣との信頼関係を構築することや、所属する組織のメンバーたちの教育・採用を行うのも、重要な業務です。
コンサルタントの社内評価・査定のプロセスとは?
評価・査定のプロセスとスケジュール
多数のコンサルティングファームにおいて実施されている代表的な評価・査定のプロセス・スケジュールを説明します。
まず期初に、評価対象者が評価項目に沿って自分自身で目標を設定します。
その後、期ごとに中間・期末などで自己評価を入力し、自己評価に対して評価者からフィードバックを行い、期末に評価を確定するというプロセスで評価・査定を行う企業が多くあります。
また、目標設定や自己評価を行わずに、期の節目のタイミングで、役職ごとに必要とされる基準・コンピテンシーに沿って定期的にフィードバックを行う企業もあります。
評価・査定を行うタイミングのパターン
◇期を基準に行う定期的な評価
年に複数回(多くの場合は期末に2~4回実施)、定期的に個人のパフォーマンスについて評価・査定が実施されます。
実施回数・プロセス・評価者は企業によって異なりますが、多くの場合は前述した目標設定・自己評価・上長からのフィードバック・評価確定というフローを、期を通じて実施します。
そして評価を実施している期間中、各コンサルタントの評価を持ち寄り、評価会議を実施することが、コンサルティングファームの特徴の1つです。
リーダー以上の役職者が一同に集まり、最終的にはパートナーから、1つ上のクラス(コンサルタントであればマネージャー)の業務ができる・パフォーマンスを発揮できると判断されると、プロモーションが可能となります。
ここでは、どのようなプロジェクトで、どのような貢献をしたかを、定性・定量の両面から議論され、プロモーション候補者が本当にプロモーションに値するかを判断されます。
この際にプロモーション対象者についてのプレゼンを行うのは、プロジェクト上の上司ではなく、所属する組織の上司です。
あるいはメンター制度(直上でないマネージャー以上の役職者を相談者として設定する制度)を取り入れている企業においては、メンターがプロジェクトメンバー・組織内での関係者にヒアリングを行い、主体者として評価やプロモーションについて提言する仕組みができており、公正・客観的な評価につながっています。
◇プロジェクトの節目に行う評価
定期的に行う上記の評価・査定以外に、プロジェクトが完了したタイミングでパフォーマンスを、プロジェクトにおける責任者が評価するプロセスを取り入れている企業もあります。
この際は、プロジェクトに従事する中で提供できた価値や、コンサルタントとしての強み・今後の成長課題などについて、コメントをもらいます。
部門をまたいだプロジェクトの場合は、所属する組織とは異なる部門の役職者からの評価となるのが特徴です。
また、特に戦略コンサルティングファームの場合は、数か月ごとにプロジェクトが変更になることも多々あるため、数か月単位で異なる評価者に評価・査定をされる場合もあります。
コンサルタントの社内評価・査定の事業会社との最大の違いは?
◇完全実力主義・評価主義
コンサルティングファームでの評価・査定は、外資・日本系問わず完全実力主義が基本です。
年齢や勤続年数を配慮して処遇が決まったり、プロモーションをされたりするような年功序列ではなく、クライアントや企業への価値・成果や、それぞれの能力を基準に評価・査定が行われ、キャリアアップしていく環境です。
そのため、プロモーションが早かった年下の上司につき、その指示に従ったり、厳しいフィードバックをもらったりするような場面も多く見られます。
以前ほど「UP or LEAVE(昇進か退職か)」に象徴されるような、低い評価を継続して取った社員を解雇するといった施策は行われてはいませんが、それでも一般的な事業会社における成果主義・実力主義と比較すると、コンサルティングファームにおける評価・査定はシビアと言わざるを得ません。
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今回の記事では、コンサルの人事評価・査定制度について解説しました。
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