コンサルファームが「儲かる」理由とは?そのビジネスモデルから紐解く

コンサルファームのビジネスモデルについて、社員に高い報酬を支払っている企業が多いためか「高収益を安定して実現できるビジネスモデルが確立されている」というイメージを持つ人が一定数います。

ただ「餅は餅屋」ともいうように、企業のビジネスのことについては自社の社員の方が詳しいはずです。なぜ専門外のコンサルファームが参画して収益を獲得できるのか、不思議に感じる人は多いのではないでしょうか。

今回の記事では、コンサルファームのビジネスモデルに着目して、コンサルファームが儲かる理由をご紹介します。

【目次】

  1. コンサルファームの料金体系
  2. コンサルファームが専門性を発揮できる理由
  3. コンサルファームの収益モデルはコンサルタントの高報酬にも直結している
  4. 独自のビジネスモデルと付加価値の源泉がコンサルファームの安定収益を下支え

コンサルファームの料金体系

コンサルファームが儲かる大きな理由は、その料金体系にあります。大手の外資系コンサルファームなどでは一ヶ月のコンサルフィーが数千万円にのぼるケースも少なくありません。

さて、そのコンサルフィーですが、次のような体系で決まります。

1.プロジェクトに参画する人員×プロジェクトに参画する時間
2.成功報酬

ただし、成功報酬は設定されない、もしくはされてもフィーに占める割合は限定的で、収益の多くの部分は「1」の、コンサルの工数(プロジェクトに必要とする人数×時間)で決まる傾向にあります。

プロジェクトに参画する人員の職位によって、ベースのフィーが異なります。マネージャーやディレクターなど職位の高い人材が多くプロジェクトに加わると、一ヶ月あたりのフィーは高くなるのです。

また、シニアメンバーなどは一人で複数の案件に並行して関わっているケースが多いですが、その場合は、一ヶ月の労働時間の何%くらいをそのプロジェクトに消費するのかを基準にフィーが按分されます。

この内訳が詳しく示されるか、プロジェクト全体の単価として提示されるかは企業ごとに異なりますが、多くのコンサルファームではこちらの考え方をベースにフィーが決まります。

安定して収益を積み上げやすい収益モデルに

この工数をベースとしたフィー体系が、コンサルの安定収益の土台となっています。具体的には次のような点が儲かるポイントです。

  • 成否に関わらず収益が発生する
  • コンサルへの経費を支払っても収益が残る水準にフィーが設定されている
  • プロジェクトを開始した時点から終わるまで収益が積み上がる

成功報酬が多くを占めるケースを除けば、コンサルフィーはあくまでプロジェクトがクローズするまでにかかる期間とメンバー数に応じて支払われることから、プロジェクトの成否はあまり関係がありません。極論をいえば「失敗しても儲かる」ビジネスモデルになっているのです。

もちろん、クライアントとのリレーション上、コンサルファームはフィーに見合う成果を追求して働いてくれます。特に営業活動を担うパートナークラスは、長期的なリレーションを意識してプロジェクトの成果を厳格に追求します。このようなフィー体系がコンサルファームの安定収益の土台となっているのは間違いないでしょう。

前述の通り、必要とするコンサルメンバー数や労働時間に応じてフィーが設定されるわけですが、そのフィー水準は、コンサルファームがコンサルタントの給与や諸経費を負担しても十分に収益が残る水準に設定されています。

また、このフィーはプロジェクト単位での固定フィーではなく、月額ベースとなっているケースが多いです(プロジェクト固定に見える体系でも、実質的にはプロジェクトの実施期間をふまえてフィーが設定されるケースがほとんどです)。

コンサルタントに支払う給料も基本的には毎月定額で支払われていきますが、前述の通り、給料を支払ってもしっかり収益が残る水準でフィーが設定されているため、プロジェクトが続く限り、コンサルファームに収益が積み上がっていく仕組みが整っています。

コンサルタントの工数に応じた月額フィーの仕組みが、コンサルファームの安定収益のベースなのです。

これは近年急速に普及してきた、月額支払いがベースの料金体系により、安定収益を獲得する「サブスクリプションサービス」にも通じています。コンサルファームでは以前から「サブスクリプションサービス」の仕組みを取り入れて、安定収益を得られるビジネスモデルを確立していたわけです。

コンサルファームが専門性を発揮できる理由

コンサルフィーを安定して獲得するためには、さまざまな事業会社にコンサルサービスを提供しなければ始まりません。しかし「自社のビジネスや業界のことは、自社が一番よく理解しているはずなので、外部にあたるコンサルが専門性を発揮するのは難しいのでは?」と考えている人もいるでしょう。

実際には、コンサルファームの「収益の種」となる付加価値は次の二つに分けられます。

  • クライアント自身が知見のある領域でも「外部からの目」や「代行」の役割を担う
  • クライアントに専門性がない「間接的だが重要な経営課題」の解決を担う

それぞれについて詳しく見ていきましょう。

「外部からの目」や「代行」の役割

自社でビジネスの評価や事業戦略の検討をおこなうと、どうしても主観が混じってしまい、冷静な判断ができない場合もあります。

コンサルファームなら、業界の同業他社との比較や、業界全体の潮流、トレンドなどマクロ的な観点も取り入れながら、客観的なアドバイスを行うことが可能です。たとえ自社に専門性があったとしても、コンサルファームのアドバイスや評価を取り入れた方が、より合理的な判断ができるケースも多いのです。

また、クライアントは自社では「絶対できないこと」だけをコンサルタントに依頼するわけではありません。自社でも時間や人的リソースをかければできるが、手間がかかって本業のビジネスに支障が出ると想定される場合には、費用対効果をふまえてコンサルに依頼します。

例えば、業界横断的な調査や事例・ノウハウの提供、データ収集や調査などは、たとえクライアント側に十分な専門性があったとしても、同業他社も含めて多くのリレーションを持っていたり、すでに豊富なデータやノウハウが蓄積していたりするコンサルファームに依頼した方が、クライアントにとって合理的なケースも少なくありません。

コンサルファームは、業界横断的にさまざまな企業と構築したリレーションや独自の知見の蓄積を武器に「クライアント自身に専門性がある分野でも付加価値を発揮できる領域」を確立しているのです。

「間接的だが重要な経営課題」へのソリューション提供

各企業にとって「本業」とはいえないものの、企業経営において重要な課題は多数あります。

次の領域などは、多くの事業会社にとって「専門外だが必要な機能」です。コンサルファームが頻繁に取り組むテーマともかさなっている印象を受けるのではないでしょうか。

  • マーケティング
  • 財務戦略
  • M&A
  • DX

これらの領域について、自社で全て賄えるほどに専門性を高めるのは困難です。

例えばマーケティングは、消費者の嗜好が多様化し、自分に合った製品を能動的に探す現代において、ビジネス拡大のために欠かせない要素です。

しかし「モノづくり」が主体で製品の品質向上に強みを持つ職人気質の製造業の中には、顧客への効率的・効果的な販売方法を検討するマーケティングの専門性を構築するのが難しい企業も少なくありません。

また、DXは近年のコンサルファームにおいてもビジネス全体においても重要なテーマの一つです。しかし、単なるシステム導入ですら容易ではない中で、自社にとってあるべきDXの姿を描けないという企業は多数存在します。

こうした経営課題はどの業界でも生じうるものですが、多くの企業にとって「本業」とはいえない間接的な領域です。そうした領域の経営課題を効率よく解決に導くのも、コンサルファームの重要な役割といえるでしょう。

コンサルファームの収益モデルはコンサルタントの高報酬にも直結している

ここまで紹介したコンサルファームが安定的に儲かる仕組みは、コンサルタントの高報酬の土台にもなっています。ファームは成否にかかわらず、安定的な収益を月額ベースで蓄積できるため、コンサルタントにも潤沢な月給を支払えるのです。

コンサルプロジェクトでは多くの場合、大規模な設備投資などは必要なく、そのコストのほとんどは人件費。そのためフィーの多くの部分をコンサルタントの給与に充てることができます。

むしろ、クライアントとのリレーションやファームとしてのブランドを維持する観点からは、プロジェクトに確かな成果をもたらす必要があります。プロジェクトを確実に成功させるためには、質の高い人材をプロジェクトに組み入れる必要があるので、高い報酬を割いて優秀なコンサルタントを参画させているのです。

役職が高いほど質の高い仕事や難易度の高い役割を担えると期待されるからこそ、フィー体系においてはシニアメンバーほど単価が高く設定されています。この単価の差が、コンサルタントの報酬体系(=役職が上がれば給与が上がる)の源泉にもなっています。

報酬が高いことは、相応の「付加価値」を、プロジェクトを通じてもたらすことがコンサルタントに期待されている証です。

次に挙げるのはほんの一例ですが、おもにこのような形で、フィーに見合うレベルでのプロジェクトの成果に対する貢献を求められます。

  • M&A、DXなど特定領域の専門的な知見
  • 外部からの目による革新的な解決策の提示
  • 業界横断、マクロ的な視点からの客観的な判断・合理的な意見
  • プロジェクトを円滑に推進するマネジメント能力

これらの付加価値を十二分に発揮すれば、評価が高まり昇給やプロモーションにつながっていきます。逆に不十分と判断されればパートナーやマネージャーによってプロジェクトからリリースされます。

いかなるプロジェクトでも役職に見合う貢献ができないと判断されれば降格・最悪の場合解雇という事態に陥ります。これこそ、「コンサルはきついのでやめておけ」と言う人が多い理由。

コンサルタントの魅力的な報酬水準と時に「厳しい」と言われる雇用体系は、全てコンサルファームのビジネスモデルと密接に関わっているのです。

独自のビジネスモデルと付加価値の源泉がコンサルファームの安定収益を下支え

まとめると、コンサルファームの安定収益は、次の二つの要素で成り立っています。

  • プロジェクトの成果に依存しにくく、月額で安定的に収益を積み上げることができる料金体系
  • ファームの客観的な視点やノウハウ・データの蓄積、経営課題に対する専門性を土台とした付加価値の提供

コンサルファームはブランディングやクライアントとのリレーションの観点から、質の高い人材をコンサルタントとして雇い、継続的にコンサルプロジェクトを立ち上げて、クライアントが満足する成果を提供し、安定収益を獲得しています。

コンサルタントとして順調にキャリアを形成するためには、プロジェクトにおいて「フィーに見合う付加価値」を提供していかなければなりません。コンサルファームへの転職にチャレンジしている人は、自分が提供できる「付加価値」は何であるかを見極めながら、選考に臨みましょう。

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>コンサルタントへのキャリアに関する記事

コンサルタントへ転職するための「志望動機書」の作り方【未経験~ファームtoファームまで】
https://www.axc.ne.jp/column/axis-column/2015/0713/264.html

何が違う?コンサルで「マネージャー昇格後」も「継続的に活躍する人」の共通点
https://www.axc.ne.jp/media/careertips/consul_difference

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今回の記事では、コンサルファームが儲かる理由をビジネスモデルに着目してご紹介しました。キャリアでお悩みの方は、ぜひアクシスコンサルティングにご相談ください。


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