優秀なコンサルタントが昇進を重ねていくと、一定のタイミングでプレーヤーからマネージャーになります。その中で、プレーヤー時代は優秀だと言われていたが、マネージャーになってからはあまり活躍しなくなってしまう人がいます。
「優秀なのにどうして?」と思うのは当然ですが、プレーヤーとマネージャーでは活躍する要件が異なります。
その要件を満たせない人はクライアントからも部下からも信頼を獲得できません。
それではマネージャーになってからも継続的に活躍する人の要件とは何なのでしょうか。今回の記事では、実際にコンサルティングファームでご活躍されるパートナーレベルの方々からお聞きした情報などをもとに、「マネージャー昇格後」も「継続的に活躍する人」の主な共通点をご紹介します。基本的な情報も多いですが、ぜひご参考ください。
【目次】
マネージャー昇格後も継続的に活躍する人は「クライアントの期待値コントロール」が上手
マネージャーの1つの役割として、プロジェクトの成果およびコンサルティングファームに対する期待値はどこにあるのかを探り、それをコントロールするというものがあります。
期待値コントロールができているか否かによってプロジェクトの評価が大きく変わります。期待値を満たすことはもちろん、期待値+αができてこそ、「コンサルティングファームに頼んで良かった」と思ってもらえます。期待値コントロールはクライアントの信頼を獲得する上で非常に重要です。
<本音の見極め>
期待値コントロールを行うことは難易度が高く、単にクライアントが発する言葉を受け取っているだけでは、期待値から大きく乖離してしまうことが多いです。議論中のクライアントの表情の変化、言葉選び、議論の場以外での発言(お茶、飲み会、たばこ等)から本音の期待値はどこになるかを探る必要があります。
期待値がずれたままプロジェクト推進を行っていても、どこかかみ合わないポイントがずるずると生じてしまいます。
一方で期待値コントロールができると、チームの真にやるべきことが明確になりますし、クライアントからも「自分のことを理解してくれるコンサルタント」として信頼してもらえるでしょう。
<プロジェクトの上流工程の検討>
上記を実行するためには、プロジェクトのミッション達成に向けた方針検討、方針に照らした論点設計、各論点の落としどころ(仮説)を考えることが必要です。
プレーヤー時代には、そのプロセスから生まれたタスクを任され、必要な作業をこなし、示唆を導出したり成果物を作成したりという、ある程度決まった範囲内での仕事が主なものだと思います。
その決まった範囲内で優秀であることも、とても大切ではありますが、マネージャーはより視座を高くして、プロジェクト全体を設計することが求められます。
「視座の違いを理解した上でプロジェクト全体の上流工程の検討ができる」
「検討した結果をクライアントと共有できる」
というハイレベルな思考力とコミュニケーション力が求められるのです。
上記まで対応できるようになれば、マネージャーとして活躍できる人材となり得ます。
マネージャー昇格後も継続的に活躍する人は「タスク設計と進捗・品質管理」が上手
まずは顧客の期待値を握り、プロジェクトとして向かうべき方向が明確になったら、次に具体的には何をすべきか(タスク)を設計し、実行に移していきます。
<緻密なタスク設計と割り振り>
タスクの抜け漏れがなく、どの程度のレベルのものを、いつまでに仕上げる必要があるかをプロジェクト全体のスケジュールから逆算して考えます。
これまで成果を挙げる役割だった人も、自分がタスク実行者として、課題を渡す側の役割を請け負うことになります。タスクを1人で抱え込みやすい人や、報連相が苦手な人には、苦労するポイントとなります。自分のタスクを実行すればよいだけの立場から、プロジェクト全体とタスクを振る相手の双方について考える必要があるためです。
タスクを任せる際には、相手の能力・性質の見極めも重要です。
・相手がこなせるタスクの種類は何か
・どの程度の情報粒度で伝えるべきか
・いつ頃までを期限として実施してもらうのか
・それまでのプロセスはどこまで事前に設計すべきか
これらを判断する必要があるため、視座/視点が自分本位だとチームメンバーと上手く連携できなくなり、チームとしての生産性が低下してしまいます。
<「自分でやった方が早い」からの脱却>
一度、タスクを任せた後でも、自分が想定している進捗と品質で進んでいるのかをウォッチし続ける必要があります。
想定通り進んでいればよいですが、そうでない場合は、
「何が起きているのか」
「なぜ起きているのか」
「どうやったら解決・軌道修正できるのか」
を瞬時に理解・判断する必要があります。
プレーヤー気質の人がマネージャーになった際には、ここがまず躓くポイントとなることが多いです。「自分でやった方が早い」と判断してタスクを巻き取ってしまうと、自分自身のマネージャーとしての成長、部下のタスクをやり切る機会がなくなってしまいます。それは最終手段に取っておき、できる限り部下に任せることが重要です。
最初は時間がかかってしまいますが、どのように伝えたら部下はタスクを完遂できるのかを考えて機能させられれば、将来的にとても楽になることができます。
マネージャー昇格後も継続的に活躍する人は「部下の育成」が上手
マネージャーになると、プロジェクトを回していくためには必要不可欠な要素だけでなく、部下の育成が必ず求められるようになります。
育成については、それだけで本が書けてしまうほど深い要素だとは思いますが、ここでは大きく3つのポイントをお伝えします。
<目標の明確化とすり合わせ>
プロジェクトを通じて何を経験し、何をできるようになるか、部下のキャリアにどのように役立つかを明確化し、部下とすり合わせを行うことが今後の両者にとってWIN-WINとなります。
プロジェクトに入る前に概要レベルで伝え、「プロジェクトに入りたい」と思ってもらいましょう。プロジェクトに参加してもらった後は、より具体的なタスクレベルで伝えることでプロジェクトに対するモチベーションを上げてもらいます。
「仕事なのだから何でもやり切ることが当たり前」と思ってこのプロセスを無視すると、部下自身に上記のことに気付いてもらう必要が出て来てしまいます。しかし、それができるのは一部の優秀層の人であり、誰しもができるわけではありません。やり切ることが当たり前であることは事実ですが、タスクに対して、どのようなモチベーションを持って取り組むかで成果は変わってきます。そのモチベーションを上げてあげることはマネージャーの役割の1つです。
<心理的安全性の確保>
心理的安全性とは、自分の居場所があると感じ、安心して仕事に取り組める状態のことを指します。具体的には、「自分はこのプロジェクトに貢献できている」と部下自身が思えている状態です。この状態から乖離すればするほど、萎縮してしまったり、ミスが増えたり、もっと悪いケースではメンタルを病んでしまうことになります。
たとえ部下の成果物の品質が期待を下回るものだったとしても、必要以上に問い詰めたり、キツイ言い方をしたりしてはいけません。部下にとってメリットはありませんし、一時的に気が引き締まって頑張れる場合もありますが長続きはしないのです。
人は感情がベースにありますので、上司の感情がポジティブであれば仕事の生産性を高められますし、部下の成長にも繋がります。
言うべきことを言わないということではなく、そこまで意識した言葉選びや物言いができると、一段レベルの高いマネージャーとなり得ます。
<適切なフィードバック>
タスク完了時やプロジェクト終了時、部下に対して適切なフィードバックを行うことが部下自身の成長に大いに役立ちます。またフィードバックはリアルタイムであるほど、指摘内容も改善点も具体的となるため、より効果的です。
フィードバック時にフォーカスすべきは、結果自体ではなく、結果に至るまでのプロセスです。
仕事を進めるプロセスの中での考え方(ロジック)、不足しているスキルや知識等に対して、改善点を伝えます。気を付けたいのは人間性に対してのフィードバックを行うべきではないということです。人間性の否定はよほど深い仲になった間柄でないと逆効果になってしまいます。
心理学で言う自己保存の法則によると、人は自分の人格を否定されることに本能的に拒否反応を示し、感情がネガティブになってしまいます。
すると「指摘はもっともでも、なかなか素直に受け入れられない。上司のことを否定的に見てしまう」ことに繋がっていくのです。
そのため「仕事上で起きたプロセス」について事実ベースで伝えることが、相手にとって受け入れやすいフィードバックとなります。
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>マネージャーへのキャリアに関する記事
シニコンからマネージャーに昇格して初めて感じる悩みと解決策
https://www.axc.ne.jp/media/careertips/sctomproblem
シニアコンサルタントからマネージャーになると何が変わるのか?【業務比率イメージ付き】
https://www.axc.ne.jp/media/careertips/SeniConmanager-difference
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プレーヤーからマネージャーになると、自分が主体の仕事の進め方からプロジェクト全体や相手主体の仕事の進め方に大きくシフトする必要があります。「きつい」と感じる業務も増えますが、重要なのは、プレーヤー時代よりも一段/二段、視座を高めること。今回の記事を通じて、視座を高めるためのヒントを得て頂けたなら幸いです。
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