コンサルティングファームでマネージャー以上の役職を経験し、クライアント企業の戦略立案や新規事業開発をサポートし、「事業を作る側の経験を積みたい」「ワークライフバランスを重視したい」などの理由で、次のキャリアとして事業会社の事業企画部門への転職を検討する方は、とても多くいらっしゃいます。
加えて絶えず変化する社会において、事業会社における事業企画部門では収益の柱となるビジネスの推進や、洞察に基づく新たなビジネス開発が必要とされており、マネージャー以上の経験を持つコンサルタント出身者は、事業企画の部門長や経営者(例えばCOO)候補として採用されることが頻繁にあります。
今回はマネージャー以上のコンサル経験者が事業企画部門に部門長として転職するため、つまり転職前に必要なスキルについて解説します。
この記事を読むことで、転職を検討している方が何を期待されるのか、どのような準備が必要かについて理解を深めることができます。
【目次】
- 身につけておくべきこと①事業の実行または、実行支援の経験
- 身につけておくべきこと②開発・サービス企画・マーケティングなどの幅広い経験
- 身につけておくべきこと③大規模組織のマネジメント経験
- 身につけておくべきこと④価値観やカルチャーなどの違いの受容・適応
- コンサルから事業企画・事業開発へ転職された方に関するインタビュー
身につけておくべきこと①事業の実行または、実行支援の経験
事業の実行または、実行支援の経験が必要とされる理由
事業の実行または、実行支援の経験が必要な理由は、実行部分を疎かにしてしまったマネージャー以上のコンサル経験者が多くいるためです。
コンサルティングファームでは、クライアント企業の戦略の立案と意思決定を支えるという重要な業務を行う一方、実行部分を担えない・最後まで関与できないことが大半です。
そのため、実行部分の経験が乏しく、または無意識に実行を軽んじてしまい、実行部分を部下や周囲に任せてしまったコンサル経験者が多くいます。
そのようなコンサル経験者を見てきた事業会社の経営者・人事は、「このコンサル経験者は、自分自身の責任で事業を作れる・実行力がある人か」を面接の場で判断しようとしている可能性が大いにあります。
マネージャーとしてコンサルティングを経験する中で、上流の戦略立案や難易度の高い課題解決などの経験をついアピールしたくなりますが、机上の空論ばかりの人・実行力が不足している人と思われないよう、注意が必要です。
事業を作るための戦略の実行を重視する姿勢を示すことはもちろん、泥臭い実行支援の経験をしてきたことを示せると良いでしょう。
どのような実行支援の経験が有効か
一部のコンサルティングファームでは自社事業の事業開発に携わることができますが、大半のコンサルティングファームにおいては、マネージャー以上の役職であっても、あくまでもクライアントの「実行」を「支援」することが業務です。
実行支援のプロジェクトが終了してコンサルタントたちが去ったあとも、クライアントだけで実行できる形にして完遂できると、事業会社に部門長として転職する際・転職した後両方において、活かせる経験になります。
有効と言える実行支援例を2つ挙げます。
まず、クライアントが取り組みを「自分ごと」と考え主体的に取り組む体制になったものです。
この自分ごと化ができていない場合、実行フェーズに入ってコンサルタントの管理がなくなると、進捗が滞るということが起こりえます。
計画策定の初期段階から、組織の各部署のキーパーソンを参加させ、計画の当事者だと捉えてもらい、彼ら自身に計画策定を行わせる工夫ができれば、部門長クラスの事業企画への転職において活かせる経験となるでしょう。
次に、仕組みや組織まで変革できたものです。
意思や思いだけでは、変革や事業は進まないため、それらが進む仕組み・組織まで構築できたかが重要です。
例えば、新たな取り組みの場合は、推進・実行体制の構築、実行の際のマニュアル作成や教育などが上げられます。
実際に現場のメンバーが取り組みを行う際に、意識・行動面のハードルに先回りし、取り組みが前に進むように仕組みを整えた経験は、事業企画への転職の際に歓迎されるでしょう。
身につけておくべきこと②開発・サービス企画・マーケティングなどの幅広い経験
サービスの企画から実行に至るまでのあらゆる業務経験が必要
マネージャーを経験したコンサル経験者が部門長として事業企画で勤務する場合、開発、サービス企画、マーケティングといった複数の分野にわたる経験をしていることが重要となります。
これらの幅広い経験をしていることが、提供しているサービス・製品のライフサイクルを把握し、市場の状況に合わせた戦略を立案し、効果的に推進するために必要であると考えられるためです。
例えば、担当しているサービス領域の拡大のため、新サービスの企画立案を行う場合は、新サービスに関する市場分析、戦略・長期計画の立案、コンセプト開発、マーケティング施策の立案・実行、組織立ち上げとメンバー管理、営業やマーケティング部など他部門との協力体制の構築など、企画から実行に至るまで責任を持ちます。
このほかにも、担当事業の技術力向上や、事業のKPIモニタリング、事業開発のための他企業のM&Aなど、多岐にわたる業務を期待される可能性が高く、幅広い経験をしていると転職の際に活きるでしょう。
他業界や周辺領域に関する経験や知見が求められる場合もある
加えて、所属する企業と別領域や関連領域における事業開発を行う可能性もあります。
総合コンサルティングファームで事業開発の支援を実施したコンサルタントの方が、支援したある日系建材メーカーが、その技術力や顧客基盤を活用し、ヘルスケア領域へ参入するのをお手伝いした経験がありました。
このように、既存のアセットを使って他領域への事業拡大を検討・実施する可能性もあるため、特定の業界・領域のみでの経験をしてきた方は、事前に周辺領域のプロジェクトを経験したり、他の業界や周辺領域の市場環境・トレンドなどを勉強したりということが必要になるかと思います。
参考:マネジャー以上のコンサルが、事業企画に転職した際に身につけるべきこと
https://www.axc.ne.jp/media/careertips/consul_manager_bizdev
身につけておくべきこと③大規模組織のマネジメント経験
大規模組織を管理するスキルは、事業企画部門長としての成功に不可欠であるため、転職前にマネージャー以上のコンサルタントとして経験・スキル獲得をしておくといいでしょう。
事業開発の部門長に着任する場合、管理対象となる社員数は企業の規模や事業部の構造によって大きく異なりますが、一般的に小規模の事業部(例えばベンチャー企業や新規事業開発に特化した部門)であっても数十名程度の社員が所属し、大企業における主要製品・サービスを扱う部門では100人程度の社員が所属し、マネジメント対象になる可能性があります。
部門の中に複数のチームや課が存在するため、マネジメント対象全員の業務・評価を直接行うわけではありませんが、組織全体のKPI管理や目標達成のリードをする責任があります。
今までマネジメントしたことがない、多様なバックグラウンド(例えば技術職や、現場出身者など)・価値観を持つメンバーとコミュニケーションを取りながら、可能性が発揮できるようリードする対人スキル・リーダーシップも求められます。
また転職直後に、業務そのものや業務の進め方に関してキャッチアップしながら、初めて大規模組織のマネジメントを経験することは、事業部長に転職した本人にとっても、採用した組織にとっても、望ましいこととは言えないでしょう。
規模が大きい事業部の部門長の選考を受けることを検討している場合は特に、コンサルティングファームでマネージャーとして勤務している間に、大規模プロジェクトの管理・リードをしていることが有効かもしれません。
身につけておくべきこと④価値観やカルチャーなどの違いの受容・適応
事業企画への転職の際に、異なる価値観や企業文化への適応に苦労する方が多くいるため、転職前にどのようなことに違いを感じるかを調べた上で、覚悟をしておく・マインドセットを変えておくことが必要です。
たとえば、コンサルでは常識と言える、明確な成果・基準に基づく評価体系ではなく、不明瞭な基準による評価を行う企業文化に違和感を覚えることが多くあります。
また経営の意思決定の場面で、論理的に正しいことを迅速に決めるのではなく、非合理的なことや、「誰が何を言ったか」が重視される文化が存在することも多くあります。
このような違いがどこかにあるという前提で、元々のコンサルティングファームでのやり方・基準にこだわり過ぎないスタンスを示すことが、採用時には必要となります。
中長期的には、期待される結果を出すために必要となる、その環境の中でのロジック・効率的なプロセスを身に着けていくことも、重要な能力と言えます。
参考:【コンサル「マネジャー以上」向け】事業企画転職におけるよくある「失敗」の理由
https://www.axc.ne.jp/media/careertips/consul_manager_bizdev_failure
コンサルから事業企画・事業開発へ転職された方に関するインタビュー
弊社では過去にコンサルから事業企画・事業開発へ転職された方々へのインタビューを行ってきました。ぜひご自身のキャリアの参考にしてみてください。
株式会社アカツキ 事業企画部門Think@ (シンカ)山村龍太様インタビュー/元戦略コンサルタントから見た「ゲームビジネスの魅力」とは?
https://www.axc.ne.jp/media/companyinterview/akatsuki_thinka
【インタビュー】元コンサルタントから見た「リクルートライフスタイル」と、同社がコンサル出身者に求める「スキル・感覚」とは?
https://www.axc.ne.jp/media/companyinterview/Recruitlifestylebeauty
大手コンサルファームからビザスクへ入社後、チームリーダーへ昇格。元コンサルが同社で活躍できる理由とは?
https://www.axc.ne.jp/media/companyinterview/visasq_interview
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今回の記事では、コンサルのマネージャー以上が事業企画・事業開発に転職する前に身につけるべきことについてお伝えしました。キャリアでお悩みの方は、ぜひアクシスコンサルティングにご相談ください。
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平均サポート期間は3年です。
各ファームのパートナー、事業会社のCxOに定期的にご来社いただき、新組織立ち上げ等の情報交換を行なっています。中長期でのキャリアを含め、ぜひご相談ください。