かつて、ポストコンサル転職で事業会社に移ることは、年収が下がるリスクをはらむため避ける人も多かったのは事実です。しかし現在、事業会社へのポストコンサル転職でも年収が下がらず、安定的に高い年収を得られる環境が整ってきています。
特に経営企画は経営層に近い立場で事業戦略や人材マネジメントを担うため、年収が高い傾向があり、ポストコンサルの転職先候補として人気です。ファームでマネジャー以上として活躍されているご人材についても、事業会社の経営企画への転職を検討される方々が増えてきたと感じています。
しかしマネジャー以上だからといって、事業会社の経営企画に転職後、ファームとのギャップで思うように活躍できない方がいらっしゃるのも事実です。そこで、今回の記事ではよくある「経営企画に転職したコンサルの失敗事例」と、確実に押さえておきたい対処法についてご紹介します。また、「経営企画」といえども、企業のフェーズや大きさによって求められるスキルや環境は異なるので、あくまで一例としてご覧ください。
【目次】
- よくある失敗理由①完璧な計画の作成にこだわり現場の実情を無視してしまう
- よくある失敗理由②自身の役割を「意思決定者の背中を押すだけ」と考えてしまう
- よくある失敗理由③知識やツール偏重になりすぎる
- よくある失敗理由④基準以上の価値を出そうと徹底しすぎてしまう
- コンサルから経営企画への転職に関するインタビュー
よくある失敗理由①完璧な計画の作成にこだわり現場の実情を無視してしまう
コンサルタントの強みは「提案力」「完璧な計画の作成力」ですが、事業会社に転職後、現場を無視した提案をしてしまう方がいらっしゃいます。経営層から任された事業計画の作成において、現場でのヒアリングを怠り、机上の空論になってしまったという話はよく聞きます。
立派な計画を自力で作成できてしまうからこそ、現場の実情を調べずに数字をメインとした計画を作り、現場から反発されるリスクが考えられるでしょうか。顧客のニーズをヒアリングするタスクについて、1件あたり2~3分程度で済みそうだと仮定していたものの、実際にタスクをこなそうとすると、数分では終わらなかったというケースもあるようです。このように、ファーム時代には経験できなかった現場での業務を通じ、成果を出すことがいかに難しいか痛感することになるケースが想定できます。
一般的なコンサルタント出身者であれば、経営層と現場の両方とコミュニケーションを取りながら推進していくことが想定されますが、マネジャー以上を経験された方の場合、経営層の目線に偏りすぎてしまう可能性が高いでしょう。経営層に立場が近いからこそ、どうしても現場と目線を合わせるのが難しく、作成を進めるほどに内容が現場の実情と懸け離れたものになります。
実は、事業会社ではパワーポイントで美しく整えられた完璧な事業計画書は、必要とされない可能性が高いです。美しい計画書ではなく、簡易的にまとめられたものであっても「現場で実際に実行できるもの」を作ることで評価されます。それだけ事業会社では「現場中心」の目線を持つことが求められるため、ファーム在籍時から完璧な計画を作り上げただけで満足せず、意識的に現場に寄り添って行動することが大切でしょう。
よくある失敗理由②自身の役割を「意思決定者の背中を押すだけ」と考えてしまう
「責任者・意思決定者の背中を押すだけでいい」と考え、自身が決定から実行までを担うつもりがない場合、経営企画では信用を失うことになります。計画立案の際には、現場と目線を合わせる意識を持つことはもちろん、自身が「意思決定まで担うつもり」で行動することが重要です。
コンサルタント時代に「第三者として提案し、実行時の判断は任せる」という習慣があった方も、事業会社では社内の一員として当事者意識を持つ必要があります。特にマネジャー以上の方であれば、責任者として全当事者をまとめ上げるスキルがなければ、経営企画での事業推進を担えません。
「意思決定者の背中を押せる人がコンサルに向いている」という意見がありますが、事業会社の経営企画では責任者の背中を押すのではなく、自ら決断して実行するまでの全体的な責任を担う必要があると言えます。
実際に、コンサルティングファームから経営企画に転職された方にお話を伺ったところ、「事業をリードできる人材」の必要性に言及されていました。コンサルティングファームに在籍中から、新規事業の企画立案を担った方が求められる傾向があると言えます。事業の土台となる技術を熟知して、全体を統括する必要があるためです。事業を立案して提案するまでのスキルは当然として、社内外のステークホルダーを巻き込んでチームをまとめ、実行まで推進するプロジェクトマネジメントスキルが何より重要と言えます。
かつては実行スキルの乏しさが批判されることもあったコンサルタントですが、現在では、コンサルティングファームのビジネスモデルが変革したことで、実行支援まで担ってこられた方が大半かと思います。マネジャー以上の方の場合、「支援」という言葉にとらわれず、「自ら実行」することを意識した上で、事業会社の経営企画の一員として責任を担う心構えをすることが有効でしょうか。
よくある失敗理由③知識やツール偏重になりすぎる
知識やツールの使い方にこだわりすぎて、洞察力に乏しい分析結果しか出せず、作業時間を無駄にするリスクがあります。経営企画ではMBAや簿記の知識だけでなく、実務経験が求められるケースが多い印象です。仮にMBAを保有していても、業界・実務未経験の場合、ポテンシャル採用と同等と言え、年収が下がってしまう可能性もあります。資格とその知識があれば強みになると考えている方よりも、該当分野における経営企画経験者が重視されるのが実情です。
またコンサルタントはSWOTやPESTなどのフレームワークを分析ツールとして使うことにたけていますが、事業会社に転職後は分析ツールに振り回されてしまい、客観的な判断ができず失敗するケースも想定できます。ある通信系企業の企画部門長によると、コンサルタントが「ツールを使うこと」自体にこだわり、ブランクを埋める作業に注力しすぎた結果、分析で表れた数字に過剰反応して、主観的な思い込みで分析を進めてしまうケースがあると言います。
このように実務経験が少ない結果、分析方法を教科書どおりにしか理解しておらず、数字を正しく読み取る力が不足しているコンサルタントは、経営企画で力を発揮できません。フレームワークを形式的なツールとしてしか使えないと、表面的な内容に終始した書類ができ上がり、議論に使えないという事態が生じてしまいます。
「優秀なコンサルタント」とは、「知識やスキルが多いわけではなく、実際に難しい課題を解決してきた人材」と言い換えられます。知識にこだわり、ツールに振り回されるのではなく、知識とツールを補助手段として自ら深く思考できるかが、経営企画で活躍できるかの分かれ道と言えるでしょうか。
よくある失敗理由④基準以上の価値を出そうと徹底しすぎてしまう
コンサルタントのマネジャー以上の方であれば、クライアントが期待する以上の価値を提供することを当たり前のように行っていたかと思います。ただし、基準以上の成果にこだわる姿勢は、事業会社では必ずしも良い結果をもたらすとは限りません。
外資系ファームから事業会社に転職された方にコンサルファームと事業会社の違いを聞いたところ「事業会社の社員は50点~60点の答えを出してコンセンサスを取っていくのに対し、仕事を徹底的にやり尽くし、90点以上を出し続けるのがコンサルタント」とのことでした。
前述のとおり、経営企画で求められるのは、経営層と現場と同じ目線で、実際に事業を推進する力です。そもそもコンサルタントとして提供する価値と、事業会社で求められる価値が異なっているため、がむしゃらに成果を出そうとするよりも、まずは事業会社の社員としての目線で風土に適応できることが求められます。
コンサルタント目線で価値を出そうと徹底しても、経営企画の一員としてはその成果が求められていないかもしれません。コンサルタント時代と同様のやり方で成果を出そうとして空回りしないよう、柔軟に事業会社の社風に適応した上で、「今、本当に90点以上を出し続けるべきなのか」見極める必要があります。
コンサルから経営企画への転職に関するインタビュー
弊社では過去にコンサルタントから経営企画職へ転職された方にインタビューを行ってきました。ぜひご自身のキャリアの参考にしてみてください。
株式会社オプティム/我々はAI・IoTを用いた「新しい産業のかたち」を生み出し、社会課題を解決したい!
https://www.axc.ne.jp/media/companyinterview/optimintv
【キャリアインタビュー】最年少シニアマネジャーから事業会社の経営企画へ。「テクノロジーが戦略を定義する」新しい時代において求められるビジネススキル・マインドとは。
https://www.axc.ne.jp/column/career-change-case/optimintv
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マネジャー以上の場合、現在の待遇に見合う転職先が少ないと感じられ、転職の決断自体を遅らせてしまう方もいらっしゃるかもしれません。その点、経営企画は比較的高年収になりやすく、将来的に自ら経営者として事業を担うことを想定されている方にとっても有益な経験を積みやすい部署です。
コンサルタント時代の強みやカルチャーにとらわれず、柔軟に事業会社のやり方に適応しながら実行力を発揮することで、経営企画へのキャリアの成功につながるでしょう。
今回の記事では、マネジャー以上のコンサルタントが経営企画への転職でよくある失敗の理由について解説しました。キャリアでお悩みの方は、ぜひアクシスコンサルティングにご相談ください。
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平均サポート期間は3年です。
各ファームのパートナー、事業会社のCxOに定期的にご来社いただき、新組織立ち上げ等の情報交換を行なっています。中長期でのキャリアを含め、ぜひご相談ください。