コンサルタントとしてプロジェクトを経験していくと、プロジェクトが炎上してしまうこと、そして炎上している案件に火消しとして参画することがあります。炎上とは、大まかに説明すると、クライアントが求めているアウトプットを定められた期間内に納品できなかったことを指します。
炎上案件にピンチヒッターとして参画することになった場合、どのように立ち振る舞い、解決へと導いていくものなのか。
本稿では、ピンチヒッターとしてマネージャークラスのコンサルタントが意識して行うべき主なアクションをご紹介します。
【目次】
炎上の真相把握と解決策の検討
最初にすべきことは、なぜプロジェクトが炎上してしまったか真相を把握すること。ありがちなのは、成果物を何か月もかけて作成し、納品する際にクライアントから「期待していたものと違う」「この成果物は受け入れられない」と言われ、プロジェクトが無事終了しなかったケースです。
上記のありがちなケースを例に取ると、表面的な要因は「クライアントが納得する成果物を作成できなかったこと」ですが、これだけでは対処法がありません。
なぜクライアントにとって納得できない成果物となってしまったかを深掘りする必要があります。
単なる怠惰であることを除けば、よくある原因はクライアントとのコミュニケーションの中で生まれた認識齟齬です。
A コンサルタント―クライアント担当者の間
B クライアント担当者とクライアント意思決定者の間
等、誰とのコミュニケーションの中でどのような齟齬があったのかを特定することがポイントとなります。
<コミュニケーションミスが要因のケース>
要因特定をするプロセスにおいては、自社内のコンサルタントに事情をヒアリングすることはもちろんですが、クライアントサイドへのヒアリングも必ず実施します。人は自分にとって都合が良くないことはあまり話したがらないものです。偏った意見収集とならないよう、ヒアリングは双方に実施することをおすすめします。
またヒアリングする際に意識したいのは、参画するプロジェクトのステークホルダーのパワーバランスです。誰がこのプロジェクトの主な登場人物なのか、それぞれどのような意見を持っているのか、その中でもキーマンは誰なのかを把握することが大切です。
窓口としては主任~課長クラスの方がいる場合、その方が意見を強く持っていてプロジェクトのアウトプットにも大きな影響をもたらすこともあれば、その上にいる部長もしくは、さらに上の役員クラスが強い意見を持っており、コンサルタントが見えないところでプロジェクトに大きな影響を及ぼしている場合もあります。
それらの方々が持っている意見を把握し、プロジェクトに対して肯定的か否定的か、どのような方向性で進めたいと思っているかを、ステークホルダーマップを作ることで可視化。プロジェクト内で共有することで、より効率的かつ効果的なヒアリングができるようになります。
また、コミュニケーションによる認識齟齬が起きるまでの過程も整理しましょう。
誰と、どのようなコミュニケーションを取り(ミーティング / メール / 資料授受 等)、どのような内容を話したのか / 合意したのか等を、推測を含めずに事実だけを淡々と並べていきます。その中で、齟齬が発生したポイントを明確にし、次はどのようなコミュニケーションを取るべきかを考えます。
A コンサルタントとクライアント担当者の間の認識齟齬のケースにおいて、オンライン中心のコミュニケーションであれば、対面に切り替えてで話し合う場を中心にコミュニケーションを取ってみる等が挙げられます。その際、「言った」「言っていない」等のトラブルを避けるために、必ず議事録を作成することをおすすめします。曖昧な表現は避け、相手が言ったことを解釈せずに正しく理解することがポイントです。わからなかったら、その場で意味合いを確認します。例を挙げればいくつもありますが、基本的にはこれらを徹底します。
B クライアント担当者とクライアント意思決定者の間の認識齟齬のケースにおいて、クライアント内での調整をクライアントに任せっきりにせず、意思決定者も含めたミーティングやメールのやりとり等を行うようにし、自ら直接、確認・コントロールできる環境を構築しましょう。
何においても、本質はアウトプットの中身です。どのような中身がクライアントに受け入れられるのかを再検討し、作り上げていくことが最も大切です。しかし、中身については、その時々の課題 / 論点によって変わってくるもの。一般的な解決策を挙げるのは難しいですが、コンサルタントの能力不足ではない限り、クライアントコミュニケーションを適切に行えれば大きな問題にはなりません。
正しいインプットを得ることがアウトプット作成の第一歩です。意思決定者の考えを正しく理解すること、意思決定者の考えが正しくないと判断するなら異なる意見をアウトプット作成段階できちんと話して受け入れてもらうこと。これらができていることが重要です。
<コンサルタントのスキル/工数が不足しているケース>
一方、コミュニケーションミス以外の要因として、コンサルタントの能力・スキルがプロジェクトのデリバリーにマッチしていないケースや予想していた工数では不足してしまうケースもあります。
能力・スキルの場合、ミスマッチを防ぐために、プロジェクトが始まる前にパートナー等がプロジェクトマネージャー、メンバーの選定を行いますが、それでも発生してしまうケースがあります。プロジェクトが開始し数週間程が経った頃、クライアントからプロジェクトマネージャーやメンバーについて相談(クレーム)されることもよくあります。
そのピンチヒッターとしてプロジェクトに参画する場合に気を付けたいポイントは初動です。最初のミーティング、最初の成果物、最初の1か月等、全てにおける初回の段階で、相手の期待値を超えることが大切。一度、失ってしまった信頼を取り戻すことはなかなか大変ではありますが、最初の1か月で取り戻せれば、後々とても楽になります。
工数が不足している場合、なぜ不足してしまったかの原因がキーです。
「そもそもプロジェクト開始前にクライアントサイドから聞いていた必要工数が十分なものではなかった」
「工数見積もりを自社で行う際にクライアントから得たインプットが誤っていた」
「プロジェクト参画後に対象の支援スコープが大きく広がった」等はクライアントサイドに原因があると考えられます。
その場合は、正しいインプットをベースに必要な工数を再度見積もりし直し、クライアントへ提示、もしくはスコープ縮小を申し出ます。無理にプロジェクトを続行しても、自チームが苦しみ、良いアウトプットを作ることもできなくなるため、問題が顕著になったタイミングでリスクヘッジの意味も込めて素直に提示することが大切です。
一方、自社の見積もりが甘かった場合は、プロジェクトの大きなマイルストーンに影響が出ない範囲でのアプローチ変更が必要です。あるいは自社内で調整し、リソースを一時的にでも補填してもらいます。
上記同様、無理にプロジェクトを続行しても、自社・クライアント双方が損をしてしまうもの。影響を最小限に留めるべく、嫌なことほどすぐに目を向けて対策を取ることが重要です。
目指す姿の再定義と計画の見直し
①で要因・解決策の検討をした後は、実行に移していきます。クライアントが「欲しい」と思っている情報を提示できるよう、議論を重ねていくのです。リカバリープランとして、次にどういうアウトプットを作成すべきかのイメージのすり合わせを行います。
この時に重要なのは、口頭で完結させるのではなく、イメージをすり合わせた結果をドキュメントとして残しておくこと。
また①と共通する部分ですが、イメージのすり合わせをクライアントの担当者と意思決定者の両方で合意することを必ず行うようにします。この段階を曖昧なすり合わせで終わらせてしまうと、同じトラブルを繰り返してしまうため注意が必要です。
アウトプットイメージをすり合わせたら、作成する計画を立案し、合意します。
「どれだけの期間を取って良いものなのか」
「期間内にアウトプットを作り切るにはどれだけの工数が必要なのか」
「工数をどれ程の金額で捻出できるのか」
を検討・調整します。
前述の通り、影響を最小限に留めるため、追加工数が必要となった場合にもなんとか対応できるように調整することが大切です。
炎上案件では、契約期間を超えたアウトプット作成となることも多く、金額面を含めて自社内での調整も必要なケースが多いです。
都合が良くないことは話したくないものですが、その場しのぎの楽観的な調整をしてしまうと、後でまた大ごとになってしまいます。リカバリープランを作成し、実行可能なものへと調整していきましょう。
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炎上案件ではまず何が本当の問題なのかを特定し、影響が最小限で留まるような解決策を迅速に検討することが必要です。マイナスの局面で、都合の悪いことが多々発生し、なかなか気持ちよく進められないことが多いですが、必要なことを淡々と実施していくことが大切。今回の記事で紹介したポイントを、日々の仕事の中での軌道修正や部下育成に役立てていただけるなら幸いです。
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