ポストコンサルの選択肢の1つとして、ベンチャー・スタートアップへの転職を検討しているという声を多くいただきます。
コンサルの特にマネジャー以上の経験者であれば、事業計画の策定・提案だけではなく、事業運営まで自ら携わりたいと考える方は多いかもしれません。
上場前のベンチャー・スタートアップであれば、自ら戦略を実行していく醍醐味を味わえる環境であり、コンサル出身者にとっては刺激的な職場と言えるでしょう。課題を設定して解決していくスキルをはじめ、コンサル時代に培った能力はベンチャー・スタートアップでも活かすことが可能で、相性の良いキャリアパスと言えそうです。しかし変化が激しい環境において、コンサルの経験に頼りすぎると、想定外の事象に苦労し得るのが特徴であり、入社後にキャッチアップが求められるシーンが多々あります。
今回、コンサルティングファームのマネジャーから、スタートアップの事業法人部に転職された方などの生の声も参考に、コンサルのマネジャー以上の役職から、ベンチャー・スタートアップに転職後に身につけるべきことをご紹介します。ベンチャー・スタートアップのフェーズによっても求められることは異なるため、あくまでも一例としてご覧ください。
【目次】
- 身につけるべきこと①ミッションレベルからの事業計画の立案と実行スキル・新領域への進出計画の提案
- 身につけるべきこと②ロジックに固執せず自身を柔軟に変化させられる適応力
- 身につけるべきこと③ビジョンの変更、場合によっては降格のリスクも含め変化を楽しめるマインド
- コンサルからスタートアップ・ベンチャーへの転職に関するインタビュー
身につけるべきこと①ミッションレベルからの事業計画の立案と実行スキル・新領域への進出計画の提案
経営層に近い目線でミッションレベルから、事業計画を立案・提案するスキル~実行するスキルまでは日々鍛えておくと良いでしょう。
たとえば、ベンチャー・スタートアップのCOOであれば、入社直後から収益の柱とも言える事業を担い、安定して収益を出すための組織づくりに携わる可能性があります。新規事業の立ち上げから安定化まで、一気通貫して取り組む覚悟が必要です。
企業戦略に特化したCSOとして入社しても、スタートアップ・ベンチャーであれば「経営戦略の立案実行を責任者として執行したご経験」というように、実際に執行したかどうかまで採用では問われることもあります。
加えて、新領域への進出計画の提案までできるようになれば理想的と言えそうです。ベンチャー・スタートアップは市場の状況によって事業が変わり得る流動的な環境です。もしファームで1つの案件の責任者として、プロジェクトに腰を据えて取り組んでいたコンサルマネジャーの方であれば、ベンチャー・スタートアップでは案件自体がスピーディーに変わり得る点は意識しておく必要があるかもしれません。
あるベンチャーに転職された元コンサルの方によると、コンサル時代は「1社のお客様」と向き合い、「良質な提案をすること」にこだわっていたそうです。しかしベンチャーに転職後は、「品質は落とさず、コストを抑えて、サービスを成長させていくこと」を意識するようになったようです。
1社にこだわる意識は捨て、事業・サービスを共に「成長させていくこと」を意識しながら、ゼロの状態からでも能動的・主体的に、「総合的な視点で見ると、これは作っておいた方がいい」と提案できるスキルを身につけておくと良さそうです。
身につけるべきこと②ロジックに固執せず自身を柔軟に変化させられる適応力
コンサルは合理的なアイデアを思いつくスキルにたけていますが、ベンチャー・スタートアップではそれに固執することのない柔軟さが求められます。
リソースが乏しい場合、合理的なアイデアで勝負しても、同じアイデアを思いついた他社に劣ってしまうと言われています。コンサル時代にも、「合理的だ」と納得できる提案をしても、実際に行うとなると現場社員の負担が増え、反発を招いたケースもあったかもしれません。
ベンチャー・スタートアップの場合、サービス品質向上のためPDCAを素早く回していくことを求められます。一方で、人員が限られている分、じっくりと業務を見直す機会が少ないケースもあり得るのです。コンサル時代に業務改善に力を入れてきたマネジャーの方は、目まぐるしく課題が変わる現場で、ロジカルに業務改善について意見を述べてしまうと、よく思われない可能性もあることを考慮する必要がありそうです。
ベンチャー・スタートアップでは自身が提案だけでなく、実行を担う機会が多くなり、その負担を身に染みて感じることもあり得ます。ロジックだけで勝負しようとすると、計画が頓挫することを痛感すると思います。そのため経営層と現場メンバーの意見をまとめ、実行が滞った場合は原因を見極めて、最悪の場合は立案したKPI/KGIも柔軟に設定し直す覚悟が必要です。
コンサルを経験後、あるスタートアップの代表となった方は、コンサル出身の社員に対して、自分自身を変えていける「適応力」に期待しているそうです。ベンチャー・スタートアップでは昨日と今日で、自分の役割が異なることもあり得ます。現場に赴く際に、単に様子を知るだけでは十分とは言えません。必要に応じて、先ほどまでとは違う役割を担うつもりで自ら手を動かすほどの積極性・柔軟性がある人材は重宝される可能性があるでしょう。
余談ですが、上場後など、フェーズによっては合理的な思考も重視されることがあります。コンサル経験があり、東証一部に上場したスタートアップ企業の事業企画部門に転職された方によると、「組織拡大の成長痛にきちんと向き合い、着実に課題解決していく」ことが重要ということでした。そのため「高いレベルで客観的なインサイト」を提供できるコンサルタントを求めているということです。
上場前の企業への転職を想定されている方も、ゆくゆくフェーズによっては合理的な思考が求められるケースもあることを、念頭に置いておくと良さそうです。入社される企業が現在どのフェーズにあり、直近で何を求めているのか把握することが大切と言えます。
身につけるべきこと③ビジョンの変更、場合によっては降格のリスクも含め変化を楽しめるマインド
企業のビジョンに感じていた魅力が消え得る覚悟をした上で、「変化するごとに事業を成長させていこう」という前向きなマインドを持つことが求められます。
変化が激しいベンチャー・スタートアップでは、入社前に惹かれた事業や組織、人員、場合によってはビジョンまでもが一新されてしまう可能性があります。少なくとも転職活動の時点で魅力を感じた文化・雰囲気は、100%変わるという意見もあります。
ただ、転職相談される方々の声を聞いていると、「ビジョンに惹かれた」という入社理由が非常に多いと感じます。
特にマネジャー以上の経験者であれば「ビジョンに共感した企業の責任者として、達成に向けて事業へディープに携わりたい」とお考えになるのは自然なことではあります。しかしビジョンだけをよりどころにしていると、ビジョンが変わった場合に目的やモチベーションを失い、転職を繰り返すことになりかねません。
コンサル時代に自社の「ビジョンの変更」を覚悟していたマネジャーの方は多くはないでしょう。自社ファーム・クライアントを問わず、ビジョンに魅了されて、それをモチベーションにしていた方もいらっしゃるかもしれません。しかし、転職後もビジョンを強く意識して、それを軸に仕事をしすぎると、いざ変化した際にはショックも大きいものとなり得るのです。
そもそもベンチャー・スタートアップのビジョンが変化することには、マーケット選びに失敗し、ピボット(事業転換)せざるを得なくなるという背景があります。ステークホルダーに約束している手前、何としてでも会社の価値を上げなければならない局面では、いかに創業者の思いがこもったビジョンでも固執するわけにはいきません。新たな市場で心機一転、巻き返す必要があるのです。
ベンチャー・スタートアップでは、会社が変化するスピードと同等もしくは同様のスピードで自身も変わることが求められています。全員にフィットする訳ではありませんが、状況の変化を好み楽しめる人にとっては、最適な場となります。
いずれにせよ、転職活動の時点では、事業内容や業務内容など、複数の要素に魅力を感じられるかを判断軸にしつつ、晴れて転職後はすべてが一新されても成長に向けて貢献できる精神力を鍛えていくことが大切です。
最悪の場合、職種や役職も入社後に一新されてしまう可能性があり、状況によっては降格もあり得ます。新メンバーが次々入ってくる結果、新入社員の業務と重なってしまい、自身のミッションや業務領域が変わるケースもあるでしょう。
このようなリスクも含めて、刺激的な環境を成長の場として前向きに捉えられる強い精神力こそが、転職後に特にキャッチアップすべきポイントと言えるかもしれません。
コンサルからスタートアップ・ベンチャーへの転職に関するインタビュー
弊社では過去にコンサルからベンチャー・スタートアップに転職された方々のインタビューを行ってきました。ぜひご自身のキャリアの参考にしてみてください。
株式会社アカツキ 事業企画部門Think@ (シンカ)山村龍太様インタビュー/元戦略コンサルタントから見た「ゲームビジネスの魅力」とは?
https://www.axc.ne.jp/media/companyinterview/akatsuki_thinka
ファストドクター株式会社 代表取締役 水野敬志様インタビュー/コンサル出身CEOが目指す「新しい医療インフラ」の姿と、事業の魅力に迫る
https://www.axc.ne.jp/media/companyinterview/fastdoctor
株式会社メドレー インタビュー/コンサル出身の役員が率いるコーポレートITの特徴と、求める人物像に迫る
https://www.axc.ne.jp/media/companyinterview/medley_corporateit
大手コンサルファームからビザスクへ入社後、チームリーダーへ昇格。元コンサルが同社で活躍できる理由とは?
https://www.axc.ne.jp/media/companyinterview/visasq_interview
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経営層の目線での事業計画策定から実行までを担うスキルに加え、柔軟性や変化をポジティブに受け入れるマインドは、ベンチャー・スタートアップに転職する上で不可欠と言えます。
コンサル時代のロジカルシンキングだけにこだわるのではなく、日々目の当たりにする新しい刺激を積極的にインプットしていくマインドを持ち続けることが、長期的に活躍するためのポイントと言えるでしょう。
今回の記事では、コンサルのマネジャー以上がベンチャー・スタートアップに転職後に身につけるべきことについてお伝えしました。キャリアでお悩みの方は、ぜひアクシスコンサルティングにご相談ください。
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