コンサルタントは特定の商品を持たず、自分たちが調査・分析した結果と、そこから導き出される示唆とクライアントの進むべき方向性を示すサービスを提供しています。
提示方法としては、クライアントの理解・納得を得るための資料を作成して伝えるケースがほとんどです。そのため、コンサルタントは資料1枚1枚にとことんこだわり、クライアントに満足いただける資料を作成し、納品します。
では、そんなコンサルタントが資料作成時に重要視しているポイントは、どのようなものなのでしょうか。
今回の記事では、実際にコンサルティングファームで作成された資料を具体例としてご紹介しながら、そのポイントをお伝えします。
【目次】
資料作成のポイント①ページの標準化・統一化
<基本的なページ構成の設定>
大抵の場合、資料作成はチームで行います。各メンバーが作成したページを1つのパッケージとして統合します。その際、それぞれのページ構成がバラバラだと、受け手にとっては非常に読みづらい資料となってしまいます。
そのため、最初にページの基本構成を定めます。表紙や目次、本編で基本構成は異なりますが、例えば本編ですと下記図の様に定めることがコンサルティング業界では多いです。
この基本構成に沿って作成された実際のスライド例がこちらです。
引用元:KPMGコンサルティング株式会社 「令和元年度商取引・サービス環境の適正化に係る事業(貿易手続データの金融・保険分野等への利活用に関する調査)貿易データ利活用調査報告書」
https://www.meti.go.jp/meti_lib/report/2019FY/000052.pdf
出典に関する情報は当ページにはありませんが(引用した情報がないため)、それ以外の要素は基本構成例の通りとなっています。
また、別パターンとして、タイトルとメッセージが一体となった資料を基本構成とする場合もあります。例えば、マッキンゼーやBCGの資料に多く見られるように思います。
下記例はBCGの一般公開資料です。
引用元:株式会社ボストンコンサルティンググループ 「平成30年度商取引・サービス環境の適性化に係る事業 ソーシャルビジネスに係る市場調査: 最終報告書」
https://www.meti.go.jp/meti_lib/report/H30FY/000141.pdf?
<体裁のルール設定>
基本的なページ構成を設定する目的と同様に、資料全体で統一感を持たせるために、例えば、活用するフォント種類、フォントサイズ、オブジェクト(図形)の色等を定めます。
フォント種類
コンサルティングファームでよく活用されるものとしては、MS Pゴシック、Meiryo UIまたはメイリオ等があります。最近ですと、游ゴシックという書体も見ることがあります。
フォントサイズ
タイトルで20~24pt、メッセージで16~20pt、ボディで12~16pt等、ページ構成の中でも使い分けて設定しているケースが多いです。
オブジェクト(図形)の色
自社またはクライアントのコーポレートカラーに合わせて設定することが多いです。そして、同系色のグラデーションを活用し、バリエーションを揃えて、重要~非重要、情報の意味合い分けを行います。
例えば、BCGが作成した下記例ではフォント種類はMeiryo UI、フォントサイズの使い分け、オブジェクトは自社コーポレートカラーの緑を基調としてグラデーションを活用しています。
引用元:株式会社ボストンコンサルティンググループ 「平成30年度商取引・サービス環境の適性化に係る事業 ソーシャルビジネスに係る市場調査: 最終報告書」
https://www.meti.go.jp/meti_lib/report/H30FY/000141.pdf?
資料作成のポイント②伝わりやすいメッセージの作成
資料作成時の最重要パートと言っても過言ではありません。その資料1ページで何を伝えたいかを明確にする必要があります。そのメッセージに基づき、必要な情報をボディ等で記載/表現します。
では、伝わりやすいメッセージを作成するには、どのようなことを意識すべきなのでしょうか。
主には3つ挙げられます。
主張が明確
例えば、分析した結果を伝えたいページの場合、分析結果として何を言いたいのかを明確に記載する必要があります。「〇〇〇は以下の通り」等を目にするケースが多いですが、それではメッセージだけで何が言いたいのかわかりません。
また、「〇〇〇の分析をした」等の作業プロセスはメッセージにはなりえません。
分析から得た示唆をメッセージで表現することで、受け手に簡単に伝わりやすくなります。
文章が短くて・シンプル
長い文章を書いていると、それっぽく見えますし、書き手の満足度は高くなるかもしれません。ですが、それでは受け手が読む気をなくしてしまいますし、理解するまでに時間がかかってしまいます。
そのため、メッセージで用いる文言は誰にでもわかるような簡単な表現で、長さも短く凝縮すべきです。例えば、30~60文字程度でおさめるとスッキリします。
メッセージはボディのサマリ
メッセージは、ボディで記載している情報の要約であることが重要です。ボディの内容と一致していないと受け手を混乱させてしまいます。分析結果を伝える際には、分析の内容詳細がボディに書かれているべきです。
例えば、BCGが作成した分析結果を示す下記ページは、伝わりやすいメッセージの要素が詰まっています。
引用元:株式会社ボストンコンサルティンググループ 「平成30年度商取引・サービス環境の適性化に係る事業 ソーシャルビジネスに係る市場調査: 最終報告書」
https://www.meti.go.jp/meti_lib/report/H30FY/000141.pdf?
サービス効率化のニーズが高まっていることをメッセージで伝えていますし、文字数は42文字、メッセージはボディのサマリになっています。
資料作成のポイント③わかりやすいページ構成
伝えたいメッセージが決まったら、それを詳細説明/立証するボディを作成します。この際に重要なことは、記載する内容・意味合いに沿ったチャートを選択することです。そして、見やすいデザインにすることです。
<内容・意味合いに沿ったチャート選択>
いくつかの例に沿って正しいチャート選択のコツをお伝えします。
例:トレンドの変化を伝えたい場合
例えば、年別のAI実用化の流れを記載したい場合にはどのようなチャートが適切でしょうか。
■ 作成例
引用元:PwCコンサルティング合同会社 「農地利用状況調査の効率化ソリューションの実証分析調査委託事業(農地パトロール)最終報告書」
https://www.maff.go.jp/j/budget/yosan_kansi/sikkou/tokutei_keihi/seika_R2/ippan/attach/pdf/R2_ippan-7.pdf
横軸に年を置き、縦軸に記載したい内容のカテゴリ等の軸を設定しています。人は資料を見るときには左から右へ視線を動かしますが、本資料では自然と情報が時系列に入ってくる構成としており、非常にわかりやすいです。また、イメージも活用することで文字だけの資料よりも視覚的に印象に残りやすくなっています。
例:市場規模と構成要素を示したい場合
例えば高齢者介護の市場規模と構成要素を伝えたい場合、どのような資料構成がよいでしょうか。
■ 作成例
引用元:マッキンゼー・アンド・カンパニー 「諸外国における介護人材確保の動向確保に向けて」
https://www.mhlw.go.jp/file/05-Shingikai-12201000-Shakaiengokyokushougaihokenfukushibu-Kikakuka/sorupi5.pdf
先程、人は左から右へ視線を動かすと記載しましたが、上から下にも同様に視線を配り、情報を理解します。その流れに沿って、まずは全体の市場規模(今回は総人口)を示し、その構成要素をウォーターフォールチャートで示しています。
また、グラフが並んでいるものの、情報を詰め込みすぎておらず、資料中に空白がしっかり取られています。紙面全体に情報があると、受け手は圧倒されてしまい読む気をなくしてしまいますので注意が必要なポイントです。
例:競合他社を紹介したい場合
世界規模で競合企業が台頭していることを示したい場合は、どのようなイメージがよいでしょうか。
■ 作成例
引用元:マッキンゼー・アンド・カンパニー 「令和2年度戦略的基盤技術高度化・連携支援事業(中小企業のAI活用促進に関する調査事業)最終報告書」
https://www.meti.go.jp/meti_lib/report/2020FY/000245.pdf
世界地図をベースに、各エリアの主要企業の名前を記載しています。これによって詳細な文章を記載せずとも、ある程度のイメージを持つことができます。各企業が本社を置く国々の国旗を企業名の近くに記載するという案もよいかもしれません。
例:現状と目指す姿の対比を示したい場合
AI活用が可能となる社会に向けて、現状とその問題点、目指す姿とポイントを示したい場合、どのようなデザインがよいでしょうか。
■ 作成例
引用元:マッキンゼー・アンド・カンパニー 「令和2年度戦略的基盤技術高度化・連携支援事業(中小企業のAI活用促進に関する調査事業)最終報告書」
https://www.meti.go.jp/meti_lib/report/2020FY/000245.pdf
左側に現状、右側に目指す姿が書かれている構成になっています。
現状には文章のみで表現すると複雑かつ文章量が多くなってしまうところ、相関図を用いて誰と誰の間にどんな問題が起きているのかがわかりやすく書かれています。
目指す姿にはそれぞれのプレーヤーが相互に連携する仕組みとなっていることがイメージを活用することでわかりやすく表現されています。
例:企業の比較結果を示したい場合
あるサービスを提供している会社同士での取組みを比較したい場合には、どのようなチャートが適切でしょうか。
■ 作成例
引用元:KPMGコンサルティング株式会社 「令和元年度商取引・サービス環境の適正化に係る事業(貿易手続データの金融・保険分野等への利活用に関する調査)貿易データ利活用調査報告書」
https://www.meti.go.jp/meti_lib/report/2019FY/000052.pdf
横軸に企業、縦軸に比較項目が並んでいます。比較したい項目の情報が横一列に並んでおり、各企業の取組みを同じ目線で見ることができるため、比較・検討しやすいデザインになっています。
資料全体の構成・統一感、伝えるべきメッセージ、わかりやすいページ構成がいかに大切かを本稿では具体例を用いてご紹介しました。実際に頭では理解していても、いざアウトプットする際には、なかなか実践するのは難しいものです。ポイントと具体例を頭に入れておくことでまずは真似る、そしてカスタマイズする、という手順を踏みやすくなります。様々な資料を見てインプットし、実際に自分がアウトプットするときのヒントとして活用することが成長の近道になります。本稿でご紹介したポイントが参考となり、資料作成の一助となりましたら幸いです。
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今回の記事では、実際にコンサルティングファームで作成された資料を具体例としてご紹介しながら、そのポイントをお伝えしました。
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