コンサルティングファームのマネージャーの責務に部下の育成があります。育成がうまい人は、会社からも部下からも信頼され、各方面から引く手数多の人材であることが多いです。部下の育成方針は人それぞれですが、育成に成功している人、失敗している人が存在します。なぜ成功/失敗しているかの原因を考えてみると、いくつかのポイントがあることに気付くはずです。
そのポイントは何なのか。今回の記事では、メンバーの育成に成功/失敗しているマネージャーの共通点について、実際にマネージャーとしてご活躍の方々からお聞きした情報も参考にご紹介します。様々な意見があると思われますが、一例としてご覧ください。
※成長とは自分の能力を上げること、そして仕事で成果をより出せるようになることの意とします
【目次】
- 部下のモチベーション向上のため「プロジェクトをやる意義」を明確にしている
- 部下への「期待値」を明確化している
- 裁量を持たせ、「主体的なアクション」を促している
- 心理的安全性を担保することで、「アクションを積極化」させている
- 適切なフィードバックをすることで「成長を促進」させている
- 「気を張って頑張ればなんとか時間内に終わるレベル」の仕事量を任せている
部下のモチベーション向上のため「プロジェクトをやる意義」を明確にしている
まずは一緒に働く部下にプロジェクトに対するモチベーションを持ってもらうことが大切です。そのために、このプロジェクトをやる意義、その中で、今このタスクを実行する意義を明確化し、部下と共有することが必要です。人は意義を感じないものに対して、一過性のやる気を出すことはできても、それを保つことは難しいものです。モチベーションがある/ないでは、部下が仕事に取り組む姿勢(積極的/消極的)は全く異なり、それが部下自身の成長にもダイレクトに影響します。仕事の意義・目的を伝え、部下がそれを理解し、自ら考えて行動していく過程があってこそ成長できます。
部下育成が下手なマネージャーは、仕事の意義・目的を部下に伝えていないケースが多いです。例えば、タスクの内容や期限など、仕事をこなすうえで必要となる事務的な最低限の情報しか伝えていない場合があります。このような環境下では、部下は自分の頭で深く仕事について考えられず、機械的な作業しか実行できません。仕事をこなすためのスキル(例えば、Excelの関数やマクロなど)は身に付くかもしれませんが、「今なにが必要かを自ら考え、具体化し、行動に移す」などの将来的にプロジェクトマネージャーとして求められるスキルを身に付けられなくなってしまいます。
部下の心に火を点けて、モチベートできるマネージャーこそが部下を能動的に動かし、力を発揮させられるのです。
部下への「期待値」を明確化している
①に関連する話ではありますが、マネージャーは部下に対して、このプロジェクトでどのような役割を担ってもらい、どのような期待をしているかを明確かつ具体的に伝える必要があります。例えば、大規模なプロジェクトで複数領域の業務改革を行っているケースにおいて、1領域の業務改革のリーダーには期限内に顧客の期待値を満たす改革を完遂することを役割として担ってもらうなどが挙げられます。加えて「部下4名を付けるため、そのメンバーのマネジメント・育成、1領域の計画策定~デリバリー・管理を経験することでプロジェクトマネージャーに向けた基礎を培って欲しい」など将来のキャリアも見据えた期待を伝えることでも部下の成長に対するモチベーションを高めることができます。
一方、育成が苦手なマネージャーは①同様に、部下の将来的なキャリアを含めた役割・期待値の設定を怠っているケースが多いです。もちろん仕事では、目の前の業務をしっかりこなすことは重要で、それが義務であることは事実です。しかし部下も人であるため、モチベーションと感情がしごと大きく影響します。モチベーション高く、ポジティブな感情で仕事に臨むことができれば成長カーブが急傾斜となることは言うまでもありません。上司がうまくコントロールがうまくできれば、部下育成の成功に大きく近づくことができます。
裁量を持たせ、「主体的なアクション」を促している
②のように役割・期待値を設定したら、最初の立ち上がりや最後のクロージング、途中のマイルストン(経営層への報告会など)では、具体的な方法や成果物の確認を行うことが必要ですが、基本的には部下に裁量を持ってもらい、主体的にアクションしてもらうことで部下の成長を早めることができます。部下自身も、自分に任されていると自覚することで強い責任感を持つことができます。そして自然と、成果物に対するこだわりやクライアントへの報告に向けた準備の質も上がってきます。
一方、マイクロマネジメントをしてしまうマネージャーは部下の成長を妨げてしまうケースが非常に多いです。
マイクロマネジメントは部下の仕事に逐一口を挟む管理方法のことです。
・部下に任せることが不安で、成果物すべてを上から下までレビューしてしまう
・数時間置きには進捗報告を求めてしまう
などが代表的なケースですが、これでは部下はただの作業者と化して、自ら深く考えることをやめてしまいます。
そのマネージャーとうまくやる術は身に付くかもしれませんが、いざ独り立ちした時には、自分の頭で考えることをやめてしまったが故に、あまり経験を活かすことができないケースも実際に存在します。
そのため、マイクロマネジメントは避けて、裁量を持って主体的に進めてもらうことが部下育成には必要です。
心理的安全性を担保することで、「アクションを積極化」させている
心理的安全性とは、自分の居場所があるということを認識している状態です。言い換えると「自分はこのプロジェクトに貢献できている」という自信と自己肯定感がある状態のことです。心理的安全性を担保してあげることで、部下は安心して仕事をすることができますし、アクションも積極的に取ってくれるようになります。これはプロジェクトマネージャーが日々のコミュニケーションやフィードバックの時に、部下に明確に伝えることで担保できます。プロジェクトに貢献してくれている部分を具体的に挙げて、部下を認めてあげることが重要です。
心理的安全性が担保できていない場合では、部下は毎日が不安で、プロジェクト内のコミュニケーションにおいても萎縮してしまいます。そうすると、アクションもどんどん消極的になってしまいますし、ミスも増えます。最悪なケースとして、体調を崩してしまうことやプロジェクトの離任希望を出すという実例も多々あります。そのような状態で部下が成長していくはずがなく、早急な改善策を取る必要があります。
適切なフィードバックをすることで「成長を促進」させている
部下の成長には常に一歩先をいくためのアドバイスが必要です。日々、仕事に取り組んでいる中で、自分が正しいと思っていても、視座や視点を変えてみれば、それは間違っていたり、足りていなかったりすることがあります。その点について、上司がしっかりとフィードバックすることで部下の成長を促してあげられます。
フィードバックのポイントは主に2つあります。1つは、フィードバックのタイミングはできるだけ早くすること、もう1つは何がダメでどう改善すべきかを具体的に伝えることです。例えば、会議でのファシリテーションの仕方に関するフィードバックは会議直後がベストです。直後であれば、具体的に何がダメだったのかの記憶が鮮明ですし、なぜその行為に至ったのかという思考も残っています。また、指摘の仕方としては、「もう少し空気を読みなさい」などという曖昧なものでなく、「クライアントの表情を見て、賛成なのか、反対なのかを読み取りなさい。反対でありそうなら、何が引っかかっているかを解明するために簡単な質問をいくつか投げてみなさい」というように、次にどうすればよいかまで具体的な行動で示すことが大切です。
部下の育成がうまくいかない人は、フィードバックの時期を遅めにしがち、もしくはフィードバックをしないという傾向があります。
「部下との関係悪化を恐れている」
「何をフィードバックしたらいいかわからない」
などが理由として挙げられますが、優れた上司であれば、部下の将来のキャリアのために必ずフィードバックをしてあげるはず。
フィードバックをするためには部下の日々の動きや考え方を見る必要があります。
常には難しくとも、要所ではしっかり見てあげることが大切です。
「気を張って頑張ればなんとか時間内に終わるレベル」の仕事量を任せている
過度な残業はもちろんNGですが、部下に任せる仕事量は、「気を張って頑張ればなんとか時間内に終わるレベル」が最適です。ちょっと背伸びをすれば届く目標設定をすることが、一番の成長に繋がります。途方もない目標であれば心が折れてしまいますし、簡単な目標では手を抜いてしまいます。特に、あまりに余裕を持たせてしまうような仕事の量・レベルだと、部下は成長実感を得られなくなります。その結果、よくあるパターンとしては、転職サイトに登録し、よりレベルが上の会社に移ろうとします。向上心や好奇心が強い人にはよく見られる傾向です。そのため、上司は部下のレベルやこなしている仕事量を的確に把握し、部下が成長するための仕事を用意してあげることが必要です。
部下のタスクマネジメントがうまくできていない人は、遠くない将来、部下の離反や反逆にあってしまうケースが想定されます。
部下が成長するかどうかは上司が誰であるかに大きく依存します。セルフモチベートができる部下であっても、有能な上司が付くことでその成長カーブはより急傾斜にできます。
今回ご紹介したポイントを、日々の仕事の中での部下育成に役立てて頂けるなら幸いです。
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シニコンからマネージャーに昇格して初めて感じる悩みと解決策
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今回は、コンサルタントのマネージャーで「メンバーの育成」に成功/失敗している方々の共通点についてお伝えしました。
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