コンサルティングファームの仕事に興味を持ち、転職を考えた場合も、クライアントが何を目的にコンサルタントに仕事を頼むのか、あるいはどのようにコンサルタントがその期待に応えているのか、イメージが持てないという方は多いと思います。
クライアントワーク中心のコンサルティングファームにおいて、
「コンサルタント側の業務の目的や業務内容は?」
「クライアントがコンサルタントに依頼する目的は?」
「クライアントの期待に応えるために、どのような心構えが必要?」
といった疑問にお答えしていきます。
自らも未経験から大手総合コンサルティングファームへ転職。コンサルティングファームとポストコンサルの転職を支援するエージェントで勤務した経験を持つ筆者が、コンサルタントとクライアント、それぞれの目的・期待について、具体例を交えて解説します。
【目次】
コンサルタントの目的・仕事内容を解説
コンサルタントの目的とは
コンサルタントの仕事の目的とは、クライアントが抱える経営課題を解決し、クライアントの利益や企業価値を増大させることです。
そのために、クライアントのパートナーとして対話を重ね、経営課題を特定した上で解決策を見いだし、その実行を支援することが求められます。
その具体的な業務内容についても見ていきましょう。
コンサルタントの業務内容
コンサルタントは特定の商品・サービスを持たないのが特徴で、クライアントの課題解決自体が業務です。
業務内容の詳細は、コンサルタントの種類によって異なるため、いくつか具体例を説明します。
コンサルタントと言えば、まず思い浮かべる人が多いと思われるのが、戦略コンサルタントです。クライアントの経営課題の解決に向けた戦略の策定とアドバイスを行います。
テーマとして代表的なものは、長期成長戦略・新規事業戦略・人事戦略・M&A戦略などが挙げられます。
次に業務コンサルタントは、文字通りクライアントの業務変革が任務で、多くの場合IT技術を活用した変革を行います。
テーマとしては、オペレーション改善・プロセス改革・システム導入が該当し、その領域も会計から組織人事・SCM・CRMと幅広く実施されており、経営課題の解決策の実行まで踏み込んだ支援をしています。
また、事業再生コンサルタントは、業績悪化で経営の危機に陥っているクライアントの再生のため、経営改革・業務改革を行います。
その他にも、人事制度・人材開発をテーマに課題解決を行う人事・組織コンサルタントや、財務関連テーマについてアドバイザリー・コンサルティングを行う財務・会計コンサルタントなど、幅広い業務内容でコンサルタントは活躍しています。
目的別の代表的なプロジェクト例
企業価値・利益増大が目的のプロジェクト例
利益を増大させることで、企業価値の向上につなげるプロジェクトとしては、新規事業開発や海外進出支援が分かりやすい事例です。
既存の事業では市場や売上を拡大していくことが難しくなってしまった、あるいは今後難しくなることが予測される場合に、新しい事業を作り上げて新たな顧客・売上を獲得することを目指すのが新規事業開発です。一方、既存の商品・サービスをベースに海外に事業を横展開して、海外での顧客・売上を獲得することを目指すのが海外進出です。
筆者が経験した新規事業開発支援の多くは、クライアント企業の技術的な強みを利用して、新たな製品・サービスを開発するプロセスの探索のフェーズから伴走するというものでした。
新規事業開発・海外進出ともに、多くの資源(資金・人材など)を投資することになりますが、投資を回収できない可能性も大いにあり、その推進にはプロセスや規制に関する知識、人脈など様々なことが求められるため、コンサルティングファームに依頼することが多くあります。
コスト削減による利益の拡大が目的のプロジェクト事例
コストの削減による利益の拡大につなげるプロジェクトとして、業務プロセスの変革が分かりやすい事例です。
定型で発生する業務を効率化し、人件費などのかかるコストを減少させるというものですが、昨今はERP・CRMやRPAといったIT技術を活用して実施するケースが増えています。
例えば金融機関で行われているRPA導入の取り組みを紹介すると、紙帳票のデータ化、複数のデータベースへのアクセスとデータ移行・突合業務の自動化、経費精算業務といった業務の効率化に成功しています。
早期からRPAに取り組んできた三菱UFJファイナンシャルグループは、約20の業務でRPAを導入し、既に2万時間分の作業を自動化・効率化しています。
筆者がクライアントに依頼され従事したCRMシステム(顧客管理システム)導入では、今までそれぞれの担当者が別々のエクセルで管理していた顧客に関する情報、商談や購買の履歴をシステムで一元化することで、無駄な顧客へのアプローチ・人件費などが削減され、かつ顧客へのより効果的なアプローチが可能になりました。
上記のような企業変革を可能にするための組織・人材開発のプロジェクト事例
上記のように、企業における経営課題を発見し、解決にむけて企業変革ができる人材を育てる、あるいはそういった人材が育つ環境を作る組織開発を行うプロジェクトも存在します。
筆者が経験したプロジェクトの例としては、既存のビジネスのアセットを活用した新しい事業の開発を行うため、経営幹部や経営幹部候補者を集め、ワークショップや研修を通じて事業立案のプロセスを教えるものがありました。実際に事業案を提出させてそのブラッシュアップを行い、事業開発に伴走することを、複数のクライアントを対象に実施しました。
クライアントがコンサルタントに依頼する目的
ヒト・モノ・カネに関する経営課題を解決してほしい
クライアントがコンサルタントへの依頼で最も期待することは、クライアント企業が抱える経営課題の解決です。
多くの場合、深刻な経営課題ほど、ヒト・モノ・カネなど経営資本の複数の領域の課題が関係し、その分析・解決には高度な課題解決スキルが求められるため、課題解決のプロ集団であるコンサルティングファームに頼るというのが、クライアントの特に大きい動機です。
また昨今のコンサルティングファームではIT技術を活用した解決策の提案・実施も盛んに行われているため、自社では獲得の難しい技術を、コンサルティングファームのサポートのもと導入し、短期間で企業価値の向上や競合優位性の獲得を期待している場合も多くあります。
社内の人員では難易度・工数的に対処できないことを助けてほしい
前述の期待と関連し、クライアント企業が抱える経営課題を解決しようとしたときに、解決の難易度やかかる人員工数を考えると、自力での解決が困難だと判断することがあります。その際、手助けを期待するのが、次に大きい動機です。
例えば、既存事業に関する課題を分析し、今後の市場の状況やトレンドといった事業環境をリサーチ。精度高く今後の事業戦略を立案する業務をクライアントが「自社の社員に期待する」、しかも「定型業務を実施しながら短期で実施する」ことは、なかなか困難であると想像できると思います。
コンサルタントをアウトソーシング機能と捉え、戦略立案のプロに精度高く作成してもらえば、結果的に効率的な課題解決につながり得ます。
また必要なタイミングでコンサルタントの力を借りることで、人件費の高い専門家を雇用する必要もなくなります。
このように、一時的に人員が必要な業務や、難易度が高く社内の人員では質の高い結果が得られにくい業務について、コンサルタントを活用して効率的・効果的に結果につなげることが期待されます。
クライアントがコンサルタントを頼るときの本音・期待していること
第三者として客観的に問題を指摘・解決してほしい
クライアントが社内の課題を解決しようとする場合に、その企業の文化や暗黙の了解、業界特有の価値観があり、客観的に状況や課題を見ることが難しくなることがあります。
クライアントからすると「コンサルタントに、客観的に事実を捉え、状況を分析し、課題や解決の道筋を提示してほしい」というのが本音です。
コンサルタントが提示することが予測される課題・解決策を、社内で既に導いているにもかかわらず、反対勢力がいる、または保守的風土で社内からの説得では動かないために、コンサルティングファームに客観的な視点で箔付けしてもらった上で進めたいということもあります。
また筆者が経験したケースでは、社内の人間関係(他部門のことに口を出せない、権力を持っている人に対して提案ができない)のために社内の人間だけでは課題解決が難しく、そのような関係性の制限・しがらみのないコンサルタントに客観的な指摘をしてほしいという案件もありました。
課題の本質や、現在行っていることの問題点に現場は気づいているにもかかわらず、管理職や経営層に意見することができない、あるいは提言をしても聞き入れてもらえないために口を閉ざしている状況だったのです。そこでコンサルタントがヒアリングをしたところ、課題や状況を率直に伝えてもらうことができたため、現場の状況・課題と改善方法を直接経営者に提言し、現場の改善につなげることができました。
このように社内のパワーバランスや利害関係のために、社内の人員では解決が難しいことについて、コンサルタントが客観的に解決に向けて働きかけることは効果的であると言えます。
課題解決のプロセスを学び、自社と社員の成長につなげたい
コンサルタントが課題解決の実行支援を行う場合、クライアントの関係者と協働で、場合によっては常駐して机を並べ、頻繁に打ち合わせをしながら進めることが多くあります。
そのため、クライアント企業の担当者はコンサルタントから、どのように課題を捉え仮説を考えるのか、プロジェクトの進捗を行うのかなど、様々なことを学ぶことが可能です。
コンサルタントが持っているスキルや考え方、集中して期限内に人を巻き込んで成果につなげる実行力などを、一緒に走りながら学べるため、この教育効果を期待して依頼する側面もあるのです。
未経験者がコンサルになる上で必要な心構えと価値観
今までの常識・やり方を捨て、コンサルタントとして価値が出せる能力を身に着ける
未経験からコンサルタントになる上で重要な心構えは、今までの常識・やり方や成功体験を捨て、コンサルタントになる上で必要な価値が出せるための能力・スキルをゼロから身に着けることです。
最近ではアンラーンと言われることが増えてきましたが、過去の経験に基づくプロセス・思考の癖・価値観を破棄してリセットし、新たな学び・成長ができる土台を整えることで、効率的に成長することが可能になります。
特に事業会社における過去の成功パターンと、クライアント企業に入り込み課題解決という形で価値を出すコンサルティングファームにおける成功パターンは共通するものもありますが、異なる場合も多くあります。
過去の経験に基づくやり方を捨てられず、なかなかコンサルタントとしてパフォーマンスをあげられない方を、筆者は度々見かけてきました。
筆者自身も事業会社からコンサルティングファームに転職した直後は「私はコンサルタントとして、こんなに何もできない人間なのか」と日々挫折感にさいなまれながら、メールの打ち方・資料の作り方など、全ての項目について学びなおしをしました。
ご自身のやり方や成功体験を手放すというのは、簡単なことではありませんし、癖になっているものは日々意識をした上で、思考と行動を変える必要があるため、コンサルタントになる前から心積もりしておくといいかと思います。
締め切りまでに、自分で何とかする覚悟を持つ
コンサルティングファームにおける業務は、プロジェクトワークが基本になります。
プロジェクトを管理するためには、大きな締め切り(例えばプロジェクト自体の納期や、プロジェクトオーナーへの成果報告の日程)から逆算して、細かいマイルストーンを複数設ける必要があります。
例えば、毎週のクライアント担当者への進捗報告、関係者を巻き込んで行われるワークショップ、社内のプロジェクトリード(責任者)との資料確認会議などが挙げられます。
その都度、関係者と対話したり、遅れている作業の催促やサポートしたり、自分で手を動かしたりしながら、期日までに「自力で何とかする」ことが求められます。
多くの場合は、クライアントに説明・提案するための資料作成において、関係者たちの状況を理解し、社内のフィードバックを反映して、クライアントが納得するもの・価値があると認められるものを作成することが期待されます。
一流のコンサルタントが作る資料にするためには、膨大な努力と時間が必要で、かつ慣れや知見の蓄積によって磨かれるため、一朝一夕でどうにかなるものではありません。それでも都度諦めずに、自分で何とかするというマインドセットを持つことが最初の一歩です。
クライアントへの価値を出すことに集中する
コンサルティングファームに入ると、自分自身がどれだけ価値を出せたか、を問われることが多々あります。
例えば、クライアントとの打ち合わせの際に何も発言できなかったり、作成した資料では貢献できなかったりした時に「今日の打ち合わせで何か価値出せた?」とマネージャーから釘を刺されることは、コンサルタントであれば誰しもが経験するはずです。
またコンサルタントとしてプロジェクトに入ると、どのくらいの金額を人件費としてクライアントが支払っているかを知ることになります。
当然、クライアントも「この人にこれだけの経費を支払っている」と思いながら接してくるため、コンサルタントは常に「人件費に見合うだけの価値、場合によっては金額以上の価値をクライアントに提供しなければならない」という責任感を持ちながら、クライアントへの価値提供に集中して業務にあたります。
先述したことにつながりますが、クライアントへの価値が全てであり、コンサルタントそれぞれの過去の成功体験やプライドに配慮してもらう余地はないのです。
最終的なプロジェクトの成果だけでなく、日々のコミュニケーションや定例の打ち合わせの中でも、クライアント側の担当者に「あなたたちに相談してよかった」と思ってもらえるよう、貢献する・価値を出すというマインドセットを持つことがとても重要です。
社内外問わず、ミーティングには仮説やアジェンダを用意し、貢献する意識を持つ
最後に、少し細かい心構えになりますが、コンサルティングファームにおいて、自分で招集した会議やクライアントとの打ち合わせに手ぶらで来るのはご法度と言えます。
社内の会議であっても、何のための会議か、この場で何を決めたいのか、その決断をするために、どんな論点があり、その論点に対してどのような仮説を持っているのか、という準備をして初めて会議ができます。
クライアントに対しても同様で、たとえ30分の定例会議であっても、その時までに議題にしておいた方が良いこと、進捗を確認したいことなどを整理し、アジェンダにしておくことがマナーと言えます。
このような議題設定ができ、社内外の関係者との会議の進行ができるようになると、コンサルタントとして一人前になるのも近いと認識してもらえるため、ご自身の存在価値を発揮するためにも重要です。
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>コンサルタントへのキャリアに関する記事
【実録】「使えるコンサル・使えないコンサルの違い」
https://www.axc.ne.jp/media/careertips/consultantuse
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今回の記事では、コンサルタントの依頼目的・仕事内容についてお伝えしました。
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