今回はコンサル出身者が得意な経営企画業務、または一方で不得意な経営企画業務について、解説していきます。
一見、「コンサル」と聞くと、企業経営全般に携わっているため企業の課題全てに対応できると考えられやすいですが、実際には業界や専門分野において強みがあり、力が発揮できる分野の他、不得意な分野もあります。
力を発揮できる分野として「コンサルと経営企画が近い業務」と、力を発揮しにくい分野として「コンサルと経営企画に親和性がない業務」の切り口でそれぞれ見ていきます。
【目次】
経営コンサルと経営企画の特性
大企業と中小ベンチャー企業の経営企画で求められる特性はそれぞれ違ってきますが、一般的な経営企画として考えられる点にフォーカスしてみます。
なお、ベンチャー企業では経営企画として行うこともある内部監査や広報IR等、一部その他の部門に代替できる業務は除いて解説します。
経営コンサルの強みや弱み
経営コンサル出身者の強みは、何といっても経営全体を見渡す幅広い視点を持っていることです。
国内外の大企業から中小企業の様々な企業の問題解決を手がけており、事例や課題解決のための引き出しが多いという特徴は、経営企画出身者にはあまりないものです。
またコンサルは、常にクライアント企業の問題解決のために動いているため、トップマネジメントに対する提案力やプレゼンテーション能力には長けていると言えます。
そして、徹底して習慣化された論理的思考やそこに裏付けされる提案、発言の具体性は特筆すべきスキルであり、業務のベースが全て繋がっています。
一方の弱みとしては、幅広い企業を見ているため提案が一般論になりがちであることや、特定の分野に強みがある場合は、経営企画でやるべき以外の業務で、経験不足となる可能性があります。
さらに、しっかりとインタビューやヒアリングしていない場合や真因遡及ができていないと、提案が空回りしてしまい、机上の空論になる可能性もあります。
経営企画の強みや弱み
経営企画の場合、全社の実績数字を必ず毎月見るため、自社内を細かく分析する能力・スキルはベースとして備わっています。
また、トップマネジメントとの日々のコミュニケーションで培った愛嬌の良さや、各部門長であるミドルマネジメントへの理解力も必須の分野であるため、経営企画を一定期間経験した場合には備わっているでしょう。
一方の弱みとしては、分析の対象として自社が所属する業界を中心に、特定の業界への知見は一定程度備わっているものの、逆にコンサル出身者が強いマクロな観点での分析や、遠いようで実は近い他業界の視点が弱くなりがちです。
そして、企業の特性やトップの方針によっては、経営企画の役割が経営分析や予算実績集計業務が中心となり、新規提案や経営改善策等の新たな価値を生みにくいこともあります。
それぞれの組織カルチャー
コンサルファームは総じて論理的な考え方を重視し、感覚論で物事を推し進めることがないため、一見してドライな社風に映ることもあります。
そして、常に「クライアントのために」という成果目線があるため、労働時間が長くなっても構わない頭脳労働集団です。したがって、ハードワークが求められるカルチャーもあります。
一方の経営企画は、それぞれの会社のカルチャーによって仕事の仕方に違いはありますが、社内の全体最適を求めるために、トップとミドルを結ぶ調整ハブとしての機能が強く、柔軟かつスピード感が求められる組織になることが多いです。
しかしながら、経営企画の名称の通りトップマネジメントよりの考えに傾きやすいため、組織のボトムや事業サイドからは遠くなっていることが多く、トップの意向に沿って動く文化が一般的です。
事業会社の経営企画とコンサルの似ている業務
コンサルと経営企画に共通する業務を確認して、コンサルが活躍できる経営企画業務について見ていきます。
大きくはトップマネジメントよりの全社戦略と、ミドルやロワーマネジメントに紐づく事業戦略や機能戦略、さらに社内問題解決のためのコンサル業務に親和性があります。
全社戦略に関する業務
トップが「自社の経営課題を抽出した上で対応策を考えてほしい」として、経営企画を通じて外部のコンサルに依頼する場合と、社内の経営企画部門に直接指示を出して対応を依頼する場合を考えてみます。
コンサルに依頼する際には事務局として経営企画が、プロジェクトを取りまとめながら推進していくこととなります。
一方で、社内で完結する場合は経営企画メンバーが自ら手を動かして実施します。
経営課題に対処するのがコンサルなのか、社内の経営企画なのかの違いであり、実際は同じ業務です。
その場合に考えられる経営課題としては、具体的に全社戦略の立案や、ビジョン・ミッションの策定、M&Aの検討、リストラクチャリング、中期経営計画の策定等が想定でき、これらについて対応策を考えていくことになります。
経営企画メンバーに、M&A等の特殊分野における専門性がない場合や、大規模プロジェクトになる場合は、自社内で完結せず、コンサルや証券会社等の投資銀行部門等の外部に委託する場合が多いでしょう。
また、トップマネジメントの意思決定の支援として、トップが考えている特命事項に対して秘密裏に速やかに対応するという業務があります。
事業戦略や機能戦略に関する業務
会社方針により、経営企画が事業面や機能面にどれだけ入っていくかによりますが、ミッションによっては新規事業の立案や、現状の製品・サービス分析、また所属する業界分析、キャッシュフローや人材等の経営リソース分析等多岐にわたることもあります。
さらに、既存インフラの刷新として、稟議システムや労務管理システム等社内情報システムの再構築、新人事制度設計の立案、フローやマニュアルの改訂等もライン・スタッフ部門と連携して進めていく必要があります。
社内コンサルティング業務
特にミドル・ロワーマネジメントにおいては、業務を進める上での社内の課題について数多く要望が挙がってきます。
一次的窓口は総務部門や管理部門に挙がってくることもあり得ますが、解決に向けて動いていくのは、トップマネジメントとも繋がっている経営企画です。
重要業務のため、関係者からのヒアリングを通じて課題の洗い出しと分析、解決案の提示と実行のPDCAサイクルを回していく高いスキルが求められます。
事業会社の経営企画とコンサルのかけ離れた業務
コンサル経験者が経験したことがない業務がその中心となりますが、主なものとしては次のような業務が挙げられます。
経営と現場をバランスよく理解して進める業務
前述した通り、コンサルは経営戦略に強みを持つ方や、事業の業務改革に強みを持つ、またはビジョン・ミッションの構築が得意な方等、一定の尖った専門性があります。しかし特定の現場への提案力に長けている訳ではなく、業務内容をバランスよく理解して進めることは苦手な可能性が高いです。
一方、経営企画は提案だけではなく、実行フェーズにおける業務推進も求められることから、経営企画と改善を行う側の双方の利害を上手く調整しながら前に進めていくスキルがあります。
コンサルは外からの改善に向けての提案が主な業務ですが、経営企画業務に携わる場合は、総合的な現場理解が重要となります。
予算立案や実績管理業務
社内の具体的な業務であり、経営企画で重要な業務の一つでもあります。
月次決算情報をもとに、事業部門別の数字を全てチェックし改善に繋げていく業務は重要なため、外部のコンサルに依頼することは少ないです。
そのため、コンサル経験者が管理会計分野の細かな数値周りの集計、差異分析等に取り組む場合、実務経験によって改めて学んでいかなければならないことも考えられます。
経営企画が手を動かす実行業務
前述した予算実績管理についてもこちらに該当しますが、経理部門からあがってきた決算データを社内管理用のシステムに取り込み、管理会計として再集計、チェックする等の作業が必要です。
まずトップマネジメントに提案し、実際に進めることとなったら、経営案件なら経営企画自ら実施します。事業に絡むものであれば事業部門と連携しながら経営企画も参加し協働して課題対応を行うこととなります。
誰がやるかの主体性が変わってくるため、コンサルの経験が染みついている場合は、提案だけではなく実行も自らやる感覚が必要です。
また、課題解決をプロジェクト化する場合においては、掲げた目標を達成するために、スケジュールや業務進捗等の乖離を明確にして、社内調整をしながら埋めていく推進力も必要。
結果的にトップマネジメントの視点だけでなく、ミドル・ロワーマネジメントの視点も求められるため、前述した経営と現場のバランスがより重要となります。
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>経営企画へのキャリアに関する記事
経営企画部の業務に役立つ「資格」とは【おすすめの理由と実用方法・事例付き】
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経営企画部の仕事は本当に「花形」なのか?【生の声】
https://www.axc.ne.jp/media/careertips/corporateplanning_real
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コンサルと経営企画の業務内容は大きく重なる一方で、コンサル時代の経験値によっても活かせる幅が大いに変わってきます。
さらに新たに就業する会社の方針によって経営企画業務が変わってくるため、親和性があるかどうかはものさし一つで図ることは難しいですが、トップからボトムまでの課題を解決していくことにフォーカスを当てて業務を進めていくことは、コンサル、経営企画ともに変わらず重要な点。
できる点においては強みを発揮してより会社に貢献するとともに、未経験の部分については吸収できるか考えつつ、今後のキャリアプランを見定めていくことが大切です。
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