コンサルファームから資産運用会社(アセマネ)への転職後、活躍できるコンサル・できないコンサルの違い

コンサル経験者の転職先は様々ですが、計数能力が問われることや、論理的思考力の高さが好まれることから、弊社においても金融セクターへの転職を行う例も多いです。

金融セクターと一口に言えども、銀行・保険・証券・資産運用会社(アセットマネジメント)など様々ありますが、労働環境の良さや、コンサルと同様にビジネスが続いているうちは定常的に収益発生するフロー型のビジネスであることを理由に、資産運用会社に転職する方も一定数いらっしゃいます。

一方で、資産運用会社とコンサルは異業種で、決して似通った仕事とは言えない部分もあります。そのため入社前のイメージと入社後のギャップに悩まされ、最後にはドロップアウトしてしまった元コンサルタントの方も数多くいるのが実情です。

そこで今回は、資産運用会社で活躍する元コンサルタントや、執行役員・マネージャークラスの生の声を参考に、資産運用会社に転職後、活躍できる元コンサルタント、活躍できない元コンサルタントの違いなどをまとめました。

【目次】

  1. 「活躍できる」元コンサルタントの特徴とその理由~分析・シミュレーションスキルの活用~
  2. 「活躍できる」元コンサルタントの特徴とその理由~「質の高い議論をする」能力が資産運用ビジネスの活性化に貢献~
  3. 「活躍できない」元コンサルタントの特徴とその理由~営業能力が不足していたことが足かせに~
  4. 「活躍できない」元コンサルタントの特徴とその理由~「楽な職場」という先入観と実態のギャップ~
  5. まとめ:「資産運用会社は働きやすい」という幻想を捨て、「転職先で活かせるスキル」を明確化することが肝要

「活躍できる」元コンサルタントの特徴とその理由~分析・シミュレーションスキルの活用~

コンサルタントの中には、戦略策定や業務効率化プロジェクトなどで、数値を用いた分析やシミュレーションを行ってきた方も多いと思います。こうしたスキルは資産運用会社、特に営業や運用部門で活かせる余地が大きいようです。

資産運用の営業は、自社の既存ファンドや新規の組成ファンドを提案しに行きますが、その際には必ず「どうすればファンドのパフォーマンスが最大化できるか」、あるいは「今後の市場がどのように変化するか予測し、またその上で最適なファンドは何か」を分析・シミュレーションしたうえで、最良のものをクライアントに提示します。
また、運用部門においても、やはり市場環境を分析、予測したうえで、それにマッチした投資戦略を、市場予測を基にシミュレーションしながら策定していくことを日々行います。

ここでは実際に、資産運用会社の営業部門に転職した元コンサルタントの例を紹介します。

コンサル時代に市場分析を行っていた方が、債券・株式・為替などの様々な市場を総合的に分析したうえで、既存のファンドより優れた資産構成を算出することに成功し、その構成によって構築されたファンドをクライアントに提案した所、興味を集め、早期に新たな投資資金の獲得に成功した、といった例があります。

こうした分析・シミュレーションは誰でも簡単にできるものではないため、過去のプロジェクトで同様のスキルを培った元コンサルにとっては非常に強みとなります。

「活躍できる」元コンサルタントの特徴とその理由~「質の高い議論をする」能力が資産運用ビジネスの活性化に貢献~

意外に思われる方もいらっしゃいますが、資産運用会社は金融セクターの中でも特に関係者の連携が重要なセクターです。ファンドを組成し、投資家から資金を獲得し運用するまでには、営業・運用者・法務・コンプライアンスと社内だけでも多くのチームと関わります。実際には、ファンドの提案にしても、運用にしても、関係者が議論に議論を重ねながら次のアクションが決定されています。

当然のことながら、多くの関係者が絡むことで、「意思決定が遅れてしまう」という点は運用会社がよくネックとなるポイントです。そのため、質の高い議論をスピーディに行うことが可能な人材は重宝されます。

ご存じの通り、コンサル業界ではプロジェクトチーム内やクライアントとのミーティングがかなり頻繁に行われ、ハイレベルな議論を通じて、ベストな解決策を提供することが常々求められます。このようにコンサル経験の中で獲得した「議論する」スキルは、関係者が多く時間がかかりがちな資産運用会社のビジネスにおいて、プロジェクトをドライブするうえで役立つことが多いようです。

例として、既存ファンドのパフォーマンスにかかる情報提供や、ファンドに関する様々な調整などを行う、クライアントサービス部門に転職した方についてご紹介します。

この方が入社して数か月後にとあるファンドに関係した法令改正があったそうです。法令改正は、時には社内外のトラブルにもつながりかねない厄介なものでもあります。しかしこの方は、議論を通じて課題を洗い出す能力に長けていたため、ファンドを運営する各部署とクライアントと積極的に議論を行い、変更や調整が必要となるポイントを正確に洗い出すことで、迅速かつスムーズに対応を行うことに成功したそうです。

このように「質の高い議論をする」能力も資産運用会社では役に立ちます。

活躍できない」元コンサルタントの特徴とその理由~営業能力が不足していたことが足かせに~

コンサルティングというビジネスがほかのビジネスと大きく異なる点として、いわゆる新規案件獲得のための純然な営業はトップマネジメント~シニアクラスによって行われている点でしょうか。それより下位のメンバーは多くの場合専らプロジェクトの遂行をスムーズに行うこと、つまりデリバリーが期待されます。

フロー型ビジネスという意味ではコンサルに似ている資産運用ビジネスも、既存の預かり資産から定期的に手数料収入があるため、一見営業にはあまりリソースを割かない、と思われがちです。しかし実のところ、激しい環境変化の中でただ預かり資産を維持することは容易ではなく、多くの運用会社では積極的な営業活動が行われています。

運用会社にもよりますが、多くの場合、営業部隊には多くのメンバーが割かれており、様々な部門が議論して決めていくという特性を持っているケースが多く、実際には「営業部隊以外」でも顧客と新規案件獲得に絡むコミュニケーションを取る例も多く、コンサルより営業能力が重視されるという元コンサルタントの声が多いです。
コンサル時代にいわゆる新規案件獲得のような営業経験がない元コンサルタントも多く、その場合、「営業スキル」ではビハインドした状態からスタートすることになります。

ここで、資産運用会社の営業職で入社したものの、キャリア形成に失敗された元コンサルタントの方の事例をご紹介します。

この方は、入社当初は資料を素早く正確に作成する能力が重宝されるなど、決して評価は低くなかったのですが、このことに油断して「投資家が求めている運用手法は何か」を考え、提案する癖を身に付けなかったため、いつまで経っても魅力的な新ファンドを提案することができずにいました。
結局、担当顧客からの運用資金が全然獲得できなかったことがプロモーションに響いてしまい、やがて営業活動の難しさからドロップアウトしてしまったそうです。

資産運用会社は、概して粘り強くメンバーを育てるカルチャーが強い傾向にあるため、ビハインドの状況を認識し、入社後に貪欲にブラッシュアップできる方は問題ないでしょうか。
しかしながら、自らの弱いポイントに気づかず、営業能力を身に着けなかったために、数年たつにつれ次第にプロモーションなどが劣後しやがてドロップアウトしてしまうという事例も散見されるのが実情です。

「活躍できない」元コンサルタントの特徴とその理由~「楽な職場」という先入観と実態のギャップ~

コンサル業界から異業種へ転職する方の中には、一定数「コンサル業界の激務に耐えられなくなった」という方がしばしばいます。そしてSNSなどの情報から「資産運用会社は投資銀行やコンサルと比べて楽」という印象を持たれがちなため、激務を嫌う方の選択肢として資産運用会社へのキャリアを視野に入れるケースがあります。

会社にもよりますが、「資産運用会社にはコンサルほど極端な繁忙期もなく、平均的に言えば残業時間は長くはない」という声をお聞きすることもあります。
しかしながら、資産運用会社にも多種多様な企業や職種があり、中には激務を強いられる場合もあります。その中でも外資系の資産運用会社については、とりわけワークライフバランスを目的にされている方には注意が必要です。

外資系資産運用会社の場合、ファームの運用部門や基幹部門が外国の本社にある、もしくは、外国の資産に投資するといった場合、それらの所在地の現地時間でビジネスを行っているメンバーがいるため、必然的に日本では深夜~早朝に作業を強いられることが珍しくないようです。

特に運用者の場合はより一層注意が必要でしょうか。マネージャーにお聞きしたところ、以前異業種からの転職としては珍しくポートフォリオマネジメントの職についた元コンサルタントの方がいいたそうです。この会社は規模が大きくなく、自分が管理するファンドに組み入れられている有価証券の多くを自分で管理する必要がありました。
その方は、世界中の資産に投資するファンドを担当することになったため、日本、欧州、米国すべての時間の市場の動きを見る必要があり、24時間ずっと起きて管理しなければならないというほどではないものの、もともと「労働量を減らしたい」と思っていたその方にとっては辛く、短期間のうちに辞めてしまったそうです。

このように、結果的に時差の都合から長時間労働となってしまうことで、入社前の想定と異なり激務となってしまったため、理想と実態のギャップに耐えられなくなってしまったという事例は珍しくないようです。

まとめ:「資産運用会社は働きやすい」という幻想を捨て、「転職先で活かせるスキル」を明確化することが肝要

「資産運用会社はコンサルより楽だろう」と決め打って行う転職には危険だと言えます。運用会社によっても職域によっても、またビジネスや市場環境によっても、労働量はさまざまです。事前に、内情に詳しい知人やエージェントに訊く挙動が求められます。

そのうえで、分析・シミュレーションスキル、質の高い議論ができるスキルなど、ご自身が資産運用会社で活かせるスキルを明確化したうえで転職先の業務に臨むことが重要です。

それと同時に、営業スキルなどコンサル時代では充分に培えなかったスキルについては、「自分は元コンサルだから」と高を括らず、謙虚かつ貪欲にブラッシュアップしていくことで、中長期的に使える元コンサルとして、資産運用会社で活躍していくことができるでしょうか。

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<ポストコンサルの転職に関する記事>

コンサルファームから投資銀行(IBD)への転職後、活躍できるコンサル・できないコンサルの違い
https://www.axc.ne.jp/media/careertips/postconsulinvestmentbank

コンサルから投資ファンドの転職で求められるスキルとは?
https://www.axc.ne.jp/media/column-career-change-case/investmentfund

PE(プライベートエクイティ)パートナーに聞く「投資先CxO」選考時に注視するポイント
https://www.axc.ne.jp/media/careertips/privateequityrecruit

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今回は、資産運用会社で活躍する元コンサルタントや、マネージャークラスの生の声を参考に、資産運用会社で活躍できる元コンサルタント、できない元コンサルタントの違いについてご紹介しました。

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