PEファンド投資検討時に必要なスキル・経験【コンサルタントの方向け】

今回の記事では、主にコンサルタントの方向けに、プライベートエクイティファンド(以下、PEファンド)で働くアソシエイト・シニアアソシエイトの投資検討時において活かせるスキル・経験、またキャッチアップが必要な点について、実際にPEファンドで働かれている方々の声なども参考にお伝えします。

【目次】

  1. 提案書作成は「テーラーメイド」で資料作成するアプローチと似ている
  2. 対象会社の分析においては、ストラクチャー提案に活かせる「勘所」へのキャッチアップが必要
  3. 財務モデル作成においては、「LBOモデル」作成のキャッチアップが必要
  4. デューデリジェンス依頼におけるスコープ決めや、金額決めにファームの経験が活かせる
  5. 投資委員会用の資料作成では、「投資の価値分析」「英語力」といった側面でのキャッチアップが求められる

提案書作成は「テーラーメイド」で資料作成するアプローチと似ている

資料作成の点では、PEファンドにおいてもコンサルティングファーム同様に提案書(ピッチブック)を作成することがあります。そのためコンサルタント時代に「ピッチブック」や「プレゼンテーション資料」を作成した経験・スキルは、入社後もすぐに活かすことができます。

PEファンドにおいては、コンサルティングファームや投資銀行と異なり、沢山のクレデンシャルを載せるということは少ないようですが、ファンドの投資アングルや、過去の投資実績などを用いて説得力のある内容にまとめたり、投資案件に応じてカスタマイズしたピッチブックを作成する際は、クライアントに対してテーラーメイドで資料作成するアプローチと似ており、その点ではコンサルティングファームやFASでの業務と大きく変わらないという声が多いです。

対象会社の分析においては、ストラクチャー提案に活かせる「勘所」へのキャッチアップが必要

また、対象会社の分析という点でも、事業モデル・競合調査・顧客分析を進め、投資対象企業のメモやチームのシニアメンバーに共有・ディスカッションを行うという点ではコンサルティングファームでの業務に近いものがあります。

財務分析に関しては、デスクトップDDに近い作業を行い、会計・財務的に投資可能なアセットかどうかということも並行して行うため、FAS以外のコンサルティングファーム出資の方は「財務」や「会計」の知識もキャッチアップ要素となります。
PEファンドでは、会計のみならず株主構成を調査し、どのようなストラクチャーが検討できるかということを考える必要があるため、投資対象企業が未上場会社であれば「オーナー経営者が何%保有しているか」「ファンドがマジョリティの持分を取ることができるのか」ということも念頭に入れて分析する必要があります。
上場会社に関しては「重要な少数株主はいないか」「アクティビストファンドやエンゲージメントファンドなどの株主の有無」「浮動株はどの程度あるか」「株価推移は直近1~3年でどのような変化があるか」「株のターンオーバーはどの程度か」など、ストラクチャー提案に活かせるように勘所を押さえた分析が重要です。

財務モデル作成においては、「LBOモデル」作成のキャッチアップが必要

投資銀行出身者と同等のレベル感は入社時には求められていないものの、PEファンドで働くにあたり、コンサル出身者にもそれなりの財務モデルの作成能力が期待されます。

PEファンドでは、レバレッジドバイアウトという手法により買収の検討を行い、レバレッジドバイアウトモデル(LBOモデル)を作成するため、LBOモデルの作成経験や、PEファンドをクライアントにしたアドバイザリー業務の経験があれば、入社後も投資対象企業の財務分析と併せて、投資して儲かるかどうかの分析の際に役立ちます。

この点に関してはコンサルティング業務を中心にやってきた多くの方にキャッチアップが求められるでしょうか。ただし、現在はインターネットでもモデリング講座等の機会があり、中には独学でモデルテスト合格レベルに持っていかれる方もいるようです。

また、FAS出身者の場合、バリュエーションやM&A案件の経験を活かして、財務三表モデルの作成は出来る方も多いですが、投資銀行のスポンサーチームやエグゼキューションを行うアドバイザリーチーム出身者に比べてLBOモデルを作成するスキル・経験が乏しいことも多く、この点に関しては同様に独学でのキャッチアップなどが求められるようです。

デューデリジェンス依頼におけるスコープ決めや、金額決めにファームの経験が活かせる

M&Aの際にビジネスデューデリジェンスを主に行い、買収もしくは売却を検討している事業の成長性・競合環境・事業計画分析(主に損益計算書を中心にトップラインを検討)・市場でのポジショニング等をゼロベースで案件に応じて仮説を作成し、綿密なリサーチと分析を経てレポートを作成するといった経験をされているコンサルタントの方も多いでしょうか。

PEファンドでは、自身がデューデリジェンスレポートの作成を行う等の業務を行うことは滅多にないですが、実際に出資ないしは買収を検討するにあたり、デューデリジェンスを依頼する際に「どこのファームを起用するか」「デューデリジェンス業務の範囲や、重点的に調べてほしい論点は何か」「デューデリジェンスの報酬はいくらが妥当か」「業務範囲と報酬を勘案してどこのコンサルティングファーム・FASがベストか」の決定に関わります。

さらに、デューデリジェンスのプロセスが進むにあたり「各コンサルティングファームとのコミュニケーション」「報告会の日程をファイナンシャルアドバイザーと協働して調整する」といった業務でも、コンサルティングファームの経験を活かせることも多いようです。

また、自身で手を動かして初期的なデスクトップDDを行うスキルも重要ですが、PEファンドでは投資案件に応じて重要な論点や、分析・明らかにしたい論点をクリアにしながらデューデリジェンスのアドバイザーに指示や業務範囲をお願いする等のコミュニケーションスキルが重要になります。

投資委員会用の資料作成では、「投資の価値分析」「英語力」といった側面でのキャッチアップが求められる

コンサルティングファームや投資銀行では経験しにくいPEファンド業務の一つとして、投資委員会向けの資料作成があります。投資委員会はファンド内のメンバーで投資実行を検討している案件に関する承認を得るために行われるもので、事業分析・投資の採算性も含めてパワーポイントにまとめます。

コンサルティングファームでよく使用するビジネスDDレポートや、経営戦略に関するプロジェクトで作成するようなビジュアル面で見やすい・分かりやすいスライドも作成します。
ただし、PEファンドにおいては、「投資対象となる企業がなぜ投資に値するのか」「LBOモデル分析やバリュエーション分析によりファンドにとってのリターンはどの程度出そうなのか」を検証・プレゼンテーション資料にまとめることが重要になります。投資委員会向けの資料作成は相当なページ数になることがあり、業務の中でも内部資料とは言えそれなりに負担になるようです。

特に外資系のPEファンドでは投資委員会が日本ではなく香港など海外にあることも多く、英語で投資委員会向けの資料を作成しなければならないため、アソシエイトから英語力のキャッチアップが求められます。

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>コンサルティングファームからPEファンドへのキャリアに関する記事

公認会計士からPEファンドへのキャリアパス【入社前後に役立つスキル・経験】
https://www.axc.ne.jp/media/careertips/accountanttope

FASからPEファンドに転職して活かせるスキル・キャッチアップが必要なスキルとは
https://www.axc.ne.jp/media/careertips/fas_pe

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今回の記事では、コンサルティングファームに在籍し、PEファンドへの転職に興味のある方向けに、PEファンド投資検討時に必要なスキル・経験についてご紹介しました。

コンサルティングファーム出身の方も、事業分析、仮説構築、ビジネスモデル分析・理解など、PEファンドですぐに活かせるスキルが多くあります。

また、実際には入社後ファンド内の過去資料や先輩のコメント等を参考にしながら資料作成していくことが多いため、ベースのスキルセットがしっかりしている方であれば問題ないという意見が多いです。

財務やコーポレートファイナンスに関する箇所は、投資銀行やPEファンドでの業務経験者に最初は及ばないところもあるようですが、実際に仕事を進めていく中で学ぶことも多いため、焦らずキャッチアップすることが重要でしょうか。

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