“COO(最高執行責任者)”の役割・導入企業・CEO/CFO/CSO、代表執行役との違い・実際のキャリアパスについて

会社経営に関する重要な意思決定を行う「経営幹部」は、上級管理職や執行役員などが担います。経営幹部の中には、組織の責任者である「CxO」の肩書も含まれるのが特徴です。その1つであるCOO(Chief Operating Officer/最高執行責任者)は、CEOの右腕として、企業の各部門を総括する役割を担います。

今回の記事では、SaaS事業やメタバース事業の拡大に伴い、1年〜数年後を見据える企業が増える中、設置が増えているCOOについて解説します。

具体的には、よくご質問いただくCOOと「CEO/CFO/CSO、代表執行役との違い」とともに、直近でニーズが高まっているCSOの設置背景~役割~キャリアパスについてご説明いたします。

※記載の内容は2024年7月時点の調査結果です。

【目次】

  1. COOの設置の増加理由と導入企業。未来を見据えた戦術を実践する人材の必要性が増している
  2. COOの求人内容や求められるスキル
  3. COOとCEO/CFO/CSO、代表執行役との違い
  4. COOになるまで/なってからのキャリアパス

COOの設置理由/背景と導入企業。未来を見据えた戦術を実践する人材の必要性が増している

AIといったテクノロジーによって世界が目まぐるしく変化する中、DX推進などの面で世の中に後れを取らないよう、多くの企業は数年先を見据えた戦略を立てています。

参考:生成 AI 時代の DX 推進に必要な人材・スキルの考え方|経済産業省(令和 5 年 8 月)

その中で、未来を見据えた戦略を戦術として実践し、実行部隊を統括するCOOの設置企業が増えている状況です。企業によって「海外への事業展開および拡大」「上場後を見据えた未来における事業展開」など、設置の細かい目的は異なりますが、いずれも現在~未来にかけての経営のかじ取りを担う人材として、COOの重要性は増しています。

実際の事例として、IPOや資金調達を見据え、監査や投資家に向けた事業計画が必要となったものの、人員不足により、財務戦略やセールスとコンサルの兼務など、複数の重要な役割を代表が担わなければならない状況の企業がありました。そこで、組織の統括を担うCOO候補を募集することになったという経緯です。

COOを導入している(していた)代表的な企業を挙げると、外資系ではメタ・プラットフォームズ(旧Facebook)・Apple Inc.などがあります。

日系企業の場合は、ランサーズ株式会社・ニューラルポケット株式会社・株式会社hacomonoなど、ベンチャー・スタートアップを中心に多数の企業が導入しています。

かつてメタ・プラットフォームズ(旧Facebook)のCOOとして活躍したシェリル・サンドバーグ氏は、非常に有名な事例です。ご存じの通り、サンドバーグ氏はハーバード大学ビジネススクールでMBAを取得後、マッキンゼー・アンド・カンパニーでコンサルタントとして勤務しました。ビル・クリントン政権では、財務長官サマーズの下で首席補佐官を務め、Googleのオンライン営業・事業部門執行副社長に就任します。2008年にマーク・ザッカーバーグ氏に引き抜かれ、FacebookのCOOとして広告ビジネスを確立・成功させ、2022年に退任を発表するまでに、同社に大きな利益をもたらしたことは記憶に新しいでしょう。

参考:Facebookから退くシェリル・サンドバーグと、背後にあったザッカーバーグとの“取り決め”の終焉|WIRED

日本国内では、株式会社hacomonoの事例から、COOを採用する際に重視されるポイントをうかがえます。同社では元々、CEOの蓮田健一氏が営業のマネジャーも兼務していましたが、10名規模だった社員数が50名規模になり、1on1で対応する人数も増えていくという状況でした。顧客数も増える中で、組織を見きれなくなり、伴走してくれるCOOの導入を決意。採用活動の結果、ローランド・ベルガーでコンサルを経験後、楽天グループでエンターテインメント分野の事業再生に携わった平田英己氏をCOOに抜てきしました。

蓮田氏は、平田氏が「150人ものマネジメントにおいて、エリート集団に向けたマネジメントではないスタイル」と、「若い人や新人の教育経験」を持つことが印象的だったとしています。コンサル出身者はエリート的な上から目線のマネジメントスタイルになりやすく、事業会社の現場で失敗するという話をよく耳にしますが、COOとして活躍できる人材には、エリート的なマネジメントスタイルに陥らず、経験の浅い人を育成して成長させ、チームを統括していく手腕が重視される可能性があるとうかがえます。

参考:【CEOの決断】成長を続けるhacomonoはいつ、なぜCOOを迎えたか──シリーズB以降を戦うための組織論|ALL STAR SAAS BLOG

COOの求人内容や求められるスキル

ご存じの通り、COOは「管理職」の一種と言えますが、より細かく言うと「経営幹部」に該当するという意識を持つことが大切です。これはつまり、決められた一定範囲の業務を担うというよりも、経営者に近い目線で、予測不能な出来事にも対応しつつ、組織を統括して企業成長に向けた経営を担うスキルが求められると言い換えられます。コンサルで言うとマネジャー以上、事業会社で言うと経営企画部の責任者以上のポジションを経験していると有利でしょうか。

当社へご相談いただく求人で業務内容を確認すると、営業活動・取引先との交渉から、投資家に向けた事業計画の策定、予算の策定と管理など、ビジネスの成長に向けた業務全般を推進することがうかがえます。実際に戦略/総合コンサルティングファームで、事業コンサルに携わった経験や、PEファンドでの就業経験があると有利でしょう。加えて、海外進出を目指す企業も少なくないため、ビジネス英語のスキルや、海外企業で投資業務に携わった方であれば、評価されるかもしれません。

昨今注目されているメタバース分野の企業であれば、事業拡大に伴い、上場を目指すベンチャーでCOOを必要とするケースがあります。最低でも上場1年後までの組織づくりに必要な力を持ち、T2D3に向けた獲得市場の整理と実行、ミッションレベルからの事業計画の立案と実行などのスキルが必要です。新規事業を計画し、安定的に収益を上げられるまでの一連の流れを担う責任者としてのスキルが求められるため、経営レイヤー視点での戦略立案や、コンサルタント経験は必須でしょうか。コンサルティングファームのマネジャーや、事業会社での事業部長以上に該当する立場で、起業~上場までのプロセスに携わった方は、高く評価される可能性があるでしょう。

総合的に、事業を一から作り上げ、経営課題を抽出しながら、事業安定化までを担えるスキルが求められます。採用では、経営レイヤーの視点、数年先を見据えられる分析力、成長に向けた一からの戦略構築、戦略の実行力という、事業を統率する高いスキルが重視されるでしょう。

とりわけコンサルタント経験者に必要な視点は、批判家になってはいけないということです。コンサルタント時代の習慣で、経営体制を批判的に指摘すると、社内から信頼されなくなってしまいます。
実態としては、COOは入社前から業務委託などで外部協力者として事業に携わっており、企業との信頼関係を築けている方が多い傾向です。また学校の同級生や前職での同僚を採用するなど、リファラル採用をメインとする企業もあります。COOに限らず、社内との信頼関係を一から築く必要がある場合は、コンサル経験者が陥りがちな批評家マインドを捨て、アドバイザーではなく社内の当事者(仲間)として謙虚に対話を重ねていく姿勢が必要でしょう。

COOとCEO/CFO/CSO、代表執行役との違い

COOは企業において、CEO(Chief Executive Officer)に次ぐポジションに該当します。CEOはトップマネジメントを担う責任者であり、企業全体の経営戦略を策定するリーダーです。COOは、それに従って具体的な戦術を立案し、実際に業務オペレーションを確立してマネジメントを担当するのが役割です。

特徴としては、CEOは企業のトップであり、経営戦略をまとめ上げ、最終決定まで責任を持つことが挙げられます。一方、COOはCEOの方針に従いながら、現場で統制を取り、実際に業務を担当する役割で、最終決定権までは持たないのが特徴です。よくある「CEOとCOOのどちらが上か」という疑問は、代表取締役と兼務するケースもあるトップ人材のCEOが上という扱いであり、COOは幹部の一員であるという認識が一般的でしょう。

とはいえ、人員不足によりCEOがあらゆる部門の統括を担うことに限界を感じて、COOになり得る人材を重く見ていくケースが増えると思われます。COOを採用する必要に迫られている企業もあり、設置数が伸びているという現状を踏まえると、COOの立場はCEOにとって不可欠であり、両者が並んでマネジメントを担っていくトップ人材にあたると言っても過言ではないでしょう。

その他の役職との違いを解説すると、まずCFO(Chief Financial Officer)は、「最高財務責任者」と呼ばれる通り、資金調達や収入/支出の管理など、財務全般の業務を担当するのが役割です。CEOの立案した財務戦略作成と実行をサポートすることが求められるほか、CEOが最終決定を下す際に必要な経営面のアドバイスを提供します。CEOの右腕として企業の成長に貢献する点はCOOと共通しますが、COOが幅広い業務の実行を担うのに対し、CFOは担当範囲が財務面全般という違いがあります。

次に、CSO(Chief Strategy Officer)は、企業の戦略立案を担う立場です。社内外のプロジェクト関係者に企業の実績や取り組みなどを伝える役割を担います。CEO・COO・CFOは短期もしくは長期的な経営戦略を重視するケースが多いのに対し、CSOは見逃されやすいが不可欠である中期的戦略を立案・実行することが多いです。

最後にCOOと代表執行役との違いにも触れておくと、代表執行役は、会社法上で定められる役職で、事業を行う権限を持つ経営幹部に該当します。現場で事業を監督する点は、COOに近いと言えますが、COOが現場での業務執行をトップとして統括するのに対し、執行役は業務執行を担う立場という違いがあります。

またCOOは、法律上定められた役職ではないため、必ず設置するものではないのが、代表執行役との大きな違いです。ただし、現状では事業拡大や変化の激しい時代に対応していくにあたり、COOを設置する必要に迫られている企業も多くあります。COOの存在は今後ますます重宝され、COOとしての手腕がある人材の価値は高まっていくのではないでしょうか。

COOになるまで/なってからのキャリアパス

実際に日本企業においてCOOを担当されている方の具体的な経歴と、COO後のキャリアパスをご紹介します。

A氏:

大学卒業後、戦略コンサルティングファームに入社
→大手企業における新規事業の戦略策定と実行支援に関連する案件を主導した後、ベンチャー企業に転職。事業開発を担当し、toB向けの事業に携わる
→AIソフトウエアの開発会社に参画し、事業責任者を経て、COOに就任。

新卒で戦略コンサルティングファームに勤務し、中期経営戦略策定や新規事業立案などを経験された方です。ベンチャーでも新規事業開発の経験を積んだ後、コンサル時代のチームメンバーが代表を務めるAIソフトウエアの開発会社にジョインし、COOに就任しています。COOとして「いきなり転職する」場合、既存メンバーとの折り合いが悪く、失敗するケースも少なくありません。やはりCOO就任前から「社内との信頼関係が築けているか」が重視されることがうかがえるケースです。

B氏:

外資系総合コンサルティングファーム、ハンズオン型コンサルティング会社を経て、海外大学のビジネススクール研究所に派遣
→前職に復職後、ディープテックスタートアップに入社し、翌年COO就任。

コンサルティングファーム時代から、メーカーの企業改革プロジェクトにアサインされるなど、経営層に近い立場から人員計画策定~実行を担っていた方です。経営層をサポートする上で、コンサルタントとして論理的な言葉を掛けるばかりの状況に限界を感じ、事業会社への転職を決意されました。技術を駆使して人類が抱える課題解決に貢献するという大きな目標を持たれているところから、組織のミッションに共感し、目標達成に向けて熱意を持ち尽力できることが、COOとして活躍するための大切な要素と言えるかもしれません。

C氏:

大学院を修了後、自動車メーカーに入社
→外資系戦略コンサルティングファームを経て、テックベンチャーに転職し、翌年同社のCOOに就任
→同社およびソフトウエア会社の取締役CEOに就任

機械工学の知識を活かしてエンジニアとして働いた後、知人のキャリアパスの影響で戦略コンサルティングファームに転職された方です。その後は経営陣に近い立場で働きたいなどの理由から、ベンチャー企業に転職され、同社のCOOを務めます。コンサル出身者が強みとするロジックだけでは、ベンチャーでは通用せず、交渉力とコミュニケーション力を鍛え上げてこられました。コンサルタント時代の常識にとらわれず、ベンチャーのカルチャーに刺激を受けながら、日々アンラーンできることもCOOに必要な素質と言えるでしょう。

D氏:

大学在学中に仲間と起業し、海外のテクノロジー関連企業の日本法人に入社。戦略コンサルタントとして最先端技術を使った新規事業の開発や、海外展開に従事
→同社を退職後、かつて起業した際の仲間が代表を務めていたソフトウエア会社に参画
→戦略立案やプロダクトマネジメントなどに携わり、ゲーム領域でディレクターを務めつつCOOに就任

起業経験に加え、ブロックチェーンやAIといった技術を駆使した開発経験がある人材です。戦略コンサルタントとしての成長に限界を感じていたとき、大学時代の企業仲間から声を掛けられ、AR事業の会社に参画されます。戦略を考えるコンサルタントとしての目線と、実際の体験を重視する現場目線の両方を駆使しながら、起業仲間でもある代表を、まさに右腕として支えています。COOとして手腕を発揮するには、経営層・現場・サポート役の3つの目線を持つことが大切と言えるでしょう。

E氏:

国内の大学院を修了後、海外の建築学校および企業経営学院に通い、MBA修了
→戦略コンサルティングファーム、外資系コンサルティングファーム海外拠点での勤務を経て、不動産流通事業に携わるベンチャー企業に参画し、取締役COO兼経営企画室長に就任。

ささいなきっかけで事業計画を立てたところ、中古マンションの売買サービスを運営する会社へジョインが決まった方です。コンサルとしての勤務・MBA取得の目的は「文化的な価値」を「経済的な価値」として実現することだという原点にもとづき、ベンチャーでの全事業部門の管轄というキャリアを選択されました。海外の建築学校で学んだ経歴からは、知的好奇心と行動力の高さも、COOとしての大きな武器になることがうかがえます。

F氏:

大学院を修了後、外資系戦略コンサルティングファームに入社し、大手クライアントの経営課題解決に従事
→大手インターネット関連企業に転職し、営業・事業戦略に携わった後、グループ全体の経営戦略および経営企画をリード
→タレント・プラットフォーム事業を手がける事業会社に参画し、取締役に就任。同社のCOOとしても活動。

コンサルタントとしてたたき上げられながら培ったスキルと、「直接対話する」ことに主眼を置いたスタイルを特徴とし、クライアントの課題解決に向けて奔走されてきた方です。自分自身を「企業」として捉えられるような状態を理想とし、経営企画や広報・人事担当の責任者・新規事業・M&Aなどの経験を積み、CSOやCFOの立場にも就かれたことがあります。幅広いスキル・経験を武器に、経営課題を「わが事」として捉えることが、COOとしての手腕につながっているのでしょう。

以上の事例から、COOには共通して主に下記のスキル・経験を積んだ方が就任されるケースが多いと言えそうです。

・新規プロジェクトや経営層に近い立場で一から事業を企画し運営・実行した経験を積んでいる
・コンサルとしての「俯瞰(ふかん)的な目線」と現場での「当事者目線」を兼ね備えている
・自身の力を過信せず知的好奇心を持ちながらアンラーンを重ねられる
・幅広い経験から培ったスキルを武器にCEOのサポートに尽力できる

特にコンサルタント出身者の動機として多いのは、コンサルタントの立場でクライアントの組織経営をサポートしてきたものの、「当事者としてより経営層に近い立場で事業に携わりたい」と、強い熱意を持ったことで、事業会社のCOOを目指すようになったというものです。

コンサルティングファームや事業会社、PEファンドなどで、事業の運営から安定化、M&Aなどの経験を積むことで、必然的に経営層との接触が多くなり、COOを目指していくという流れが一般的かもしれません。

最後に、COO後のパスとしては、事例は少ないですが、同業他社/異業種でCOOとして求められるケースも想定できますし、取締役やCEOに昇格するというパスがあります。

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マネージャー以上のコンサルのキャリアに関する記事

コンサルからベンチャーCOOポジションへ転職する際の鉄則とキャリアパス
https://www.axc.ne.jp/change-jobs-knowhow/23383.html

“CSO(最高戦略責任者)”の役割・CEO/COO/CFOとの違い・年収・キャリアパスについて
https://www.axc.ne.jp/media/careertips/CSO

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今回の記事では、戦略を戦術として実践し、実行部隊を統括する「COO(最高執行責任者)”」の設置背景・求められるスキル・役割(CEO/CFO/CSO、代表執行役との違い)・キャリアパスについてご紹介しました。

COOの案件紹介や、COOへのキャリアについてさらに詳細を知りたい方は、ぜひアクシスコンサルティングにご相談ください。


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