はじめに
職業を研究、開発、製造部門等の技術的なスキルを必要とする技術職と、それ以外の営業やマーケティング、総務人事、財務経理部門等の事務職に分けるとすると、経営企画部門は後者に該当するのではないでしょうか。
一般的に、技術職は理系出身者が、事務職は文系出身者が多い傾向がありますが、それぞれが描くキャリアプランにおいて、出身学部が職種と当てはまらない場合も考えられるでしょう。
文系出身者がエンジニアを目指すケースや、理系出身者がセールスやマーケティング、そして経営企画職を目指す場合も考えられます。
今回は経営企画職を目指す方に対し、文系出身者や理系出身者にとって有利なスキルを挙げつつ、それぞれの注意点について確認します。
【目次】
- 文系出身者が経営企画を目指すうえで有利と考えられるスキル
- 理系出身者が経営企画を目指すうえで有利と考えられるスキル
- 経営企画において文系、理系双方が活かせるスキル
- 経営企画において文系、理系各スキルで注意すべき点
- 経営企画は文系、理系双方のバックボーンを活かせる部門
文系出身者が経営企画を目指すうえで有利と考えられるスキル
まず、文系出身者が学業を通じて身に付けているスキルや経験について、経営企画を目指すうえで有利に働くおもなスキルを確認します。
大局的な分析力
理系出身者が、細部に渡る分析や傾向を把握する力が比較的強いのに対して、文系は大局的、総合的な視点に立った分析力に長けているといえるかもしれません。
その理由としては、文系のカリキュラムの中には、文学や歴史、社会など多様な分野の知識を習得する機会があり、これにより多面的な視点や文化、時代背景、問題や情報を捉えるきっかけともなるためです。
多くの文学作品や、社会問題に対する研究などを通じて、複雑な情報をシンプルに解読する必要も出てくるでしょう。
このような学習経験により、情報を広範囲かつ多面的に捉えることが可能となり、複雑な問題や情報を処理、分析する力を養うことができ、経営企画業務においても通じるところがあるといえます。
考えを伝える文章力やプレゼンテーションスキル
数値や数字に触れることにより、そこに強みを発揮することが多い理系に対して、文系は文章や文字に強みを持つという点が挙げられます。
文章により、具体的に分かりやすい、説得力のある内容にしていくことは、経営陣や部門長など経営企画がおもに関わってくる忙しい相手に対して、比較的発生する場面となるでしょう。
また、相手に対して正確に伝えていくという場合、文章力を有効活用することで、プレゼンテーションスキルにも寄与することが考えられます。
社内や顧客、さらには投資家に対するプレゼンテーションにおいても、難解な言葉を多用せずシンプルで、誰にとってもすぐに理解できることは非常に重要であるといえます。
この観点においても、文系ならではのスキルともいえる文章力が発揮できる場面といえるでしょう。
柔軟な視点と創造性
柔軟な視点が文系にとって有利であるという点は、抽象的な概念や複雑なテーマを扱う機会が多いことと結びついてくると考えられます。
文系になじみ深い文学や芸術分野においては、直感や感性を重視した自由な思考や創造性が求められることもあるでしょう。
理系が数値やプログラミングに代表される、論理的な思考の組み立てが重視されるのに対して、柔軟な視点としての直感的な発想、さらにそこから生まれる創造性が、文系ならではであるといえます。
このような柔軟な視点と創造性が重要であるのは、企業としてゼロから1を生み出す際に論理的な組み立てだけでは限界があることもあるでしょう。
そのため、経営企画の業務の中には、お互いに逆の概念ともいえる、柔軟であり直感的なものや、時にはロジックが固まっている論理的なものの双方が重視される場面もあります。
理系出身者が経営企画を目指すうえで有利と考えられるスキル
対して、理系出身者が学業を通じて学んできたスキルや経験について、経営企画を目指すうえで、有利に働くおもなスキルを確認します。
数学や統計と親和性
理系出身者=数字に強い、というイメージが一番近いのではないかという点において、こちらのスキルがあります。
理系においては、数学や統計学の基礎的な知識や手法を学ぶ機会が多いためですが、この知識を深める事によって、複雑な数学の考え方や計算方法、さらには統計的な考え方を熟知するうえで、活用するためのベースが付くといえます。
これらのスキルは、次に紹介する数値データを分析したり、数値データから将来を予測したりすることのベースとなるでしょう。
数値データの分析や予測
数学や統計学を学んでいる事によって、アウトプットされた数値データに対する分析や、そこから将来を予測する事に対する、説得力のある組み立てを行うことに長けているといえます。
理系にとっては、実験や観測を通じて定量的データを取得し、そのデータを分析する機会が多い点をイメージして頂ければ分かりやすいかもしれません。
また、データ分析を通じて、データの傾向やデータ間の関連などを把握するうえで、将来的にどのような事象が発生するかの、予測モデルの構築に長けていると言えます。
これによって、過去の経営データから、将来の動向を様々な解析手法で予測することができ、経営のための意思決定のベースとなる情報を固めていくことが可能です。
経営企画にとって、経営陣に対し戦略や企画の提案における定性的な情報に加えて、数値に裏付けされた定量的な分析結果があるとより説得力が増すことが期待できます。
その結果、経営陣の意思決定にも納得感が生まれることとなります。
業務プロセスの改善や業務効率化
理系出身者においては、学生時代に研究に取り組むこととなり、研究結果を導き出す過程において科学的な考え方に立脚した体系的なアプローチを行う必要があります。
研究や実験段階で、複雑化した結果が抽出されることも多く、他の結果との相互関係や因果関係を分析する必要が出てきます。
このような複雑化したものを関連付ける作業では、仕事の各業務における因果関係を整理できるとともに、どうすれば業務が最良の方向に持っていくことができるのかに通じるスキルが磨かれるでしょう。
さらに、科学的な考え方は、まずは仮説を立案して、研究や実験を通じてデータの収集や分析を行い、抽出された結果を評価。論文の記述等新たなアウトプットを通じて次のステップに進むこととなります。
そして、体系的なアプローチは、問題解決や研究において論理的に、研究チームである組織で進めることになるでしょう。
このように、理系の学習は、経営企画業務の中にもある複雑化した全社の業務プロセスを改善することや業務の因果関係を分析することにも繋がります。
結果的にどの業務を優先して手を付けるべきか、対して捨てるべき業務はどのようなものかなど、チームワークを意識した業務の効率化にも貢献できます。
技術的なトレンドへの理解力
理系出身者にはエンジニアが比較的多く、また向上心のあるエンジニアは、最新技術の習得に意欲的です。
最新技術を吸収することで、自身のこれまでのスキルを上書きしたり、時にはアンラーニングして新たな学びに繋げたりすることもあるでしょう。
そのため、技術的なトレンドについて常に確認しています。
どの企業においても、自社が属する業界や、業界に限らず影響を与える最新技術動向をキャッチし、自社の経営に活かせないかを考えていくことは必要不可欠になっています。
とりわけ、経営企画業務においては、難解な技術トレンドについても、誰もが分かりやすく理解できるように、咀嚼していくことも時には求められます。
その際には、文系出身者よりも理系出身者の方が技術トレンドに対する感度が高い方が多いため、有利といえるでしょう。
経営企画において文系、理系双方が活かせるスキル
続いて、経営企画において文系、理系の区分なく、双方が活かせるスキルについて確認してみます。
プロジェクトマネジメントやリーダーシップ
まず、プロジェクトマネジメントについてですが、プロジェクトにおいては、開発プロジェクトや、開発部門や企画部門、販売・サービス部門などが関係するプロジェクト等、企業によっては複数の組織が参加する場合があります。
例えば、エンジニア中心の開発プロジェクトである場合、プロジェクトリーダーはエンジニア出身の開発部門の責任者であることが多いでしょう。
また、開発部門や企画部門、販売・サービス部門が参加するプロジェクトにおいて、全体を把握しておく必要があるため、重要性の高い立ち位置にいるリーダーがプロジェクト全体を指揮することが一般的です。
このように考えると、理系出身のエンジニアであっても、文系出身の事務職出身者であっても、プロジェクトを率いて行く必要性が出てくることとなります。
仮に、文系出身者が得意でない開発プロジェクトを率いるとプロジェクトが進まないことが危惧される一方で、販売向けのプロジェクトで、市場理解が薄いエンジニアがリーダーシップを発揮すると、不都合が生じることもあります。
そのためプロジェクトマネジメントは、文系、理系どちらの出身者にとっても重要になってくるスキルであり、また一概にどちらに向いているという点を指摘するのも難しいかもしれません。
前述したとおり、プロジェクト全体を大局的に見て判断する場合は文系のスキルが活かされるかもしれませんし、プロジェクトの業務プロセスを効率化していく際には理系のスキルが発揮される場合もあるでしょう。
一方のリーダーシップについてですが、プロジェクトを率いていく際に必要とされるので、プロジェクトマネジメント同様にリーダーシップについても双方の特徴を踏まえていると考えられます。
例えば、メンバー間のコミュニケーションを円滑にするための伝える力としては文系の文章力や表現力などが発揮されるかもしれません。
一方で、結果が出るまで黙々と分析や検証を繰り返す理系独特のスタイルは、諦めずにやり通すリーダーシップに必要なスキルといえるでしょう。
分析結果の意思決定への活用
分析結果の意思決定への活用においても、文系、理系双方の特徴が挙げられます。
文系においては、マーケット分析を例にすると、アウトプットされた市場調査データや競合情報を分析することで、マーケットのトレンドの分析結果が抽出されます。
また、すでに文系の特徴として挙げた文章力やプレゼンテーションスキルとあわせて、説得力のある意思決定のための組み立ても可能でしょう。
そして、市場環境に対応した戦略提案やビジネスモデル提案等により、新たな市場や顧客の開拓に寄与する意思決定に活用できます。
一方の理系においては、前述した数値データ分析や予測を例に取ると、分析結果により抽出された自社の売上や財務、KPIなどのデータから、競合情報との比較により、新たに打つべき方法の定量的な提案に長けているといえます。
とりわけ経営が下す意思決定には、定性情報だけでは説得力に乏しく、一方で定量的な情報だけでは判断ができないこともあるでしょう。
したがって、定性、定量双方の意思決定のための情報が並べられたあと、決断という行動が重要となります。
決断については、日々の経験で養う必要があるため、文系、理系問わずで鍛えられるスキルであるといえます。
変化への対応力
文系、理系のどちらのスキルにも分類されないものとして、変化への対応力が挙げられます。
経営においては、変化への対応が非常に重要であり、経営企画においても経営の意思決定の都度、柔軟に動いていく必要があります。
これは文系の特徴である柔軟な視点とともに、理系の特徴である技術的な情報を中心とした、トレンドの理解の双方が発揮されるでしょう。
継続的な学習スキル
経営企画においては、担当者だけではなく経営企画部門としても継続的に新たな学習をしていく必要があります。
足りない視点があれば、新たにスキルやノウハウを貯めるべく学習を行うことで、担当者自身と組織が変わっていく必要があります。
さらに、新たなトレンドが生まれたら、これまでの固定観念を捨てて、新たなスキルを吸収すべく学習していく必要があるかもしれません。
これらは文系、理系双方にとって活かせるスキルであるとともに、持っておいた方がよいスキルであるといえるでしょう。
経営企画において文系、理系各スキルで注意すべき点
文系、理系に特徴的なスキルとともに、双方に活かせるスキルを紹介しました。
最後に、これらのスキルを養ううえで注意しておくべき点を紹介します。
保有スキルの明確化
コミュニケーションスキルに長けている理系の方や、数値分析力に長けている文系の方など、専攻と一致しないスキルを持ちあわせている方も多いでしょう。
また、文系、理系の方が本来備えておいた方がよいスキルを備えていない、または不得意という場合もあるかもしれません。
そのような場合は、自分自身のスキルの強みや弱みはどこか、その中で経営企画部門において必要とされるスキルはどのようなものなのか、現時点と理想とのギャップはどこにあるのかなどを明確にしておくことが重要です。
また、経営企画部門においては、文系、理系それぞれのバックボーンやスキルの強みを発揮しつつ、弱みを補完しあいながら業務を進めていくことが大切です。
得意な分野にフォーカスすること
学生時代に文系、理系それぞれで学習してきたことが、そのまま経営企画業務に必ずしも直結するわけではありません。
そのため、業務上活かせる分野に対して、ベースとして持っているものや磨き上げているスキルを都度活用できるかを考えていくことが大切です。
とりわけ、得意としている分野にフォーカスし、そこについて伸ばしていくことにより業務上の成果にも繋がりやすいでしょう。
弱みを克服するのも考え方のひとつですが、まずは誰にとっても取り掛かりやすい得意としている分野を伸ばすことを考えたほうが良いかもしれません。
継続的に学習するスキルでも紹介したとおり、得意分野を伸ばすためには、更なる深みを持たせることで、経営企画業務の中でどのように活かせるかを考えていく必要があります。
専門家になり過ぎないこと
経営企画業務においては、文系、理系それぞれのバックボーンとしてのスキルを発揮できる機会が数多くあります。
しかしながら、経営企画は経営陣の支援業務が多い経営のスペシャリストですが、一部の分野にのみ長けているスペシャリストではありません。
あらゆる経営課題に対処していく必要があるという点においては、ジェネラリストの視点も求められると言っていいでしょう。
そのため、これまでに紹介したスキルを磨き上げていくことは大事ですが、ある一定分野のスキルのみに過度にこだわる必要はないかもしれません。
企業の方針や経営陣の要請に応えるべく、得意分野や必要とされている分野を磨きつつも、幅広い要請に応えられるよう、対応していく必要があります。
経営企画は文系、理系双方のバックボーンを活かせる部門
文系と理系出身者の方それぞれにとって経営企画職を目指すうえで有利な点と、注意すべき点を解説しました。
文系、理系それぞれ出身の方が、専攻と一致する各スキルを持ち合わせている場合のほか、そうでない場合も想定されます。
経営企画部門は、文系、理系どちらの出身であっても、それぞれのバックボーンを活かせる部門であるといえます。
経営企画職を目指される方が、現在どのようなスキルを保有しているのか明確化し、志望対象である経営企画部門がどのようなスキルを求めているのかも、合わせて検討していく必要があるでしょう。
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