はじめに
企業のDX化ブームもあって、顧客の購買データやポイントデータ、医療面における診断データ、工場の稼働記録、物流、流通におけるトレーサビリティ、さらにはスマートフォンなどでの検索履歴や位置情報など、行動記録がビックデータとして蓄積されています。
これらを宝の山として位置づけ、AI技術も活用しながら分析や予測をしていくことで、企業にとって新たな価値を生んでいくことが可能となっています。
企業側で取得できる定量データ以外にも、メールや動画、画像、ログ、そして政府や自治体が公開している公共のデータなどの誰でも利用可能なオープンデータも加えると、さらに広がるでしょう。
今回は特に、経営企画部門におけるデータ分析と活用に焦点を当てて、効果や課題、課題への対処方法など、経営企画部門が中心となる工夫によりデータ分析や活用ができる方法を解説します。
【目次】
経営企画部門におけるデータ分析の効果や活用面での課題
経営企画部門でデータ分析、活用するにあたって、経営面における大きな効果が期待できる一方で、データ分析結果をアウトプットしても、活用が上手く行われない、活用の仕方が分からないなどの課題が企業によっては見られるようです。
具体的にはどのような効果や課題が考えられるのか、確認してみましょう。
経営企画部門がデータ分析を通じて得られる効果
まず、経営企画部門がデータ分析を通じて得られる効果は、その内容次第ですが、経営戦略の見直しに直結することでしょう。
さらに経営陣のデータの採用次第では、経営企画メンバーのアウトプットによる分析結果が、経営戦略の見直しに反映され、効果を出すこととなったら、部門として非常に大きな成果を挙げられるかもしれません。
また、コスト削減効果も期待できるでしょう。
この点については、会計分野におけるデータ分析を行うことが考えられますが、単にアウトプットされた管理会計データだけではなく、そこから費用をドリルダウンすることによって、コスト削減の鉱脈が発見できる可能性があります。
さらに、大企業になればなるほど、細かな費用の明細まで経営企画部門が毎月の決算毎に把握するのは難しく、ほぼ自動的にアウトプットされた、管理会計上の勘定科目レベルの分析で精一杯と言えるでしょう。
しかしながら、コストの要因となる鉱脈が発見され、その要因が1部門の現象ではなく、細かく分析してみた結果、他部門や連結子会社まで同様の事象があったとしたら、グループとして対策を打てるかもしれません。
セクショナリズムを打破すべく、各部横断的にシームレスに対策が打てる状況ができれば、経営企画部門としての貢献度も上がるといえます。
そして、顧客満足度の向上にも寄与することとなります。
顧客と接するのは営業や事業サイドが多くなりますが、横串でデータ分析を行う部署がない場合は、経営企画部門で動くことになるかもしれません。
具体的には、事業部門ごとに持つ顧客データを集約させて、各事業部門と連携しながら傾向分析を行い全社的な対策を打つなども、経営企画ならではの動きとして事業貢献できる可能性があります。
経営企画部門がデータ分析を有効活用できていない理由
一方で、折角あるデータでも企業として有効活用できないことも多いでしょう。
ただでさえ少数精鋭の経営企画部門が、通常の業務を回すのに精一杯となり、細かなデータ分析を行うことは現実的に難しいという声も聞こえてきそうです。
そのような状況から、まず考えられるのが、データ収集と管理に関する問題です。
そもそも顧客データや購買データなどが上手く取得できる環境に至っていないことや、仮に取得できるようになっていたとしても、データが蓄積され続けており、他の業務に忙殺され放置されている状況もあるでしょう。
続いて、データ分析スキルの不足によるものも考えられます。
経営企画部門として、ある程度の隙間時間ができたとしても、蓄積されているものをどう活用すればいいのか分析手法が分からない、またどのようなアウトプットが求められているか理解できないなども考えられるでしょう。
そして、何とか時間を確保してデータ分析を行ったにもかかわらず、企業として定量的なデータ活用の文化がなく、経験や勘による定性的な意思決定が中心となってしまっているかもしれません。
このような場合は、経営企画部門だけで改善できる課題ではなく、全社的に改善していかなければならない課題として位置づけられることとなります。
データ分析に割く時間でさえも確保が難しかったのに、さらに労力やリーダーシップを必要とするものとなり、中々動かしにくいものであるのも事実です。
データ分析結果を活用するために経営企画部門として対応すべきこと
データ分析の活用面における効果や課題を確認したところで、経営企画部門としてどのようにこれらに向き合っていけばいいのでしょうか。
具体的な動き方について、本章で確認していきます。
データ分析の戦略的位置づけの明確化
まず、データ分析をなぜ行うのかという点を明確化する必要があります。
そのためには、経営ビジョンとの連携や経営陣の十分な関与、そして経営企画部門のリーダーシップの発揮などが必要です。
経営ビジョンとの連携としては、企業経営の中で将来のあるべき姿を描くことにより、そこに行きつくためには戦略的な決定や、事業の成長が必要となります。
戦略的な決定を行うには、その前に戦略を具体的に立案していく必要があります。その際に根拠となるのは、企業の資産ともいえるデータをフル活用したものであるべきでしょう。
さらに事業の成長には、事業戦略の構築や事業計画の蓋然性などが重要となり、その裏付けとなるのは、企業が蓄積したデータによる過去の分析や将来予測など、根拠ある打ち出しになると考えられます。
根拠がある打ち出しは、定性的な勘や経験よりも、データに裏付けされた定量的な分析結果によるものの方が客観性、納得性、信頼性においてもより高いと考えられます。
これらを推進するためには、経営陣がデータドリブンな経営を推進していくことを打ち出していくとともに、データ分析結果を常に求め、結果をもとに経営判断をしていく姿勢も重要であることは、言うまでもありません。
これらをまとめ上げていくには、経営陣の参謀的な役割を果たしていく経営企画部門の動きが重要であり、全社に対するリーダーシップを発揮して動いていく必要が出てくるでしょう。
課題となりがちなリソースの確保ですが、経営重要事項として、経営陣とも整合性を取りながら、何を優先事項とすべきかを決めていくことも必要です。
そして、データ分析業務に対する経営企画部門としてのコミットメントを高めていくことも重要であると考えられます。
クオリティが高いデータ収集やデータ整備
企業としてデータ分析の位置づけが明確になった次にすべきことは、データ収集やデータ整備の方法の決定です。
その前に全社的な取り決めとして、データガバナンスを決めて、データの収集、蓄積、利用のルールやデータの監視体制等を決めておかなければなりません。
ガバナンスとは、コーポレートガバナンスという言葉でお馴染みですが、この場合は企業統治と訳されたりします。
データガバナンスをデータ統治という意味合いで考えてみると、イメージしやすいのではないでしょうか。
更に、データ品質を考える必要があります。
仮に企業として取得したデータに数年前の古いものも含まれており、そのデータをもとにデータ分析し、アウトプットをして企業の意思決定に活用しようとしても、最新の情報として考えるのは難しいでしょう。
また、分析加工の段階で、二次データとして違った形でデータが集計され、さらにそれを用いて三次データをアウトプットするとなると、データの品質に問題が発生してしまうこととなります。
そして、データ分析結果が、意思決定側である経営者や利用者側であるマーケティング担当者にとって、分かりやすいものに仕上げていく必要があります。
経営企画部門が行ったデータ分析結果を渡したものの、意思決定側や利用者側が改めて分析し直す事態は避けなければなりません。
そのために根拠となるデータは保持しつつも、分かりやすい可視化ツールを選択する必要があるでしょう。
データ分析人材の確保と育成
経営企画部門内で抱えるか、他部署で抱えるかの違いはありますが、データ分析を行うための人材を確保したり、場合によっては社内のメンバーを育成したりすることは、経営戦略上今後どの企業にとっても不可欠となるでしょう。
優秀なデータサイエンティストを採用できればいいですが、報酬が高額であったり、引く手あまたであったり、中々自社に適したメンバーが採用できるとは限りません。
さらに会社のビジョンや方針とマッチしていないと、運よく採用できたとしても他企業に転職していくことも考えられます。
また、利用者側にとってもデータリテラシー向上は必要であるため、データ利用のスキルを磨いていく必要があります。
経営企画部門におけるデータ分析文化の醸成
本章の最初で、データ分析を行う際には、経営陣の十分な関与が必要である点に触れました。
経営陣としては、データドリブン経営に基づいた、データに基づく戦略立案や意思決定を徹底していくことが求められてくることとなります。
経営企画部門内では、経営陣の意向に沿って、データドリブン経営を浸透させていく必要があるでしょう。
そのためには経営企画部門が率先して、経営企画部門内での情報共有や、部門間でのコラボレーションの推進、協働でのデータ分析なども必要になってくることとなります。
とりわけ経営企画部門内では、データ分析とデータ活用をベースとした目標を置き、人事評価と連動させれば、データ分析を意識する仕組みも構築できるでしょう。
経営企画部門外への全社的な展開
経営陣のコミットメントをベースに、経営企画部門内でいくらデータ分析力に秀でていても、全社としてのデータ活用に結びつくとは限りません。
最終的には、経営陣、経営企画以外の各部門や、レイヤー問わず末端社員までデータ分析カルチャーが醸成されていることが望まれます。
すなわち、データドリブン経営の全社的な浸透が重要であるということになります。
そのためには、時には推進する経営企画部門においてリーダーシップを発揮していくことも求められるでしょう。
データ分析結果を活用する側であるメンバーに対しては、使い方をレクチャーする必要があるかもしれません。
また、マーケティング部門や営業部門に対して、自部門に有益なデータ分析を自ら実践してもらう必要があり、企業によってはエバンジェリストとしての動きも求められるかもしれません。
そして、分析データを全社的にいかに有効活用してもらうかも重要な論点です。
時間を掛けて分析はしたものの、結局利用しない、また役に立たないデータであったということは避けなければなりません。
そのため、データ分析を通じた各部門における活用情報や、成功・失敗事例を全社的に共有することで、同じ間違いをしない、または作業や意思決定のための手間を省くことも考えていく必要があります。
各部門への新たな取り組みとして活用してもらうことも、経営企画部門が果たす役割として重要となってくるでしょう。
経営企画におけるデータ分析の活用・導入のポイントまとめ
データの活用はマーケティング部門が中心であったり、大企業なら専門的にデータを分析する部門やチーム、プロジェクトもあるかもしれません。
特に経営に直結する経営企画部門においては、企業が入手できるデータを分析して、経営面での意思決定に寄与するデータ活用が求められます。
そのため、技術的かつ統計的な側面からデータを専門的に扱う職種として、データサイエンティストがクローズアップされることも非常に多くなってきました。
データサイエンティストが経営企画部門に配置されることは少ないかもしれませんが、どちらも企業の重要な意思決定を担う役割として位置づけられるでしょう。
経営企画部門が中心となって、企業の膨大なデータを分析し金鉱を掘り当てていくことによって、経営に対する新たな価値の創出に多大なる寄与を及ぼす可能性があります。
経営企画部門がデータ分析や活用に強くなることはもちろんのこと、全社的にデータドリブンな組織を構築していくことが、今後の企業の強みを構築するうえで不可欠となるでしょう。
そのためには、全社的にデータ分析とその活用が価値ある行動であるという文化の醸成とともに、経営企画部門だけではなく他部門においても、データ分析を行うスキルとデータ分析結果を上手く活用していくスキルを、ともに身に付けていくことが求められます。
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>DXや経営企画へのキャリアに関する記事
Ridgelinez株式会社 BS(Business Science) Practice インタビュー/「データサイエンティストのスキルを持ち、データ活用のTo Beモデル構想から実装までできるコンサルタント」を輩出するBS Practice
https://www.axc.ne.jp/media/companyinterview/ridgelinez2
コンサル出身で活躍できる経営企画(業務)、できない経営企画(業務)の違い
https://www.axc.ne.jp/media/careertips/consultant_to_corporateplanning
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今回は、経営企画におけるデータ分析の活用・導入ポイントをお伝えしました。
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