経営企画職は、予算策定や予実管理、特命事項への対応、会議への出席等、決まった業務やそれ以外も含めて対応すべき業務が多岐にわたる職種です。
そのため、営業時間内は経営陣とのコミュニケーションや、会議への出席、関係者との調整業務等に充てる必要があることから、労働時間が比較的長くなる職種であるといえるでしょう。
今回は経営企画職における残業の実態や、仕事がつらいタイミング、経営に直結する比較的厳しい環境に置かれる中でも、経営企画職として成果を出すために必要なポイントを紹介します。
【目次】
経営企画職の残業の実態は?
はじめに、経営企画職の残業の実態について確認します。
中でも経営企画職の残業時間や、会社が定める労働時間を超過し、残業となってしまう理由についても、調査データをもとに検証していきます。
経営企画職の残業時間はどれぐらいなのか?
経営企画/事業企画の残業時間は月27.7時間となっており、平均全職種における月間の平均残業時間21.9時間よりも少し上です。
参照したのは、2023年4~6月、転職サイトdodaがビジネスパーソン15,000人に調査した「平均残業時間ランキング【94職種別】」です。
こちらの統計では、コロナ禍が次第に解消され、各職場において残業時間が増えている傾向がうかがえますが、コロナ禍前の2019年の24.9時間には戻っていない状況です。
経営企画職であれば、毎日ほぼ1時間を超える程度は残業しているという見方もできます。
一方で、残業時間トップは42.2時間のプロデューサー/ディレクター/プランナー(出版/広告/Web/映像関連)であり、企画/管理系職種としては、リサーチ/市場調査(28.6時間)が経営企画職を上回っています。
こちらのデータでは、仕事の特性上、自分自身や部門内では中々完結しない、他の関係者の動きに影響される職種や、より深い分析やアウトプットが業務上要請される職種が上位に来ているようです。
経営企画職はどのような理由で残業となるのか?
続いて、経営企画職はどのような理由で残業が増えているのか、確認してみます。
やや古いデータですが、日本総合研究所が2016年4月に公表した、「経営企画部門の実態」から、874社に聞いたアンケート調査結果より確認してみます。
この調査の興味深い点として、増益傾向の企業と減益傾向の企業の、回答率の差を集計している点が挙げられます。優良企業ともいえる増益傾向の会社における経営企画部門の傾向は、業務改善面での参考になるでしょう。
また、調査では経営企画職における残業について直接触れている訳ではありませんが、調査の中では「時間をかけている業務」についてのアンケート結果が掲載されています。
その業務自体が経営企画職として時間が掛かっているとも考えられ、少なからず残業に影響を与えていると捉えることもできます。
増益傾向の企業で相対的に高い回答として、「企画立案活動」「企画計画推進の旗振り」となっており、減益傾向の企業では「情報収集活動」「定型的な資料作成」となっていました。
さらに、売上規模が1,000億円~3,000億円未満の企業においては、情報量の多さと情報収集に掛かる時間が負担になっているとうかがえる回答があり、このステージの企業においては、情報収集が業務上における課題となっていることも考えられます。
これらの業務が多少なりとも経営企画業務の中で時間が掛かっている業務であり、残業の要因と考えることもできます。
ただしこちらのアンケート対象は、2015年11月時点における上場企業や、上場企業と同数の直近売上高100億円以上の非上場企業であり、経営企画の専任者が全体平均で6人いる企業規模です。
そのため、それ以下のベンチャーやスタートアップ、中小企業の経営企画部門は対象外であることから、そのような規模の企業は、そもそも経営企画職1人あたりに対する業務が集中することも、残業の理由として想定されそうです。
経営企画職において仕事がつらいと考えられる理由
経営企画職として働くうちに、仕事がつらいと感じるタイミングと理由を、経営企画の特性面から具体的に確認してみます。
経営陣からの突発的な要請が多い
経営企画職の多くの方が感じているのが、社長や他の役員をはじめとした経営陣からの突発的な要請が多いという点ではないでしょうか。
経営陣からの要請については、基本的には断ることが難しく、他の仕事を後回しにしてでも優先して対応しなければならないと感じている方も多いのではと想定されます。
そのような場合には、これまでに予定していた業務が一時的に中断され、新たに突発業務を入れ込まなければならず、ストレスを感じる方も多いと考えられます。
経営陣や事業部門との調整が比較的多い
会社や部門の意思決定においては、経営陣や部門長との確認や意思疎通等、調整に割かなければならない時間も比較的多いと考えられます。
調査データ「経営企画部門の実態」では、経営企画と経営層とのコミュニケーションは、平均週に2回弱(1.8 回)発生することが判明しました。中でも経営トップ層と、毎日コミュニケーションを取っている経営企画部門は全体の14.3%を占めるという結果が出ています。
ここから、経営陣との頻繁な調整や前述した突発的な要請も出てくると考えられます。
さらに、意思決定以外でも、ベースとなる資料作成や課題検討においては、各部門のメンバーやリーダー層との確認作業等が必要となってきます。
同じ調査データから、経営企画部門と現場のコミュニケーション頻度は平均週に1.6 回だと判明しました。現場と毎日コミュニケーションしている経営企画部門は全体の14.9%を占めています。
調整の過程において、新たな課題が発生したり、認識が違っていたりして、これまでまとめあげてきたことに対して手戻りが必要となることもあるでしょう。
経営企画職においては、社内におけるあらゆる階層のメンバーとの調整が多数発生することから、比較的時間が取られてしまう傾向があります。
経営層とともに出席しなければならない会議が多い
社長が出席する会議をはじめとして、役員や部門長が参加する会議には、時には事務局を兼ねながら出席しなければならないことが多いのも経営企画職の特徴です。
社長だけではなく、部門長や関係会社幹部との会議や、部門内の連絡会議等を含めると、経営企画職は一日が会議で埋まる可能性も考えられます。
また、組織が比較的大きく、どの部署が何をやっているのか分かりづらい場合においては、お互いのコミュニケーションを取ること自体が大変です。したがって「共有会」と称される会議に、全社を把握する立場である経営企画職が参加する必要もあるでしょう。
果たして出席する意味があるのか、また何のための会議か等、経営改善や効率化をより意識する経営企画職であれば比較的意識することも多いですが、担当役員や上長の要請によりやむを得ず会議に出席しているということもよくあることです。
タイムマネジメントや業務の優先付けが難しい
前述の通り、突発的な要請、経営陣や部門との調整、さらには会議への出席等、これらが重なると業務上のタイムマネジメントや業務の優先順位付けが難しくなってくることとなります。
この中からどれがアウトプットとして急ぎの作業なのか、見極めることが難しい場合もあり、上長との確認を取りながら優先順位を決めなければならない手間も考えられます。
そして優先順位を決めると、他の業務の優先度を下げなければならないことも発生するでしょう。
もしかしたら、上長や業務上連携する他部署へのしわ寄せが発生して、アウトプットの遅延によって迷惑を掛けてしまうことも考えられます。
経営に関連する要請が全て回ってくる
経営に一番近い経営企画なので、経営に関する問い合わせや対応事項は、経営企画部門にお願いしたら良いだろうという見解が、社内の共有認識となっていることが多いでしょう。
そのため、現場や事業部門の顧客から寄せられる要請や、社内での対応事項等の要請を含めて、経営企画部門に回って来ることがあります。
具体的には、顧客からの経営面に関する調査データの集計依頼や国や自治体からのアンケート実施、自社が属する市場に関するデータの集計要請や作成等、自部門ではなかなか対応できない依頼事項は、経営企画部門にて対応しなければなりません。
とりわけ簡単なデータや、経営に直接影響がない対応であればおもにメンバー層の役割となり、追加で対応事項が増えることとなります。
経営企画職で残業の負担を減らしながら成果を出すためのポイントとは?
経営企画職として、会社や所属する経営企画部門において、残業の負担を減らしながら成果を出すためのポイントを解説します。
半期や年間で達成すべき到達目標と行動計画を明確化する
経営企画職として、個人で半年や年間を通じて達成すべき到達目標と、そのための行動計画を明確化することから始める必要があります。
部署全体で何を成果とするのか明確にしなければ、自分は一生懸命やったけど、社長や経営企画部門長からすると、成果になっていないとの評価を受けることとなってしまいます。
多くの企業においては、個人の目標を策定し、その達成度に応じて半年や年間の評価を行うことになっていることがほとんどでしょう。
経営方針や全社計画に則って、自分自身の到達目標や行動計画を具体的に立案していくことから始めなければなりません。
到達目標や行動計画に対する進捗やギャップを日々確認する
到達目標や行動計画を策定し、担当役員や経営企画部門長と合意できたら、その達成に向けて動いていくことになりますが、成果を出すためには、目標や計画に対する進捗を常に確認していく必要があります。
ありがちなのが、期初に目標や計画は立案したものの、その進捗確認がなされないまま時間が経過してしまい、ふたを開けてみると計画通りに進行しておらず、さらには目標に到底辿り着けない状況であったり、進行が違った方向になってしまったりしていることです。
業務が経営に直結する経営企画職にあっては、経営方針やミッションの変更により、当初立てていた目標や計画とのギャップが出てしまうことも考えられます。
当初立てた目標や計画と、今後向かっていく方向性が合致しているか、上長との1ON1面談や会議等により、目標立案からあまり時間をおかずに定期的に進捗確認することも重要です。
業務の優先順位付けノウハウを身に付ける
経営企画の業務は、経営層からメンバー層、さらには多くの他の部門や子会社と連携しながら業務を実施していく必要があることから、常にマルチタスクになりがちです。
普段からそのような状況にある中で、経営層からの突発的な業務や特命事項が入るため、随時業務対応の順番を柔軟に変更しなければなりません。
したがって、アウトプットまでの時間や、検討に時間がかかる事項等を考えながら、何を最優先で対応しなければならない業務なのか、またどの部門の誰からの要請を優先しなければならないのか等、業務の適切な優先順位付けが必要となります。
プロジェクトや業務の進捗管理を適切に実施する
業務の優先順位も的確に見極める必要があることから、担当として実行するプロジェクトや自身の業務の管理も重要です。
そのため、各業務やプロジェクトに遅延がないように、進捗管理を適切に実施することも重要と言えるでしょう。
先述した個人においても、プロジェクト全体においても、進捗管理を同様に行っていくことが重要となります。
経営陣や現場部門長、子会社等の関係者との円滑なコミュニケーションを図る
経営企画職においては、業務が個人で完結することはあまりなく、関係者との円滑なコミュニケーションを通じて成果をあげていかなければなりません。
経営企画職のスタンスは、企業や経営企画部門の方針によって違いはあるものの、重要度からして社長をはじめとした経営陣寄りになりやすいです。
調査データ「経営企画部門の実態」では、経営企画部門と現場(事業部門)のコミュニケーションにおいて、頻繁に現場とのコミュニケーションを図っている反面、3社に1社以上(35.2%)は、現場とのコミュニケーションが月に1回以下というデータも出ています。
すなわち、3分の1以上の経営企画部門は、現場よりも経営層とのコミュニケーションを重要視しているとも言えるかもしれません。
経営陣だけではなく、現場側と円滑なコミュニケーションを図ることができれば、先述した情報収集に時間が掛かるという点も解消され、現場の課題が柔軟に吸い上げられるとともに、ミッションや目標が達成できる確率も上がることが期待できます。
まとめ:経営企画で残業の負担を減らすために
今回は経営企画の残業の実態や、仕事がつらいと考えられる理由、そして、そのような中でも経営企画職として成果を出すためのポイントについて紹介しました。
経営企画部門は、社長をはじめとした経営陣だけではなく、現場の事業部門の要請に応えていく必要があり、上下左右の組織と円滑にコミュニケーションを取りながら、計画や目標との乖離がないように業務を調整・遂行し、成果を出す必要があります。
そのためには、突発的な業務が入ったとしても、他の業務と並行してこなしていくためのマルチタスクスキルも身に付けておく必要があるといえます。
業務上、つらい立場にある経営企画職ではありますが、それだけに非常に遣り甲斐もある職種と言えるでしょう。
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