双方ともスタッフとして位置づけられることも多い経営企画部門と広報部門ですが、部門名から何となくお互いの役割や業務内容など、イメージがつくでしょう。
一方で各部門について、役割や社内の組織形態など、並べて語られることがあまりないのも事実です。
今回は両部門を比較しながら、各部門の役割や位置づけ、組織形態のあり方、さらには各部門において共通する点や異なる点を中心に解説します。
【目次】
経営企画部門と広報部門の役割
まず、経営企画部門と広報部門のそれぞれの役割について、確認していきます。
各部門はスタッフ部門として全社に関わる業務を担当しており、ライン部門や他のスタッフ部門の成果のために機能する部門として位置づけられます。
経営企画のおもな業務や役割
経営企画部門のおもな業務としては、計画や戦略、事業管理、仕組みの構築など、経営層に近い所での業務が中心となります。
具体的には、全社戦略や事業戦略の構築、中期経営計画、年度予算の立案・集計、月次決算に関する管理会計業務、事業面でのKPI管理などの計数管理業務、経営層からの特命課題の対応など、業務範囲としては多岐にわたります。
経営層が意図することを上手く汲み取り、自分なりに理解して業務に落とし込むスキルや、戦略の基本的な考え方、経営指標の理解などのスキルが重要となる立場です。
また、経営企画部門の設置が多い上場企業においては、対外的な投資家に対して、戦略の説明や資料開示を行うことも考えられます。
大企業にとっては一般的であるIR部門が独立して存在する場合、経営企画、IRお互いの業務面での役割の明確化とともに、資料作成などにおいて、作業分担を行いながら実施することもあります。
そして、経営特命事項として資本業務提携やM&Aを秘密裡に検討する場合、交渉や相手企業の戦略の理解、企業価値算定などのスキルも必要となるでしょう。
戦略スタッフとして、戦略を考えながら経営計画を練るという、会社の未来を経営陣とともに考えていく非常に重要な役割を担っていると言っていいと考えられます。
広報のおもな業務や役割
対する広報部門としては、社内外を問わず、社内の状況を的確に伝えていく広報活動が中心となります。
社外においては、プレスリリース内容の社内でのとりまとめやリリース案のチェック、リリース後の問い合わせなどがあるでしょう。
近年では、X(旧Twitter)やFacebook、Instagram、YouTubeを使ったPR活動も、どの企業でも行うようになっていますが、これらのメディアを活用した情報提供は広報部門が運用することが多くなっています。
さらにはテレビや雑誌、新聞各社、Web媒体などのメディア媒体とのリレーションの構築や、経営陣に対する取材対応と調整、PRのためのアタックリストの構築も重要な業務です。
リリースについては、自社PRを行うことでより拡散し良い効果をもたらすメディアはどこなのかなどの知見を、組織としても貯めていく必要があります。
PR活動の善し悪しによっては、企業が展開する製品・サービスの販売状況にも影響するためです。
また広報と聞くと一見して対外的な広報が取り上げられがちですが、ビジョンやミッションを大切にしなければならない企業としては、社員に対する広報活動も重要な業務となります。
対外と社内の双方において、伝えるべきことを伝えるべき相手に的確に伝えることで、会社の価値を向上させていく重要な役割を担っているのです。
経営企画部門と広報部門の組織的な位置づけ
続いて、経営企画と広報が組織的にどのような位置づけにあるのか、それぞれのケースを想定しながら、組織上のメリットやデメリットも含め確認します。
経営企画部門は他部門からは独立した、戦略スタッフとしての考え方が中心であるため、広報部門の組織の位置づけを中心に紹介します。
今回紹介する各組織形態は、企業の戦略や方針などにより見解が異なることもありますので、一例としてご参照ください。
経営企画と広報がともに戦略スタッフの場合
まず、経営企画と広報の位置づけとして、ともに経営直属組織としての戦略スタッフである場合が考えられます。
この組織形態の特徴として、経営と直接リンクしているため、経営陣との意思疎通が図りやすい点が挙げられます。
とりわけ、企業間での事業提携や、経営戦略的な開示・PRが多い場合など、経営に関わる業務を、迅速かつ柔軟に進める必要がある場合には有効と言えるでしょう。
また、経営陣と距離が近いことからコミュニケーションが取りやすい一方、経営陣の意向や戦略面を含めた理解などを深めていく必要があります。
そして、経営企画側だけではなく、広報部門においても経営戦略や方針を理解するスキルが必要となります。
さらに、両組織において経営陣の意向が色濃く反映され、考え方や動きが経営寄りになることから、業務の優先順位の見極めなど、事業部門をはじめとした各部門との調整力が必要になるでしょう。
広報が管理スタッフの場合
広報部門が経営直属の組織ではなく、管理スタッフとして位置づけられる場合が考えられます。
広報部門として独立している場合と、管理部門内に設置される場合を確認していきます。
広報部門が管理部門や事業部門などとともに、独立した横並び組織となるケースですが、この場合は広報機能を外出ししているため、他部門との連携がしやすいことが考えられます。
また、広報部門が独立しているという点では、組織力が発揮できる上、経営だけではなく事業にもコミットする広報機能を期待されていると言えるかもしれません。
そのため、経営陣と事業部門の双方に配慮しなければならないことから、高いコミュニケーションスキルが要求されるでしょう。
さらに、管理部門の中に広報機能が含まれる場合です。
総務や人事担当と兼務など、人的リソースを広報だけに割けない場合には有効的であるのに対して、広報の独自性が発揮されないことや、専任でない場合は広報にフルコミットできないことから、全社的に広報活動が弱くなることが懸念されます。
加えて、管理部門の意向に左右されるため、経営陣や事業部門との連携がしづらくなる点も懸念されます。
広報がマーケティング部門にある場合
企業によっては、広報機能が製品・サービスを中心としたプロモーションを行うマーケティング機能と一体化しているケースが考えられます。
この組織では、プロモーション業務を含むことが想定されるため、自社が打ち出したい製品・サービスのPRが強化される半面、それ以外の、経営面をはじめとする全社的なPR活動が弱くなる可能性があります。
さらに、経営企画と広報の関係性においては、お互いに遠い位置関係となり、連携が図りづらいと言えるかもしれません。
企業におけるPR活動が、製品・サービスが中心である場合には有効的といえますが、そうでない場合は、広報担当者の目標や評価において、企業PR業務における成果度合も入れておくことも必要となるでしょう。
IR部門が含まれる場合
経営企画や広報とともに深いつながりがある組織としてIR部門がありますので、合わせて紹介します。
まず、オーソドックスな組織形態は、広報・IR部門として組織が編成されているものです。
経営陣と直結した、対外的に伝えることに特化する組織がまとまった形態です。
戦略面、数値面、会社が実施すべきPR面など、経営陣の意向を踏まえて伝えやすい組織形態といえます。
広報・IR部門責任者は、広報のPRに秀でたスキルに加えて、経営戦略や経営数値を理解するスキルが求められ、担当者のスキルによっては経営企画担当者が同席してIR活動を行うなども考えられます。
この課題を解消するという形態として、経営企画部門の中にIR機能がある場合も考えられます。
広報部門は広報PR活動に専念し、IR機能は経営企画部門内に機能を持たせることで、より経営戦略的な位置づけを打ち出せる形となります。
一方、経営企画部門責任者や担当者は、経営状況を上手く投資家に伝えるコミュニケーション能力が重要となります。
経営企画と広報で共通する点や異なる点とは
経営企画、広報の各機能において共通する点や異なる点について確認するので、事前に必要なスキルや知識を理解する上で参考になさってください。
経営企画と広報の共通点は?
まず、経営企画と広報の各部門において共通する点です。
組織形態についてどれに該当するかの違いはありますが、どの形態であったとしても、社内情報を的確にキャッチアップして、活用していく業務が中心となります。
経営企画であれば、経営陣の意向や事業面での数値と戦略、広報であれば、会社が発信したいトピックスの吸収や、各事業におけるプレスリリース情報など、的確にキャッチアップしていくことが重要です。
そのため、スタッフ組織として各ライン組織のメンバーとのコミュニケーションを深めていくことと、事業理解が欠かせないと言えます。
さらに、経営陣と連携する重要な部門であるため、経営戦略の理解や、経営陣が意図していることの把握なども重要な要素です。
会社のカルチャーや組織の位置づけにもよりますが、双方とも事業部門や営業部門などのライン部門間との連携がしやすい組織とも言えるでしょう。
経営企画部門にとっては、経営陣への伝達役・全社のまとめ役として、事業面での数値や事業進捗報告などが欠かせないこととなります。
そして広報部門にとっては、事業部門や営業部門から考えると対外的なPRが上手く行われることにより、事業に好影響を及ぼすことから、広報への期待も高まるでしょう。
また、経営企画、広報双方の部門は、事業部門の外側にいるため、会社全体の成果や全体最適という、共通の目的や目標を持ちやすいことが挙げられます。
具体的には、企業価値向上や企業のポジショニングを明確化するという目的があれば、経営陣と経営企画が立てた戦略的な考え方を、広報を通じて速やかに伝えていくことも、お互いに連携することで可能でしょう。
経営企画、広報という専門性が高い部門特性から、各部門において得意分野や独自のスキルを持つ専門人材がいることも共通点として挙げられます。
経営企画と広報の異なる点は?
経営企画部門は戦略スタッフとしての位置づけが色濃くなりますが、広報部門は先述した組織形態や企業方針によっては、戦略スタッフにも、管理スタッフにもなり得る可能性があります。
また、それぞれの人材像の違いも挙げられるでしょう。
経営企画は経営分析や全社戦略構築のノウハウを持ちながら、経営数値に明るい方がどの企業にも多くいらっしゃいます。
対して、広報は対外的な媒体ネットワークをもち、コミュニケーション能力の高さとともにPR戦略のノウハウを持っている方が多いでしょう。
筆者の経験からすると、経営企画と広報の双方のスキルに長けている人材は少数であると考えられます。経営企画+IRができる人(経営企画で投資家へのコミュニケーション能力に長けた方)はいらっしゃったと感じますが、いずれも求められるスキルが異なる分、強みも異なるのが一般的でした。
また企業リスクを見ていく視点にも違いがあります。
具体的には、経営企画は全社のリスク管理などを担う部門です。必然的に、社内のコンプライアンス面においてリスク管理に目を光らせることが多いでしょう。
対して、広報は対外的な企業の評判に対するリスクに、常に目を光らせることが中心です。
特にPRでリリースする内容については、裏付けや根拠を取りつつ事実を伝えていくことで、評判や風評被害のリスクに当たらないか、慎重に検討していく必要があります。
また、先述の通り、経営企画と広報はお互いに連携することも多々ある中で、経営企画は全社戦略や数値面での開示などIR業務により近い面があります。
対して、広報は企業のイメージアップや、事業面でのリリース告知など、PR業務を専門とする点で、情報の内容においても違うものとなるでしょう。
さらに、経営企画と広報各部門に所属するスタッフのキャリアプランも異なるものがあると考えられます。
営業や事業部門、さらには管理部門経験者が経営企画職を志向することもありますし、広報職を志向することも考えられます。
中堅社員になるまでは、各部門に行きつくまで同じようなキャリアを積んできている可能性があるかもしれません。
その後、経営企画または広報とキャリアが分かれ、お互いに専門性を高めていくことになります。
その結果、経営企画部門のメンバーが広報を志向する、または広報のメンバーが経営企画を志向することは比較的少数かもしれません。
経営企画、広報のキャリアを経て、キャリアアップを通じて各々経営陣に参画する場合は、それぞれの特徴を活かした担当役員として活躍することが期待されます。
経営企画部門と広報部門ではスキルやキャリアプランなどが異なってくる
経営企画部門と広報部門は、全社のとりまとめに関わる部門として、どの企業においても非常に重要な役割を果たしています。
組織の位置づけとしては、ともに独立した組織体として経営陣に直結する場合や、広報機能が各部門と横並びになる場合、そして広報機能が一部別部門の中に位置づけられる場合を紹介しました。
また、各部門のミッションや動き方、そして関係各所と連携を行いながら業務を行う点は共通する一方で、業務のアウトプットや成果の定義、所属するメンバーのスキルやキャリアプランなどが異なってくる点が特徴として表れることとなります。
=================
>経営企画へのキャリアに関する記事
経営企画と事業企画の違い【キャリアパス~年収~必要なスキルと経験まで】
https://www.axc.ne.jp/media/careertips/planposition
「経営企画室」の組織図と特徴【日系・外資系別】
https://www.axc.ne.jp/media/careertips/corporate_planning_organizationchart
企画職の仕事内容とは【職種別:経営企画/事業企画/マーケティング/営業企画】
https://www.axc.ne.jp/media/careertips/planningworks
コンサル出身で活躍できる経営企画(業務)、できない経営企画(業務)の違い
https://www.axc.ne.jp/media/careertips/consultant_to_corporateplanning
=================
今回の記事では、経営企画と広報の違いについてお伝えしました。
キャリアでお悩みの方は、ぜひアクシスコンサルティングにご相談ください。
アクシスの求人のうち、
約77%は非公開。
平均サポート期間は3年です。
各ファームのパートナー、事業会社のCxOに定期的にご来社いただき、新組織立ち上げ等の情報交換を行なっています。中長期でのキャリアを含め、ぜひご相談ください。