経営企画は将来的にはどのような立ち位置が求められ、また経営企画に従事するメンバーにはどのようなスキルが求められるのでしょうか。
企業経営の中枢を担う経営企画部門は、企業戦略や全社管理を行う立場であることから、重要かつ常に必要な部署であると言えるかもしれません。
今回は経営企画の将来性を考えながら、経営企画業務がAIに代替される可能性について確認してみます。
加えてAIに代替されない業務を確認するとともに、経営企画でスキルを積みながら生き残っていくためのコツ、キャリアアップしていくための具体的な方法について解説します。
【目次】
- 経営企画の将来性は
- 経営企画業務がAIに代替される可能性は
- 経営企画として生き残るためのコツとは
- 経営企画でキャリアアップするための方法
- 経営企画の将来性が不安なら既存の経営企画業務に安住しないことが大切
経営企画の将来性は
経営企画の業務はどのように捉えられているのか、経営企画部門の役割の重要性や経営企画の賃金の傾向から、将来性を考えてみます。
経営企画部門の役割の重要性
株式会社日本総合研究所のレポートによると、経営企画部門の業務として、中期経営計画の策定や進捗管理、ビジョン・事業領域の設定や再設定、経営トップの特命プロジェクトの推進など、中長期的な将来を考える業務が多い傾向があります。
また経営面全般における、比較的明文化されていない役割やミッションを実行する役割が期待されており、業務やミッションを自ら発掘し、新たな役割として据えていくことが期待されています。
経営企画の将来性の有無は気になるところですが、少なくとも、まさに経営企画部門が中心となって会社の将来を創っていくという役割を担っているといえるでしょう。
経営企画の賃金の傾向
経営企画の賃金の傾向について、株式会社パーソル総合研究所が2022年9月にリリースした「賃金に関する調査」から確認してみます。
調査において、経営企画従事者の中で前年と比べ賃金が増加したと答えた人の割合が、上位32職種中、6番目に位置づけられていました。
逆に賃金が減少したと答えた割合は、下位4番目であることから、賃金が増加した方が多く、減少した方が少ないという位置づけにあります。
そのため、経営企画は賃金を上げてでも雇用を継続したいという意向が、調査データから伺えます。
また、年収も800万円近くと、役員に次いでトップクラスの高年収であるという結果も出ています。
収入の満足度においても、32職種中3番目に高いことから、一般的には魅力的な職種でしょう。
これらの傾向から、経営企画は給与も高く、企業としても減給にはできない貴重な存在である、花形職種ではないでしょうか。
転職志望者であれば、「将来性のある仕事」という印象を受けるかもしれません。
実際に多くの企業は「将来的な成長を担ってくれる、重要ポジション」に位置付けていると考えてよさそうです。
経営企画業務がAIに代替される可能性は
将来的に人が行う多くの業務は、AIに代替される可能性があることが言われて久しいですが、経営企画業務はAIによる代替の影響を受けるのでしょうか。
AIに代替される可能性がある業務は自動化可能な単純作業
経営企画業務のAIによる代替性を確認する前に、一般的にAIに代替される可能性がある業務について触れておきます。
2015年に株式会社野村総合研究所が英オックスフォード大学と行った共同研究によると、10年~20年後に、日本の労働人口の約49%が就いている職業において、代替することが可能との推計結果が得られていると発表されました。
英国の35%、米国の47%と比べ、比較的代替される可能性が高くなっているとの結果も出ています。
中でも、事務系では総合事務員や会計事務従事者がコンピュータ化できる確率が高いとして紹介されています。
入力作業が必要なものはデータを自動で入力することも可能になっているうえ、会計も単純な集計や仕訳作業であれば、自動化可能なことは想定できる所です。
その他、ビル・建物清掃員や配達員、受付・案内事務員なども紹介されましたが、これらもお掃除ロボットや、ドローン・無人運転による配送など、技術が進歩した現在において、容易に想定できるようになっています。
AIに代替されにくい業務は専門性が高いもの
同じく共同研究によると、代替されない業務の中には、専門性が高い航空機操縦士や、医師、大学教員、裁判官・検察官・弁護士、さらには営業従事者などが挙げられています。
これらは想定し得ないことに対する判断が常に必要になることから、決まったパターンに対処することに強いAIが入り込みにくい分野なのでしょう。
さらに、AIやロボットによる自動化が難しい職業の特徴として、創造的思考、社会的知性やコミュニケーション能力としてのソーシャル・インテリジェンスが必要なもの、そして非定型業務が挙げられています。
先に紹介した業務以外でも、これらの特徴に当てはまる業務は、AIに代替されにくい特性を持っていると言えるでしょう。
経営企画業務の中で代替されそうな業務は会計事務的なもの
経営企画業務の中でも、定型化されているものや、会計事務要素があるものは要注意と言えます。
具体的には、予実管理における各部門数値の単純集計作業や、取締役会や経営会議議事録作成などの事務作業は、人力でなくAIやロボットに完全に置き換わる将来がくるかもしれません。
その意味では「経営企画における一部の業務は将来性がない」といえます。
一方で、数値を分析する作業や分析結果を用いて経営陣に的確に課題を報告する業務は、自動化が難しく、創造的志向が求められます。ソーシャル・インテリジェンスが必要になってくるものであることから、AIに代替されにくい可能性があります。
さらに、経営陣に報告した後に挙がってくる課題や指摘は、定型的なものとなりにくいものであることから、経営企画スタッフによる柔軟な対応が要求され、AIが代替することは同様に難しいかもしれません。
過去の経験則だけでは中々対応できない経営意思決定に関わる業務や、経営の企画・戦略業務、全社組織課題の抽出や対応は非定型の典型的業務であることから、経営企画スタッフを配置して対応していくことが引き続き求められそうです。
今後の経営企画部門においては、AIには代替できない業務は引き続き継続する一方、AIを使いこなすことで経営企画業務の価値をさらに高めていくことも求められてくるでしょう。
つまり現時点では、クリエイティブで非定型の業務を担う限り、経営企画の将来性はあるといえます。
経営企画として生き残るためのコツとは
経営企画業務は、創造的思考、経営陣や現場とのコミュニケーション能力、そして非定型業務が比較的多いことから、AIに代替される範囲は限定的であることが確認できました。
一方で、それらを実行していくためには、AIではできないことを経営企画スタッフは身に付けていかなければならないことも事実です。
将来性のある業務を担うために、経営企画では今後どのようなスキルが必要なのか確認してみます。
時代の変化を読み取る
企業の方針や組織のミッションにもよりますが、一般的に経営企画部門は経営陣に助言や提案を行う、組織としては唯一の立場にあると言っていいでしょう。
自社が属する業界が将来的にどのように移り変わっていくのか、仮説を検証しながら、自分たちで将来予想の結果を導き出していかなければなりません。
前述でも紹介したとおり、そのようなスキルは創造力が必要な非定型業務の一つとして、AIに代替されることも難しく、経営企画メンバーが常に意識しておかなければならないことと言えます。
自社に必要とされていることは何か、また新たなトレンドの中で経営企画部門で対応すべきことは何か、常にアンテナを高く張っておく必要があるでしょう。
経営にコミットするつもりで臨む
経営企画は経理や人事部門と同様にスタッフ部門に位置づけられますが、単なるスタッフ部門ではありません。
全社戦略を経営陣とともに考えていく戦略スタッフとしての位置づけであることが一般的でしょう。
そのため、経営企画メンバーも自社の経営を担っていく一員であるともいえます。
さらに言えば、経営陣と横並びの位置づけであることも、企業によってはあり得るかもしれません。
経営企画スタッフは、とりわけ転職せずに自社内でキャリアアップをしていく場合、単なる一人のスタッフとしてではなく、経営参画意識を持つことも大切です。
また、経営と現場の間に入って、組織運営を円滑に回すためのハブ役として有機的に機能することも、経営陣や現場双方から期待されています。
自分自身の得意分野や強みを構築する
経営企画に限らずですが、経営企画スタッフとして幅広い経営関連分野の中で、自分自身が得意とする分野や、強みとして発揮できる分野を磨いていくことが求められます。
例えば、業務フローを整備し、全社の効率化に寄与する社内コンサルタント的立ち位置として強みを発揮することが考えられます。
または、管理会計分野において部門別会計の整備とともにコスト意識の重要性を全社に浸透させ、部門長の参謀としても機能するスタッフとして活躍することが考えられます。
会社の方針やビジョンを全社に伝達させるエバンジェリスト的な役割を担う人材は、リモートワークが一般化した中で組織の一体感を醸成するキーマンとして、力を発揮するかもしれません。
どれもAIに代替されにくいソーシャル・インテリジェンスが重視される点で、経営企画スタッフが力を発揮できる分野と言えます。
さらに、競争優位性がある自分自身の強みを構築することができた場合においては、市場価値も高くなる可能性があり、転職を含めたキャリアを考える場合に有利に働くかもしれません。
市場価値が高く希少性があり、他人が真似しにくいスキルを持っているスタッフは、余人をもって代えがたい、AIに代替されにくい人材であるとも言えるでしょう。
AIツールを使いこなす
前述で少し触れましたが、逆にAIツールを使いこなすことで、定型業務や単純で手間が掛かる作業などの効率化が可能になるかもしれません。
まさに数値集計業務の自動化は、Excel等手作業による集計ミスが回避できるなどの観点からも、上手く設計すれば経営企画業務の大幅なスリム化が図れる分野でもあります。
議事録作成や報告資料なども、音声認識ツールを活用することで省力化に寄与するかもしれません。
そして、作業ベースに費やしていた時間を、AIが代替できない非定型業務や創造的業務に費やすことにより、経営企画のパフォーマンスも格段に期待できます。
付加価値が出せる非定型業務や創造系業務のために、AIを使ってベースとなる考え方を構築することで、経営企画業務に限らず、クリエイティビティが必要とされる企画業務や営業、システム開発など、あらゆる創造系業務において必要になってくると想定できます。
経営企画でキャリアアップするための方法
経営企画でキャリアアップするための方法として、いくつかの切り口が考えられます。
この章では、計画性や新規分野へのチャレンジなどを紹介します。
中長期的な計画を立てる
前章で紹介した、経営企画として生き残るためのコツを踏まえることが前提となりますが、将来的な経営企画スタッフとしてのキャリアを、時系列で中長期的に計画を立てていくことが重要であると言えます。
経営企画部門以外に就業している方が経営企画部門へ転身して、新たなキャリアを築いていく場合や、経営企画部門に既にいて、自分自身が今後の経営企画でどのようなキャリアを描いていくか、双方考えられるかもしれません。
前者においては機会があれば検討することとし、今回は経営企画部門にいるスタッフが今後どのようなキャリアを歩んでいくかを考えてみます。
まずは、現時点におけるスキルの棚卸を行い、将来的に身に付けたいスキルや先輩、上司が身に付けているスキルを確認し、現時点でのスキルギャップを明確化することが大切です。
足りない部分のスキルを、いつまでにどのような手段で補うのか、計画を立案していく必要があるでしょう。
上司がいるなら、アドバイスを貰いつつ、目標管理をともにしていくことで達成度を計測していくことも考えられます。
自社内で業務を通じてスキルを身に付けることができない場合は、会計や経営の資格を取得したり、外部のビジネススクールを活用したりすることなども考えられるでしょう。
いつまでに、何ができていればOKなのかがより明確になればなるほど、キャリアアップを図りやすいといえます。
当初立てた計画とのズレが出てくれば柔軟に軌道修正を行うことや、AIツールを使いこなすなど、時代の流れに合わせて計画の軌道修正を行うことも時には必要でしょう。
新たな分野へのチャレンジ
企業においては、経営企画部門で必ずやるべき業務があるかもしれません。
また、場合によっては、スタッフのリソースの関係上、その業務だけで手いっぱいということもあるでしょう。
経営企画部門は少数精鋭の部門であるため、中々スタッフの数を揃えることができず、その上で既存の決まった業務をやりながら、経営陣からの新たな課題も数多くこなさなければならない多忙な部門とも言えます。
そのような環境に常に置かれるものの、決まった業務でも経営陣から与えられた業務でもなく、新たに経営企画から生み出すチャレンジがある業務ならば、既存とは違った動きができる可能性が高いです。
決まった業務からの延長上で着想できるかもしれませんし、経営陣から受ける課題に対して新たなる問題意識から生まれることもあるかもしれません。
やるべき決まった業務がある中で、新たな業務をやることは中々時間的には厳しいでしょう。
しかしながら、通常の経営管理や経営陣からの課題対応を通じて、新規事業開発や新たな戦略立案業務などへの派生も考えられます。
コストセンターとしての経営企画から、新たな事業を作って行くプロフィットセンターへの脱却など、企業に新たな価値を産んで行けるようなスキルが経営企画スタッフに身に付けば、社内外どこからでも必要とされる、価値の高い人材に近づくでしょう。
マネジメントへの転身
これまでも触れてきたとおり、経営企画は経営に直結していることから、将来的には経営陣に入る事を目指していくことも考えられます。
そのためには、現在の経営陣から受け取った課題をこなすだけではなく、企業に新たな価値を生むような提案や提言、さらには実行力なども必要になってくるかもしれません。
非常にパワーがいることではありますが、現在の経営にはない価値を提供することとなるため、実践できればマネジメント層への転身も見えてくるでしょう。
また、経営に関するスキルは業界問わずニーズが非常に高く、かつ非定型、創造的でありAIが代替する可能性も低いことから、スキルアップとともに将来的な収入増にも直結する可能性も高いといえます。
経営企画の将来性が不安なら既存の経営企画業務に安住しないことが大切
経営企画業務が今後AIに代替されていくのか、また経営企画として将来生き残っていくために必要なポイントについて解説しました。
経営企画部門は経営陣に対する参謀的役割を果たし、経営スタッフではありながらも見方によっては経営陣の一員として捉えられるかもしれません。
そのような役割を担う経営企画業務は、創造的思考、ソーシャル・インテリジェンス、非定型的な業務が中心となり、AIやロボットに代替される可能性は低いといえます。
既存の経営企画業務に安住せず、常に新たな取り組みを通じて、経営企画の役割はますます重要になってくるのではないでしょうか。
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