経営企画で必要な「管理会計」の知識とキャッチアップ方法

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経営企画部門に着任した場合において、企業独自の会計である管理会計の知識が必要となります。

また、企業ごとに計上方針や事業セグメント、部門へのコスト配賦方針などがあり、そのルールに従って計上していくこととなります。

今回は企業の意思決定において非常に重要な、経営企画部門で必要な管理会計の知識と、そのキャッチアップ方法を紹介します。

【目次】

  1. 管理会計がなぜ重要なのか
  2. 経営企画で求められる管理会計の知識と業務内容
  3. 管理会計知識のキャッチアップ方法は?

管理会計がなぜ重要なのか

知識やスキルのキャッチアップ方法を紹介する前に、そもそも管理会計がなぜ重要なのかについて、触れておきます。

全社的な実績数値である財務会計と違って、管理会計は全社的な実績に加え、そこからブレイクダウンされた事業セグメントや部門別の数値も含まれます。

基本的には事業セグメント別や部門別などの損益計算が中心ですが、大企業や事業ごとにカンパニー制を敷いている企業では、貸借対照表も含まれてくることがあるでしょう。

また、事業セグメントの業績次第では、赤字になることもあり、その結果、事業を継続するか否かの検討に関わることにもなります。

さらに、管理部門のコストやどこにも紐づけることができない共通コストを、何らかの基準で配賦しなければなりませんが、配賦金額次第では、事業セグメント別の収益が大きく変わってくるでしょう。

それによっては、赤字や薄利の事業部門に携わる部門長以下、メンバーにおいてもモチベーションが大きく変わってくることも考えられます。

したがって、会社が決めた合理的な配賦基準に従って、事業セグメントに直接紐づかないコストを間違いなく配賦していくことが非常に重要となります。

このようなことから、管理会計は経営の意思決定を左右する重要な指標ともいえ、企業として、数値の誤認による経営判断ミスは許されません。

経営企画部門は管理会計を取りまとめる部署であるため、全社において非常に重要な役割を果たしていると言えるでしょう。

経営企画で求められる管理会計の知識と業務内容

管理会計の重要性を確認したところで、経営企画で求められる管理会計の知識にはどのようなものがあるのか、どの企業においても必要となる、代表的な業務とともに紹介します。

事業セグメント別会計の把握

前項でも記載しましたが、管理会計は事業セグメント別に損益計算を行います。

そのため、各事業セグメントや、各企業が定める独自のコストの名称を使用することもあるでしょう。

例えば、財務会計上では「広告宣伝費」と一括りになっているものを、もう少し詳細に「WEB広告費」や「雑誌広告費」などに言い換える場合があるかもしれません。

費用に対してその企業独自のコスト名称を使用することから、費用の意味合いの理解とともに、事業独自のコスト構造やどのようなコストに支出をしているのかの把握なども必要になってきます。

全社・部門予算の集計

管理会計の中には全社や部門の予算集計業務があり、経営企画部門が主幹となって取りまとめることが一般的です。

全社数値を作っていくためには、各部門・各事業セグメントから集まった数値を集計する必要がありますが、まずは経営企画部門から各所に提出依頼することとなります。

その際に注意しなければならないのが、一定の基準で予算を作成してもらうことです。

例えば、人件費の算出においては、部門に在籍する人員の人件費単価を設定して、その基準を守って算出してもらったり、全社でかかる管理費を予め部門別に設定したりするなど、予算策定時にルールを決めておく必要があります。

提出期限になったら、経営企画部門あてに提出してもらい、各部門や事業セグメントからあがってきた予算数値のチェックを行い、誤りがあれば修正してもらうなどのやり取りが必要になるでしょう。

最終的には、各部門や各事業セグメントの数値を合算して集計し、内部取引がある場合は相殺処理などを行いながら、組み立てていくこととなります。

原価管理

業種・業態により、製・商品やサービスは異なるものの、それらの仕入や製造、開発するコストである原価を見ていく必要があります。

財務会計では細かく原価の中身まで扱わず、製造原価報告書という全社的な考え方に留まりました。

対して管理会計では、事業セグメント別だけではなく、さらに細かい製・商品やサービス1単位あたりの売上や原価という概念も考えることがあります。

製・商品の原価や原価率を管理することにより、コストを削減する必要があるのか、引き続きその価格で販売して良いのかなど、意思決定のための重要な材料を得られます。

CVP分析

CVP分析のCは「Cost(費用)」、Vは「Volume(販売量)」、Pは「Profit(利益)」を指し、これらをトータルで分析することから、損益分岐点分析とも言われています。

販売時において、費用をちょうど賄う売上高が損益分岐点売上高となります。

損益分岐点で重要なのは、売上に比例して増減する材料費や販売手数料などの変動費と、売上に関係なくかかってくる人件費や家賃などの固定費の理解です。

事業別にこれらを割り出すことによって、事業として運営していくのに適切な費用配分がなされているか、またどれだけ売らないと採算が合わないのかなどが分かるようになります。

投資を優先すべき事業やソフトウェア開発が先行する事業は、売上があがる前に固定費が先行して掛かってくることも考えられます。

一概に赤字であることが悪いというわけではなく、自社のプロダクト・ポートフォリオに合わせて考える必要があるでしょう。

全社的な観点で見る場合では、戦略事業として育成していくものと、収益を生む事業として回収していくものとをバランスよく組み合わせていく必要があります。

CVP分析は管理会計を扱う経営企画部門ならではの分析手法ともいえるため、各事業体がどのような状況になっているのか、市場環境変化とともに継続的に確認していくことが大切です。

集計・分析

前述した予算の集計やCVP分析には一定のスキルが必要となります。

EXCELの場合であれば、多くの部門からの提出により、最新提出版を間違いないように集計する必要があります。

独自の管理会計ソフトを使う場合であっても、各部門から適切な内容で出てきているのか、部門側からの予算算出根拠を含め、チェックをする必要があるでしょう。

また分析の場合は、各事業セグメントがなぜこのような損益構造になっているのか、経営企画側で課題を明らかにすることも大切です。

事業の内容やコスト構造などを把握し、改善できるところはないかアウトプットしていきます。

管理会計知識のキャッチアップ方法は?

前項で紹介した管理会計の知識をキャッチアップするには、一般的に販売されている参考書籍や文献などを読むことで、実務的な内容のキャッチアップをすることはある程度は可能でしょう。

実務的な手法ではない、考え方において大切なこととしてどのような方法があるのか紹介します。

財務会計と管理会計の違いを把握する

管理会計を知る上で、そもそも財務会計と管理会計の違いを明確に把握している必要があります。

財務会計は、対外的に公表する数値であり、開示や報告の際に使用されます。

具体的には、上場企業であれば決算短信や、有価証券報告書、未上場企業であれば決算書などで提出される数値です。

おもに経理部門で決算と言えばこれらの数字がイメージされることと思います。

対して、管理会計は、これまでにも記載していますが、社内の意思決定のための数値であり、対外的に出ることは余りないでしょう。

ただ、上場企業の決算短信や、決算説明会などでセグメント別の数値が発表されますが、この数値は管理会計上の事業セグメント数値として出されることがあります。

また、財務会計と管理会計の数値が一致している、いわゆる「財管一致」という考え方もあります。

創業間もないベンチャー企業であれば、事業内容もシンプルで、取引や社内フローも複雑化していないことから、財務会計と管理会計の数値が一致することが一般的です。

歴史が長い企業や、複数の事業を展開する大企業によっては、企業グループが連結決算になると、財管一致の考え方が難しくなることもあります。

競合企業や上場企業の決算を確認する

企業の管理会計数値は、社外に出ることはほぼないことから、他企業がどのような管理会計を行っているかを確認することは難しいでしょう。

確認できることとして、上場企業では決算短信や決算説明会資料でセグメント別の売上や利益、費用を開示しています。

投資家を意識した丁寧なIRを行う企業は、企業数値がダウンロードできる仕組みも持っているので、そこから入手して、自ら分析してみることもできます。

社内の管理会計で使用するような、細かなところまでは開示していませんが、競合企業がどのような事業で売上、利益を得ているのか、自社と比較することは可能でしょう。

自社事業の理解を深める

今回、管理会計の知識をキャッチアップしたいと考えている方は、恐らく自社内の経営企画以外の部門で管理会計に普段触れない方が多いでしょう。

管理会計は、事業内容と密接に関係するものであり、知識を深めるには展開している事業の理解が不可欠です。

まず、在籍している企業における事業を把握し、どのような製品やサービスを展開しているのか、さらに売上やコストはどのような構造になっているか、確認することが重要です。

在籍部門が別であっても、経営企画部門がある会社は、「管理会計を学びたい」といえば、経営企画メンバーは数値を提供してくれたり、説明してくれたりするかもしれません。

他部門の数値が社内でも機密上出せない場合は、自身が属する部門の数値を見てみるか、もしくは、上長に依頼して見せてもらうことも考えられます。

入手できたら、事業における数字がどのような構成になっているかを確認し、前述した競合他社と比較して自社の損益構造を評価してみることで、管理会計を学ぶことも可能です。

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>経営企画に関する記事

FAS(会計コンサル)から経営企画のキャリアパスと転職事例
https://www.axc.ne.jp/media/careertips/fromfas_tocorporateplanning

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経営企画で求められる管理会計の知識と、そのキャッチアップ方法を紹介しました。

会計基準に則って決まった形となっている財務会計と違い、管理会計は各企業において独自の方法を取っています。

管理会計は企業の意思決定に重要な役割を果たすものであり、おもに経営企画部門で取り扱いますが、各企業が決めた基準に則って、適切に作成する必要があります。

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